赤まるち
「権助・・・・・・・お前は決して「柏木」の血を絶やしてはいけないよ・・・
お前の血は、そこらの人に流れてるものとは全く違う高貴な血統なのだから・・・・・・」
「高貴な血統?」
「そうだよ、お前もこの柏木の家の血が流れているんだよ」
「僕にも?」
「そうだ、お前だけじゃない父さんにも、爺さんにも、そのまた爺さんにも・・・」
「すごいんだね♪」
「ああ、そりゃすごいさ・・・・遙か昔から脈々と受け継がれているからな・・・」
「どうやったらこの血は絶えないの?お父さん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それはな、女の子をまず、こうやって捕・・・・」
「やめんかぁあああああっ!!!!!」
どばきっ!!!!!
権助の幼い日の記憶にあるのは
母に殴り倒される父の笑顔だった
父:柏木権太 母:玉子
父は地方公務員
母が専業主婦
ごくありふれた両親の間に生まれた子、それが
「柏木」権助だ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うおわわぁぁっ!!!!!!」
「わわっ、に、逃げたっ!!!!」
走り回る権助とそれを追いかける葵
セリオはちょっと離れてそれを見ている、元々冷めた目つきだが
ここに送る視線はいつになく冷ややかで、やれやれという感じ
・・・・・つまり、呆れているのだ
「ちょ、そ、それでも柏木の・・・・・」
「うぎゃああああああっっっ!!!」
葵が、絶叫しながら逃亡する権助を必死に追いかける
権助も最初から逃げていたわけではない、試合開始直後は
果敢に攻め立てようという気に溢れていたのだ
最初の頃回想↓
「いくぜっ、ちちなし小娘っ!!!!」
「(怒)」←葵
「・・・・・・・。」←セリオ
踏み出す権助、葵との距離を縮める
葵が下がる事なくその場で重心を低くして権助の動きを見る
真っ直ぐに出てくる権助、葵が冷静にジャブを放ち距離を計る
ぽくっ
「げあっ!!!!!」
「え?」
クリーンヒット、どうやったらジャブでそこまでの破壊力を
引き出せるのかというほどのタイミングで権助の頭部が
大きく後ろへと吹っ飛ぶ、おかげで、ボディはがら空きだ
しかし葵の頭に「柏木」の文字が恐怖を呼び起こす
(罠かもしれない・・・・・)
でも、ここで決めないと殺られるのは私かもしれない・・・・
葵の悪い癖だ、追いつめられる、主に自分自身で追いつめる
未だ直ることのない、自分一人に対する無力感と絶望感
そうはじめから自分に絶望している、だから自信が・・・・
「葵様っ!」
「!?はっ・・・・・はぁあぁぁぁぁっっっっ!!!!」
セリオの声でスイッチが入った、葵がのけぞる権助の土手っ腹に
例の奴を一発ぶちかます、乾坤一擲、寸分の狂いなくそれが
クリーンヒット、そこにセリオが追い打ちに入る
どばきゃっ!!!
まるでギャグ漫画のようなヒット音とともに権助が空高く舞い上がる
派手な音とともに受け身もとれずに、墜落する権助
ここでセリオが一旦下がる、そして呟く
「弱すぎる?」
権助ががんばって立ち上がると葵が目の前にきてガチンコの
接近戦を挑んできていた、権助の脳内で激しい指令が飛び交う
うおおおおお、ま、まずは右にくるっ!!
左によける権助
どごっ!!クリーンヒット
ちぃぃぃぃぃ、もう一度左だぁぁぁぁっっ
右によける権助
ばごっ!!クリティカルヒット
おっとどっこいシャツの中ぁぁぁぁぁっっっ!!
下によける権助
ずどむっっ!!スマッシュヒット
ああ、そういえばあのエロゲーでテニス勝負、奴に一度も勝った事なかったな・・・
走馬燈の如く、八十八町の住民としてガンバっていた当時を思い出す権助
とてもじゃないが勝てる相手ではないと脳味噌でなく、体が判断
葵に背を見せて逃げ出したのはこの後の事だ
「・・・・・・・・・「柏木」・・・・・・お嬢様も、少々過敏になりすぎではないでしょうか」
セリオがひとり呟く、視線の先でとうとう葵の射程に入った権助が
崩拳でぶっ飛ばされている、防御もまともに出来てはいない
あれでは下手をすると、そのまま逝ってしまうかもしれない
「葵様が、人を殺める事は望まれる結果では無いですね」
たむっ
つま先で地面を蹴ってトドメを刺しにかかる葵の所へと跳んだ
葵の獲物をかすめとるようにして、間に入りそして脚を大きく振り上げる
かかと落としを首に決めるつもりだ、これでこの男は気絶(おち)る
セリオが無駄な肉の無い美しい脚をそれこそ剣のように振り上げる
セリオの足技は、綾香のそれに次ぐほどの美技だ
だが
この選択は間違いだ
無駄な肉の無い美しい脚を振り上げてしまう事は
そう、権助の目の前で、無駄な肉の無い美しい
カモシカのそれを連想させるような健康的且つ
そそりまくりの脚を、しかも短いスカートでなどと!
葵のようなお子様では目覚めなかった、権助の真の力を
持て余したそれが解放させる引き金となる
「パンツ丸見えぇぇェェェェェエエエヱヱヱヱヱゑゑッッッ!!!」
権助が魂の声をそのまま口にする、姿が消える(またか・・・
セリオの足が空を切り地面に打ち付けられる、瞬間ぞわぞわとした触感が足の付け根付近まで
登ってきたが振り払う、それでもなんか尻を触られたような気がする
葵とセリオが目を疑う、しかしここでうろたえないのが
今までの相手と違うところだ
すぐに、葵は気配を探る、セリオはセンサーの網を張る
二人が研ぎ澄ました感覚で権助の動きを追う
「は、疾い・・・・・・・・」
「大丈夫、追えないスピードじゃありません・・・」
セリオが葵に声をかける、さきほどとのギャップが強すぎて
過分に速く見えるだけ、落ち着いてみれば自分たちが本気の時よりは劣る
冷静さに長けるセリオがここで前に出ることになる
確かに尋常ではない速さと不規則な動き、追っ手のいくつかでは
歯が立つわけありませんね・・・・・・
セリオが考えるが、追っ手倒したのマルチです
もう一方
「・・・・・・・・どう?まだやる気?」
綾香が風になびく髪に指を梳き通して微笑いかける
完全無欠、立ってよし、寝てよし、離れて隙無し、組んで充分
オールレンジで対応でき、どのような場合にも負けない
特に強いのが足技というだけで決して、他の技が劣るわけではない
なぜこの娘がエクストリームで常にTOPに立てるのか
別に裏で金を積んでるわけではない、実力なのだ
それをマルチが知ったのは成す術無く地面にひれ伏した自分に気付いた時だ
「白娘の時の比じゃないな・・・・・・・・・・」
じわりと脂汗のようなものが滲む
マルチが凍り付いた笑顔で前を見ると、どうやら最も得意とするらしい間合いで
綾香がノーガードで挑発している、乗ったら多分、今度こそ負ける
うかつに立ち上がる事もできない、パワーなら絶対に負けていない
そう、ガードされてもそのまま吹っ飛ばせるくらいの力は充分ある
だが、それも当たらなければ意味が無い
綾香に触れる事すら出来ないでいる、かわされて確実なカウンター
しかけなければ波状攻撃、前にでても後ろに下がってもダメージが出来るのは
自分だけ、相手は疲れもしない
「この、バケモノ・・・・・・・」
「言われたくないなー・・・・・・・・女の子なんだし♪」
おまけにかわいいと、きやがった(怒
かわいさ余って憎さが百倍、しかし勝てない
白娘の時とちがう、その差は絶対に埋まらないと誰かが言う
恐怖は不思議と感じない、しかし身体が頭がどこかで、ナニかを諦めようとしている
ダメだ・・・・まだ、手が無いわけじゃない・・・・
「・・・・・・・ごめんね、悪いのはあなたじゃないのにね」
「?」
優しい声がそう告げるとマルチの側へ綾香がやってきた
そっと手をとると手枷のようなモノを取り出して、後ろ手に拘束される
顔は見えないが、とても優しい顔をしているんじゃないかとマルチは感じた
不思議と安心・・・・そして、悲哀?そんな印象がある
心の中に、ぽぉっと温かいモノが芽生えるような気持ちになる
でも
「謝る事はないです・・・・・・・・・こっちがむしろって思うし」
「!?」
マルチは呟くと全ての感情を振り払い冷徹に、ある必殺兵器に手を染める
敏感に感じ取ったのか綾香が立ち上がる、しかし、マルチが
それを阻止するように足で絡みつく、カニばさみという奴だ
そして、うつぶせだった身体を仰向けにむき直し
一言呟く
「ごめん、権助」
きぃっ
「!?・・・・・あ、綾香お嬢様っ!!!!」
セリオがそれに感づいた、権助の波状攻撃(スカートに集中)を
巧みにかわしていたが異変に動作を止める
そこを権助が逃すわけがない
「ベージュか白かァァァァァァっ!」
権助の手が何百にも分身しながらセリオのスカートに伸びる
葵がそれを止めに近づく、セリオがらしからぬ様子でうろたえる
「ダメっ!!!!葵様、下がってっ!!!!、あ、綾香お嬢様っ!!!」
抱きっっっ!!!権助が、セリオに到達
太股に頬ずりっ、おぞましい感覚に襲われたが、千載一遇のチャンスを
ここに見つけるセリオ、むんずと権助をつかむと
パンツにかかった手をはたき落として、持ち上げる
マルチサイド
「自爆!?・・・・・違うっ・・・・でも、やばい感じ」
綾香が足を強引にほどいて、バックステップで距離を作る
マルチを中心にして何かが広がる
ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり・・・・・・・・・・・
風圧とは違う、しかし何かがまわりに広がっていく
肌を貫くように、小さな細かい粒子のような物が
ちりちりと身体を突き抜けていく、細かく分散したそれが
脳に直接言葉として響く、はちきれんばかりの何かの
流れが怒濤のごとく押し寄せて、頭をぎしぎしと揺さぶる
それはあたかも電波のごとく・・・
「や・・・・・ああっ・・・・こ、これ・・・・毒電波!?・・・・葵!!下がりなさいっ!!!」
綾香が必死に下がる、電波兵器の有効射程範囲がどの程度が
わからないが、ともかく範囲内にいると自我崩壊を招きかねない
葵に注意を促しつつ、ひたすら後退
ずどどどどどどどどどっっっ
音として響いたわけではない、感覚として脳味噌がそうやって揺さぶられる
呆気にとられて退避に遅れた葵が、膨大な量の電波に飲み込まれる
「ぃ・・・・・・・ぃぃぃぃぃっぃやややややややああああああああああああっっっっっっ!!!!」
「あ、葵様っ!!!!このっ」
セリオが一瞬遅れてつかみあげた権助をマルチに投げつける
それが遮断しているのか、毒電波が弱る
しかし崩壊こそしないものの、全身をがくがくと震わせて、崩れ落ちる葵
既に正気は無い、綾香は辛うじて回避できたのか
はぁはぁと息を切らせながら、ギリギリの所まで逃げついたようだ
セリオがすぐさまマルチにけしかかる
「・・・・・。」
「せ、セリオっ!!!!、捕獲が最優先!!!」
綾香がそう叫ぶが聞こえた風も無く、本気になったセリオがマルチに向かう
感情が高まる・・・・・おそらく、セリオにとってその場合は、冷静さに冷酷さが
付加されるのではないのだろうか、氷のように冷たい瞳が
マルチの心臓部を射抜く
「・・・・・・。」
右腕に力をこめる、爪先にまで力を入れて、サーベルのように鋭く
そして、ランスのように力強い武器をしたてる
マルチもそれに気付き反撃の体勢を整えに入る
このままいけば、セリオの方が先に決まる
マルチの脇には、電波を煽った権助が静かに横たわる、花畑の夢を見ている
つづく・・・・・・かもしれない