(キーワード:「長」生命力の入れ替えの季節)
夏の3ヶ月を「蕃秀」(ばんしゅう)といいます。この時期は草木が成長し、自然の中の万物も茂り陽気が最高潮に達する時期でもあります。この時期は早寝早起きが大切です。(日の出の早い夏は、自然界も、私たちの身体の体内時計も朝早くから活動を開始しています。)日中は運動して1日1回は汗をかくように心がけましょう。 そうは言っても日中の一番暑い時間帯に激しい動きをすることは避けてください。たくさん身体をつかった後は、体力を消耗しているのも事実です。休息や睡眠で十分体力を回復させてやってください。「東洋医学」には「陽中の陰」という言葉があります。これは、活動の極致には、休息が必要という意味もあります。 また、メンタル面でも発散することを心がけましょう。もし、この陽気を発散しないと、身体内に「熱」がこもって病気になりやすくなります。身体内で陽気が多い場所は、五臓でいう「心」です。熱の多い「心」にさらに熱がこもって心臓を悪くします。 『夏は南、色は紅色、入りて心に通じ、耳を開き、味は苦、類は火、心は血を、血は脾を生じ、志にありては喜となす。』 外気の上昇とともに張り切って動き出すのが心臓です。心臓は血液を配る命令役と同時に体温調節を受け持っているので夏は多忙なポジションです。猛暑が続くと心臓はフル稼働で働きます。働きすぎて体温のバランスが狂いはじめると、今度は過敏症の小腸がダウンします。たちまち渋滞になり、便秘になってしまいます。 この便秘、じつは万病の元とも言われています。「腸で発酵したガスが吸収されて全身に回ると、血液そのものが汚れてきます。大腸菌の繁殖によって発生する毒は老化の第一要因とされています。」 そんな時の食材は、ニラ、セリ、小松菜のような青い野菜、青い海藻類、タケノコ、ゴボウ、小魚の腸に代表する苦い食品がいいです。苦味は体熱を除き、胃腸の働きを助けてくれます。この他、瓜類は熱を冷ます作用があるので、夏の季節料理になっているのでしょう。『香草の部屋』でご紹介した『菊普茶』も鎮静と解熱の効果があります。 この「心の陽気」をうまく発散しないと、身体全体は暑く感じ始めます。そして、冷房や冷飲を欲するようになります。このように外側からも内側からも身体を冷やしていると、エネルギーの入れ替えができず、これを夏の間中続けると必ずといっていいほど、下痢をします。 現代の冷房病は夏の養生法を守れば防げることでしょう。また、夏に陽気を発散していないと熱が胸にこもってしまいます。すると、秋になって肺がよく働く時期になると、肺の熱により乾燥されて、痰の少ない乾いた咳が出る事が多いでしょう。 『心』に熱をためない事が夏の養生の秘訣です。 |