3月卒業〜櫻の愛でる頃に〜
「勝利条件が明確じゃない」
「そう、次のステージに進むとかそういうんじゃないんだ」
将棋部とヲタクがそう告げた
聞いている他数人は、意味がわからないという感じだ
「よくわからん、つまりどうしたらいいんだ?」
「雄琴さん、将棋って奴は自分の王様を守りながら敵の王様を取るゲームなんだ」
「それくらいは俺でも知ってる」
「そう、だけどこの場合、こっちの王様はもとより相手の王様もわからない
というか、それを取る事以外にも勝利条件、つまり、僕ら全員が助かる方法が
あるんじゃないかって・・・・・」
「・・・・・お前ゴールを間違えてる」
「え?」
「お前が言う勝利条件は、俺達が卒業する、ただそれだけだ」
バカを相手にすると真面目に話をしているほうがぐったりしてしまう
将棋部ががっくりと肩を落とす、ヲタクは隣で、けひけひと気味の悪い笑い方をする
その調子がムカツクのか、ヤンキーが手をあげかける
のび太がかばう、柔道部が外を見ている
「・・・・じゃぁ、こうしよう、えっと、卒業がゴールとしよう、じゃぁ卒業するためには?」
「証書を受け取る」
「違うっ、生きてこの状態から脱出だろうっ」
「バカかお前は、それじゃ卒業にならんだろうが、証書はこの校内にしか無いんだぞ?」
「あのなぁ・・・・・・」
将棋部がまたため息をつく、憮然として譲らないというか
自分の考えが当たり前だと思っている雄琴、話の内容に
ついていけているのは、ヲタクとのび太、そして
「将棋部、お前の言いたい事はすげぇわかるよ・・・・だけどよ、分かり易く言うと
既に俺達は詰んでるよ、だから雄琴さんのほうが正しいかもしれん」
柔道部が言った、窓際でずっと外を見張っていた形だが
外を見たまま、声を投げかけてきた、全員がそちらを向く
「どうやっても生きて出られそうにない・・・・・というか、無理だ」
「なにを・・・・」
「外を見てて解った、こりゃ学校だけじゃない、町一個が占拠されてる
囲碁でいうところの、敵の地になってる、俺達は既に死地だ」
絶望が、将棋部とヲタクの二人の顔に現れた
意外とのび太が当たり前のようにそれを受け入れている
雄琴が立つ
「・・・・・・・・・そうなると、投降して殺されるか、ここで自決するかって話になるだろう」
「そんなんイヤだぜ、雄琴さんっ」
「わかってるヤンキー、だから俺達はただでは死なない、卒業して、そして・・・・・どうだ?」
「無茶苦茶だ・・・・・・・」
絶望している二人、絶望せざるを得ない状況だが
その窮地を最後まで生き抜こうとする意志、それが雄琴にはある
2ダブは偉大だ、生きるというのは、ただ惰性でレールに乗っていくことじゃない
胸を張って立派に生きたと、自分の意志で何かをした、そういう記憶を残すことだ
年上ならではの口調で説いた、ヤンキーが涙した、こういう話に弱いらしい
「もう一度言うぞ、俺達の目標は、卒業だ、そして卒業するための証書は校長室にある」
「校長室って、一番向こうの校舎か・・・・・・・・厄介だな」
柔道部が言う、意外と乗り気になっている
武道の心得という奴が、その気概を産んでいるんだろうか
ヤンキーが少し青ざめている、やはり死ぬのは怖いようだ
将棋部は泣いている、ヲタクはぼーっとして何かを呟いている
「・・・・・・・結局日本人って奴は、滅びの美学に殉じていくべきなんだね」
「あ?何言ってんだヲタク」
「けひけひ、願ってもないチャンスだ、僕みたいなヲタクでも立派に死ぬだけで英雄になれる
アニメや漫画の向こうだけじゃないんだって事だよ」
ヲタクが何かわけのわからない悟りを開いた
「さて問題だ、将棋部・・・・・・誰かが校長室へ証書を取りに行く、その間ここを死守する
それと、全員で取りに行く、さぁどっちが賢い選択だ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・わかったよ、行く、行けばいいんだろ」
「バカ野郎、そういう事じゃねぇんだよっ、てめぇの意志でよぉっ」
「がなるなヤンキー、いい、考えてみれば怖いだろう・・・そりゃそうだ、死ぬんだしな
まして、お前らくらい若いとなると・・・・」
「雄琴さん・・・・・」
全員が死を受け入れた、名目上、まだわかっていない
本当に死ぬという事は、だが、今やらないといけないことだけは示されている
それをしよう、そういう事にとりあえずなった、物語になる
「行くぞ、で、将棋部どう攻める?」
「ん・・・・・そうだな、最初守りとか考えてたから、矢倉を応用しようかと思ったけど
この場合、陽動振り飛車、それにもう一つ裏の手を使うよ」
「何言ってっか全然わかんねぇ」
「ああ、ごめん・・・・・えっと、まぁ、とりあえず現在三階だろ、校長室は一番向こうのA棟の一階
とりあえずC棟のここで二階に降りておこうと思う、二階から渡り廊下を使って、B棟にそっからは
また考えるよ」
「なんか知らないがそれが一番なんだな?」
「うん、三階のままで行くと渡り廊下の外を通らないといけないから、あそこは多分ねらい打ちに遭うし」
「決まりだ、行くぞ」
立ち上がる、雄琴を先頭にして、ヤンキーと柔道部がバックアップ
将棋部の前にのび太、そしてヲタクがひょこひょこついてきている
バリケードからそっと前を見る、異常なまでの静けさが横たわる
「どう思う?ヲタク」
「なにがだい」
「いや、もう敵は知ってんのかなって・・・・」
柔道部が、問いかける
「けひけひ、そうだね・・・・・僕の経験からすると、こういう時既に敵は準備万端だね」
「なんだよお前の経験って」
「アニメ・・・・・・学園戦争モノなんていっぱいあるからね、ただ絶対にハッピーエンドにならないのは初めてだけど」
嫌な笑いをする奴だ、柔道部はそう思った
一同は一番近くの階段へと向かう、不気味なくらい静かな校内
どうもこの校舎は既に堕ちたと考えられているような感じがする
ちらりと外を見ると、隣のB棟で銃撃戦らしき音が響いている
「今はあっちが本命らしいな・・・・ちょうどいい・・・」
雄琴が呟く、現段階では実践経験があるのは雄琴とヤンキーだけだ(実践というのか?)
ここで他の連中に経験を積ませるためにも、弱い集団を相手にしたい
もくろみ通りに行くだろうか、歩みを少し緩めて将棋部に話しかける
「なぁ、出会った後の事は考えてるか?」
「いや・・・・・・僕もそこが一番気がかりなんだ、何人のグループで来るかで変わってくるし」
「そうか・・・・・・お前、詰め将棋は強いんだろ?」
「え、うん、そこそこわ」
戦地を狭くして、なるべく単純な形にすればなんとかなるか・・・
雄琴が思う、ヤンキーと俺とでどこまで敵を引きつけてやれるか
この段階でなら少人数相手、なら殲滅するのが一番良いだろう
駆け抜けてそのままとなりの校舎に突入という手もあるが、多分
追っ手と待ち手に挟まれてそこで終わりだ、ここは殲滅が目標だ
「来た、階段だ・・・・・どうする?」
「いい、俺が見てくる、合図で降りてこい」
柔道部が先に出た、雄琴が止めに入ったがそれを払った
目が訴える、ここは俺に譲れと、男の会話は目で成り立つ
雄琴が引き下がり銃の具合を確かめた、GLOCKだ
ヤンキーは、UZを持っている、柔道部もGLOCKだ
ぱぱっ
「!!!!!柔道部っ!!!!」
雄琴が叫ぶ、いきなりの銃声だ
そして続くように、ばたばたと人が駆ける音がした、留め金を外したように
雄琴が階段を3段飛ばしで降りる、続く他の仲間
ぱぱんっ、ぱぱぱぱっ
派手な銃撃戦になっている、意外にも柔道部は無傷だ
柔道部の足下に一人の敵が血を流している、即死っぽい、最近の高校生は加減を知らない(問題違う)
乱戦になる、だが、その前に降りていく雄琴達に将棋部が叫ぶ
「とりあえず組むんだ、組んで戦うんだ、相手が何人だろうと絶対に1対1にならないようにっ」
届いたかはわからない、ヲタクと将棋部、その二人をのび太が守る
ヤンキーと雄琴が戦闘に参加という形になった、柔道部が二人目を葬った、野郎本当に素人か?
「雄琴さんっ、将棋部がなんか言ってたが、やっぱ、タイマンだろっ、男わよぉっ」
「言うなヤンキー、確実に勝つってのを頭に入れるのも大事だろっ、いくぜっ」
雄琴がサブマシンガンをぶっ放し突撃する、相手はどうやら階段降りて右側の廊下奥からやってきているらしい
柔道部は、二人殺った後すぐに、渡り廊下方面に隠れた、渡り廊下←→階段と、ただの廊下が十字路のように交わっている
だから渡り廊下側に入ればひとまずは銃撃の的にはならない
雄琴の攻撃は不意を付いたらしく見事に廊下側の奴らを叩きふせた
怯んでいる所にヤンキーの正確な攻撃が急所を捉えていく、知らない内にテロリストの仲間入りだ
「制圧完了だ、将棋部、降りてこい」
「いや、来てる・・・・・っていうか、・・・・・・・」
「うはは、漫画だな」
口ごもる将棋部より先にヲタクがうれしそうな声を出した
目の前で人が何人も死んでいるが、当たり前の現実のように受け入れている
流石、そういう垣根は誰よりも早くとっぱらった感じがある
ヤンキーは、わずかに震えているようだ、ヤンキーならわかるのだろう
人を殺すという事が、どんな意味なのか
話は少しずれるが、ヤンキーという特殊な人種になると、途端に近づいてくる
犯歴というプラチナブランド、その最高峰、あいつは一等やばいぜっ、と一目置かれるようになる
それが
「あいつは人を殺している」
この台詞だ、それを手に入れた、だが現実を見つめて、その重たさにようやく呵まれている
だからこそ憧れられている、そしてますます、先代達の「人を殺して年少送り」を敬う気持ちが溢れている
先輩達はマジ凄かったんだと・・・・・・
日本も末だ(ぉぃ
「さて、急ごう、渡り廊下過ぎて、校長室までもうちょいだろう」
「そうだね・・・・一応、二階をベースで進んでいこうと思うけど、B棟は、体育館経由で行こうと思う」
「体育館?なんで」
「いや、正式にはあの方向に化学室があるからそこに寄りたいんだけど・・・まぁともかく、行こう、長居はまずいよ」
将棋部が少し顔を青ざめて言う、確かに長居は無用だ
雄琴がすぐに他の連中を誘導する、全員で渡り廊下を抜ける
窓から下をちらりと見た、そこに、戦場を見た
「なっ!!!!!!!」
ぱんぱんぱんぱんぱんっ
悲鳴と銃声が入り交じり、血祭りが始まっている
学生の集団が撃たれている、酷い、公開処刑のような姿だ
あまりのむごさに怒りを覚える全員、だが、さらのその目に驚くべき出来事が
「きえええええええええええええっっっ」
わーーわーーわーーわーー
甲高い声と共に突然全身を防具で固めた集団が現れた
敵テロリストは一瞬怯んだのか、銃殺係の奴らがそいつらに袋叩きになっている
「け、剣道部っ!!!!!」
柔道部が叫んだ、そう、剣道部だ
剣道部員が全員で徒党を組んで、木刀を振り回している、全身を防具で固めて
それこそ新しい部族のような風に見える、凄まじい狂気で、テロリストを撲殺していく
「す、すげぇっ!!!マジすげぇじゃん剣道部っ」
ヤンキーが歓喜の声を上げる、同胞達の戦いは気持ちを持ち上げてくれる
剣道部達の攻撃は凄まじい、だが、すぐに体勢を立て直した別の部隊がやってきた
「ま、まずいぞっ、ねらい打ちだっ」
一瞬だけ怯んだのが目にわかった、だが、彼らは
「突撃っっっっ!!!!!!!!」
ぱんぱんぱんぱん・・・・・・・・
渇いた銃声、次々と倒れる剣道部、それを踏み越えるようにして次から次から
全員が前に向かっていく、だが、所詮剣道具、銃を防げるような仕様じゃない
血を噴いてばたばたと、骸を重ねていった
全員が倒れたらしい、それを見てテロリスト共が剣道部達の死体に群がり
さらなる乱暴を働いた、酷い、まだわずかに息があった人間も居るだろうに
至近距離で一人一人を撃ち抜いていった・・・・・あまりにも凄惨な光景だ
「な、・・・・・・どちくしょおおおおおおお」
「よせっ、ヤンキー」
雄琴が止める、目には涙が溢れている、ヤンキーは本来トモダチ思いのいい奴なんだろう
その怒りは、あまりにも純粋で汚れが無くて、若さがにじみでてて・・・・・
そっとそれを諫める雄琴、振り返らずにまた前へ進むことを促した
「!!!!!いかんっ、早く行けっ」
「!?」
柔道部がいきなり全員を押した、そして銃声
慌てて振り返る全員、そこにまたテロリストが写った
柔道部が振り返って応戦している、雄琴もヌキかかる
「いかん先行けっ・・・・・・・」
「だ、だけどよっ」
「いいんだ、ヤンキー、雄琴さん・・・・・・・・・・卒業、してくれ」
がいんがいんがいんがいん
粗末ながら盾代わりに消防壁を使い、柔道部がそう言った
その下、既に血が滲んでいる、思わず嗚咽をもらす将棋部
怒りがまた溢れてくるヤンキー、だが、全てを制して柔道部が先を促す
「いい・・・・・・頼む、卒業・・・・・・してくれ、ここは俺がやる・・・・・・・」
「柔道部、そこまで・・・・・・」
「へ・・・・・・だってよ・・・・・・剣道部があんなに頑張ったんだ、だったら柔道部も続くさ・・・・・・」
かっこよすぎる・・・・柔道メンに悪い奴は居ない(それは嘘です)(そういう事言うな)
その決意に雄琴は苦渋の決断を下す
「行くぞ、ここは柔道部に任せるっ」
「お、雄琴さんっ!!!!」
「けひけひ」
「てめっ」
がしっ
「いや、僕も残るよ・・・・・君たちは先に行ってくれよ」
「ヲタク!?」
意外な台詞に全員が驚く、ぱんぱんと銃声が止まない
揉めている時間は無い、雄琴が少しだけうなずくと
ヲタクは、妙な敬礼をした、指を三本だけにしての敬礼
他の全員に意味はわからなかったが、そこで別れた
振り返るわけにはいかない、そう誰もが思って、銃声を後ろに、雄琴、ヤンキー、将棋部、のび太
4人は体育館に向かう、廊下を蹴る音、ふと思い出す
廊下は走っちゃいけなせんなんて台詞、卒業したら
そんな台詞
聞くことないんだろうな
というわけで、また気まぐれに続く(まだやる気か)
ヤーパンの方を全面的に書き直したい病に襲われた結果
急遽なんか当て馬作ろうとこれを書きました
実際は、4月頭くらいに半分くらいまで書いてたんですが
題名の通り3月にしておかないといけないのに・・・・というわけで
お蔵入り、ちなみに第一話は、残念シリーズにひっそり移動となってるんですが
こいつの復帰で、場合によってまたとか
面倒な事は全て抜き、そう、ただ書くだけの
そういうSSもたまにはよかろうとか
時間とネタが続くかぎり
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