お千代物語
  お腹に5番目の子を宿したともは、夫・遠藤盛数(もりかず)と結婚する前の幼い頃の篠脇(しのわき・現大和町・牧)の館(やかた)の事を思い出していました。
 「ああ、お父上。八幡の赤谷の館では元気かしら。」
 ともの父・東常慶(とうのつねよし)は、古今伝授で名高い東常縁(とうのつねより)を大叔父(おお・おじ)にもつ郡上領主で、前は篠脇城に住んでいました。
 ともが子供のころ遊んだ大きな池や館は、先年の朝倉・越前衆の侵攻で焼き払われてしまい、父は城を篠脇から郡上八幡の赤谷山へ移す決断をしたのでした。
 
                                                              
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第10話 母とも、千代を宿す