Edelstein ”Karfunkel”


ゼーが帰還した
ブライテストタールからグイ導師達の船が
南港へと向かって出港した
軍師殿の二の勢によって敵を大きく後退させた

反撃が始まった

城内にその活気が溢れている
特に凱旋帰還となったゼーの人気は凄まじいものがある
誰も彼もが、蒼騎士の武勇と武勲を讃え
この後の戦いへの希望だと謳う

いい気なものだ

そう思いたくもなる
事実はかなり歪んで伝わっていることがわかっている
だが、ここまで情報の操作をされていると
真実を知っている自分は、とんだピエロのように思えてしまう
大した戦勝ではなかった、肝心の白騎士アルを捕まえられなかった
イライラする
いや、少し違う、確かに苛立っているが
いつもの癇に障るといったそれとは違う
多分、持ち帰った柩のせいだろう、もう一人の英雄を閉じこめた
紅の旗に包まれ、朱色のマントをかけられたそれのせいだろう
それがどうして在るのか
その真実を知りながら、甘んじて操作された情報を受け入れる己に対してだろう

重苦しい雰囲気のまま、決まり切った戦勝の報告とそれ
そして纏わるように整えられたパレードめいた何か
茶番が続いていく
気がおかしくなりそうだ
一刻も早く、というのとは違う、違うが体が異常なまでに滾っている
気付くと、視線はリズを探していた
城内では見かけられなかった、色々と挨拶周りを終えて
女王との謁見は翌日だと告げられ、がっかりしながら部屋へ戻るすがら
その姿を探していた、見つからぬまま、部屋

「?」

人の気配がする
自分の部屋に用心して入らなくてはならないとは
気が利かない話だ
一瞬殺気を発散してしまったが、すぐに匂いで気付いた
本能が欲しているせいだったからかもしれない
中に誰がいるのか、どうしているのか
手に取るようにわかった、わかった途端、脳のどこかで何かが弾けたように思う

がちゃ

「ぜ、ぜーさま・・・お、おかえりなさいまし」

「・・・・・・・」

ふるふる、小刻みというと興が殺がれる
ぷるぷるとゼリーのような?違う、ともかく奮えている、それは
カタカタとか、カクカクといった硬いふるえではない
柔らかい、艶の溢れた奮えというのだろうか、それだ
異常な性感が刺激される
だが、ゼーは押し黙った、じっと、女を観察する
視姦されて、ふるえが一瞬大きくなった、完全に出来上がっている
それがわかる

「リズ」

「ふぁ、ふぁいっ!!」

んあっ、そういう具合で返事だけはしたが
ともなうようにして、全身をうち振るわせて快感に酔いしれたらしい
涙目になっている、頬は上気している、全身をドレスに包まれているが
その着物を、絹を、衣を剥いだら
どれほどの性欲が解放されるのか、淫態が全身を支配し
脳までも犯された女、悩ましげな目は誘っている、惑わしてくる

「待っていたのか?」

「は、はい」

「我慢できずに部屋まで来て?」

「はいっ」

涙を零しはじめた
だが喜悦に表情が輝いている
ゼーは、己の理性が危険な女だと断じていることを自覚する
どう見てもイカレテやがる、だが、その性的にすぎる痴態は大いによろしい
男としてスイッチが入った、違う、ケダモノになる準備が出来てしまう
なんだ、結局俺もイカレてんじゃねぇか

「どうして欲しいんだ」

ぷるっ!!

「お、おかして・・・・おかしてくださいっ!!!どんどんと、いつ、いつものように乱暴に、わ、
私を、私の股を割って、逞しい物を撞き込んでくださいまし、お、お願いいたします、
は、はやく、もう、もう、もう、ま、待てない、待てないの、待てないのゼー様、ゼーさまっ!!ぜーーええさまぁああ」

叫ぶように
それは悲鳴だ
堰を切った感情の波、感情というよりも本能なのだろうか
抑圧されていた何もかもが解放された
自分の恥ずかしい台詞に恥辱を露わとし、リズはどうしようもないほどの涙を流し
赤面を隠すこともなく、それでも、請い焦がれる、乞食のようにねだった
男の陰茎を、白濁した液体を
ゼーの暴力を

「リズっ」

「ふゃいっ」

ゼーは言うなり、乱暴に抱きすくめる
いや、捕まえるというような様子で腕の中に包み込んだ
すぐに滾る血潮のままにドレスの胸元を引き裂いて、柔肉を貪るか
しかし手が止まった
いつもの軽さに加えて考えられないほどの柔らかさと熱気を覚えたからだ
戦場帰り、高ぶっているから必要以上に求めている?違う
明らかに今日のリズは異常だ、ともかく犯されたがっている
全身が犯されることを望み、熟し切っている、されたいシテ欲しい、それが募り挙げ句、犯せと訴えてくる
そう思うと、そのまま乱暴に姦るのは面白くない
敢えて躍らせよう、嗜虐が鎌首をもたげる

「ぜーさま、は、はやく、や、破られてもかまいません、ど、ドレスが邪魔ならば」

るりるり、瞳は潤いを満たしたまま
必死に卑猥なことを投げかけてくる
ゼーは、脳が熔けそうになるが堪えて命令を口にすることとなる

「俺を脱がせろ、いや、戦場帰りだ、体を洗いたい」

「え、あ」

「・・・せぬのならいい、もう帰れ、俺は一人で風呂に入る」

乱暴に投げ捨てる
そして、さっさと風呂桶のほうへと脚をむけた
もぞり、自分の股間が大変なことになっているのがわかった
早く脱がなくてはならんのは確かだな
苦笑するが、すぐに、期待通りの現象が起こる

「ご、ごめんなさい、す、すぐにお、お手伝いします、しますっ」

しがみつくように後ろからやってくると
なれない仕草で、ちまちまと脱がせ始めた
鎧の一部をつけたままなので、女にやらせるには難しいらしい
悪戦苦闘している様をじっと見下しておく
早くしろ、イライラが募ってくる、お前が早くしないと姦れないだろう
怒りの方向がおかしい気がせんでもないが
それで盛り上がるのだからよいとしておこう
ようやく、うまく脱がせられてきたのか
ゼーを包んでいた物が剥がされ、生々しい肉体が露わになる

ごくり

リズが恍惚とした表情でそれを眺めて唾を呑んだ
女に見られるのも悪くないものだ、この淫猥動物が
見下すことで快感を得られるようになっている
ゼーも知らず内、調教が完了しているらしい、自分では気付いていない

「手を止めるな、早くしろ」

「は、はい」

そして、とりわけ丁寧に、だが性急に
股間を包む下布を解きにかかった
もう、ギチギチに、男からしても痛みを覚えるほどの直立を見せている
布の上からでもよくわかる、そのたくましさと匂いに
淫猥はとりわけ、たまらぬという表情を見せた

「淫乱、そんなに喜ばしいか?」

「え、ち、ちが」

「違うものか、もういい、どけ、風呂に入る」

脚で乱暴にどかす、きゃぁ、などといってリズは倒れる
自分で下布を脱ぐ、というか脱いでいる最中に触られたら
エラいことになってしまいそうだ、それを防ぐため、
脱いでみると案の定、というよりも期待以上に高ぶっている
俺のはこんな色形だったろうか

ざぶ、
常に冷たい水をたえておくように指示がされているだけに
清潔な水がひんやりと気持ちがいい
脚を入れて、ゆっくりと体から汗を流し落とそうとする
そこにリズが分け入ろうとする

「どうした、脱げよ」

「あ、はい」

ゼーは、近づいてきた手を上手にかわし、一指も触れさせない
水に体を浮かべるようにして、反り返った自分のものを見せつける
そこに視線を誘導される愚かな女を楽しみ
それの次の動向に興味を移す

するする、
自分の服を脱ぐのは流石になれているらしい
そのあたり、育ちの悪さが伺える、もともと娼婦だ当たり前だな
そうも思うが、どこかたどたどしい脱ぎ姿をじっと眺める
ドレスを脱ぎ終わり、下着を脱いでいく
下半身を隠す下着は、どうしたのかというほどの湿潤を保っている
べちゃり、重そうに床へと垂れた、股の間からは透明な液体が見えている
肉が開き、内蔵を見せようとひくりひくりと蠢いている

「なんだ、小便でも漏らしたのか」

「ち、違います」

恥ずかしそうにうつむく、脱いで立って、その後動作それぞれに
なにか、ぬち、淫猥な音が股から漏れる
それが自覚できているらしく、ゼーの耳まで届かないものにまで辱められて
下手に動くこともできないようになっているらしい

「乳首も立てさせて、・・・まぁいい、とりあえず背中を流せ」

命令をして、背中をこすらせる
布でこすらせるが、そのか細い力では満足な結果は得られない
それでもいい、呑気なもので鼻歌を謳う
腕を、脚をとさせるところで、そろそろか
ゼーの我慢がきかなくなった

「以前の通りだ、わかってるな」

「は、はい♪」

嬉しそうに鳴きやがる
少し嫌悪を覚えるが、性欲がそれを浚っていく
短い舌を出したリズは、精一杯にゼーの腹筋を嘗める
えおぅ、柔らかい下の感触が腹筋のスジを撫でていく
く、小さく息を漏らしてしまう
これはたまらん、ゼーのそういった表情など伺うこともなく
ただ、与えられたエサをついばむかのように
リズは裸身をさらしたまま、ゼーの腹を泳ぐ、そしてようやく
そっと直立した男のそれに指を絡めた

「はぁ、はぁ、はぁ」

待ちこがれたそれを眼にした、手にした
だからだろうか、動悸を覚えた女は
ただ、その固さと熱さに圧倒されている、ああ、すごい
自然と息切れをしたような興奮を吐息に表す
はぁはぁと、目をうろんとさせて、反り返った赤黒いものにうっとりと

「こんなの、す、すごい・・・ぜーさま、こわれちゃう」

「なら、壊されないようにしっかり嘗めるんだな」

はみゅ、そして腹筋を撫でてまわった柔らかい舌が
ゼーの陰茎を嘗めた、棒を嘗める女なんて
見飽きた光景だが、今度のは段違いだ
ゼーは嬉々としてしゃぶらせる、リズはヨダレにまみれててろてろと
口元からだらしなくこぼした分を胸元にそえて
やや膨らみを増したらしい乳房も光らせている
むしゃぶりつくとはこういうことだろう、一心不乱に頭をふり
髪を乱して、奉仕に奉公を重ねる

「ぬん・・・ん・・・む、、、、ふ、ふゅ、、、、」

ちゅるちゅる、しゃぶり挙げて音を立てる
それを立てるのが誰かとわかっていないらしく
一生懸命、リズは口淫を続ける
そして、とうとうゼーの亀頭をくわえこむ、大きい
アゴをいっぱいに稼働させて、なんとか飲み込んだ
口いっぱいに広がる男の匂い、いや、実際はしない、でもそうだと思う
生暖かい物体をくわえる喜びに満たされる

「そうだ、ゆっくり前後させろ、早くしろよ」

ゼーはそのまま頭を抱えて
思う存分に喉奥を犯そうかとも思ったがこらえている
しゃぶらせて、後だ、穴を貫かないことには始まらない
今の位置からは、リズの尻しか見えないが
紅く火照った背中と、尻へのライン、そしてどうやら何度か漏らしているらしい股間の姿
風呂桶の外で膝立ちとなっている床は、風呂桶の水とは別の液体が滴りたまりを作っている
それを想像するに、スタンダードな性行為を欲する
口内粘膜に包まれた喜びもあるが、やはり、リズは下手だ
何度前後させてもどうにもならんだろう
安心して、適当にやらせる、懸命に奉仕をしてくるが
さっぱりどうにもならない、ころあいだ、ゼーは髪を掴んで引き剥がした

「ぅぁあー」

「アゴが疲れたか?」

こくこく
髪を掴まれて、かなり引っ張られているのに頷く
痛みを今は知覚できないのかもしれない
風呂桶から出て、髪を掴んだままベッドへとずるずると連れていく
リズはただ、連れられるままによたよたと続く
そして、投げ捨てた、リズはうつぶせのまま倒れ込んだ
狙ったわけでもないのだが、尻が持ち上がる、不細工な格好だ
だが、後ろからそれを見るのは、殿方にとって大層よろしい
淫乱女が犬のような格好で尻を振っている
ぱくりと開いた下の口は、とめどなくヨダレを流し、今か今かと殿方を待ち受ける

「ほら、ごほうびだ」

「!!!きぃいやあああっっ!!!!!」

いきなり
ずぬる、先ほどまで自分が口にふくんでいたものが
待ちこがれた女陰に撞き込まれた
声を失う、空気を漏らすように口は大きくあけているが
言葉、人間のそれの類は一つも漏れなかった
リズは自分の顔が見られなくてよかったと思っている、いや、考える余地もない
全身に火花が走った、女陰から背中の髄を通って
血管や神経全てにわたって、快感の粒子が走り抜けて、砕け散った
白目を向いて、だらしない、そんな言葉じゃ語れないような表情になる

「はひぃっ!!!んっ、はへぇっ、うんなあああっ、あああっぁっぁうっったああああっ」

「ほらほら、待ってたんだろう、もっと鳴け、どんどん、どうなっていくか、ほらっ」

「き、きもちぃ、きぼぢいぃいい、きもちいいですっっ、もと、もっと、ついて、ついてっ!!!」

尻の肉が柔らかい
ゼーは、久しく感じたことのなかった、女の柔らかさを充分に堪能する
少しばかり動かして、その具合のよさに腰の動きが止まらなくなってきた

「おらおら、何が壊れるだ、こんなに簡単にくわえこみやがってっ」

ぎぬぎぬぎぬっ
ベッドの軋みは大きい、とてつもない力でねじふせていく
ぱちゅんぱちゅんと水がはじける、また、何度か目のおもらしを披露したらしい
今抜いてやったら面白いものが見えるかとも思ったが
具合の良さに止められそうもない
ゼーの腰はどんどんと奥を求めはじめた、リズがくねる、その腰つきに
暴力をおさえきれなくなってくる、腰をつかんで徹底的にたたき込む

「ああああっ!!!!あああっっーーーっ!!!んううううああああっっ」

リズの悲鳴があがる
白目を向いて、何度も気をとばしている
がくがくと、途中から力無く、逃げることもできなくなっている
ゼーは気にしない、というよりも、その余裕がない
自分の性欲もおさえきれなくなってきた、加えて、この女はそんなになってもどんどんと締め付けてくる
にゅるにゅると潤滑なくせに、決して離さないでおこうという吸引力がある
搾取されるという言葉がわかる、絞り上げられるような気持ちよさ

「おら、いくぞ、畜生、我慢ができねぇ、おら、っ、返事をしろ、リズっ」

「ふぁ、ふぁいっ、ください、くだしゃいっ!!!お、奥に、一番奥にどぴゅって、お、お願いします、しますぅっ」

んぐう、リズはそのまま腰が砕けた
もう姦られるままだ、腰を持ち上げておく力もなくなったらしく
いっそ、逃れようとするほど叩き込みの衝撃を全身で吸収しようとする
もう無理、やめて、助けて
そういった言葉を以前はあげていた、だが、今は
足掻くことなく、ただ、どん欲でもなく、受け入れるだけ受け入れる
女の器が大きくなったのだろう、名器のざわめきが、ゼーの肉棒を締め上げた

「くぅっ!!!」

ずぐっ!!!、どくどくどく・・・とくとく、、ぷ、るる、、、、
イきながら、何度も前後させる、絞り上げられるままに
じゅるじゅる、前後させてしっかりと陰嚢から白濁液を吐き出す
しっかりと注ぎ込んだのか、溢れた分が漏れて落ちるような
まだまだ、屹立を緩めないそれで何度も突いた
あんっあんっあんっ、撞かれる度にリズは可愛く泣いた
甘い声でそれを続けて、それが二回戦の準備を早めた

「前も後ろも犯してやる、望み通りにだ、早く尻を上げろ」

「はい、ぜーさま・・・」

一晩中に及ぶだろう予感に
リズは壊れてもよいと思ったらしい
いや、何も考えていない、ようやくかなった
長かった放置からの解放に、真っ白となって、阿呆を晒した
だが、その童女さながらに知能の衰えた女が、狂態にうつつを抜かしながら
何度目かもわからない、死の境地が見え隠れ始めるほどの絶頂と気絶を体験した後、
男の異変に気付いた

「ゼー様・・・傷が・・・」

「はぁ?」

覚えのないことを言う女に
とうとう頭が完全にダメになったのだと
ゼーは、その動物の瞳を見た、思いの外しっかりとしている

「背中に、真っ赤な」

言われて、そっと撫でてみる
ずき、鈍い痛みが走った、しかも、尋常ではない
右腰から左肩に向けて走っている、高ぶっていた性欲が凋む
凄まじい痛みを抱えていることにようやく気付いた
傷の通り道に覚えがある

「あの蛮族・・・」

極東の一武将如きに遅れをとったか・・・
リズを抱く前だったらそう思っていたかもしれない
だが、今は随分と調子を取り戻している、憑き物が落ちたようになっている
その対価として、リズは立てなくなり、息も絶え絶えで
膣いっぱいに彼の子種を蓄えている
折れた刀で斬られていたということだろう、だが、その切り傷は、
背中に太いみみず腫れのようなものを残したに過ぎない
殺せない技など、曲芸と代わらぬ

「俺は勝っていたのだ、名実共に」

「痛みは大丈夫なのですか?」

「お前は、お前の体を心配していろ」

「あっ、んつっっ!!!いやっらぁああめぇえええええっ」

前の穴で飽きたのか、尻の穴へとそれを入れた
思いの外簡単に入り、しかも、随分と清潔にされていたらしく
充分に楽しめる、ゼーは快楽を覚えていた

「情報は集まってるか?」

「はい」

「・・・?あいつはどうした」

「それが、帰還して女王様の下に向かったとの話はあったのですが」

翌朝、ゼーは寝ずのまま、すっきりとした表情で諜報部員を集めた
その場で、信頼していた部下の一人が足らないことに気付いたのが上記
死んだのか、消されたのか、暗部に入ったのだな
ゼーは、とりわけ自分の部下について
賊徒の頭のようにして庇い、暴き、仇をとりに走るが
今回は、そういう暴力が届かない範囲だと悟った
落胆をしてしまう
また、ここでも自分の力が及ばないものがある
それらを思考の外へと追いだし、とりあえずの現状把握につとめる

「実際のところ、南の防衛戦はどうだったのだ?」

「これは、完勝でした」

「お前・・・・わかってるな?俺が、誰なのか」

ゼーが凄んだ
失った部下への苛立ちもあるが、自分の諜報部員に対して懐疑的になっている
こいつらの働きが怠慢だったせいで敵が誰であるか、
俺が知る時期は遅きに過ぎた、結果、あのザマだった
そういう八つ当たりじみた思考が支配しつつある、だから決めつけている
嘘情報で溢れかえっているに違いない、軍は苦戦しているに違いない
南は所詮微かな抵抗を示しただけに過ぎないと

「いえ、間違いなく完勝です、軍師様の神謀が炸裂しました」

「軍師様が・・・」

諜報部は主人の機嫌を知りつつも決して情報を曲げなかった
そして見聞きしたことを語り始めた

南港が陥落した後、すぐに敵が北上を始めた
既に防衛戦を引いていた部分と正面衝突での戦い
戦勝に勢いづいていただけに、敵方の攻撃は凄まじく
数時間で退路を探すような有様になった

防衛戦の指揮官は、おそらくマリーネの後釜になるであろう若い騎士ヴァルト
司令官としての経験は乏しいが、勇気に溢れ、個別部隊を率いての戦勝はめざましいものがあった
そんな若者に指揮をさせることに無茶があるように思われるが
勢いに乗った相手を目の前に、肝の据わったこの男は働きに働いた
撤退に追い込まれたが、猛然と自らが前線へと出てしんがりをつとめ
先行して逃げた部隊が隊列を組むやいなや、反撃に出ていた
しかし、相手が悪い

「あの大槍、何者だ」

「おそらく、デハン教の、神の大槍です、聖騎士治安公です」

「噂には聞いたが、畜生、どうしたものか」

ヴァルトは迂回戦術を頭に描いている
正面から圧倒的な武力とやりあえるほど易しくない
というか、正面から破れる様子が微塵もない
何度か反撃の突撃を試みたが、騎馬隊はあっと言う間に隊列を寸断され壊滅
また敗走をよぎなくされている

「どこの国でも宗教戦士は強いと極まってやがるな」

「あれは特別でしょう、ここも危ないです、ヴァルト様、ご決断を」

側近が、若者に覚悟を求めた
彼は騎士である以上、女王の命令を遵守しなくてはならない
命をかけて、敵の突撃をくい止めなくてはならない
敗走し、己が生きながらえるために、敵の進行を早めさせてはならない

「正面を鏃型にして、左右の後方から撞くことができればな・・・」

「伏兵のことごとくは既に散ったままで、それは難しく・・・」

難局を憂う
あそこにあれがあれば、そういう夢見がちなことを戦場でのたまわってはいけない
司令官となるために、もう少し経験が必要だ
サポート役の若干の古参兵(それでも壮年以前である)は唇を噛んだ
ただ、その経験を活かす機会が与えられるかどうかは絶望的だ
古参は慚愧に耐えない表情を晒す、しかし風向きが突如かわった

「願えば・・・・たまには叶うものだな」

唐突にヴァルトは言った
はっきりとした口調で、己の言動の恥ずかしさを周りに知らしめるように
夢が叶ったことを、夢想と思われた戦術が発動したことを叫ぶ
戦場で祈ったという怯懦の事実を喧伝するように大きな声で言った

「あれは」

「そうだ、紅の盾、軍師様の援軍だっ!!!」

ヴァルトは大声でそう叫び、すぐさま味方の鼓舞を行った
消沈していた勇気と気迫が戻ってくる
いい塩梅だ、調子のよい馬にまたがった時に似ている
どこまでも、誰よりも早く駆けていける、そういった予感
びりびりと、全身に漲る力

「ヴァルト様っ!!!」

「そうだ、これは夢じゃない、夢は叶える、我らのするコトは現実で、夢へと近づく努力」

馬が大きく嘶きを上げた
どぉおおおおっっ!!!
全軍がそれにあわせて、一呼吸置いた雄叫びをあげた

「我に続けっ!!!正面左方より三段突撃開始っ!!!!」

ヴァルトの指示は的確だ
今、絶対にしなくてはならないことをすぐに判断して実行に移した
この場に軍師殿はいない、いないが、彼の描いた通りに戦場は動きはじめた
三方からの攪乱突撃を食らい、大きく隊列を乱したデハン軍は退却を始めた

「逃がすな、追撃開始っ!!!控えの歩兵は隊列組み直して、順行せよ」

ヴァルトは騎馬隊で追い打ちをかける
さらに、歩兵の後詰めをつけて、万が一の反撃にも備える用意を作った
完全に攻守が入れ替わった、戦争の極限点というものがあるそうだが
今、まさにその極限点を越えた、攻撃の勢いがなくなり、防御の抵抗が勝る瞬間、
電撃的な反撃が始まった
もともと人数としては若干の優勢を保っていた
混乱に陥り、その過半数が統率を失ったとはいえ、主力を寄せ集めれば
隊列さえ組み直せば騎士隊というのは、戦闘力をすぐに増幅させる
ヴァルトは自信に満ちている
自分が育てた騎士隊ならば、書物にあるという東方の聖騎士隊に勝てると

「勝てる、神に勝るぞ我々わっ」

ヴァルトの突撃が特に効いたのか
いよいよ壊滅状態へと誘った
完全な乱戦の様相を呈し、敵は方々へとちりぢりに逃げ始める
掃討戦が始まっている、軍師殿が使わした援軍は
この事態を見据えていたかのように、まったく、ホウキで地面を掃くように
完全に駆逐を繰り返していく
この時、援軍の隊長を指揮したのは、軍師殿の代行を任されている冴えないと噂の男であった
凡庸で知られ、もともとは騎士隊志願だったが
どうにもあがらない風采と、見劣りする武力により叶わず
軍師殿に拾われて今に至っている

軍師様の言うとおりに必ず、全てを完遂してみせる

それだけのために産まれてきたと笑うことがあるという男だ
それ故に、その精巧な軍事運用は目を見張るものがある
世に軍神が数多く謳われるが、紅の国では軍師殿を置いて他にはいない
その影役を務められるのだから実力は折り紙付き

「急に元気になりやがったな」

「いかがされますか、治安公」

デハン方の中心はまだ余裕があるらしい
一際大柄で、銀色に輝く鎧を着た聖騎士は
戦場を大きく眺めてため息を一つつく

「こうなっちまったらダメだ、平野部から下がるぞ、できるだけ部隊をまとめろ」

手をふると、手近にいた騎士隊長達は一斉に散っていった
各人が、ちりぢりになっている部隊をまとめて隊列を組み直すらしい
もっとも、退却のためにだが

「奴らが逃げる時間を稼いでやらなくちゃぁな」

聖騎士は一人大柄の馬を操り
喧噪の中でじっと、集団の動きを観察している
一人だけ呑気なものだ、そうともとれるが
まだ敵の声しか届かないその場で、何に脅えるものがあるのか
笑う
戦場で笑う
微笑みは、満面を浮かべて、夜空に浮かぶ月のようだ
それは
美しいと思うが、どうだろう、見ているだけで不安になる心を凍らせる光を放つ
月光は、熱を失った極度の光線
銀色の鎧は、幾人かの返り血を浴びて、所々が紅く染まっている
そうだ
月も、どういうわけだか、紅く染まる夜を持つ

「まぁ、月が夜にしか出ちゃいけねぇなんて決まりはねぇな・・・弓隊っっ!!!!」

聖騎士は大声をあげた
緑色の一群を見つけて、それに照準をあわせる
すぐさま、まわりで右往左往していた騎士達も集まってきた
散っていった騎士隊長達はその声に勇気づけられて
ただ、敗走を完璧に行っていく

「目標、あの緑色の鎧どもだ、二段斉射、かまーーーーえ、・・・・・放てっ!!!!」

ずわっ
大声で合図が送られると、戦場のあちこちに散っていた弓隊は
隊列を組まないまま、目標めがけて弓を放った
轟音をあげて、強弓の離れ弾は敵の中心を襲った
聖騎士は見事な戦術眼を持っている
戦力の中心点、重心とやらを貫いている
そこをブレさせるだけで、戦況は大きくたわむ
傾きを失いつつあった自らの勢いをこの一撃で再び盛り返す
圧されている状態から小康状態まで、今一度より戻す

「弓!?隊列組まずに乱射でこの威力か・・・・三隊分裂、だが、突撃緩めるな」

ヴァルトもすぐさま応戦する
隊列をわけることで敵の集中砲火から免れる
こうなってはどうしようもない
聖騎士は諦めた様子で、威力行使とも言うべきか
眼前の兵隊を蹴散らして、足止めをさせた後ゆうゆうと下がっていく

「逃すのか」

ヴァルトが舌打ちする、しかし、その視界にまた
紅の旗が突撃していくのが見えた
それらが、銀色の騎士達とまみえて、また、バラバラと砕けた
敗走していく敵の姿は必死だ、完全に戦意を失っている様が遠目にもわかる
潮が引くように、紅の旗はするすると囲いを解いて戻ってきた
敵は散らばっている、無益になると踏んだのだろうか、それ以上の追撃を行わなかったらしい
ヴァルトには解らなかい、だが、完全に敗走させた戦勝の快感が全身を包んだ
それだけでいいだろう
仲間達と、大声で勝利を謳う

騒がしい騎士隊の横、軍師代行が呟く
軍師様のご指示の通りとしました
天に囁くことで、届くのかもしれない

代行は、手渡された地図を眺める、寸分の狂いもなく、現状が予言されていた

紅の国は比較的地形に守られた国土を持っている
城都は森の中に作られている
もともとは黒い森の国として知られていたが
現在は町の発展などがあり、森林地帯は切り拡げられて少なくなっているが
未だ、敵を防ぐ力を失ってはいない
南に大きく海へと張り出した地形を持ち
東にブライテストタール領
西にヴェステン領
その二つの領地を外国に向けた前線として、事実上支配し繁栄している
北方は山脈が横たわり、山を越えたところに大きな国がある
山脈は険しすぎ、紅の国と地続きではあるが乗り越えることは不可能
いや、可能なのかもしれないが、未だかつて冒険家以外にそれを成したものが居ない

ただし、北方山脈の中腹あたりにはいくつかの部族が住んでおり
紅の国から追い出された者などが逃げ込み、少々治安を悪化させている
その北方に対するため完成されたのが、北砦だった

「気を付けなくてはならないのは、ヴェステンの西にある三国です」

「彼らとはあまり親しくありませんからね」

「そうツエク様、一層、外国に対して気を配らなくてはなりません」

「それら遠西の三国が、これから何かしてくると?」

「おそらくそうなるでしょう、特使の類がやってくるか・・・あるいは」

「北の大国と組んで攻めてくるか?」

「その通りです」

軍師殿は、姫様の指摘に小さく危機感を覗かせて頷いた
北の大国は紅の国にとって脅威となり得る強大な敵だ
現状は山脈に阻まれて手を出してきていないが
ヴェステンの西から長征をかけてくれば話が厄介になる
現状の混沌とした状態で、大軍を仕向けられると
いくら戦上手がいても苦戦は免れ得ない

「先の遠征にて、ヴェステンとの関わりを確実にしてきましたので、問題は無いかと思いますが」

言葉を切って、軍師殿は東へと指し棒を滑らせた
ブライテストタールの位置で一つとまる

「奪還をしましたが、ここをそろそろ確実に押さえて置く時分かもしれません」

「領地を拡げるということですか?」

「まぁ、そうでしょう」

「さて、誰に治めさせるのですか?」

女王が興味深そうに聞く
答えをだいたい解って聞いているらしい
伺うような下から覗きあげる視線が蠱態を帯びて見える
軍師殿は、からりと笑顔を見せて説明を続ける

「グイ導師がよいでしょう」

「導師を!」

「そう、グイ導師はすでに一国を率いるに充分な資質と人臣を集めておられます」

「なるほど、確かに与えておかしな物ではありませんね」

「そうです女王様、そしてツエク様、これからが政治となります」

「政治・・・とされるならば、グイ導師に国を与えるのは間違いではないのですか?」

驚いて女王が息子を見る
敬愛してやまない導師に対して、警戒を唱えるようなことがあるとは
大人二人は驚いて一瞬言葉を失った、ツエクはさらに続ける

「虎に翼を与えるようなものになると、古来よりあるではないですか」

強い家臣に褒美を与えすぎることで
やがて己も滅ぼされてしまう
栄枯盛衰など、おおよそそういったテンプレートじみたもので出来ている
ツエクはそれを危惧している

「確かにそうかもしれません、しかし、そうなるのに時間がかかることも確かです」

「時間?」

「授与、統治、いざ反抗に及ぶ、それまでに時間が、少なくとも5年はかかるでしょう」

「たった5年ではないですか」

「5年あれば、ヴェステンから西の三国を平らげられます」

「軍師殿・・・」

「さらに、5年経つ前にブライテストタールには谷の向こう、オースト地方へと目を向けて戴くことになるでしょう」

「そう、なのですか」

「西の三国については、これからツエク様の新政によるところもあります、よいですか?」

こくり、
ツエクは軍師殿の演説に聞き入る

「東のバンダーウ教は、おそらく今回、デハン教と取引をし港を開いたはずです、
それに対する罰を与えねばなりません、その役目は、グイ導師にして戴くことになります」

「しないのでは・・・」

「必ず、します」

強く断言する
暴論にしか聞こえないが、軍師殿には確固たる自信があった
グイ導師の成り立ちと、バンダーウ教の確執
これらは利用と呼ぶにははばかれるが
大きな要素を含んでいる、おそらく遠からず、バンダーウを飲み込むため
バンダーウ・グイは立ち上がることを欲するだろう
その地盤としてブライテストタールを分ける
グイにとって国土を拡げるというものは意味がない、バンダーウ教にとって代わることに
全ての意義を見出している、そこを使う

「わかりました」

「もっとも、そこまで先の話は机上の空論であることも確か、ツエク様のご指摘どおりでもあります、
うまくいかない可能性は充分にある、しかし、それをうまくいかせるため
これからその結果に向けて努力をするのです、その一歩のためにも」

「南の戦い?」

「南は終わりましたよ」

軍師殿は笑う
ツエクは驚く

「既に主眼は西に向いています、主戦地はヴェステン」

「もう、手が?」

ツエクは呆気にとられる思いで
目の前の賢人を敬った
まだ、南の戦勝が伝わるかどうか
そんな時期なのに、既にそれは終わっているとして
次の戦い、しかも、最終着地点までを予測して備える
その姿に感嘆する

「グイ導師の思惑どおり、港から船に乗って逃げて頂ければよいですが
単純ではありません、そうして戴くために、すがるものを一つずつ潰していくのです」

軍師殿は説明を終えるが
心内、大きな不安を抱えている、読み通りに動いていくだろうが
ここから先は綱渡りになる
ヴェステンでの調略は急ごしらえだった
まさか、元姫君の軍勢が押し寄せてくるなど毛ほども想像しなかったのだから
しかも、その元姫君には、ヴェステンの血脈、賢女キルシェがいる
彼女との知恵比べに勝てるか
その不安は、決して表に出さず、講義を終えると、満足した様子でツエクが立ち去る
一仕事を終えた、そんな気分になる

「軍師殿」

「なにか?」

女王が、しばらく黙っていたが
重い口を開いた

「ヴェステンと戦になるというのは、キルシェ皇女とのことでしょう?」

「・・・おそれいります」

「ならば、一つやりようがあります、むしろ、私が得意なそれが」

女王は濁しつつ
軍師殿を見て笑う
軍師殿はわけもわからず、愛想笑いを浮かべる

「姉様と喧嘩をするなど、怖くて眠れないものですが、キルシェなら人間、乱すのは他愛もないということ」

「お言葉の意味が・・・」

「キルシェを造反、いや、反抗させる、あるいは自滅させましょう」

「それは、確かに、最もよい策となりますが、はたして」

「軍師殿には思いつくこともないでしょう」

くっくっく、小さく笑う
胸元の黒石が一際強く輝く

「所詮、女、そういうわけですよ」

女王は楽しそうに
言葉遊びをする、軍師殿にはわからない
が、何か、得体の知れない力を女の瞳に見た

つづく

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ペース戻らねぇな畜生
後半推敲しておりませんので、また明日補完します、申し訳なし
(07/06/05)