第11話 ≪山内一豊の妻≫
追想:母・ともが嫁ぐ日のこと
ともが、篠脇の館から木越城主の弟・遠藤盛数に嫁ぐ日が近
づいたある朝、父・東常慶(とうのつねよし)は、
「とも、よく覚えておけ。これは我ら東家一門の家宝でわしの祖
父さんの常縁直筆の古今和歌集だ。大事にするのだぞ。」
ともは、子供の頃から東常縁(つねより)の名を宗祇法師とい
う坊さんの名とともに父から何度も聞かされていた。
「この古い方の二つは、冷泉大納言藤原為相卿と為秀卿
という偉い歌の親子の直筆(じきひつ)の古今集じゃ。」
「それと、この巻物は最も古いが一番の宝よ。大切にな。」
東常慶は、娘に大事な巻物を何本も与えたのでした。
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