赤まるち


「・・・・・・っっっ!!!・・・・っっっ!!!!」

「マルチ・・・・・・・・」

どんがらがっしゃーん

悔しさに打ち震える少女の姿が権助の部屋の中央にあった
言葉はまだ出てこない、幸い奴はあの後追ってこられなかったらしく
二人とも無事だ、権助の脇腹の傷も思ったよりは深くなく、軽い手当をして
やりすごせる範囲だ、しかしマルチは・・・・・・・

上半身へのダメージは首を除いてはさほどでないらしく、ちょっとくだらない事を言えば
拳を猛然と振るえるようだ、問題は下半身のダメージ、両足が膝のジョイント部分を
完全に破壊されて無惨にも立つことが出来ない、痛覚があったならば
その痛みは想像を絶する事だろう・・・・・
悔しさに耐えるためなのか、単に憂さ晴らしなのかわからないが
権助の持ち物がいいように破壊されていく・・・・・メイド、後かたづけはしろよ?

「夕飯の材料とか全部どっかいっちゃったしな・・・・・非常食でも喰うか」

権助が仕方無しに床下に眠らせてあったカップラーメンをいくつか出してきて
お湯をわかしはじめた、マルチにはハイオクをグラスに入れて机の上に置いてやる
もさもさもさっと、身体をひきずるようにやってきてそれを呑むマルチ
さっきまで暴れていたのが嘘のように静かに食事をとっている
喋られないマルチ・・・・・静寂の食卓がこんなに暗いモノだったなんて・・・・
権助が寂しさを覚える、仕方無いなんかお話をしてやらないと・・・・

「マルチ・・・・・・治ったら制服プレイしような?ほら、おれが先輩でお前後輩って
設定で・・・体育館の裏で告白に来た後輩がだな・・・・」

数分後笑顔で話続けていた権助が血だるまになって床に伏した
マルチははじっこの方でふて寝するように倒れてまだ夕焼けがきれいな空を
バックに二人就寝となった

翌朝

「・・・・・・・・三本は無理?大丈夫入れる所は一つじゃ・・・・・な・・・・・・・・ん?夢か?」

寝言とともに権助が意識を取り戻す、部屋の隅で小さくなってる子猫のようなマルチ
起きる様子が無いのでそのままにしておき大学へと行くことにした、そう、権助は大学生なのだ

権助は理系の学生だ、そのため研究室というものに所属しそこで研究を行っている
なんの研究をしているのかは謎だが、あまり学校に来ていないので大した事は
していないのだろう、久しぶりの学舎をみとめ、ゆっくりと小道を抜ける

「・・・・・・あ、権ちゃん」

「??・・・・あー、ねこやん」

ふと、文学部の友人と出会った、名前を杉本金之介、権助と並ぶほどの
時代錯誤甚だしい名を受け継ぐものだ、ちなみになぜ「金之介」に「ねこ」という
あだ名がつくのかわかった人に拍手(ぉぃ

「珍しい・・・・・・・実験?」

「いいや、ちょっと顔出しにきただけだよ・・・・・・・・・・?」

と、友人の問いかけに軽く答えを与えた時、その後方に見慣れない姿を認める
長い黒髪を携えた美しい顔の作りの女・・・・・・13型のメイドロボ

「あー・・・とうとう僕も買ったんだよ(^^)」

権助の視線に気付いたのか、少々照れた調子に
素敵な笑顔でねこやんが疑問に答える、そして、ゆっくりと紹介するような仕草をすると
うやうやしくメイドが頭を下げる、なんと美しい黒髪だろう・・・・権助の食指が静かに蠢く
マルチとはやはり違う、独特の大人の艶やかさ・・・・たまらん、あの胸元が(><)
は、挟まりた・・・

「権ちゃんやめて・・・」

「な、何もいってねぇだろ」

素早く妄想に待ったをかける友人、さすが付き合いも長いせいか手に取るように行動が
読めるらしい、それをやんわり牽制しつつ、紹介される

「名前をラネーフスカヤ、来栖川の最新式のメイドロボなんだ」

「初めまして」

やや冷たい感じの視線を権助に向けて挨拶をする、なるほど確かにメイドロボという感じだ
前々から感じていた、12型と13型との違和感がここに集結しているなと感じる、どっちが好いと
言われると非常に判断が難しい所だと権助は考える、無反応ながらその艶めかしい身体は
正直、騒がしいロリータ型のそれよりも遙かに上だと・・・・・それはさておき、話を繋ぐ

「・・・・・・名字なのか?」

「細かい事気にしないで・・・・」

弱気な好青年ねこ、なんとなくそのいかにもなロシア風の名前につっこみを入れる権助に
懇願するような視線を投げかけ、話題を変更、とりあえず学部まで一緒に歩く事になった
三歩下がった所で影を踏まないように、13型・・・いや、ラネーフスカヤが歩いている
うーん、妙な所で行き届いたメイドだな

「黒髪はねこやんの趣味かい?」

「うん、デフォルトだと茶髪なんだけど・・・・清楚な感じの方が好いと思ったし、レッツ白髪染めですぐだったよ」

さらっと爽やかな笑顔で学友が答える、なるほど、メイドロボシリーズはとりあえず
簡単に髪の色を変更する事が出来るのか・・・マルチが言うことを聞くようになったら
一度、栗毛とかにして、オグリキャップと改名してやりたいなどと思う権助
三人がやがてキャンパスへと足を踏み入れる、風がさらさらと三人を包み一つ次の世界へと
踏み込んだ事を歓迎するような粋な演出を見せる

「まだ、ちょっと時間あるか・・・・・・・ねこやん今から・・・・」

「ん?特に用事があるわけじゃないし、いいよ付き合う、何?」

朋友がかくもありがたい答えを権助に向ける、人の良さそうな笑顔が素敵すぎる友人
きっとこの笑顔のせいで要らぬ迷惑をかけられ続けているのだろうと想像出来る
三人で、小高くなった芝生の上に腰を降ろした、日差しがまぶしく心地よい

「三日前まで冬だったけど気付いたら初夏のようだね」

「ねこやん、それは言いっこなしだよ・・・・・」

すまぬ(謎)

「しかし、なんで大学にメイドなんて連れてきてんだ?」

権助が当たり前の質問をねこやんに投げかける、ふむっと頷くような仕草の後に
そっとラネーフスカヤの髪を撫でてねこやんが、目を細めて答える

「メイドっていうよりも、僕の中ではパートナーなんだ・・・・・」

「パートナー?」

不思議に感じた単語を呟く権助、ねこやんが優しくラネーフスカヤを撫でつつ
話を進める・・・・・・見せつけてるのか?(怒

「メイドっていうよりも、僕はメイドロボに優しさとかもっと、仲間である事を求めてるんだ
確かに優秀なメイドであって、生活にとても貢献してくれる、人間にとって彼女達は本当に
至宝だよ、買ってから暫くはそう思ってた、帰宅すると暖かいご飯が待ってる、お風呂も湧いてる
掃除だって行き届いてる、不平不満は言わない・・・・・・」

全部がかなえられていないメイドを持つ主人が真摯にその言葉に耳を傾ける

「・・・・だけど、彼女達がそれだけをするのだったら、こんな女の子の格好をしている必要は無い
掃除機と炊飯器と風呂釜が合体した物体でも構わないじゃないか・・・・・・・・・
彼女達がこの格好をしてるのには、僕らに近づいている、近しい者として存在しようと思えてくるんだ
もちろん、色々と狙った所とかもあってこの格好なのはわかってる、でも・・・・もっと
ココロが通い合って、お互いを慈しみあえるなら、それは・・・・・すごく素敵な事じゃないかなって」

最後の方はやや照れた調子でまぶしい笑顔をフラッシュ
途中色々とつっこみたい所もあったが、それを帳消しにするほどの感動を覚える権助
なるほど、そうか、そう考えていけば、もっと俺が慈しんでマルチの相手を
してやれば、その内そうやって返してくれて、あまつ、好きにしてくださいとか
夜になったら必ずとか、朝起きてもなんていうかとか!!!(意味不明)
開眼する権助が、がばっと立ち上がる、驚きにちょっと身をすくませる小動物のようなねこやん

「ど、どしたの?」

「い、いや・・・・ちょっと感動しちゃってさ・・・ありがとう、ねこやん、なんか吹っ切れたっていうか
道を標してもらった感じがするよ・・・・本当多謝だよ、ねこやん♪、そして
こんな主人を持って幸せだね、君は♪」

と、ラネーフスカヤに急接近する権助、素早くカットに入るねこやん
二人の友情が火花を散らす
ちっ、と、なぜか、権助が舌打ちをし、ぱたぱたと尻についたゴミを払う

「さて・・・・そろそろ行くよ、ありがとうねこやん」

「で、どこ行くの?」

ゆっくりとねこやんが立ち上がり、ラネーフスカヤの手をとり起こしてあげる
まるで恋人同士のような二人に軽い殺意を覚えるが、友情がそれをカバー
まぁ、隙を見計らってあんなことくらいはしてやろうと、密かに思う権助が
先の問いに答える

「ちょっと圃場にね・・・・・知り合いがトマトとか作ってんだ、野菜を仕入れにね」

「へー・・・・知り合いっていうと、雅史くん?」

「いや、違うよ」

とだけ言い、手をふりふり権助が立ち去る、それをそっと見送る二人の影が
一つに寄り添うようにして、その場から消えていった・・・・・・謎の多い人だ
権助はそのまま、研究室には向かわずに圃場へと移動する
途中牛小屋や馬小屋を横目に、畑が広がるそこへと足を踏み入れていく

「・・・・・・・・っと、どのハウスだったかな?」

権助が圃場にいくつも並ぶガラス板で組み立てられた建物をいくつも抜ける
探しているのは野菜を育てているハウス、そして、トマトの鉢がわざとらしく三つ並んでいる
ハウスを発見、あれだ・・・・・・周りに人がいないのを確認し、中を物色する
すごい、キュウリだろうとナスだろうとカボチャだろうとピーマンだろうと、季節を全く無視して
しかもハウスで育てないような作物まで育っている

「えーっと・・・・まぁ、なんでもいいか、しかしバレイショまであるじゃないか(^^;」

ハウスなのか畑なのかわからないが、ともかく中の作物をちょっとずつ拝借する
都合してきた麻袋を取り出し中に詰め込む、基本的に硬くて重い作物は下に
上の方に柔らかい物を・・・・鉄則だな(−−)
この野菜で色々とマルチにごちそうしてやろう・・・・元気が無い時は
やっぱ喰うに限るし、あれでなかなか舌も確かなようだし・・・・

せっせと畑を荒らす権助、やがて麻袋が頃合いになり脱出しようと立ち上がる

「??・・・・・・あれは・・・・・」

目の前にスイカが現れた、この季節にスイカ?三日前まで冬だったのに?(だからぁ・・・)
ちょっと近づいて、こづいてみると、すこーんと好い音が響く、こいつは上物だ・・・・
持っていかない手は無いと胸元から剪定用のはさみを取り出し収穫する、うむ
かなり重いがマルチ背負ってる俺にとってこんなもの・・・・・

「??・・・・・・あれ?、権助か?」

ふいに後ろから声をかけれる、瞬間的に声の主を判断した権助が
振り向きざまに剪定はさみを振りかざす

ざしっ!!!

「のわっ!!!・・・・て、てめぇ!!さては、また盗りにきやが・・・・・」

「ほあたぁっ!!」

「はふん!!!」

間髪入れずに台詞途中のその男の秘孔を権助が正確に突いた
謎の叫び声と共に男が倒れる、それに一瞥をくれると
ゴキブリよりも素早くその場を退散する、無論獲物は忘れていない
でっかい麻袋とスイカを持ち野党の如く去っていった

長屋へと帰宅

「うおーい、マルチぃ!!元気してるか?スイカだぞぉ♪」

権助が元気よく扉を開け放ちなるべく明るい雰囲気でマルチに向かって声をかける
学校でねこやんに言われた事を思い出す、そう、慈しむココロによる通いあい、そして愛に溢れた行為(言ってない)
優しさに溢れる笑顔と下心に溺れたココロを携えて権助が扉を閉める
返事が無いので、靴を脱ぎ捨ててどかどかと部屋の方へと足を進め、敷居をまたぐ

ずびむっ!!!!

ばがっ!!!ぷしゃー!!

真っ赤な液体が激しく飛沫を上げた、手に持っていたスイカがまさしく砕け散ったのだ
返り血ならぬ返り汁を浴びる笑顔、一瞬の間の後、ゆっくりと左の方へと視線を移すと
マルチが片目をつぶってじっと権助を見ている、そして呟く

「ちっ・・・・・・照準がずれてる」

優しさ・・・・・

「な、何をしとんじゃ、貴様ぁ!!!!!」

慈しみ・・・・・

「いやぁ、やっと目のライトが治ったのはいいんだけど、まぶた開くとビームが・・・・・」

「て、てめぇはXメンにでもなるつもりか?・・・・だいたい、照準ずれてるってお前・・・」

「はわ!?ま、マルチがそんな、ご主人様の頭ぶち抜こうなんて微塵も思ってませんんん、ふええええ!」

と言いながらまた右目を開く、ずびむっ!!!!
権助が慌ててかわす、外れたビームが窓から外へとこぼれ、山の頂を吹っ飛ばした
破壊力があがってるじゃねぇか(−−;;

「この馬鹿メイドが、てめぇいい加減に・・・・・・」

「ご主人様ぁ・・・・・・馬鹿メイドは酷いですぅ、一生懸命やってるんです、そんな言い方・・・・」

マルチがメイド口調で立ち上がり笑顔を見せる
そこで権助は気付いた、マルチの身体が回復しているのだと
そして権助は悟った、これからの自分の運命を

だから権助は笑った、この世で最も愛しいメイドに向かって

「ご主人様♪今夜は、大サービスです♪」

ブラッディフェスティバル(注:血祭り)


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