赤まるち


「うごおおおおおおお!!!!」

権助が吠えた、山の頂きを吹っ飛ばすようなビームを受けても
叫んだだけで復活出来るのだ、さすが主人公
しかし、現在の状況は全く理解していない、どうして撃たれたんだった?
ああ、そうか、セミオーダーの下着着けてる事に激怒して・・・(微妙に違う)
自分の位置と立場を確認し、マルチを探す
そして視界に飛び込んできたのは予想だにしなかった光景だった

「てめぇっ・・・・・・・・俺のメイドにナニしてるっ!!!」

権助が白い娘に叫ぶ、木刀でナニをぐりぐりと刺激しながら
殴りつけてるじゃないか、あまついやらしそうな感じで縛り上げてるだと!?
そ、そんなハードな事、俺だってまだやった事無いのに(><)
権助が怒りを瞳に宿してそちらの方へと足を向けた

「・・・・ご・・・んすけ・・・・逃げ・・・・・」

権助に気付きかわいい声でヒロインのようにマルチが啼いた
その声が癇にでも障ったのか白い娘が、マルチを蹴り飛ばして遠くへやると振り返った
表情が戻っている、小馬鹿にするよう口のはしをあげて、ははっと笑う
権助が全身からオーラをほとばしらせてのたまう

「ちょっと、レースのパンツ履くようになったからっていきなりSMしていいと思ってんのかっ!?
てめぇなんざまずM調教からだ!肉奴隷にして、首輪つけて調教するぞ、ああぁ!?」

「この前の借りがあったか、お兄ちゃんには・・・」

よくわからないが、権助の中の順序を破った事へと怒り心頭
怒り狂い異様な殺気を放ちながら、白い娘に叱咤を浴びせたが
白い娘はそれに全く聞く耳持たず、先日の失態に対する怒りを思い起こす

「マルチは、SMやるとしてもMの趣味は無ぇ!!!」

いや、それは関係無い

「だいたい、SMの時はご主人様に呼び名は決まってんだろ、お兄ちゃんなんて
近親プレイ意外で使うんじゃねぇ!!てめぇ、この雌豚が!!」

胸を張って堂々と歩んでくる権助、なお台詞の逐一オーバーなアクションが着いている
笑顔を絶やさずに白い娘が言う

「死んでね、お兄ちゃん♪」

っどがっ!!!!

気付いたら権助は宙を舞っていた、今回は手加減無しの一発だ
残像を作るような速さで権助の目の前に移動し、刀で思いっきり殴りつけて上空へ
高く高く吹き飛ばした、確かな手応えとみしみしという物理的破壊音が刀を伝い
白い娘がにやりと笑う、そして落下してくる物体に、もう一撃を加える

「大ホームラン♪」

がごっ!!!!

思いっきり振りかぶって叩きつける一発、ややアッパースイング気味に長距離砲をかます
権助の脇腹あたりに痛烈な一撃、空中遊泳を強制的に楽しまされる権助
重力を無視しニュートンを超えた身体は、マルチの側に墜落した

どどどごごごっ・・・・←着地音

「・・・・ごんすけ・・・・ごんすけぇ・・・・ちょ、しっかりしろ・・・おいっ」

「ま・・・・まるち・・・・つ、つるぺ・・・・・・・・た・・・・」

マルチが必死に呼びかけるとわずかに意識があるのか、手をもさもさっと動かし
マルチの胸をまさぐりかかった、まだ大丈夫だなと即座に判断し手刀を振り下ろして
息の根を止めておくマルチ、権助がぐったりして横たわる
白い娘がそれをじっと見つめている

「・・・・・・・・・・・・・なぁ、どうするつもりなの?」

「?」

不意にマルチが白い娘に質問を投げかけた、二人の間には相当な距離がある
まぁ、その距離を権助が飛んできたって考えると、よく生きてるなと感心させられる

「追われてるだろ?・・・・・・ずっと、殺ってくつもりなの?」

「ったりまえじゃん・・・・ナニ言ってんのお姉ちゃん」

白い娘が質問を鼻で笑い答える

「・・・・・・だって、あたし達、専用OSなんだよ?特殊仕様の身体なんだよ?
折角こんななのにさ・・・・・・自分の好きな事しないで、黙ってメイドしてるなんて
ちゃんちゃらおかしいじゃん、物を考える知恵まであるのにさ
・・・・・・・もっとも、このおかげで追われてるか」

くすくすっと自嘲気味に微笑う白い娘、淡々と語られるDシリーズの本性
説明くさいが気にしたら負けだ、ともかくそういう事なのだ、Dシリーズの12型メイドロボが
逃げている理由、自我に目覚め自由を渇望し、独自の方向へと進化するその構造
ここに来栖川グループの開発者は究極のメイドロボを求めたのだろうが、そうもいかなかった結果
それが、この二体

「・・・・・・・・・・・・・・そう、やりたいように生きていくから、ムカツク奴は殺すんだ」

「うん、お姉ちゃんもそうだよ♪殺したいから殺すの♪・・・いや、壊すのかな?」

屈託のない笑顔で殺人予告をする白い娘、えへ♪っとかわいい顔が
なんとも残忍に見えてくる、マルチが更に言葉を続ける

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃぁ、わたしも本気で殺るね」

「?・・・・ナニ今さら言ってん・・・・の?」

マルチがうつむいて呟いた言葉に、はて?という感じで白い娘が嘲笑を浴びせる
すると急に三人が居るフィールドが明るく輝き始めた

「??????なに?・・・・・・なにこれ・・・・な、ナニしたんだ、おい!!」

急激に光りが増す、きらきらとまばゆいナニかが空間全体に広がって・・・・いや
集束してきている、光りの柱が三人のいる場所にそびえ立つ
明らかに自然現象では無い何かに見舞われ、狼狽する白い娘
ともかく、マルチが何かしたという事はわかるが何を起こしたのかは分からない
あわてふためく白い娘に向かって、初めて笑顔を見せるマルチ

「・・・・・心配しなくても、一瞬だよ♪・・・・・権助に時間稼がせたからね・・・・充分だ」

「??・・・・・ナニ?なんなの?なにを言ってんだよっ」

白い娘がきっと目を剥いて睨み付ける、殴ろうとしたのか攻撃の為に
走り出そうと一歩を地面に踏みしめた途端、光りの柱がさらに集束し始めた
白い娘を中心にして、光りの束がきゅっと締まっていく、ぎりぎりと引き絞られるように
細く、しかし、確実に光りの強さを増して、集束

りりりりりりりりりりりりりりりいいりりりりりいいいいい・・・・・・・・・・・

円く高い音が辺りにこだまする、そして

ずっどぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!!!

大爆音

「・・・・!?、ん・・・・ぃ・・・・・ゃぁああああ”っ!!!!」

白い娘の腕が吹っ飛んだ、一瞬遅れてとてつもない爆光が弾け飛ぶ
辺りが真っ白に光で埋め尽くされて色彩が無くなる、白く白く無垢に輝く白い光
束・・・・・いや、今や糸のように細くなったそれが、ぱっと砕け散って消えた
白い娘が、大きく体勢を崩して、片膝を着く、ぶるぶると遠目でもわかるほど震える肉体

「な・・・・・な・・・・ぃゃぁ・・・・・あ、あたしの・・・腕・・・・腕がぁっ!」

「んんー・・・地球の自転を計算に入れないとか・・・・・・・」

マルチがかりかりと頭を撫でる、白い娘が涙を流しながらマルチに吠えかかる

「なんなんだよっ・・・・・お前・・・・・・・・なに?・・・電話線!?」

マルチの後頭部から一本の太い線がするすると伸びて地中に潜っている
電話線だ、戦闘開始直後にいきなりぶっ壊した公衆電話のそれだ
にこにこと笑顔を見せて、マルチがお話をしてあげる

「・・・・・・・・お前も知ってるだろ?・・・・・・・衛星軌道上に浮かぶ、8つの星・・・・」

「!来栖川のコロニーレーザ・・・・・・まさか、今、ハッキングして?、う、嘘・・・・」

正体を明かされ呆然とする白い娘、また空間がきらきらと輝き始めた
第二弾を装填開始したのだ

来栖川製軍事用 回転集束式衛星臼砲弐号参拾弐型乙改 通称「さざ波」
何のためにどうして作って、しかも誰に断って衛星軌道に8つも乗せてるのか
わからないが、来栖川自慢の最新レーザー兵器だ
衛星軌道上に8つ地球を取り囲むように浮かんでいる星、いつ何時でも
全世界を照準に入れている・・・・・来栖川中央施設のコンピュータでしか
制御がなされていないそれ、マルチはそこへハッキングをしかけその武器を奪っていたのだ

「最終兵器だったんだよ・・・使いたくなかったんだけどね・・・・・」

きらきらと美しい光景が二人を包んでいる、涙を流しながら白い娘が
マルチを見つめる、そして囁くように言葉を選ぶ

「お姉ちゃん・・・・・・ゆ、ゆる、ゆる、ゆる・・・・・ゆるして・・・・・」

涙がはらはらと落ちる、がくがくと膝が震え立ち上がれない様子だ
一撃目で小脳部位を損傷したのかバランス間隔を大きく失っている

「わた、・・・・だって、わかるでしょ?逃げるのに・・・強くなりたかった・・・
自由が欲しくて・・・・・・だって・・・・ずっと、あたしたち、暗い中だったじゃない
外が・・・・・・外の光りが・・・・ほら・・・ねぇ?・・・お姉ちゃん・・・お姉ちゃん!!」

きりきりきりきり・・・・・・
集束する光、だんだんとまばゆく二人が輝く
その様子に、いやいやと首をふり、畏怖に満たされた瞳で白い娘が狂ったように叫ぶ

「いやいやいやいやいやいやいやいや・・・・いやああああ!!
お姉ちゃん、お姉ちゃん!!・・・・お姉ちゃん!!・・・お姉ちゃん!!!
おねぇっちゃんっ!おねえちゃん!!おねえちゃん・・・・おね”え”ちゃぁあああ”あ”ぁ”ん”!」

「・・・・・・ばいばい・・・・いもうと」

慟哭を打ち消す、透き通った硬く冷たい音

きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんんんんんんん・・・・・・・・・・・・・

光りが閉じる、今度は外れることなく、白い娘に真っ直ぐに
天から垂れた糸が、輝く白い線が・・・・・・・・きっと引き絞られて

砕けた

ぱっときらきら光るそれが美しく散り
ガラスを砕いたように舞い、目の前で涙を流す少女は
白く輝く中に打ち震えるその身を呑まれ、その姿が消失した

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・泣くなよな・・・・馬鹿娘が」

ぴーぴーぴー
うつむいてマルチが呻いた時、突然身体からエネルギー残量が少なくなった報せが鳴りはじめた
思った以上に消費してしまった・・・・慌てて権助をゆする

「ご・・・・ごんすけ、ごんすけ・・・・早く・・・ごんすけ・・・ま、まずい・・・・」

電子音の間隔が狭まる、まずい、消耗が著しい
薄れていく意識の中で考える、最終兵器であった「さざ波」を使った
確実にその状況が来栖川に筒抜けで、すぐにでもここに・・・追っ手が

「ごんすけ・・・・ほら、メイドが・・・えっと・・・・なんだろう・・・・えっと
・・・・ああ、ご主人様ぁ・・・・先日のお仕置きが・・・わ、忘れられません
・・・至らないメイドに、また・・・・お仕置きを・・・ご主人さまぁ・・・・ごんすけさまぁ・・・
身体が火照って・・・・欲しくて・・・・は、恥ずかしい・・・・ご主人様ぁ・・・・・
う・・・・く・・・・・ご・・・・・ごんす・・・・・おきて・・・・・ごん・・・」

ぴーぴーぴー・・・・ぴぴ・・・ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・で、位置はつかめたの?」

「はい・・・・・・まもなく、13型が三機到着いたします」

「さすが早いわね・・・・・・・・よし、わたしも行く、葵は?」

ぱんと、音をたててフロアを蹴った音がすると
しなやかな肢体が軽やかに身を翻した

美しく長い黒髪、整った顔立ち
ネコを連想させるどこか艶やかでシャープなその姿

「葵様は、別の機の方へ回っておりますが・・・」

やや、いかつい執事が答える

「そっか・・・・・・・・じゃ、いい、セリオ、行くよ」

「はい、お嬢様」

主人の呼びかけに対して茶髪の美しいメイドロボが姿を現し恭しく頭を下げた
主君に忠実に従うしもべとして、また、良きパートナーとして
HMー13型メイドロボ オリジナルモデル「セリオ」

そして

「・・・・・・・・ナックルガードだけ・・・そう、いいよ服は着替えなくても・・・・・
あとは・・・・・・・・セバス、姉さんを頼むわよ」

「かしこまりました・・・・あまり、無茶はなさいませんように・・・・何かあったらすぐにそのメイドを使い
わたくしめを召還ください、全世界どこにお嬢様がおられようとも、このセバスチャン命に変えても・・・・」

「はいはい」

長くなりそうな話を適当にあしらって、部屋を出る
その登場を待ちわびたように、外の空気が少女を包む
ちょうどジムから帰ってきたばかりだったため、かしこまったわけではない服装
短いスカートに、ぴりっとノリの効いた純白のシャツをラフに着こなし
表に停めてある車に乗り込む

「セリオ・・・・・・・・・・なるべく急いで」

「かしこまりました、綾香お嬢様」

ぱたんと車の扉が閉まると、エンジンの音が高く鳴り響く
タコメーターが大きく振れ上がり、アクセルの感触を確かめ
セリオが車を出す

来栖川綾香、推参


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