赤マルチ・・・その2
買い物に出るといっても、月が煌々と夜道を照らすような深夜
当然コンビニへと行くのだ
「・・・・・しかし、とんでもない田舎だな」
「畑がないだけ、まだマシだよう」
権助がやれやれとそう言い、マルチを先導する
「コンビニか・・・・・・・・・ま、いいか」
「何買うの?」
「髪染める液・・・・・・」
とだけ呟き、侵入早々洗顔用品などが置いてあるコーナーへと駈けるマルチ
折角なので、権助も立ち読みに本のコーナーへと移動
・・・・・・・・あ、巨乳グラビアもの♪
がうっ!!!!
手を出す前に鈍器で殴りつけられたような衝撃を受ける、権助
「うう・・・・・サムデーはどこかしらん・・・」
マルチがその様子を睨み付けつつ、渋々サムデーと赤の髪染めを買い
とりあえず帰宅する
「髪染めるって・・・・・どうして?」
「要らない事は聞かない方が長生きできる」
マルチはそうだけ呟き、さくさくと家路を急いだ
一度通った道は確実に覚えてしまうらしい・・・・優秀だなぁなどと感心する権助
マルチは部屋につくと、買ってきたモノをがさがさと取り出し
注意書きをじーっと眺めてから、風呂場へと移動した
「・・・・・・・一応、断って欲しいものだけどなぁ」
諦めた口調でそう呟き、普段なら覗きに行くところだが、命を張るほどでもなし
だいたい、さっき見たしとか思って、買ってきたサムデーに目を通す権助
・・・・・うーむ、グラビアねえちゃん・・・・
風呂場からは、もしゃもしゃーざぱぱーと、髪を洗っている音が聞こえる
染めるって、時間どれくらいなんだろう・・・だいたい、素人が髪赤く染めたり
出来るものなんだろうか、色々と思うが手伝うこともあるまいしと
権助はふて寝する事にした
「ふむ・・・・・意外ときれいに染まったかな・・・人の髪とちょっと違うしこれくらいか」
鑑に映った真っ赤な髪を揺らす童顔少女をじっと観察するマルチ
ふるふると頭を左右に動かすと、さらさらと細い髪が揺れる
「私って、かわいいなあ」
何言ってんだこの女
さておき、風呂場を出て、とりあえず裸にバスタオル一枚でふらりと部屋に戻る、
新しい服をと思い、寝ている権助をさしおいて、タンスを漁る
ごそごそごそごそ・・・・・・・
ふと、何かの物音でうつらうつらしていた、俺はゆっくりと目を覚ました
なんだ?・・・・タンスの方で音がする・・・・ど、泥棒か!?(錯乱)
まだちゃんと覚醒してない頭でそう考える
お、俺の、あのた、タンスには・・・・・・まずい!!あんなものや、そんなものが入ってるのに!!
み、見られたら・・・ひぃ!
いつも寝る時には欠かさず側に置いてある
木製バット(釘打ち付け済み血痕有り)を握りしめ気付かれないように立ち上がる
殺らねば・・・・・
ゆっくりと近づくと、赤い頭をした物体がもぞもぞとタンスを漁っている・・・無防備だ
小さな背中に幼い身体、ついでに召しているのはバスタオル一枚、今なら殺れる・・・・・
バスタオル一枚?
ふと、後ろから殺気のような物を感じる・・・なんだ?
タンスを漁るのをいったんやめて、ゆっくりと振り返る、すると
暗闇に光る目がこちらを睨んでいる・・・よくよく目をこらすと
手に凶器を持ってるじゃないか・・・・なんだ?
殺されたいのか?(素)
と、お互いが頭の中で思った事をぶつけた後、権助が男の悲しいベクトルに従って
音が立つよりもはやく行動に移った
「うををををを!!ハダカエプロヲン!!!(錯乱)」
「・・・・・・短い付き合いだったな・・・・」
醜悪な面構えで飛びかかるケダモノに、一瞥をくれると、ゆらりと身体を揺らして
マルチが権助の懐に飛び込む、半歩早いその動作から、カウンター気味にボディーブローが
肝臓をえぐり、そのまま背中まで拳が突き抜ける・・・・・・はずだった
がばば!!
「んあ!・・・・あ、あれ!?」
「ヲヲん♪」
意味不明の鳴き声とともに権助が抱き締める
不意に身体に力が入らなくなったマルチが権助に飛び込む形で
そのまま押し倒される、だむっと鈍い音とともに、したたかに頭を打ち付け
視界が大きく歪む、続いて、権助の顔が下からスクロールして上がってくる
「や、やだ・・・ちょ、ちょっと待っ・・・・」
「るせぇ!!このアマぁ!!」←ゲス
さっきまでとキャラが違うような気がするが、男なんてそんなもんだ
両手を無理矢理押し上げて万歳の格好をさせ、はだけつつあるバスタオルに狂喜する
が、万歳をさせていては、両手がふさがってしまい、そのままじっと顔を見る事しか
出来ない事に鼻血を流しながら気付き、次の行動へと移ろうとする権助だったが
「・・・・・・・・??」
ナニカ様子がおかしいとようやく気付く
あれだけ凶悪な奴がこんなに大人しくしてるという事実もさることながら
ヤられそうだからというわけでもない、嫌そうな顔が気になった
せっかくこういうカタチでこうなったわけだから、その・・・それなりの
そういうのが無いと、なんとなく気持ちがね・・・・などと、一定の人種以外には
理解の苦しい事を思いつつ
「・・・ど、どうしたの?」
と、妙に優しい口調で権助が声をかける、するとマルチがふるふると身体全体を震わせて
わなわな手をさするように権助の肩へと持っていく、なぞるように胸元を手がさわさわと移動し
ゾクゾクと背筋に快感にも似たものが走る権助、そして刹那
ぐわしっ!!
「おおお”!?」
油断していた権助が我に返るが既に遅し、胸ぐらをとても容姿からは想像も出来ないような
力で締め上げられる、驚異的な腹筋で、権助を締め上げたまま、ゆっくりと上半身を起こすマルチ
目が何かいつになくせっぱ詰まった感じで且つ残忍だ
そう、さっき走ったゾクゾク感は、悪寒だ!!
「・・・・・くれ・・・・」
「は?」
何か呟くが声が小さくて聞き取れない、何かそれがものすごく欲しいというのは
わかるのだが・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・ニトログリセリン出せ、このゲス!!!」
叫ぶマルチ、絶妙な間の後に権助が答える
「あ、あるかそんなもん!!!」
「ニトロだよ、ニトロ・・・・は、早く・・・・硝酸とグリセリンでもいいからぁ・・・」
「一般家庭にそんなもんねえ!!」
一般論と一本切れた論がぶつかり合う、何かクスリの切れたそういう人のような
感じでがくがくと権助の胸ぐらを揺さぶるマルチ
やがて、うぐっと嗚咽のような物を漏らすと、手を離して四つん這いにつっぷした
やっと身体の自由が戻り、とりあえず起きあがる権助だが
「ニトロ・・・・・おねがい、ニトロがほしいのぉ・・・・・」
と、なんだかやたらと悩ましげな口調でそんな事言われて
おたおたしながら、何か代わりになりそうな物を探してみる
「っつうか、ニトロなんて・・・・・うーん・・・・灯油くらいしかねえなぁ」
全く別物じゃん
「・・・・と、灯油でいい・・・・こ、この際・・・・・」
小さくもう聞こえなくなりそうな声でそう囁いたので、権助がストーブ用に置いてあった
灯油を持って近づく、すると飲ませろなどと言う、一瞬困ったが、灯油といえばアレだ
てなわけで、あの頭の所が赤いきゅぽきゅぽと灯油をストーブの灯油缶に移す物体で
口元に注いでやる
「ん・・・んん・・・・・・・・」
切なそうな声をあげつつ、それに吸い付くマルチ
全裸の少女が悩ましげな声をあげつつ液体を口唇から滴らせて胸元から太股にかけてぬらりと光らせている
と言うと妙にえろくさいが気のせいだろう、液体は灯油だ、匂いでそれどころではない
権助は好きものには違いないが、ノーマルなのだこれは趣味ではない
喉を潤した(?)のか、とりあえず制止しろと手で合図をするマルチ
それに応えるように手を休め、じっと様子を看る権助
「はぁ・・・・はぁ・・・・・ん・・・・はぁ・・・・」
荒い息づかい、染められた髪が美しく赤い光りを放つ
相変わらず軽そうなその髪がさらさらと吐く息に応えるように存在を左右に揺らす
やがて呼吸が整ってくると髪をくしゃっとかき上げて、下から権助を見上げる
落ち着いた様子に安心しながら権助は声をかける
「・・・・あんた、電動じゃなかったのか」
「・・・・・・・・お前が言うと卑猥だな」
「うるさいわ」
デジタル時計の光りが3:37を示す、すっかり暗い部屋の中いちいち電気を点ける気にも
ならず、そのまま寝る事になる。結局マルチは元着ていた例の白いレオタードを着て
権助から一定の距離を置いて省電力モードに切り替わった、シッポみたいに尻から出た
コンセントを壁のそれにはめ込み充電中だ
「・・・・・・・まぁ、寝込み襲うのも悪くないんだけど・・・・・・」
呟くだけ呟いて、毛布をかぶり眠る事にする権助
さすがに灯油の匂いが効いたのか、そういう状態に今一ならないので
そのまま眠る事になる、なぜこうなったのか・・・そういう類は一切考える事はない
結局どうしてこうなって、こいつが何者なのか・・・
さっぱり説明される事なく流されるように進められる事象
もしかしたらたちの悪い夢でも見ているのかもしれないと自分に言い聞かせるように思うと
かくりと意識を澱みに沈み込めていった
11:00
ぱつん!
ブレーカーが飛ぶような音とともにマルチの電源が戻る、システム再起動に入り
う゛いーんとまた低重音を響かせている、権助は昨夜の疲れでぐっすり眠りこけ
気付く事もない、やがて瞳に光りが灯りゆっくりと周りを見回すマルチ
「・・・・・・・11:00ジャスト・・・・起こすか」
どげしっ!!!
「げはっ!!!」
「起きろ権助、買い物だ」
説明するまでもないような気がするが、マルチが権助の脇腹をつま先で蹴り上げ
朝の挨拶を済ませたのである。脇腹のいかにも柔らかそうな部分にえぐるような蹴りを
入れる俗に言うヤンキーキックだ(知らねえよそんなもん)
軽い吐き気と内蔵に鈍い傷みを覚えながら権助がゆっくりと思い出す
夢は痛くないんだと