赤まるち


「なんだよ・・・・・・これ、窓だったのか・・・・・・くそっ」

権助は取り残された部屋の中で脱出口を探している
まず、入って一番最初に見つけた、牢だと思った鉄格子は
この部屋の窓だったと今確認した、流石金持ち
窓の大きさが常人の家の及ぶところではない、要らぬ所で感心

「・・・・・・・・くそ・・・・・ねこやんが・・・・ねこやんが・・・・ちくしょぉ
だいたい、可笑しいと思ったんだよっ、やっぱダメだ
いい女を連れてる奴にはロクな奴がいねぇ、もう、間違いねぇ
畜生畜生っ、おそらくは、多分だけども、憶測だけども
いい女を連れてる奴は、どっか人を見下してやがんだっ
あんちくしょうっ、絶対こっから出てやる・・・・・・・・・どちくしょぉがぁぁああああああっっ!!!」

バリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッッ!!!!

「ぎやああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!」

腹いせに鉄格子を殴って感電、ありがち
一人ドリフを堪能しながら、なんとか脱出を試みようと
まさにコントを繰り返す権助、その様子が
ありありと監視カメラで監視されてるとはつゆ知らず
盲目的に頑張る

「・・・・・・・・・・・・・先生、この人は馬鹿なの?」

「素直なんですよ、綾香さん」

金之介に問いかける綾香が、あーなるほど物は言いようねと、頷いて
引き続きの監視を、オペレータHM13に言いつけた
暗い監視室から二人出る、ぱたぱたと足音をたてて
やや広いフロアへと場所を移す、とんとんと足を地面にうちつけて
綾香が棒を取った

「先生、どう?」

「うん?・・・・・・そうだね、まず型でも」

素っ気ない返事に今日の仕事があまり乗り気でないと悟らせる
綾香が仕方なく、一人で型をなぞり、棒術の練習に励む
金之介はそれをじっと見つめている・・・・・・・上辺だけで、気の無い瞳で

もうすぐ来るのか・・・・・・・・・マルチちゃん・・・・・・・・

この邸宅は、来栖川の主力(極近しい家族)、が集結していると
言っても過言ではない、それ故、その警備システムには最新のそれが敷いてあり
へっぽこな泥棒さんでは、入る事すら困難だ、先ほど容易に入れたのは当然
罠というわけなのだが、まさに要塞と言ったこの家、そこへ
マルチが向かっている

「・・・・・・・・・・・・・・・・売られた喧嘩は買わないとかな」

マルチの台詞だ
意味もなくクルミを二つ、右の手の平でころころさせている
1kmほど離れた小高くなった場所から邸宅を見下ろす、厳重な警護
赤外線も張り巡らされてる上に、警備に使ってるのが人間じゃない
警護型に改良されたHMシリーズだ、メイドの格好だがスカートの下にサブマシンガンを携帯している
観察を休めずにマルチが左腕に備えているモップの感触を確かめる、ある意味これが生命線だ
この武器でどれだけ戦えるか・・・・・

「どのみち逃げてばっかじゃ、捕まるの待ってるようなもんだったしな・・・・」

そう、いつまでも逃げ切れるとはとうてい思えないし、思ってもいなかった・・・・・
ただ油断をしていたのは確かだった、逃げ切れないのだからせめて・・・
呟いて、キッ、と邸宅を睨み付けた、きゅうううううううううううううう
集束する音とともに、マルチの右目が赤々と光り輝く
そして、放射
ずばむっっ!!!!!!!!

「!!!」

「きたね」

先のフロアで、待ちこがれたように金之介が呟く、綾香が手にとっていた棒を置き
そこを後にして中枢へと足を向ける、屋敷の中はにわかに忙しく、騒がしくなり
純粋なメイドロボは退避を始めている、セリオ型はそそくさと荷物をまとめて
どどどどっと地下のシェルターへ、また、マルチ型はお約束のように
防空頭巾を被って、腰をかがめて小学生の防災訓練のようにして
やはりシェルターへと退避を始める
そして、それに入れ替わるようにして戦闘用の部隊が出てくる
武闘派のメイドロボだ、武闘派な時点でメイドロボじゃないような気がするが
気にしてはならない、来栖川家の趣味なんだろう
戦うメイドさん、大いに結構(なんだそれは)

「なっ?・・・・・なんだ・・・・」

地下といえば権助、幾度とない電撃ですっかり雷様コントの後みたくなってるが
衝撃で異変に気付いた、権助脳味噌がかりかりと演算スピードを上げる
衝撃音→マルチがやらかした

「き、来たのか?・・・・・そ、そんな、捕まりに来るようなもんじゃねぇか」

と、また鉄格子にトライしようとした時
扉が開いて大量のメイドロボがわらわらと退避しにきた
うおおお、よ、選り取りみどり・・・・・・でも、二種類か(−−;

入ってきたメイド達は、特に権助に気を配るわけでもなく
さくさくと退避してきた順に体育座りで並んでいく
この規律正しいところがロボだな、見てみれば、セリオ型の方が
列がきれいで、マルチ型はやや曲がったりしている、このあたり
上級生と下級生みたいで微笑ましい

どどーーんっ、揺れる屋敷

「きゃぁ・・・・こ、こわいですぅぅぅぅ」

「大丈夫です、安心してください」

涙ぐましい現場がここに発生しているが、それはどうでもいい
ともかく屋敷中のメイドロボがここに来るんじゃないかと
芋洗いのように増え続ける同じ顔、くぅ、目の前にメイドがいるのに
ナニもできないなんて・・・・・・

大目的が変わったが目先の目的は同じ、どうにか脱出したいと頭を捻る
しかし、権助ごときが考えたところで脱出できるほど来栖川の警備システムは
甘くない、くそう、目の前にいっぱい・・・選り取りみどり・・・・ああ、胸のおおきいのから
小さいのまで(注:やはり二種類)、あそこまで伸ばすか!?(何をだ)
革新的なアイデアを出しつつも困り果ててるうちに、また退避してきたメイドロボがいくつか・・・・

「・・・・・・・・・・別モデルか?」

見慣れないタイプのが入ってきた、おろおろとしているのはわかるのだが
どこか動きが緩慢で、とろいという印象がある、おおよそメイドとは思えない
黒髪が美しい、垂れ目気味の黒く澄んだ瞳、何か押し黙った風で
たくさん並んでいるメイドの後ろについてうろうろしている

誰かに似ている・・・・・・・・・
権助の直感がどこかで見たコトある女に似ていると告げている
誰だろう、女の知り合いなんて多いわけがないからだいたいの予想はつくはずだ
どうだ?どこの店の娘だったかな・・・・・・・
権助の記憶から、数人のウォーターなビジネスの女性の顔がぱらぱらと去来する
なお注釈をつけておくと、全て店先の、もしくは雑誌に載ってた顔のみを知るだけだ
決して通ったわけではない、幸い(?)そんな金は権助には無い

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

その視線に気付いたのか、ぼーっと並んで一緒に体育座りしていたその娘が
とてとてとおぼつかない足取りで権助の近くにやってきた、見ればパジャマ姿
手には、女の子らしく黒い猫の縫いぐるみを持っている、ぶさいくな顔の猫だな
メイドと呼ぶには少し毛色が違う、そういう感じがある娘、しかし、権助は悟る

こいつは、メイド服が似合う(確信)

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「うん、そうだな清楚そうなのがいいな・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「それでいて下着は思いっきり凄い奴だな、基本だけどあんたならそれで期待以上なはずだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「ところであんた何者だ?メイドロボにしては、耳のが無いが・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「??」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「あ、しゃ、喋ってたのか?!・・・わ、悪い・・・えっと、もう一回」

催促する権助に、懇親丁寧に娘が口をぽそぽそと動かす
切なそうな瞳の濡れ具合が妙に男を引きつける、恐ろしい娘だな
権助が戦慄と熱くたぎる自らの男を確認しながら口元を注意深く観察する
読唇術というやつだ

せ・り・か

「ゲ・イ・シャ?」

ふるふるふるふる

困ったような感じ(雰囲気でしかわからない)で、首を左右に振り回す娘
どうやら違ったらしいのだが、続けて、もう一度同じ台詞

せ・り・か

「ゲ・リ・ラ?」

ふるふるふるふるふるふるふるふるっ

む、さっきより反応が大きい、困った感じが増えてる(−−;
更に遠のいたのかそれとも、ただ単にいやなのかわからないが
とりあえず違うのか・・・・・

「んー、難しいなぁ・・・・まぁ、とにかくメイドロボじゃないんだな?」

こくこく

じゃぁ、肉奴隷あたりだろうか・・・・うらやましいな、パジャマだからよくわからんが
かなり胸は大きめだ、それに腰のラインが抜群に美しい、そうそうお目にかかれる
カーブじゃない、スローカーブって感じだな(意味不明)
権助がふむふむとうらめしそうにその姿をなぶりつつ、目の前の娘と会話を続ける

「うーん、こっから出たいんだけどどうしたらいいと思う?」

「??・・・・・・・・・・・・・。」

「え?開けてもらいましょうかって・・・・・、それは不味いからな・・・・・」

きょとん
そういう表現がぴったりな顔をして娘が、じっと権助を見つめている
漆黒の瞳が誘うように美しい、たまらない
目の前なのに鉄格子のために抱けないのが残念で仕方ないと心の中で涙を流しつつ
仕方が無いので、鉄格子の隙間から手を出して、娘の胸を確かめることにする権助(脈絡無し)

ふに・・・・・ふにふにふにふに

ファーストインパクトにてその大きさを確認、次いで柔らかさを
柔らかくしっとりした感じ、質量がほどよくて、むにむにというよりは
ぽよぽよしてる、パジャマだから中に何も着けてないらしく、それが非常にポイントを稼いでいる
娘の時間が止まる、彫刻のようにぴたっと動かなくなる、バックには
大量のメイドロボが同じ顔して座っている、兵馬俑か?

「娘さん・・・・・あんた、ただ者じゃ・・・・・・・」

権助が笑顔を向けると、バチッと弾ける音とともに手が外れる、おや?
次いで、さきほどと変わらぬ顔の娘が、やや困った風の視線を向けて
それでいて瞳の奥に、どす黒く光る炎を見つける、おやおや?
何かぶつぶつと呟いている、そして心底残念そうな視線とともに・・・

「うはっ!!!!」

反射的に娘の正面から外れる、マルチ相手に培った、自らの防衛本能の現れだ
かわすと同時・・・・いや、それより先くらいかもしれない、謎の黒い物体が
俺の居た場所を、止まらない電車のように四角く空間を削って奔って消えた
娘からは黒い煙?・・・いや、オーラみたいな物が漂っている
相変わらず後ろのメイドロボが同じ顔、今度は呪い人形みたいで怖い(−−;

「な、なんだ!?い、いまのわ・・・・・・・・・・・うはっ」

無音
何かわからないがプレッシャー物体が権助を追い回す
よく見ると最初の一発(?)で、鉄格子が綺麗に切り取られているじゃないか
しかし、この切り口はなんだ・・・・虎鐵や兼定でも、こうはいくまいよ
切ったばっかりのマグネシウムのような光沢を放つ、その切り口に戦慄を覚えつつ
黒い娘さんに謝って、脱出する、と、とりあえず出られたっ
しかし、謎物体に追われてるから姦るに姦れない、ちくしょう、こいつらは諦めるかっ!!!

権助脱出成功、文字通り、獣が檻から逃げたのだ

その頃の表

「ダメじゃぁっ、五番隊が殺られたっ!!!、応援が必要じゃぁっ!」←マルチ型

「こんのぉ、おうじょうせぇぇやぁぁぁっ」←セリオ型

武闘派な方々が、赤い髪のメイドロボ相手に大苦戦を強いられている
相手はモップを一本携帯して、文字通り鬼神のように振る舞っている
近寄る同士が次々となぎ倒されていく、遠距離からの中途半端な火器攻撃は
バリアに弾かれておおよそ、援護にならない
次々と戦力を消耗するばかりだ、それをじっと見守る女、綾香だ

「強い・・・・・・・あの時よりも強いじゃない・・・やだなぁ」

ちらっと後ろに目配せをすると、セバスが恭しく頭をさげて
報告を伝える

「葵様は、まだ休養が必要かと・・・・・・・・・・」

「いや、葵じゃない・・・・・・・・あれは?使えるんでしょ?」

「!?・・・・・あ、あれはまだ、実践投入には・・・・・・・」

セバスが大きく狼狽する、この老人にしては珍しいコトだ
それほどの何かがまだ、この来栖川には隠されてるらしい
困窮するセバスをサポートするように、セリオが一歩前に出る

「私がもう一度・・・・・・今度は本気でいきますが・・・・」

「いや、セリオになんかあったら困るし・・・・・うん、でもいざとなったら
出てもらうけど、その前に、あれを試しておきたいの・・・・最後のに
どうしても使う事になるでしょうし・・・・・・」

綾香が冷たい視線を外に向ける、自分の中の何かに切りをつけるような
ぐっと堪えた感じの表情を見せる、それに不憫を思う視線を投げるセリオ
セバスは已然頭を垂れたまま、沈黙する室内で綾香が凛と声を張る

「ゲート開いて・・・・・・・後の事は私が責任とるから大丈夫、お願い」

現在指揮をとっているのが綾香である以上、その兵隊として働いている
ロボは絶対服従である、ぱんぱんと銃で牽制しながら、次第に囲みを引く
そして屋敷の脇から檻がせり出してきた、中に何かがいる

「?・・・・・・・・・・・・そういう事しますか、来栖川さん・・・・」

ちゃらっ・・・・・・・・、鎖が揺れる音がする

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出番なの?たるいな」

鎖に重石をつけ、両腕は拘束具で縛られている少女
ぎらりと光る眼光に、冷めた瞳が薄く張った氷のような表情を持つ

青い髪のD、推参


つづくとおもうよー

つづけー

戻るよー