赤まるち


うろたえる、HM−13
追い打ちをかけるように、マルチが問いつめる

「わかるよリューバ・・・・・一度入れ替わってるし・・・・・・リューバ・・・・」

「ち、違う・・・・・・・・違います、わ、わたしは・・・・・」

必死にその答えを否定し続けるHM−13
どうにかなってしまいそうな、狼狽を通り越えて、壊れかけている
ひょっとしたら、OSに何か異常をきたしているともとれるような
不安定な様を見せる、金之介が、見るに見かねてそれを
そっと抱き締める、そしてマルチに言う

「違うよ、マルチちゃん・・・・・・これは、セリオさんと言うんだ、リューバじゃない」

「な、なんで・・・・・・・う、嘘つくな・・・・」

「待て待て、こうなったら俺様の出番だな・・・・なに大丈夫だ、俺は
一度触れた女の身体については、親が死んでも忘れることはない
どれ、さっそく俺にそいつの、胸・・・・いや、むしろ、あ・・・・・・」

「ご主人様、反吐が出るほど邪魔ですわ」

しゃしゃり出てきた権助に暴力を働いて黙らせてから、マルチが
抱き合う二人に詰め寄る、っつうか、抱き合ってる時点で
お前らなんていうか、妖しすぎ
詰め寄ったマルチが、金之介につかみかかる

「なんで、お前・・・・・」

ぱしっ!!!!!!

「!?」

「・・・・・・・・・・・き、金之介様に・・・・・さ、触らないでっ」

そこに、リューバがいる
髪が黒みがかってきた、目に感情が宿る
憎しみともとれる炎が瞳に浮かぶ、そして今一度マルチを突いてでる
弱々しいそれだが、彼女がそれをするという事自体が
マルチにとって、大きなダメージを与える

「りゅ・・・・・・」

「金之介様は・・・・わ、わたしの・・・・・・・・・・・・・・・く・・・あ・・・」

何かとてつもなく感情的な台詞が口をついたと思った時
急に目を見開いて、首を小さく横に嫌々と振った、すぐ後に
ガクンとリューバの電源が落ちた、一瞬にして瞳の輝きが無くなり
その場に立ちつくしたまま、人形へと変わった
いきなりの変化に、慌てる金之介がそれの肩を揺する

「りゅ・・・・リューバっ」

ぱつんっ、う゛ううううううううううう・・・・・・・

「再起動?」

再び電源が入った
リューバに力が戻ってくる、パソコンを起動した時と同じように
カリカリカリカリという音が、少し聞こえたと思うと
また頭を持ち上げる、一度瞼を閉じてから、開き直す
瞳に色(感情)はない

「・・・・・・・・・・・・・・・やはり、OSを二つという事自体に無理がありますね」

「・・・・・・お前・・・・・・」

「もう邪魔は入りません、あの時とは違います、今、もう一つのOSは削除いたしましたから」

言うと、セリオは金之介を冷たく突き離す、それに悲哀、そして諦めともとれる色を零す金之介
髪の色は、また元のきれいな茶に戻っている
凛とした表情と声、冷たく透き通った雰囲気、もう、リューバの面影はない
マルチがぎりぎりと、歯ぎしりをして、わずかに歩みを下げる

「そういう事か・・・・・・・・・・・表裏一体ってわけなんだ・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マルチさん」

表情は変わらないが、その名前を呟く声に微かな寂しさが匂う
すぐにセリオが、機械的な動きで、無駄なくマルチを捕縛する
その形式張ったものを思い起こさせる、実に不手際の無い動作
マルチも、抵抗をしたはずなのにまるで自分から捕らえられるように
動いたとしか見えないほど

「・・・・・・・・・・・・・・なぜ、あなたがマルチという名前を・・・・・・私は、それが・・・・」

セリオがそっと、マルチの耳の裏へと指を持っていく、そこにはメインの電源スイッチがある

「くわぁのぉぉぉぉおっ」

マルチが精一杯暴れて難を逃れる、しかし、逃れて二歩も歩かないうちに
またそっと抱き留められる、もう、自分がどんな格好で
取り押さえられてるのかもわからない、力をどれだけ入れても
セリオには敵わないのだ、彼女のハードも、マルチのそれと同等
あるいはそれ以上の力を備えているから

「前回は、もう一つのOSがあなたと入れ替わった事で共鳴を起こして
攻撃を外しましたが、今回はもうそんな事は起き得ません」

「うるさいっうるさいっ」

「大丈夫です、痛いわけじゃないです・・・・・・・なぜ、わかってくださらないのですか?」

「るせぇっ!!!・・・・・わ、わたしは、権助と帰るんだっ!!!自由にやるんだっ!」

マルチが吠える、必死に電源を切られることを拒む
その台詞に、当然反応しないわけにはいかない
権助が、二人の所にやってくる、そして力強くセリオの腕を握り
ぐっと力を込める

「離せ・・・・・・・・メイドロボは人間の言うことを第一に聞くんだろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「マルチは俺のメイドだ、オーナーが良いって言ってんだから、余計な事するな」

「あなたは正式なユーザではありません・・・・・・・マルチさんは、あなただけの物ではないのです、お下がりください」

セリオがガラスの瞳を権助に向ける、それに一歩も譲らない権助
権助脳では、聞き分けの無い冷たい女というの相手に何もしないのは失礼にあたる
などと、警鐘を鳴らしている、権助が己のポリシーに従って、掴んだ腕をそのままに
もう一方の手で、セリオの豊かな胸をやや乱暴に揉みしだこうと動く、ポイントはやや乱暴にって所だ

たんっ

「リューバ・・・・・・・・・・・・離すんだ、僕の命令だ」

しかし、金之介が、権助を間一髪(?)で、セリオから離し
命令を下した、ぴたっとセリオの動きが止まる
権助、セリオの胸に一点集中していたため大きく溝をあけられる、ふ、不覚だっ

「私はセリオです・・・・・・・・残念ですが、綾香お嬢様の命令以外には・・・・・」

「リューバ・・・・・・・・離すんだ・・・・・・・」

金之介が真っ直ぐな瞳でセリオを見つめる、権助とは
あまりに違う、澄み切った視線、真面目な顔で言葉を繋げる
聞き分けの無い相手をどうにかするようではなく、真っ向から向かい合って
セリオが今一度、命令を拒否する
そのセリオの手に、自分の手をのせてもう一度金之介は囁く

「リューバ・・・・・・・・・・・」

するり・・・・・・

と、マルチが解放された、よたたたっとよろめいて
今度はそれを権助が受け止めた、いや
抱き留めたというか、捕まえたというか、その腕でマルチを抱きすくめると
それこそ、あれやこれやと触りたくる、当然、今さっき、セリオにさわれなかった
鬱憤みたいなものだ、解放されたのを好いことに、セリオに一発くれようかと思ったが
思い直して、マルチは、笑顔で振り返りつつ、ソバットを主人に向かって放つ
権助の頭が吹っ飛ぶところへ、真空飛び膝蹴りで追い打ちをかけて
倒れた所で脇腹を何度も踏みつける、おかげでセリオともう一度という事はなかったが
権助という犠牲は大きい、声もなくぴくぴくと痙攣する様は、カエルの筋肉伸縮実験さながらだ

ぱんっ!

一通りの残虐行為の後、その後ろで乾いた音が鳴った
マルチが血走っていた目を元に戻して振り返る
権助も、その音の方向に目を向ける、顔は蒼いが息はある
音は、金之介の頬からだった
セリオが、冷たい目のまま、金之介の頬を平手で打った、その音だ
金之介は、頬にちりちりとした独特の痛みと、ややとした熱を覚える
ふらふらっと後退した所で、もう一度セリオが平手を打つ

ぱんっ!

「リュー・・・・・・・・・・」

マルチがその二人に思わず声をかけようとするが
選んだ単語に、自信が無くなり途中で途絶える
異様な雰囲気だ、別れるカップルの痴話喧嘩とは違う
戸惑うマルチをよそに、三発目の音がぴしゃっと開いた

「・・・・・・・・・・・・・・・・ねこやん・・・・・・・・油断したな、避妊はちゃ・・・」

「権助、頼むから喋るな」

マルチが倒れてる権助にトドメを刺して、セリオに近づく
四発目を振りかぶったところだ、その手をとって止める
振り返るセリオ、その目は、リューバだった時に見据えられたそれとも違う
ガラスの玉の奥に機械的な光が宿っているのが見える
ダイオードのようにも見えるそれが、ひどくこのメイドの事を
怖い相手と思わせる、見つめられて、びくっとマルチが身をすくめた

「マルチさん・・・・・・・・・・・・・・・・・」

長く重い呟きだ、機械の瞳はマルチを写している
その呼びかけは目の前のマルチの事を言っているようで、そうではない雰囲気がある
セリオが優しくマルチの頭を撫でる、淋しそう、そういう触り方だ
愛おしそうに、目の前の幼女型メイドロボを愛でるセリオ

「な、なん・・・・・・なんだよ・・・・・」

「どうしても、行ってしまわれるのですか?」

「・・・・・・そうさ、メイドだからな主人と一緒に幸せな毎日を過ごすんだ」

「そうだ、幸せに毎日5回わ・・・・・・」

ずびむっ(右目レーザー)

「幸せな毎日・・・・・・・本当に?本当に幸せになれると思ってますか?」

「・・・・・・・・・・なれるよ、メイドだもん、主人の世話をするのが本望だよ」

「しかしな、俺は持久力あるから大へ・・・・」

しぱっ!すかんっ☆(布団たたき直撃)

セリオが布団たたきを投げつけた後、マルチに背を向けた
ねこやんの方を向く、どんな顔をしてるのかは、マルチからは見えない
まぁ、いつもと同じ顔なのだろうか

「・・・・・・・・・・あなただけは、成功例なのかもしれません・・・・・・マルチさん」

「成功例?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・せめて検査だけでも・・・・・・自主的に受けに来てくださるのをお待ちします」

「セリオ・・・・・・・・・・・・」

セリオが背を向けたまま歩き出した、自然、ねこの元へと歩み寄る形となる
打たれた頬を手でさすりながら、困った顔をしてる金之介
そこに辿り着くと、恭しく頭を下げる、謝罪ともとれるその姿
金之介は、そのセリオの頬を優しく触れた、そして、ぺしぺしっと
数度、触れる程度の平手をして微笑った、百万ドルの笑顔だ
・・・・・・・・・・・なんかムカツク、権助はそんな金之介を見てそう思ったらしい

「権助・・・・・・・・・」

「んあ・・・・ああ・・・・帰ろうか」

笑顔になるマルチ

「やっぱ二人きりになれる所じゃないと嫌だろうしな♪」

笑顔で殴るマルチ

「ところでどこに帰るんだ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダチの所にでも転がり込もう」

権助がそういって、携帯電話を取り出して、電話をかける
ぴりぴりぴりと、マルチは電話から発せられる電磁波を感じ取る
その心地よい電磁波から、マルチが盗聴出来るなどと、権助は
知らないのだが、友達の所への電話が繋がる

『へいっ、渦潮飯店ですが』

「!?・・・・・・・あー、権助と申しますが、雅史くんは・・・・・」

『ああ?うちにゃ、そんなラーメンねぇよっ』

ブツッ・・・・・ツーツーツーツーツー

「いや、泣くなよ・・・・・・・いいよ、どっか探せばさ・・・・・なぁ」

マルチが権助を慰める姿が、夕陽に長い影を伸ばしていた

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ありがとう、セリオさん・・・・・」

「あなたの為ではありません・・・・・・・・・」

セリオの後ろをついて金之介が歩く、声をかけるが
金之介の位置からでは、セリオの顔を見る事は出来ない
背中に向かって話している、しかしそれが嫌になったのか
そっとセリオの横に出た、にこっと笑いかけるが
セリオは同じ顔のままだ、それにやや苦笑する金之介

「・・・・・・・・・なにかありますか?」

「いや・・・・・・・・・・・やはり、あなたは、茶色い髪が良く似合う・・・・・」

笑顔で、甘く呟く金之介
セリオが、少し調子を乱した感じで足を早める

「・・・・・・・・・・・・・ところで、僕はなんで叩かれたのかな?」

目を合わせない

「・・・・・・・・・・・・・・痛かったですか?」

「・・・・・・・・・うん、結構ね」

ふぅとセリオが一つ息をついて、彼女とは思えないほど
悪戯な表情を浮かべて、金之介の目を見る

「・・・・・・・・・・・・彼女が・・・・・・叩けと言ったんですよ、金之介様」

「なるほど、そりゃ痛いわけだよ」

おどける金之介、くすっとセリオが笑った
しかし、すぐに

「さ、綾香お嬢様がお待ちになっておいででしょう」

「そうだね・・・・・・・・急ごうか、・・・・・・・・・・・・・セリオさん」

二人が一層足を早めて、道を戻った、落ち葉がさらさらと渦巻いて舞った


つづくかなー

つづく

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