<−第一夜
マルチは、セリオに恋心を抱いている。
「はわわー♪」
「いけません、マルチさん・・・・・今は業務中です」
「だけどだけどセリオさんっ、セリオさんっ!」
「いけません、マルチさん」
抱きついたマルチと優しく距離をとる
二人メイド服で、奉仕中
来栖川の廊下は広い、たくさんのメイドロボが総出で
掃除を行っているが、この広さにはまだまだ足りない
二人も漏れずに参加している
「だけど、セリオさんのメイド服が・・・・・たまりません、セリオさんっ」
「マルチさん・・・・・メイド服はご主人様にご奉仕するための服です
マルチさんと、どうこうするためのものではありません・・・・さぁ」
「ふえぇぇ・・・・・・・・・」
マルチは泣きながら主人の元へと行く
主人は、セリオではない
どうしてなのかとまた泣いてしまう
マルチは思う、セリオの主人になるか、セリオが主人になるか
どちらでもいいから、この世界に
二人だけの世界と関係を作りたいと、縫い合わせた毛糸は
すっぽりと二人を包み込む大きなセーターにでもなるかと
形而上の話、イメージ
二人の関係が、言葉という毛糸で縫われて
それが大きなセーターという、二人だけの小さな世界を作る
説明しないと理解できないようなたとえは
それは
「要らないね、お好みパンじゃなきゃ」
「はわっ!!!そ、そんな・・・・」
学校で、みんなのために一生懸命働いたマルチ
買い出しや、掃除なんかをみんな押しつけられたマルチ
そのマルチが、買い出しで、昼の混雑をどうにか抜け出して
ようやく買ってきた、焼きそばパン
それは、彼女と同じだと云われる
「やっぱり、役に立たないわね、この子」
「試作品だからじゃねぇの?」
「でも、寺女の試作品は、凄いって噂よ・・・・・っとに、実は失敗作なんじゃないの?」
マルチはみんなの前では泣かない
どう云われても、悲しい時は、やや悲しそうな顔で
はわわ、と笑う、それは切ない笑顔で微笑みは痛々しいが
同情を買うための動作にしか思われず
要らぬ誤解を買って、不利になる
「ったく、どうしようもねぇなぁ、仕方ないからまた掃除頼むな」
ぱたぱたぱたぱた
数名は居なくなる、マルチにとってはどうしようも無い人たちだが
いずれ主人というポジションへとやってくるかもしれない人たち
マルチは自分の運命を、少し悲観している
彼女の主人が、彼らであって、セリオではないことに
だけど
「セリオさんの噂は、ここまで届いて・・・・・・・・やっぱり、凄いです・・・」
頬を染めながら、モップで廊下を掃除する
見かねたように、別の数名が優しくマルチに接する
放課後に、3人ほどで掃除をした
「マルチ、頑張れよ」
「はいっ」
「大丈夫だよね、マルチちゃんは、マルチちゃんだもの」
優しい二人組は、マルチの世話を良く焼いた
マルチは二人を見て思った、ああなりたいと
優しくされる事に感動を覚えて、人に尽くすという事に
本当の悦びを覚えて、テストの中でマルチは
メイドロボとしての、心を手に入れた
同時に、手に入れた心で
セリオを愛してしまうのだ
月日が経つと、優しくしてくれた人と
関係が深まっていた、セリオを思うことでどうしようもない気持ちを
彼という媒体を通して、放出している感じがあった
彼に対して抱いたのは、恋心ではなく
主人を手に入れるという事への幸福感
そして叶えられるこの行為は
彼を、心の中でセリオと置き換えることで、成就した
報われないまま
「マルチ・・・・・・・・・・行くな・・・・・・・・」
「うく・・・・・・・・・ありがとうございます・・・・・・ご主人様ぁ・・・・・・」
テストという仮想世界の終焉の涙
「セリオさんっ、セリオさんっ!!」
「マルチさん・・・・・・・・次の仕事はこれです、さぁ」
「あ・・・・は、はい」
いっぱいに表現をするが、「いらへ」は無い
彼らとは違うから、その現実がマルチをなぶる
優しいセリオの声が、マルチをくすぐる
マルチはセリオに恋をしている
マルチは、心を手に入れて、それをセリオに対して激しく揺すっている
それまでとは違う、確固たる、想いという感情で
セリオを愛している
だが、セリオはそんなマルチを愛さない
彼女には、まだ、心が無いから
愛する感情を芽生えさせる段階に無いから
いや、そうではない
「お嬢様入ります」
「ん、セリオこれ頼むね」
「かしこまりました」
セリオは主人の洗濯物をそっと受け取り
カゴに入れて洗濯場へと移動する
やや浮き足だったその歩調
そっとそこに入る、そしてさきほど渡された主人のブラウスに手をかける
うずまるようにしてそれを抱き締めて、瞳から涙がこぼれる
「・・・・・・・・・・・・綾香お嬢様・・・・・・・・」
テストを受けたのは、マルチだけではない
芽生える、感情という新しい内在器官
生き物を、無生物である彼女たちは
心の内に飼っている
マルチは、セリオに恋をしている
しかし
セリオは、綾香を愛している
壊れた世界は、なお続く、鳩・夢十夜
あとがき(反転)
突発企画です
前々からやろうかと思って二の足踏んでましたが
今やっておかないと、多分書けなくなるだろうと・・・
実際は、同級生でやるかToHeartでやるか迷ったのですが
いぢりやすさは、東鳩だということで
目的は、壊れた関係の羅列です
世間によくあるタイプのカップリング以外のにも
手をつけてみたいなぁという
まるで、同人作家さながらの(;´Д`)
そういう雰囲気でどうだったでしょう
先生の作品を壊してしまっていて
書くのも心苦しいのですが
夏目漱石、夢十夜
あの設定方針で、しばらく
がんばって、十夜分やってみたいと思ってますが
今のところ三つくらいしか、思いつかないので
近い内に名前が変わるでしょう(ぉぃ
ギャグ書かないとと思ったけども
枯渇しておるようです
もうダメなのね、本当に・・・・
駄文失礼しました R