赤まるち


「逃げてる?」

すっとんきょうな声で、権助が吠える
邪魔くさそうに、ガソリンをすすりながら、曖昧に首を振っているマルチ
現在、9時。前日に初めての交わり♪をした二人、その行為が深夜にまで及んだ割りに早めの
起床だとは思うのだが、食卓をはさんで飯を食う権助を前にして
マルチが事のあらましを話している

「・・・・・・・・・・・・だから、追われてるんだよ、わかるだろ?よくあるじゃん」

「ねえよ、んな話」

朝飯はちなみに権助が作った、メイドだからなんか作ってくれるかな?って
期待して一応マルチに頼んでみたが、突然満面の笑顔を浮かべて
「ご主人様ぁ・・・マルチが失敗しても怒らないでくださいねぇぇ、はわわ」
などと、いきなりガソリンを鍋にくべてコンロの火にかけようとしやがったので辞退して頂いた
教えればやってくれそうだが、教えるのが面倒・・・っていうか危険だ
包丁で刺されそうだし

朝食を済ませて、改めてマルチの話をじっくり聞こうと腰をおちつける
やれやれと頭をかいて、いかにも面倒なように、マルチが
気怠そうな視線を投げる

「ナニ?なんか文句あるのか?」

「いや、でなくて説明・・・・」

「だからー、来栖川の研究室から逃げてるのー、追われてるの、だから
追っ手を殺らないといけないのー」

「そんな、投げやりに過激な事言うなよお前」

「だって、そうなんだから仕方ないだろー?・・・もういいだろ?」

マルチが結局ほとんど説明しないまま次の話題へと移ろうとする
納得いかない権助だが、ここまで回復したマルチに口答えする勇気はない
しかし、その前に、まだ聞きたい事が・・・・・

「まて、それはそれとして、身体は回復したのか?」

「ん?・・・・・・ああ、もう大丈夫だよ」

さらっと何事もなかったように答えるマルチ、やっぱり男のセーエキを吸い取って
それを養分にして復活するんだな、ほら、よくAVとかでもありがち・・・・
ってことはこれから俺ってばエサっすか!?うご!う、うれしいような、そうでもないような・・・
痛いしなぁ・・・・・あ、でも、そのウチだんだんと気持ちよくなっ・・・・・

「いっとくけど、昨日お前とした事、関係無いからな」

「な、なにぃ!?」

そんな驚くような事でもないような気がするが、派手に驚く権助
妄想途中で一気に現実に引き戻されて狼狽の度合いも尋常ではない
こいつ頭悪いなーとか言いたげな表情でマルチが説明をする

「あたしの身体って基本的にナノマシンが巣喰ってるから勝手に作り替えてくれるんだよ
増殖もお手の物だし・・・・やられる度に新しく作り替えて、どんどん便利になる」

便利になる?
一瞬考えて、「強くなる」と権助の辞書が変換した、いわゆる満月を見ると猿に変身するあの人たちと同じなのか
昨日とはナニも変わっていないように見えるその胸の無い身体は、きっと、超合金とか特殊な技法(?)が
施されて復活してるに違いない、改めて恐怖を胸に秘める権助、逆らえません・・・・
復活した左腕をこれ見よがしに見せつけるマルチ

「・・・・・・・・じゃぁ、なんで昨日の夜・・・」

「しようって約束しただろ・・・・・約束くらい守るよ、メイドロボだもん、ご主人様の言う事聞かないような
メイドがどこにいるさ?」

ケロっとそんな事を言われて、なるほどと一瞬思ったものの果たしてこの娘さんが
自分の言う事を聞いていただろうか・・・・・・・、いや、考えてみるとこっちからお願いした
覚えがないから仕方ないのか、一人物思う権助、ここで提案

「じゃ、じゃぁ頼んだらやってくれるって事か?」

「そりゃメイドだし・・・・・なんでございますかご主人様♪」

メイド口調になるマルチ、この口調の時のマルチに好い思い出が無いような
気がしない事もないが、とりあえず勇気を振り絞って聞いてみる

「ま、またしたいって言ったら・・・・・・・・」

「死体でございますか♪」

メイド口調の時のマルチは本気だ、ベタな答えだが冗談じゃないから洒落にならん
自分が川面に浮かぶ風景を想像し、前言を撤回する権助
朝食の片づけをする権助の後ろでマルチが自分の回復状況を確かめるように
目を閉じてスキャンディスクを行う、かちゃかちゃと食器の音が暫く鳴っていた

「なぁ、権助・・・・・・・・・・・・・」

「ん?」

整備が終わったのか、目をぱちっと開けて権助にマルチが話しかけた
少し険しい顔をしていたが、急に媚びるように(いや実際媚びているのだが)
くりくりと愛らしい瞳をきらきらさせて、子猫のようにすり寄る

「権助ってパソコン持ってんだよね♪」

「ああ・・・・・・ネットやって大学の勉強とかに使うくらいだけどな・・・・」

嫌な予感がうっすらどころか、がっちりよぎる権助が作り笑顔で答えると
その答えにマルチは大いに頷くと、にぱっと笑ってしおらしい声でお願いをする

「あの、ご主人様ぁ・・・・・マルチにソフトを貸してくださいませ・・・・」

「ソフト?」

「そう、ソフト♪、ワードとかエクセルとかぁ、フォトショップとかなんでもいいからパソコンで動かすソフトをぉ♪・・・・」

「なんに使うんだ?」

権助が食器を洗い終わって手を軽く拭いて、マルチと向かい合う
もじっとした仕草でかわいこぶりながら、マルチが権助に答える

「ソフトインストールしておいて、次に備えたいし・・・・ほら、エクセルとかアクセスとかさ
計算ソフト入れておくと、弾道計算とか出来るじゃない?」

笑顔で侵略兵器となるマルチ

「あたしたちメイドロボって基本的に最初はなんも入ってないから、自分で色々ダウンロードしてきたり
ディスクからインストールしたりとかして自分を環境に馴染ませるんだよ・・・・・ただ、13型と12型で
ちょっと方式が違って、あたしたち12型っていちいちソフトインストールして自分で使い易いように一度
プログラムとか組み直すんだ、まぁ、その分色々応用とかも効くし都合が好いんだけどさ・・・・この前の
13型いただろ?ああやって、いきなりダウンロードしてきて使えるのと対峙した時、手持ちが少ないと
苦労するんだよぅ・・・・・・・・・・・・って、お前、人の話聞いてないな?」

「い、や・・・・な、ナニ言ってんすか、俺はいつだって君しか見てないよ♪」

わけわからん
それはさておき、不自然なくらい説明的な台詞を浴びせられ理解を迫られる権助
まぁ、要約すると「実践向けの知識を身につける」と言った所なんだろうか・・・・
仕方無しにパソコンの横にいくつか置いてある、CDを指さす・・・・

「ところでどうやってインストールするんだ?」

「ん?・・・・そうだな、USBでお前のドライブ使わせてもらうかな」

なんでUSBなんだろう・・・・・
よくわからないが、つっこんではいけないなとハードについてよく分からないのでこの話題は切られる
どこからともなくマルチが、ケーブルを伸ばして、すすっとマシンに繋いだ、権助のハイパワーなマシンを
起動させ、CDRのドライブにCDをケースから出し・・・・・・・・

「って、お前、製品版持ってないんかい!!!」

どげしっ

「あがっ!・・・だ、だって、ネットでいっぱい拾ってこれるし・・・いちいち買うほどでないし・・・・」(違法です)

金色や銀色、果てまた緑色のCDを大量に所持する権助、ネットでほとんどの物を用足ししてしまうので
製品版など持っていないのだ・・・まぁ、コピーだからって問題無いんだけどさ(ぉぃ
とりあえず著作権の痛みを知らせ、今度こそドライブに挿入・・・・・・

「って、エロゲーかい!!!!」

ばごっ

「ひぎぃっ!」

画面いっぱいに「絶望」という文字が浮かぶ
言わずと知れた鬼畜エロゲーのタイトルがでかでかと映し出され、呆れて物も言えないマルチ
とりあえず、権助に意識を失う前くらいまでの乱暴を働いてから
何十枚とあるエロゲーの中からようやく、オフィスのCDを見つけインストールを始めた
インストール中は動けないのか、そのまま停止してじーっと画面を見入ってるマルチ
進行状況を知らせるバーが徐々に進んでいる・・・・・・この間暇になる権助

「あのー・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・マルチさーん」

「・・・・・・・・・・・」

どうやら反応が無い、よくよく目を見てみるとガラス球には画面がそのまま
映し出されているだけで意識を失っているような感じだ

むにゅ

「・・・・・・・・・・・・」

「ほほぅ・・・・・・・( ̄ー ̄)」

謎の音でマルチのナニかを確かめる、相変わらず無反応なのでちょっと
調子に乗ってさらに、違うところをクリック&ドラッグ&コピー&ペースト(かなり謎)

ぷに

「むむ・・・・・そうか、ぷにって感じなのか・・・・」

ふにふに

「ほうほう」

くにくに

「・・・・・・・・・・・(謎)」

ふにょり・・・・・・にょにゅにゅにゅ

ぶはっ!!!(鼻血音)

ディスプレイの進行状況を伝えるバーが全て真っ黒に染まった、100%と告知されて
ようやくマルチに意識が戻ってくる、ぱちっという音をさせてから、ゆっくり頭を左右に振って
視界を安定させる・・・・・・・・・・おや?

「ナニしてんだ、権助・・・・」

「な、なんでもありません・・・・・・・・」

いったいナニをしていたのかわからないがぐったりとして満足そうな顔をしている権助
床がなぜか真っ赤に血に染まっているが、まぁ、そんな事もあるだろうと気にもとめずに
マルチが、んーと身体を伸ばす

「とりあえずオフィス入ってれば、なんとかなるし・・・・・・・権助、昼食べに出るんだろ?」

「んー・・・そうだな、晩飯の材料も無いし買い出しがてら・・・・」

というわけで、外出。普段だったらこんなに日が高い内から外に出るなんて事まずない権助に
とっては、非常に貴重な経験である、たっぷりとビタミンDを形成しつつ、マルチを連れて
商店街へと脚を向ける

「なぁ、お前の左腕ってサイコガンなのか?」

「違うよ、強力な電磁波をぶっぱなす最新兵器だよ、ほら、スプリガンに出てきた・・・・」

知りません(ぉぃ
かくして、主婦と主夫でにぎわう商店街へと二人が連れ添った


次へ〜

戻る〜