赤まるち
「んなぁぁぁっっ!!!!!」
ばうっだばばばっ
吠える33型の背中からは禍々しい翼が生えている
翼というにはあまりにも機械的なその細工、
それを大きく羽ばたくように開くと、大多数の砲門が姿を現し
その全てから、ガキの花火戦争の終末の如く火が放たれた
ぶごおおぉぉぉ、ごぼぼぉぉぉおおおっ・・・・・・
業火が空気を焼き、押しつぶすようにして周りを破壊していく音が
ごうごうと熱を呼びながら猛る
赤い炎は瞬く間に辺り一面を呑み込み、文字通り火の海を作った
炎の光にゆらめいて、二人の少女の姿が朧に映る
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
その中で、姉が呟いた
微かな口の動き、詠われた言葉が彼女の力を解放する
黒い衣服をたなびかせると、燃える炎にいぶられる事を気にせず
ややのんびりとしたような体で、両腕を大きく開いた
黒のマントが炎を薙ぎ払うように広がる、身体の内側からマントではない闇が広がる
黒い光が狂ったケダモノのようにうねり弾けた
気付けば炎が凍り付き、世界は闇に閉ざされている
「ね、姉さんやりすぎっ!!!!」
妹、つっこむが時既に遅し、同刻、世界各地が謎の闇に包み込まれ
世界中の宗教家が、世紀末を歌い、挙げ句勢力戦争に発展したという話は余談
闇に覆われた世界で、機械の翼の数をさらに増やして
堕天使の如く様相を変え、33型が天に昇る
もう、世界が違う、流石芹香お嬢様、常に自分のペースだ(問題が違います)
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「『綾香ちゃん、下がってて』って・・・・・・・・ね、姉さん、ちょっとっ!」
綾香が折角、芹香の加護を受けて強くなったというのに
それをさしおいて自分がやると宣言する姉に困惑、何時の間にそんなに
アピールする子になったのか知らないが、表情は変わらないものの
やる気に溢れる姉芹香、例のとんがり帽子を深く被り直すと
とても、先輩と呼ばれて学園で、のんびりほわほわと日に当たりながら
昼休みを過ごす、おっとりお嬢様とは思えない躍動感がほとばしる
日頃たしなんだ、全ての術を公に使えるからという不純な動機が
裏で蠢いているなどと、綾香は気付かない
・・・・・・・・・芹香は、綾香が知っているほど生やさしいオカルト好きではないのだ
「駄目、私がやるから援護を・・・・・って、え、わっ!!!」
芹香が口うるさい妹に式を放った(陰陽道での法術を使う事)
紙に描かれた五芒が、光を以て綾香を封じ込める
結界に守られたと表現するのが正しいのか、邪魔者を排除したと言うべきなのか
このあたりは、判断が、芹香派かどうかという所で別れるところだが
ともかく、今フィールドには、姉芹香と33型のみ
辺りは真闇、荒ぶ空気と、病んだ世界
空に浮かぶ、赤い髪のメイドロボ・・・・・・・なのか、もしかしたら悪魔とか
そういうタイプなのかはわからないが、ともかく芹香にとっての
敵を改めて見つめる、吹く風が頭の帽子のつばを大きく揺する
目が合った
ひぅっ!!!!!!!!!!
次の瞬間、芹香に向かって真っ赤な光線が垂直に落ちた
音は無い、いや、あるのだが聞こえない、音の振れ幅が大きすぎて
音として確認出来ない、それが広がる
波動と言うの相応しい、波打つ空気が、音速で駆け抜ける
その波が、全身を揺さぶり、内蔵の奥までも震わせて突き抜ける
その圧がビルをなぎ倒す、まさに大惨事、ビッグウエンズデー(間違い)
「ね、姉さんっっ!!!!!」
囲まれた結界の中で悲痛な叫び声をあげる妹綾香
しかし、そんな心配全く無用である
なぜなら、今は闇、芹香が造り出した世界だから
ぶわっ
広がるマント、ばちばちっと電気が爆ぜる音がする
まだうっすらと、彼女を護った物、六芒星の魔法陣が見える
ゆらゆらと下から青白い光で照らされると、その姿はまさに本職さながら
調子が出てきたのか、そっと空を見上げる芹香
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
口元がやや早く言を刻む、呪文を唱える、それと同時に
左手で小さく六芒星を描き手の平に小さな火を起こす
右手では、さきほど綾香に打った式と同じ式符を用意する
一気に三種もの異なる法術を放とうというのか!?
妖しく零れる黒いオーラが、芹香を包みこむ
しかしそれを黙って見ているほど33型も物見好きではない
「・・・・・・・・・・・ったく、お前喋らないからやりにくいんだよっ」
33型が、叫び続けるとなんだか独り言の多い人みたいで
気の毒に思われたりしないかと気にしながら
翼の砲門を全て芹香に向け、各弾に時間差をつけて発射した
弾幕という生やさしい物ではない、まさに弾丸の雨
黒い雨粒が、惜しげもなく振りまかれ、芹香の頭上を隙間もなく覆い尽くす
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
だが芹香の呪文も完成した、同時に大爆発、弾けた光が地面を照らす
爆炎の中、芹香の頭上には完成した呪文によって作られた
盾が現れそれを防ぐと、そのまま上昇を始めた、生身の少女が浮き上がるのだ
続いて、上昇する最中、左手に作っておいた火をさっと自分の周りを
囲むように振ると、その火が尾を引き炎となり、やがて龍へと姿を変えて
芹香を飲み込む、紅蓮の炎の中に黒衣の魔女、降ってくる弾丸はもう障害とならない
そして、待ちかまえたように右手の式を三枚、さっと前に打ち出して
口元に指を持っていき印を結ぶ、小さく呟くと
式がそれぞれ、鬼となり、空に浮かぶ33型に襲いかかった
「異形の者にて異形を葬るか、古いよっ!!」
33型が迫り来る鬼を、蹴返して、機銃でとどめを刺す
討たれた鬼が断末魔の叫びとともに紙に戻り火に燃えて炭と消えた
33型が巨大な翼を小さな羽へと変える、羽の生えたマルチという風体になると
下方から迫り来る、紅蓮の炎龍を迎え撃つべく
腕に自分の電流を集中させる、青白い光が閃光を放って球体を象る
「魔法だろうとなんだろうと、炎なんてのは爆風に弱いって昔から決まってんだよっ」
全身から紫電がほとばしる、瞳がぽぅっと青白く光ると
狙い澄ました一撃を迫り来る赤い龍に食らわせた
ずがががっ、空が裂けるかというほどの雷の轟音
爆発が起きる、空気中でN(窒素)の結合が多量に起こることで
空の雷は起こるのだが、33型はそれを利用した実に低燃費で
破壊力の高い爆弾を使用した、空気中より、酸素と水素を分離収集
そこにイカヅチで火をつける、プルトニウムを使わなくても立派に水蒸気爆発
炎の龍がそれを業火の牙にてかみ砕こうとアギトを開いたが
閉じることなく、まっぷたつに裂けた
うねる炎が二つに割れて、儚く散って消えていく、真ん中の芹香が
ふわりと浮いたまま残った、爆発にも物ともせず浮かんでいる
「・・・・・・・・本で読んだよ、知らないわけじゃない、でも、その盾も貫いてみせる」
33型が目の前に浮かぶ魔女にそう宣言する
魔女は、ゆるやかに風を纏いマントをたなびかせている
時折、光の反射のような物が起きて、目の前に実に鋭角的な
キンと尖った薄く鋭い板が何枚もあるのが見える、それが彼女の言う盾
芹香の魔法、アテナの盾、神話でメドゥサの石の瞳を跳ね返した伝説のアレだ
詳しい事はつっこむな、付け焼き刃だ
「神の槍は大地を貫いた、私のとっておきもそれくらいの力があるよ・・・・」
33型が話を合わせるように神話になぞらえて自分の武器を例える
芹香の表情は相変わらずのまま、ぼーっとしてて人の話を聞いているのか
やや疑いたくなるが、かわいいから許してやろう、かわいい女の特権だ、何したってかまわない(ぉぃ
芹香がふわふわと力無く浮いていたが、突然、思い出したように、はっと反応すると
大慌てで、どこからかモップを取り出してまたがった
ふるふる・・・・・・・・・ぽっ・・・・・・
モップにまたがって浮き上がる自分の姿にちょっぴり感激して
頬を赤く染めるマイペースお嬢様、この行動はアテナの盾が破られないという
絶対の自信の現れなのだろうが、それよりはむしろ、あこがれの格好を
出来た事への感動の方が強そうに見えないこともない
33型が、そんな愛くるしい芹香の様子に目を細めつつ、耳の例の奴を取り外して構えた
「・・・・・・・あ、あれが武器なの!?」
ちなみに綾香の台詞だ、よく似た姉妹だからきっと姉も同じような事を
思ったに違いない、芹香もちょっと目の前の赤い奴の行動にびっくりした様子だが
相変わらずモップにまたがったまま、しかし先ほどより明らかに強く、厚くなった盾が
何枚も見え隠れしている、そう、アテナの盾だから
当然相手の攻撃はそのまま跳ね返す事が出来る、だから芹香は何もしない
「・・・・・・・・例えるなら、グングニル?・・・ミョルニルの方がいいかしら、雷だしね」
耳あては、形を変えて右腕を媒体としてどでかい砲門に姿を変えた
マク■スみたいだ(若者は知りません)、33型は照準を合わせると
にべもなくさっくりと、引き金を引いた
音もなく突然細い直線が黒い空に現れた、白線だ、何よりも無垢で純粋な白い光
芹香が、その光が突き抜けてから数秒後にようやく気付く、胸元をそれが通り
自分の後ろ側へと白線が真っ直ぐに抜けている事に。
「ね、姉さんっ!!!!」
叫ぶ綾香に成す術はない
はっ、とした表情で芹香が顔を前に向ける、白線が膨れ上がるようにして
急に太さを増す、ピアノ線のようなそれが直径10pほどの棒のように膨らんだ
芹香の目の前にあった盾はことごとくこれに貫かれている、
ふくれあがる圧力で、それは音もなくヒビを帯び、すぐにガラスのように散った
芹香を突き抜けた光は、なおも大きくなる
きゅわっっ!!!!!
湾曲した円く美しい音がすると光の筋はようやく貫通した
芹香の胸元から白い粉が散るように光の雫がこぼれた
まだ状況が掴めないような感じの芹香、その大きく柔らかく隆起した胸元を
その光は突き抜けていったはずだ、笑顔のままの33型が砲門を下げる
芹香がふらりとスローモーションで、後ろへと吹き飛ぶ・・・・というよりは
そっと押されたようにして、後ろへ倒れていく
モップが悲しげに手から離れ宙を舞った、遅れてきた衝撃が、駆け抜ける
パンッ!!!
空気が衝撃に震えた、芹香の胸元の衣服が大きくはだけて散る
黒い服の胸元が、花が散るように儚げに舞う、芹香の姿が闇に浮かぶ
かき乱したように、美しい黒髪が、はらはらと広がる
「悪いね・・・・・・・・・・続いて妹もやって・・・・・・バイバイだよ♪」
33型が砲門を下に向けた、真っ直ぐに綾香を据える
にやりと微笑み、また引き金に指をかける
綾香がそれを見て、結界の中で防御の体勢を取った
考えようによってはラッキーではある、少なくともこの一撃を
防ぎきれば、おそらくは結界も解けて、自由に戦える
ぎゅっと下腹に力を入れて天と自分を結ぶ線上に自分の手と意識を置く
・・・・・・・・・あくまでこの一撃を防ぎきればの話だが
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「!?・・・・・・・・・まだ?」
ふいに囁く声が届いた、33型がさきほど吹き飛ばした魔女を見る
それは、その場で浮いたまま立ち上がるように上半身を起こしていた
はだけた胸元からは美しい白い肌が露出しているが、穴は無い
その中心、突き抜けたはずのそこに、小さなアクセサリが見えた
「そ、それ・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
呪文を唱え続ける芹香
はだけた胸元に、鮮やかに輝く装飾品、首飾りが躍る
銀色の十字架が光を纏いながら収まっている
しかも、ただの十字架ではない
「さ、逆さ十字!?・・・・・・・・・・・まさか、邪教なんて・・・・・・・」
芹香は微笑み、ゆっくり両手を広げ、自分自身を十字になぞらえると
アクセサリから不思議な光と音が発せられる、相変わらずの小さな声で
呟く呪文、33型が再び砲門を持ち上げて、狙いを芹香に合わせる
今度は眉間だ、これなら絶対にっ!!!!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
だが33型が引き金を引くよりも早く、芹香の法術が完成した
刹那、33型の足下(もっとも浮いているのだが)に、魔法陣が描かれる
すると見えない力が凄まじいプレッシャーをかけて腕を強引に下ろした
束縛、そういう内容の魔法らしい
全く身動きがとれなくなった身体に仰天する33型、フルパワーにしても
その謎の力から逃れられない、下手をすると腕の回路が飛んでしまう
「んな・・・・・・・こんなもの・・・・・・」
必死に抵抗する33型、その目の前、黒衣の魔女が
朗々と次の呪文を詠唱しはじめた、今度は芹香の足下に魔法陣
「召還魔法!?・・・・・姉さん、何呼ぶ気!?」
綾香がまたとてつもなく心配な顔つきになる、また失敗して冥界の王とか呼んだりしたら・・・
しかし、どこ吹く風で詠う芹香、はだけた胸元がセクシーなのはいいのだが
ちゃらちゃらと光ながら躍る逆さ十字が、非常に不気味だ、絶対悪い者を呼びそうな気配を醸している
拘束され身動きがとれない、33型が目を見張る
芹香の足下から、せり上がってくる呼ばれた者
「お嬢様ぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!!!」
「くっ・・・・・せ、セバスチャンかっ!!!」
33型が呻く、ぬがぁっという感じで現れた初老の男が
芹香の元から飛んでくる、その距離30m
相変わらず拘束の呪文のせいで全くからだの自由が効かない
甘んじて奴の攻撃を受けると、諦めた時
ゆっくりと、セバスチャンが墜落していくのが見えた
「うおおおおおおっお、お、お嬢様ぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・」
だんだん声が小さくなっていくのが切なげだ
まぁ、羽があるわけでもなし、当たり前か・・・・
墜落していく執事を見送る黒衣の魔女、特に気にとめた様子もなく
地面に到達するまで見ることなく、また視線を33型に移した
すーっと、ホバリングするように浮いたままその目の前までやってきた
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・負けだよ・・・・・いい、早く切れよ・・・・・電源は耳の裏だ・・・・・」
33型が力無くそう呟いた、その言葉に従って芹香が
そっと頭を抱えてその部分をさぐる、なんとも頼りない手つきが妙にいい
頭を胸に抱かれて柔らかい感触を覚えると、全てに諦めがついた
どどーん、謎の墜落音が聞こえたのはこの時だが気にしない
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、私じゃないよ・・・・・・本命は」
こくこく
「知ってて?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ3103は・・・・・」
ぷつん
簡単に落ちた、あれほど兇悪な強さを誇ったメイドも電源一つで静かに
人形のように眠った、愛くるしい顔からは決して兵器のような身体を持つと
連想できやしない、芹香が抱き上げるようにメイドを抱えると、ゆっくりと下りてきた
「姉さん・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「いや、魔法で軽くしてるから持てるんですって・・・・そんな説明いいから早く出してよ」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「え?な、何?突然・・・・ね、姉さんのおやつ?・・・し、知らない、わ、私知らな・・・」
とてとてとてとて
「ああああ、ま、ま、待って姉さんっ!!ち、違うの、あ、あれは、そ、その・・・」
とててててててててっ
「わわ、こ、小走りにならないでっ、ご、ごめんなさい、姉さんのクッキー食べたの私ですっ、うう
だ、だって、姉さんの方はいつも、セバスが美味しいの盛りつけてるから・・・・・つ、つい・・・・・」
平和ねぇ(ぉぃ
その頃
「!?」
「どうしたマルチ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・姉さん」
突然真っ暗になって、二人でパニくってたのだが、ふと
マルチが冷静さを取り戻し呟いた
びっくりする権助、ようやく暗闇に目が慣れてきて、マルチの居場所が
確認出来るようになったところだ
「??・・・なんだよ、なんかあったのか?」
「・・・・・・いやなんでもない、こんな状況でなんだけどさ、宛てはあったのか?」
「ねこやんの所しかねーだろ、どうせしばらく、あの男は来栖川邸だろうしな、しかし・・・・」
真っ暗なのだ
「私も、この闇だと視界がほとんど無いんだよ、困ったな・・・・・・・・って、ごんすけ?」
マルチの背筋を悪寒が走った、奴の気配が無い
まずい、暗闇になったって事で、あの野郎・・・・・・
「大丈夫だ、俺しか見てないから・・・・」
「おわっ!!!!、お、お前、今、ど・・・・あ、、や・・・・きゃ、きゃあぁああああっっ!!」
やれやれ
作者死亡