赤まるち


一面が花畑

なんの花なのかはわからない、そんなの気にするのは
農学部の一部のヤバイ人間だけだ、俺は違う
権助が強く思う、その目の前に花畑
りんりんと咲いた、いくつもの様々な色の花がちらちらと
その花びらを揺らす、風があるわけでないのにどうして揺れるのか

「花びらが揺れるって言葉が、エロいと思うのは俺だけじゃないよな」

ぶつぶつと、エロゲーをやった人間に向けてそんな事を呟く権助
男が誤解されるからやめてほしいものだが、この男には
そんな事は関係無い、なんだか気持ちよくなりながら
ふわふわとした足取り、その目の前に花畑

なぜ花畑?
俺は今までどこにいた?
ようやく自分がおかしいと気付く、ふらっと目の前が揺れると
また先ほどとは違った色の花畑が広がる
どうやら幻覚に近いらしい、ということは夢を見ているのかと
権助は考える

「・・・・・・・マルチが・・・・そういえば、太股が・・・」

目の前が、一面太股になる
太いの細いのきれいなのばっちぃのと、様々な色とりどりのふとももが
あれよあれよと目の前に広がる、一面のふともも畑
本当なら驚愕というか、気持ち悪くて仕方ないような気がするが
今の権助にはエサが大量にまかれた程度でしかない
むさぼる、無論、太股を

「・・・・・・・・・・・足りない・・・・違う、こんなもんじゃなかった・・・・もっと・・・・ふともも・・・・」

淋しそうに呟く権助、おもちゃを取り上げられた子供のように
純粋にそれが無いことを悲しむ、しくしくと子供の泣き声が
どこからか聞こえてきて、雰囲気が出てくる、でも一面太股畑
風情無し

一面が太股

「違う・・・・・・・」

世界に違和感

「こんな事があり得るはずがない」

気付くの遅い

「太股ばっかりで、××出来ないなんて、それは違う」

・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・・・・待ってろ今起きるから」

権助が視点をずっと遠くにすえる
世界が太股からブラックアウト、そして白く白く塗り替えられ
大きく歪んだ視界が脳に打ち込まれると、強烈な目眩と
鬱屈し荒んだ空気、圧倒的な雰囲気、迫り来る危機感
滲む大量の脂汗に嫌悪感を抱き
脳内に響く、音、音、音、音、音、音

ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり・・・・・・・・・・・・・・・

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、た、た、た、た、た、た、た、た、ま、ま、ま、ま、ま、ま、ま、ま・・・・・・・」

何云ってるか自分でもわからない、言いたい事はこれだ
「頭が痛いっ・・・・・ら、ラネーフスカヤっ!む、胸で挟んでおくれっ、ハァハァ」
電波のせいか、ちょっと意味不明だが、つまりは激しい頭痛にさいなまれているのだ
権助が「ちりちり」というよくわからない感覚に汚染される脳味噌を
必死に働かせ、開いているのか閉じているのかわからない目玉で
今の世界を懸命に視界にしようとする

何があるのかわからない、視界にもやもやと
何かが写ってはいるが、ゆがみ続けるそれが
ディストーションを利かせ過ぎた、イカレタ歪み音のように
そう、視界が音で表現される世界が今広がっている
わけがわからない、目の前にある何かが
この赤い物体から、何かが・・・・・

「と、と、と、と、と、と、と、と、め、め、め、め、め、め、め、め、ろ、ろ、ろ、ろ、ろ、ろ、・・・・・・・・・・」

意訳「とめろ、このうすらトンカチっ!さっさとしねぇとスカートめくるぞ」
目の前の赤い物体に手を伸ばす、こいつがいなければ
きっとこんな事はないに違いない、「ちりちり」が止まらない
腕を伸ばしているつもりだが、どこが伸びてるかわからない
しかし、それでも目の前の赤い物にようやく触れて・・・・・

どがむっっ!!!!

痛烈な衝撃が、そこから伝わった、順番がわからない
触ると同時だったのか、それとも触った後なのか
或いは、触る前にそうなっていたのか・・・
ようやく途絶える不快な音、脳内からするすると
きつく締め上げていた拘束具を解くようにして
支配していたそれが抜け落ちる、目の前が開ける

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・太股」

広がった青空をゆっくりと地上へとおろしてくる
起きあがる、びりびり手足になにか痺れが残っている
ともかくアレからは解放されたが、いったいどれくらいの時間が経って
どうなっているのかはわからない
感覚と記憶が結びつかない、気持ちの悪いざらっとした感触が心に残る

「・・・・・・・・・・・マルチは?・・・・・太股は?」

個体識別名を呟き、マルチと綾香の姿を探す
あたりは、元のねこやんの家の下だ
特に物が壊れた事もない、自分の身体を見るが
寝起きのためなのか、ナニがどうなってる以外はなんともない
脱がされた形跡もなければ、脱がそうとした記憶しかない
とりあえず、時計を探しにいく

「時計時計・・・・・・って、ねこやんロクな時計持ってねぇな・・・・」

部屋を漁ると、なんだかかわいらしい目覚まし時計が一個
じっと見てみる、ついでにビデオに備え付けの時計に目をやる・・・
続いてテレビをつけて時報を見る

「・・・・・・・・・・・どれも合ってねぇ・・・・・・・・・時間にルーズだなぁ、女にゃもてんぜ」

余計な心配をしつつおそらくは、テレビの時報がもっとも適当だろうと
そこから経過時間を計る、なるほど二時間か・・・
ナニが起きたのかさっぱり分からない、ともかく、あの後
俺は無事で済んだが、あとの女どもは・・・・・・

部屋を出て階下に向かう、現場に戻ってナニかを検証すると
たいてい手がかりがつかめる物だ、はぐれ刑事見てる限り十中八九間違い無い
たんたんたん・・・・階段を踏みならして、権助がやや足早に
地上へと下りる

アパートの壁に男が背をもたれて立っている

「連れてかれたよ・・・・・・・・・・・・マルチちゃん・・・・・・・・・・・・・」

突拍子もないというか、脈絡無く現れる友人に
内心驚きながら、平静を装う、それを知ってかさらさらと何事もなく
さも、最初からここに居て、こう喋るように運命づけられていたように
ねこやんが話す

「来栖川グループの人だったんだろう・・・・・なんだかわからない内に
さくさく回収されて・・・・・・・・僕もよくわからなかったんだ、とかく頭がちりちりしてて・・・」

すまなさそうにそう言うねこやん、きりきりという感じでこめかみの辺りを指でぐりぐりする
手には土産だったのか、たこ焼きを持っているが力無くだらりと下げて
真っ直ぐ前を見て、権助を視界に入れていない
相変わらず壁を背にしていたが
ぐっと拳を握ると、ようやく背を壁から離し、権助の前に歩をおいた

「・・・・・・・・・・・来栖川邸・・・・・・・・・・・・・・・・こっから1時間無いね」

権助がねこやんに聴く、こくりと頷くと
たこ焼きをそっと差し出して喰えと視線で言う
従い、その包みをあけると冷めたたこ焼きが
ひやひやと10個並んでいる、階段に一旦腰を下ろして
権助が爪楊枝をつまむ、こんこんとねこやんが話を始めた

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「一撃で・・・・。」

迫り来るセリオ、その目に写る顔がみるみると近づいてくる
マルチが悟る、間に合わない・・・
どのような防御手段もおそらくは全て弾かれる、今しなければならないのは
回避、避ける事だ、だがこの状態でその行動に自分を移すのには
もう時間があまりにも無い
ビームを出すにしても、腕からなんか出すにしても、ともかく
不用意な間が存在する、その間が、致命的なのだ
当然寝そべっているのだから立ち上がって飛び上がるなどもってのほか
横に転がるとかもあるが、その程度では軌道修正されて
結局いっしょだ、万策尽きた

電波で時間を稼いで逃げるつもりだったのに・・・・・

マルチの電子回路から、データが・・・・ひょっとしたら
電波だったのかもしれない、ともかくその思考が手に取るように
むしろ、自分が考えた事のようにして、セリオの中で
形になった、声が自分が発したように脳に響く

『逃げたかったのに・・・・・自由が待ってるのに・・・・』

パツンッ!!!!

「セリオ?」

「あ、綾香お嬢様・・・・・そ、そうか・・・・・・・あれが残ってて・・・・」

一瞬の電気が空気に爆ぜる音とともにセリオが意識(?)を取り戻す
別に気絶していたわけではないが、いつの間にか、先の映像を
自分のビジョンに再生していた、心配そうに見つめる綾香に
申し訳なさそうな顔(もっとも表情は変わらないので印象がという事だが)で
視線を落とした

今は車中、その後だ

「葵が気になるんだけど・・・・・・・・看て上げて」

「あ、はい」

綾香なりの気の使いよう
ともかく、こういう時に仕事を与えて他の事を考えるという行動を
追随させない、セリオという優秀なメイドは、与えられた仕事は
パーフェクトにこなす、同時にその瞬間に他の私事に関する
ありとあらゆる物が停止する、立ち直るのはそこからならたやすい

良くできた主人に仕えた、本当によくできたメイド
二人が組んでいる時に、死角はおおよそ見あたらない

長い髪を梳きながら、車から外を見る綾香
特に来た時と変わる事の無い情景
とりたてた大事があったわけではないと街は唄う

「・・・・・・・・・・さて、このままうまくいくかな」

車はリムジン、運転するのは運転手型HM13
前の席では、葵がうなされているのをセリオが看ている

「はぁはぁ・・・・来ないでっ・・・・、ふ、ふともも・・・・ふとももが・・・・ふともももももおおおっっ!!くるなぁぁあああああっっ!」

「あ、葵様し、しっかりなさってください」

重傷らしい

綾香達が邸宅に着くと中から心配そうに執事のセバスがやってくる
とりあえず大変な目にあったのが葵だけだと確認すると、安心したのか
さっさと部下の執事型HM13に指示を向けた
時同じくして、権助達、たこ焼きを食べながらの
ねこやんの話しに、適当に相づちを打っていた権助が
大きく目を見開く

「僕もいくよ」

ねこやんが、きゅっと拳を握ってそう一言吐いた
きゃしゃな身体、すらりと背は高いのだが、なんとも弱々しい感じが否めない
事実どうやら、ナニかの病を煩ってると風に聞いた事がある
そんな男が、権助に共に敵地に乗り込むと意気込んでいる

「なんで?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リューバが・・・・・・・・・・・・いないんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「だから・・・・・・・」

「お姫様争奪だな・・・・・敵も女ばっかだけどよ」

ぱむっ
ねこやんの背中を叩いて、階段から右足をおろし、左足を続けた
渋いその姿に非常にうれしく思ったのか
金之介は今まで見せたこともないような、人懐こい笑顔を浮かべて
後ろをついた、権助を頼りにしている・・・・・そんなような感じの
視線を感じる権助

(あの事は黙っておこう)

権助が、その事件の前の事件を闇に葬る
心に決めた・・・・・ぼくは、リューバさんに手なんて出してませんよ、と。


テンション落ちすぎ、休載?(−ー;

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