赤まるち
商店街にやってきた、昼時にはまだ早いせいか、人影はぱらぱらとしか無いが
食材その他は、かなりの数が揃っている、それにこの時間は実は安かったりするので
買い時でもある、もさもさっと、色々と長持ちしそうな野菜や総菜を見て回る
当然、横にマルチがついているのだが、メイドのくせに荷物も持ってくれない
「マルチ・・・・・・メイドなんだよな」
「ああ、メイドだよ、お手伝いさんって感じだな」
屈託の無い笑顔で即答するマルチ、その悠然と解き放たれた台詞に
クラっとしつつ、周りを観察する権助、その目には、マルチと同型あるいは
前回の13型と同型のメイドロボが買い出しに出てきている・・・そう、一人でだ
もちろん、買い物かごは自分達で持っている・・・・おかしぃ・・・・なぜなんだ・・・
「権助ー、カレー買おう、カレー」
権助の思惑など気にすることも無く、いったい誰のメイドなのかわからない少女が
次々とレトルト食品を拾ってくる、栄養価の低下が目に見えてわかる内容だ
まぁ、一人暮らしの大学生だから、そんなヤバイ状況なんてザラなので
さして気にもとめずに、ハヤシライスルーをかごに放り込む
「・・・・・・・権助ー、カレーは?」
「そんなもん人の喰うもんじゃねぇ、ハヤシでいいんだよ、ハヤシで」
カレーの中のターメリックの匂いがどうしても好きになれない男、権助
カレー嫌いなどという特殊な人種の為、それはそれは幼少の頃に苦労を
したらしいのだが、あまり過去を話したがらないのでその真相はわからない
「嫌いなの?」
「食いもんじゃねぇな」
ずばっと答えてレジの方へと向かう、うーんと頭をひねった後
マルチが、カレールーを持ってきてかごに放り込む
「あ!」
「あたしが作ってやるよ喰える奴♪、カレーって本当は美味いんだろ?」
「余計な事するな、このバ・・・・・」
「ご主人様♪、好き嫌いはいけませんわ♪ほほほ♪」
右手の甲を口元に当ててお上品に笑うマルチさんが、他人から見えない角度で
左腕を抜いて銃口を権助に突きつける
「じ・・・じゃぁ、頼んじゃおうかなぁ♪、マルチぃ♪」
「はい♪ご主人様♪マルチ、がんばりますね」
愛くるしい笑顔が憎たらしい
さくさくと二人、レジを通り抜けて外へと出る
そろそろ昼になるだろうと言う事で、どこかで飯を喰うようにうろつくことにした
「あたし、にしんそばが食べたいなー」
「にしんそば!?・・・って、お前、物喰えるのかよ?」
「それがさー・・・・この前の戦いの後、だいぶ進化というか成長したからな、うん、物食べてみたいの
ガソリンもいいんだけど、やっぱ、固形燃料が欲しいよね♪」
いや、にしんって固形燃料じゃないし・・・・
と、二人で驚きの会話を繰り広げていたら、ちょうど反対方向から、危なっかしく
ふらふらとした足取りで、ビール瓶を二本持った、マルチと同型のメイドロボがやってきた
なんつーか、いかにも頼りなさそうという・・・うーん、健気さがたまらんわい
「はわわ・・・ご、ごめんなさいぃ・・・ど、どいてください・・・・わわわ!」
「あ、危ねっ!」
足下がおぼつかないとか思ってたら、足をつまづけて権助の懐に飛び込む形となった
ぼふっとそのメイドロボを捕まえる・・・・・ちぃ、マルチと同じくらい胸が無・・・・・・
「ご主人様ぁ♪大丈夫ですかぁ?」
背後からマルチがメイド口調で権助に笑顔を向けた、いや、笑顔だけじゃない
なんか知らないが右手が左手首を握ってる・・・・・いかん、殺られる(ーー;;
慌てて倒れてきたメイドロボを自分から離す、へろへろーっと、直立状態になると
あわわって顔をして、思いっきり頭を下げた
「ふえええ、ご、ご、ごめんなさいいいい」
しおらしく、心底申し訳なさそうな眉毛の寄せ方をする少女に、感動を覚える権助
なんだこの差は・・・・・マルチが、同じ状況だったら倒れる拍子に受け止めようとした
俺を持ってたビール瓶で殴打決定だろう・・・普通のメイドロボの優秀さ(?)に改めて感服している
その様子を面白くなさそうに、やや離れた位置から見つめるマルチ
「メイドロボのくせに、ビール瓶ごときも持てないのかよ・・・・」
「ふえぇ・・・あ、あたしも一生懸命やってるんですが・・・はうぅ」
いや、あんた持てるのに持ってくれないし・・・
権助がココロの中でつっこみを入れつつ、倒れてきたメイドロボの頭を撫でてやる
「いや、別に怪我とかあったわけじゃないし、いいよ・・・・今度は気をつけな」
「は、はい、ありがとうございます」
へこりと頭を下げて、また、重たそうにビール瓶に手をかける
よたたた・・・と、ふらつきながら力をこめて、ぐいっとそれを引き抜くように
振り上げる・・・・・・・・・・・振り上げる?
「はわわわわ」
権助が疑問を抱いた刹那、ビール瓶の振り子がぐいーんとそのメイドロボの後ろ側へと
ベクトル移動、勢い余ってそのまま倒壊した、なんてどん臭いんだ・・・・あまりの
おっちょこちょいのすっとこどっこいさに、懐かしさにも似た感情を覚えてしまう
か、かわいい・・・・・・
ココロのどこかで権助がそう呟く、がしゃーんという音とともにビール瓶が
粉々に割れて、ロボットのくせに顔面蒼白になるメイドロボ
「はわ・・・・・お、おつかいが・・・・・・」
「お前は幼児か(−−;」
ほへーっとため息まじりにマルチがメイドロボに手をかして起こしてやった
しかし、それ以上にビール瓶を割ってしまったのが痛手だったのか
目の焦点があってない・・・・狼狽するロボットって珍しいな
マルチがよしよしと頭を撫でる、すると、えぐえぐと泣いていた同型のロボットは
癒されたらしく、ゆっくりと瞳を通常のそれに戻し、涙の残る笑顔で
二人に会釈をしてまた、酒屋の方へと走っていった
「・・・・・・・・・・・・・・」
「?・・・・・んだよ、昼食べに行くんだろ?」
「あ、ああ・・・・・・・・・いや、優しいんだなって思って・・・」
さきの一連の動作がとてもじゃないが、いつも激しく暴行を働くマルチと影が
重ならないので当惑する権助、かりかりと頭をかいてマルチが指をさして答える
「メイドなの!・・・・・お前、メイドつったらデフォルトで、女の子には優しいだろうが」
「いや、だったら主人にも優しく・・・・・」
と、その後「ご主人様ぁ・・・そんなにマルチが怖いですか?」と、うるうる目で
胸ぐら掴まれて慌てた権助が「そ、そ、そんな事ないっすよ、マルチさんはサイコなメイドっす!」
と、台詞一文字間違えたため、本気で殺されそうになったようだ
やれやれとマルチが半分死体となっている権助を叩き起こして
よたよたしながら二人で商店街を抜けた所にあるそば屋に入り、にしんそばをすすった
からからからから
「くはー、にしんそばって美味いんだな♪、気に入っちゃった♪」
「・・・・・・メイドの台詞とも思えん」
二人そば屋の扉を開いて通りに出た
すると、目の前にメイドロボの死体がビール瓶を握りしめて横たわっている
当然の如くビール瓶は豪快に砕けている、思いっきり転んだ後なのだろう
「さっきの奴か?・・・・また、転んで・・・」
ため息混じりの台詞を呟き、やれやれと権助が起こしてやる為に側に膝つく
「!!!権助っ!!、離れろ!!!」
急にマルチが叫んだ
「んな!!!」
慌てて権助が離れる、眉間のあたりを割れたビール瓶がかすめていく、
額がすぱっと割れて鮮血が上がる、マルチが一気に臨戦態勢に入った
瞬く間に権助の脇に現れ、同型のメイドロボに制裁を加える
どごっ!!!
地面が大きく凹む、マルチ、パワーアップしすぎ、お前はラオウか
と、それはさておき倒れていたメイドロボは、振り下ろされた拳を嘲り笑うように
優雅にかわすとゆっくりと起きあがった・・・・顔を見ればさっきのメイドロボとは
雰囲気が全く違う、別の奴だ
「えへへ♪・・・・・・・勘はいいんだ♪驚いちゃった」
屈託の無い笑顔を覗かせて照れ笑いをしながら血のついたビール瓶を
こんこんと肩に当てている
「お前・・・・・・・・・・・・・・」
「やだなぁ・・・・・・・・同じタイプだよ・・・・・あたしの番号はD3965、この意味わかる?」
にこにこと笑顔を絶やさないメイドロボ、ぴたっと動かしていたビール瓶を止めて
右手を頭の後ろへと持っていきナニかを押すような仕草を見せた
すると緑色だった髪の色が真っ白に変わる・・・色素がするすると透けるように美しい白髪に変化
瞳の色も色彩を失いともかく白くなった
「殺しにきたよ・・・・・・・・・・お姉ちゃん」
・・・・・・13型の時と同じヒキじゃないか・・・・(−−;