Edelstein ”Karfunkel”
「今頃は、北の砦で英雄騎士アルと蒼騎士ゼー殿が交戦中だろう、その結果すらも見えてる」
「・・・・・」
「お前はどうする?いや、回りくどいことはよそう、こちらに来い、実際のところ
諜報部について、姫様は信頼を抱いておられる、亥の一番に我々に声をかけられたのだ、
機会だぞ、俺達がさらに飛躍して、この仕事を、任務を全うするには」
常駐係はそう言って、ゼーの使いを口説き倒した
ゼーの使いは正直戸惑っている
この男は幼なじみで、よく功績を競い合った好敵手
そして、よき友人だ
それが、確かに、諜報部の特典とも思われる、情報の最前線で、誰よりも濃厚な密度の
素晴らしい速報によって、自分の身の処し方を訊ねられる
そこに、はたして、人生を賭けてもよいのかどうか
「姫様が声をかけたというのは」
「この家そのものにだ、そもそもあの方がこの家を造られたのだから当然だな」
「そうか・・・・俺も、考えてみれば、姫様に声をかけて戴いて諜報になったものだな」
「そうだろう、詳しいものだ、どうも既に紅の国にも何名か潜んでいるらしい」
「しかし、それはそれとして北の砦はどうなるかわからんぞ、
ゼー騎士はやはり武人だ、アル騎士が英雄なのは確かだが、戦争は兵力がモノを言う」
「甘いな」
駐在員は笑いながらそれをあしらおうとする
「既に間諜が様々に入っているのだ、実際お前が来る前から、ゼー殿の動きは
姫様は関知していたし、その上で次の手段を講じているらしい」
「・・・お前こそ落ち着け、姫様のバックボーンはなんだ、仮に、いや大本営が考えてるのは
デハン教徒の蜂起だ、対デハン教を想定して現在、紅の国の防衛は進んでいる」
「ほう、デハンだとは知れていたのか」
「南港の街や北方、ともかくブライテストタール以外で最近増えていたらしいからな、
姫様が首謀というのは意外にすぎる、だがその下支えは、デハン教徒なのだろう?
噂によれば、難民だそうじゃないか」
「・・・・そう、かもしれんな」
「そうだろう、だいたい、これから紅の国に侵攻を始めるとしても
これ以上手は拡げられないのじゃないか?人員が、戦闘員が少なすぎるだろう
今、このブライテストタールを維持するだけでデハン教徒の大半が割かれてる、
先行隊というのが進めば進むほど、兵站線確保のための人員が足らないじゃないか」
「そのあたりは、既にブライテストタールの人民は姫様に従ったのだから」
「非戦闘員じゃないか、紅の国が本気で全戦力を投下すれば駆逐できるのは明らかだぞ、
姫様が統治されていた頃から10年、10年の間に女王様は国を富ませたのだ、
兵力と、なにより、国力が違う、こればかりは、いくら姫様でも勝てるわけがない」
「だったら、どうすると」
言い争いが少々続いた
つまらない会話だ、他人が聞いておおよそ、面白いと思うことはない
単純に、自分たちの予測で、自分たちの進む先を見つけたいと思っているだけだ
駐在員は少し黙った、目の前で幼なじみは必死の形相で自分をもう一度味方にしようと言う
「俺達は、紅の国の諜報員だ、その任務をまっとうしよう、できるのは
そうやって紅の国に圧倒有利をもたらして、戦争の期間と残酷な目にあう国民の数を減らす
手助けをすることだろう・・・そもそも我々は祖国を裏切ることだけはできないはずだ」
「・・・・そうか・・・」
言うと駐在員は席を立った
そして後ろの水台で、デキャンタの水をグラスに移している
喉が渇いて、それを潤そうというのだ
緊張するとそんなもんだろう、ゼーの使いはそう考えた、でも、違和感がある
目の前には、自分と、駐在員の飲みかけた酒が置いてある
がくり、突然だった
ゼーの使いは膝から折れた
まだ、意識ははっきりしている、自分の体がどうにかなった
それを知覚するだけの力はある
急いで頭を回す、どうして、何が、何をしなくてはいけない
「残念だ、お前だけはと思ってたんだがな」
「てめ・・・盛りやがったな」
駐在員は薄く笑う、そうだ、この男はそういう男だったのだ
昔から、一緒にやってきたが、ついぞ腹を割ることがなかった
ライバルなんてそんなもんだろうと思っていたが
ライバルという、他人が当てた言葉にうっかり騙されていただけだ
「悪いが、もう少し本国への通達も遅らせなければならない、お前の推測はいつだって正しい、
確かに、姫様の手下の数は本国を攻略できるほど揃ってないよ」
ぎし、余裕をこいて、つっぷしたゼーの使いの横で
駐在員はイスに腰掛けた、後ろに立てかけてあったサーベルに手を伸ばしている
それで、彼を殺そうというのだ
そうだった、ライバルというのは敵のことだったのだ、何を当たり前の前提を・・・
「だから、姫様は情報と速度で攻略をするつもりだ、忘れているだろう10年も前だ、姫様はいつもそうだった・・・」
サーベルがギラリ、光を求めて姿を表した
その刃をとっくりと、緑の瞳に光を散らして見入る
どだっ!!!
「かはっ!!!!・・・・・・!!!」
ばだだだん、床の上で男が二人転がり回った音が起きた
外に漏れているかもしれない
思ったが、この隠れ家のまわりに人間は立ち寄らない
そういう場所に建てられているのだ
ゼーの使いは渾身をこめて
まだ、毒が回りきる前の体を使って一撃を見舞った
先ほど一度、この男に向けたナイフを抜き、起きぬく勢いのままに体を反転させ
刃を真っ直ぐに走らせた、旋が立つ、一瞬で的確に
寝ている体勢から放ったとは思えない、美しい青白さ
一瞬、蒼く、駐在員の後ろ首は光ったが、すぐに真っ赤なそれ、灰色のそれを吐き出すに至った
「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・落ち着け俺・・・・落ち着け」
死体と並んで寝ている、ゼーの使いは血液と髄液の類にまみれて考える
自分の状況を整理しないといけない
体のしびれはいよいよ酷いことになった、意識は大丈夫だ
俺がどちらに付くか言う前に出されていた酒だ、致死量の毒じゃないだろう
だが、問題はどの程度なのか、どれくらいで復帰できるのか
話によれば、ゼー様の隊はやられているのだろう
もっとも、ゼー様も本気で交戦の構えじゃなかったから、全滅ではないだろう
そこで、どの程度まで情報を拾えるか
相手が、あの姫様だと解るだろうか
「そんな愚は犯さぬか・・・アル騎士のことを、ゼー様は知らないんだったな」
ゼーは若い、もっともアルとて大して年齢を重ねているわけではないが
アルもまた、ゼーと同じく若くして籍を置いた騎士だ
アルが居た期間とゼーが居た期間はかぶらない
話は聞いていただろうし、顔も何度か見たかもしれないが・・・
ゼーは、アルを見てその英雄騎士だとは思わないだろう、異邦の騎士まがいと判断するだろう
「ならば、私は・・・」
ぐっ、体に力を入れてみた、だが
まったく動く気配がない、完全に回ったらしい
なんとか、どうにかならないだろうか
一刻も早く、城都へ情報を届けなくてはならない
ゼーの元には帰らず、直接女王様の元へ
ゼーは、緒戦で得た情報を総長であるグイ導師に伝えるだろう
そこは前線に任せ、最重要機密は枢密へといざなってしかるべし
ひたり、その気持ちからか、汗をかいている
そう思った、頭だけはまだ動くらしく、ゆっくりと顔を床に向けるよう動かした
「!!」
目の前に血の海がある
そして、よきライバルだった何かが落ちている
こちらに背中を向けた形で倒れてくれている
死体の顔を見なくていいのは助かった
そこから、血の海は彼のところまで流れている、そこで閃いた
「・・・・・・・・」
ぺちょり、ず、ずず。ずずずり
それをすする、鉄の味が広がる、他人の血をすする行為
吐き気を催す、そして
彼は、おそらくその行為によって
いち早く中の毒を外へと出したのだ
一瞬だけためらったが、踏み越えた時、その頭の中、体の中には
使命感だけが満たされていた
どれくらいの時間かわからない、完全に昏睡したが
彼はわずか3時間で立ち上がるまでの力を戻した
そこから、水をたらふく、外が暗くなっている、頃合いだ
外へと飛び出した、誰も小屋に帰ってこなかったのは、幸運だった
☆
「状況だ、状況を報告しろっっ!!!」
吼える蒼騎士
苛立ちはいつになく上り詰めて、形相を鬼のように歪めている
敗走、練習ですら味わったことがない疾駆を強いられて
今、彼の自尊心は割れたガラスを思わせる
原形を留めていない、どれもこれも鋭く尖り、手をつけられない
数時間の退却を強いられた
追撃は執拗に行われているらしく、後方、しんがり隊は
次々と粉砕されているらしい
追撃戦にまったく躊躇のない様は、戦争上手を悟らせるに充分だった
何者なのだ
ゼーは、完膚無きまでにやられたという事実を
必死に認めようと、歯を食いしばっている
「後方隊の苦戦も尋常ではありません、いかが・・・」
どごっ!!!
思いっきりぶん殴った、周りの部下達が怯んで固くなってしまう
しまった、殴ってから思ったが、怒りはおさめられない
隊長としてどうかと思われるほど、ゼーは今平常心を失っている
ぎりっ、音を立てて歯をすり減らす
「隊長、我々はあくまで偵察が任務のはずです、ここは全力退却のご指示を」
「できるかっ!!!!ここまでされて、おめおめ下がれるかっつうのっ」
「しかし」
「おい、長槍隊はどれだけ残ってる」
「まだ200は・・・」
「よし、長槍隊前方で防御陣地を構えろ、両翼に騎馬隊で挟み込んで反撃だ」
この状態から反撃に移るのか
隊員達は顔色を悪い方向へと変えた
それを認めて、また、ゼーが怒りのまま情けない顔をしている部下をぶん殴る
そして、気合いを入れさせる
「いいかてめぇらっ!!!侵略者にちょいと叩かれたぐらいで、ビビってんじゃねぇぞ、
蒼騎士隊の訓を思い出せ、腹の底に力を入れろ、立ちはだかる者は薙ぎ倒せ、我らの旗をなびかせろっ」
精一杯にゼーが声をあげる、隊員達は訓練を思いだし
号令のままに散開して防御陣を張った、それなりによくできている
敵方はそれを見て、一瞬躊躇した様子だが、すぐに勢いのまま攻めてきた
正面衝突、絶対ぇひかねぇっ
ゼーは、味方を鼓舞する大声を上げる、呼応して蒼騎士隊全体から
うなり声があがった、どがしゃがしゃがしゃがしゃっ、鎧の、鎖の、槍先の
それぞれがちりぢりと擦り合う、摩擦の音がやかましく戦場を覆った
敵との衝突、それをかわぎりに左右に展開していた騎馬隊が一気に間をつめる
正面で受け止める槍隊は、真っ直ぐに槍を前にして敵と交錯する
訓練ならば、これで打尽とあいなるはずだった
「ゼー隊長っ!!!しょ、正面が破られますっ!!!」
「バカ野郎っ、気合いが足らねぇんだよ、てめぇらそれでも蒼騎士隊かっ!!!
敵を畏れるな、叩いて捻り潰せっ、跳ね返せっ!!!」
虚しく声だけが響く、怯むことなく、そして
左右からの攻撃を意に介することもなく、正面突破だけに注力してくる敵
歩兵前衛が槍隊と交錯して、器用にその槍をからめとって無力化させると
後方からの鉄槌隊が蹴散らしに上がってきた、そして三の陣として騎馬隊が突入
崩壊する前線、ゼー隊はまたも木っ端微塵に粉砕されることとなる
「!!!こうなりゃ、一匹でも多くっ!!!」
ゼーは、隊長としてそれ以上下がることを捨てた
携えていた手槍を大きく投げる、剣を抜く
正面を突き破られて、味方が防御後退を強いられている、前線が近づいてくる
ゼーは立っているのに、前線が勝手に近づいてくる
ぎりりり、柄をこれでもかと強く握りしめる、敵の正面が不思議と割れた
そして、大将格と見える白い鎧の騎士が現れた
「てめぇが大将かっ!!!紅の国蒼騎士隊隊長ゼーだっ、相手をしろっ!!!」
ぶ、ぅ、んっ!!!!!
剣は虚しく空を斬る
陽光がまぶしい、太陽を背にされている
どうしたことだ、いつも当たり前にしてきたことがまるでできてないじゃないか
ゼーは自分の愚鈍に怒り、その怒りだけでなんとか戦い続ける
白い騎士の顔はよく見えない、ただ動きは鋭く、剣の腕はおそろしく立つのがわかった
やられる
まだ、ゼーは若い
殺される、という意味を理解できていなかったと
傍らで冷えていく心が冷静に見つめていた
やられる、ってなんだ、死ぬんじゃないのか
恐怖なんだろう、これだけ怒り、暴れ、抵抗しているというのに
どんどんと体中から体温が抜けていくように思われる
ギンギンと、剣同士がぶつかる度に、その音が自分の少しでも間近で起こる度に
殺ぎ落とされるように、自分の生きた心地というのが無くなっていくように感じられた
「うおおおああああああっっっ!!!!」
あらぬ限りに吼えた
振り払う、恐怖と絶望と死を
だが、それらはもがけばもがくほど、まとわりつくように
手足に絡みついてくる、粘りながら自分を取り込んでいく
ゼーは狂ったように、いや、実際既に狂っていたのかもしれない
奇声をあげて、ただ、抵抗をした
習った型などできるわけもなく、両腕にずしりと重い、鉄くれを振り回す
目を見開き、声をあげ、顔を蒼くしてそれをしていた
「ゼー隊長っ!!!」
まわりで部下の声が聞こえた気がする
そちらに気をまわすことすらできない、目の前の白い騎士は
ただ、何も言わず、どんどんと重圧をかけてくる
どんどんと大きくなっていく、どんどんと迫ってくる
狂気の中でも平生と同じ所作を行えたら、それだけで有利になる
白い騎士は、型どおりに動いてつめてくる
ひゅんっ!!!
「っ!!!!!!」
どこかに痛みが走った
ゼーはパニックに陥る、まったく見えなかった
完璧に封じたと思った手に、もう一枚何かの攻撃が加わっていた
それが、わずかに顔の横を過ぎて、ぽたり、汗と紛うほどはっきりと
頬から血を流した、首を振るとそれが飛び散る
上げていた声は出ない、口だけをあけて、目をしっかりと開いて
だが、どこにも相手の剣先が見えない、どこに消えたのだ
ど
「ゼーっ!!!!!右だ、右に倒れろっ!!!」
「!!!ぇああっ!!」
よく通る声、それが誰のものか、脳が理解するよりも先に
その言に従うことを脊髄あたりが判断したらしい
ゼーは、全身を擲(なげう)って右に倒れた、そこを刃が通ったのを見た
ようやく見えた、倒れながら、すぐに姿勢を糺す動きに切り替える
受け身で地面を転がりながら、相手から視線を外さず
なによりも、後援の動きを予測して整える
「朱騎士隊参上!!!!、我はマリーネ、賊徒よ、そこに首を置いていけっ!!!」
がぃんっ!!!
派手な音だ、凄まじい衝撃だったと見えて
白い騎士は何も言わず、だが、確実に大きなダメージを負ったらしい
手が痺れたのか、じっと耐える姿勢になったまま後退を見せた
馬に乗ったマリーネは大きくまわってまた、こちらへと向かってくる
それに合わせてゼーは立ち上がる
「挟むぞっ!!!!」
「わかってるっ!!!」
ゼーの声にマリーネが応える
白騎士は一瞬戸惑った様子だ、ゼーの声に反応して体をそちらに開いた
陽動だよ、ゼーは心の中で笑う
そのまま突っ走る、自分が走って向かっているという事実を視界に
それだけで、白騎士の動きは、のたる、その向こうから凄まじい勢いでマリーネが近づく
二人刃を向けて挟み込んだ男に一太刀を見舞う
もう、横に避ける等の暇はない、一瞬だ、全てが一瞬なんだ
ゼーの剣が振り上げられる
白い騎士はその様子をじっと見ていた、見ていて
半歩、いや、蟹のように足を開いたまま、大きく一度撥ねて後ろへと下がる
その動作の最中、白騎士はじっとゼーを見つめた、その瞳に既視感を覚える、どこかで見た瞳
ゼーは剣を振り上げたが、2歩以上近づかなくては届かない
そのまま、勢いのまま、不格好だが振り上げた格好でさらに足を進める
ゼーの動き、前進速度が急激に衰えた、当然だろう
走るには、あまりにも不格好なのだ
それを見て、突然白騎士は振り返り背中を向けた
ゼーは驚く、目の前から白騎士はどんどんと離れていく
実際はわずか数歩だ、その数歩目測を誤らせたことが決め手になる
がうんっ
大きな音がして、馬とすれ違った
どぉっ、派手にマリーネが馬の上で両腕を上げてのけぞった、そんな馬鹿な
ゼーは狼狽えつつ、止まらない足はそのまま男の背中へと近づく
マリーネがどうなのか、心配かたわらに無防備に晒された背中に向けて剣を振り下ろそうと
さらに歩みを進める、刹那
その背中が、視界が歪むほどの殺気を感じる
どたどたどた
三歩歩いた、すっかり腰は浮ついてしまい
振り上げたままの剣は、大した力をもって振り下ろせないと気付いた
相手は背中を向けている、しかし、向けたままで足は開いたまま
腰をひねって力を溜めている、渾身の一撃がくる、や、ば、い
ず、ぅ、んっ!!!!!
突風が襲った
また見えなくなった、剣先が消える、だが凄まじい勢いで
目の前に銀色が広がってきたのがわかった
それは剣が近づいているというサインなのだろう
知覚するまでの時間は無い
白騎士は現役の頃、実際は今も現役だが、得意としていた突き技を持っている
それが放たれた、突き技だが一定以上の距離を必要とする必殺技
相手が自分に大して平である、自分が真横になりT字を創ることが前提になる
正拳を見舞うような平突き、向かってくる相手はかわす余裕がない
どんっ
突き飛ばされる
ゼーはこの戦で自分を失った
精神でも、肉体でも
まったく不可解な、自分の力では発生できない横への移動
なぜ、思いながら、音とちかちかする視界の変動だけがわかった
「ゼー、戻れ、戻ってグイ導師にお伝えしろ」
その声だけが、ずっと耳の奥に残っている
すれ違う馬から落ちながらゼーをマリーネが救った
爆音は、血の霧を作って、ゼーの視界を塞いだ、一瞬だけ
しかし、ゼーは転がってから、すぐに、言われたままに走ることにした
マリーネの方向を振り返らない、何も考えない、馬を見つけて乗り上げる
そして高らかに宣言する
「朱隊と合流せよっ!!!退却するぞっ!!!」
部下達は声のままに退却を始める
蒼と朱が入り交じる、美しい色合いが眼前に広がる
新手を見て、白騎士はすぐに劣勢を悟ったのだろう、引き上げをあちらも命じた
両者がこのまま兵を引いたのである
損害は甚だしい
こうして第一戦は幕を引いた
哨戒報告
哨戒隊ほぼ壊滅、後援ありて脱落する
死者500人に上る模様、敵、侮りがたし
追記:朱隊隊長マリーネ帰還せず
☆
「!!・・・・・・・・な、にを、言っておるのか・・・・いや・・・あ・・・・あ・・・」
紅の国城都、そこで、女王はその話を聞いた
火急の知らせということで、しかもかなり重要な模様
毒を盛られたと説明した偵察兵は
その表情、いや、顔面の作りを著しく醜く変えていた
毒を盛られて顔が変形した、よくある詭弁ではないか、疑うこともできたが
彼の必死な様子に女王は感じるところがあったらしく
グラスと、有能なボディーガードを共にして、彼の話を聞いた、例の薄暗い地下室
聞いて、女王は上記のように、気をやったのである
「あ、姉姫様?・・・ば、バカを言うな・・・姉姫は自刃なされ、いや、したのだ、生きているはずもない
何を馬鹿げたことを、馬鹿げたことを、馬鹿げたことを、馬鹿げたことを・・・」
「間違いありません、おそらく、デハン教徒を従えてのことと思われます」
「・・・は、はは・・・・そ、そうか・・・成る程、はは・・・」
女王の様子が尋常ではない、それにいち早く感づいたのはグラスだ
まずいと言うことを知っている、女王にとって、姉姫の存在がどうであったかを
端的ではあるが知っている、だから、今の女王は誰にも見せてはならない生き物になる
「うそだ・・・そうか、いや、殺しにくるのか、わたしを、妹を
そうだった、あのひとはいつも、ぜったいに、だれかを殺すのだ、そう、殺すの
殺される奴は喜ばない、決して、絶望と暗澹と凌辱と凄惨と残酷と
ひとまとめにしたうえで、それからの解放を思い、うすら笑顔を形作る
はは、そう、そうであった、なんだ、考えてみれば当たり前じゃないか、
わ、わたしを、こ、殺し・・・・い、いや・・・・は、ハンプ、ハンプは、ハンプはいずこっ!!
ハンプ、た、助けて、お、お願い、助けてっ!!!」
奇声という悲鳴をあげて、女王は完全に常軌を逸した
何事かわからないことを早口に言い立てると、頭を抱えて藻掻きだした
それを見て、目を円くする連絡員、その醜くただれた顔でも
驚いたというのを表すことはできるらしい、それを見て、グラスはすぐに行動を起こした
ぞくっ!!!!
血しぶきがあがる、ボディーガードが有無を言わさず連絡員を殺した
これだけの立派な働きをしたのに、あまりな仕打ち
実に優秀な調査員であり、絶対的な忠誠心を持っていた、惜しい
そうも思われるが、この機密といえるほどの事態を見た以上
生きていられるわけがないのだ
彼は手段を間違えた、あくまでその情報は、直接女王に告げるではなく
グラスに告げた後に伝わる、それにするべきだったのだ
全ては後の祭り、死体になった彼はそこまで考えることはない
ブライテストタールで転がる友人の死体と同じ姿になって屍を晒す
「姫様を、・・・・慰めてさしあげなさい」
「心得ております」
ボディーガードは平然と次の動作に移る
グラスはじっと、それを傍らで、少し離れた場所で見守ることとなる
「ハンプ、ハンプっ!!!」
「淫売の女王、お前の娼主はもう居ない」
「っっっっ!!」
ぶるっ、女王は一瞬大きく震えた
その野太い声、そして、暴力的な内容に身をよじった
ぱぁんっ!!!
そしておもむろに平手を食らわした、手の甲で殴るのだから
それは平手と言わないのかもしれない
「きゃぁあっ!!!」
「そうだ、お前は悲鳴を上げることで存在を保てる豚だ、さぁ、あらぬ限りに泣け」
「わ、わたしは、わたしは、わたしわ」
「お前は、奴隷だよ、その身分からやっしたとはいえ、根っこは奴隷だ、それを思い出しただけだ」
「私は、そう、娼婦で、淫乱で、どうしようもないクズ」
「陳腐な言葉で罵ったふりをするなっ!!」
っぱぁんっ!!
「ご、ごめんなさいっ、わ、わたしは姉姫さまの玩具で、淫売で、淫蕩のそれで」
「そうだ、お前の仕事はなんだ、どうしたいどうするのだ、股を開け、いつものようによがり狂え」
「だ、抱いて、撞き込んで、お願い、熱くたぎる棒でめちゃくちゃにして、してください、くださいっ」
既に濡れているというレベルじゃない
どういう構造なのだろうか、理解しようとも思わず
ボディーガードは事務的に、女王を罵り、そしてその股を開かせた
どろどろと、熟れたそれが見える
そこに乱暴なまま、ただ、撞き込む
ボディーガードは慣れた様子だ、もともと嗜虐の心得があり
また、時折女王がこのような癪を起こすことを知っていたのだ、その度に同じように躾けている
「うぅんあああっあああっ!!!」
「いきなりでもしっかりとくわえ込んでるじゃないか」
「だ、ダメ、巻き込む、まきこむのっ、私の、下の口が裏側にめくれこむ、めくれこむのっ!!!」
「いやならもっと濡らせ、さぁ、どろどろと、ヨダレを垂らして迎え込め」
「う、ふ、あ、あ、ま、待って、ま、待ってください、お、お願いします、す、すぐに、すぐに、うぅくっ」
言い逃れるようにしながら、しとね、そういう具合で
女王は逃れるように体を泳がせた
その仕草は男の劣情をかりたてる
すぐに、どんどんと撞き込みを強めていく、つぱんつぱん、狭い部屋に木霊する
肉が肉を叩く音、何度も、この部屋では何回となく響かされたそれ
それを今、女王のほとはヨダレをほとばしらせつつ、ただただ、撞き込まれて嬌声を上げる
「もっと、もっと、めちゃくちゃに、ずっと、壊すくらい、お、お願い、お願いっ!!!」
言われるまま、ただ、男は腰を叩きつけた、そして罵声を相変わらず浴びせる
次第に、その罵声を浴びせる行為に酔ってきたのか、男の調子はあがる
あがるまま、いよいよ、クライマックスへと向かう
撞かれ、ただ、よがり狂い、女王は芳香を漂わせる
その甘い匂いが、同席する全てを甘美に招待する
「んなああああああっっ!!ぉおおおおっ、ひぎゃい、ひぎゃいっ、こ、壊れる、も、んんっぁっ」
「ほら、その顔で受け止めろ」
ずりゅ、音を立てて棒は抜かれて
怒張したそれはしごきたてられて、白濁液を放つ
女王はそれを受け止めて、かけられる度に
細かく四肢を揺らした、その揺れる体を男は踏みつける
何度も、何度も、きゃぁ、ぎゃぁ、女王は声をあげてよじりながら
それでも、踏みにじられる度に大量の淫液をほとから漏らし続けた
白濁にまみれつつ、股ぐらはまだまだ男をくわえ込む準備をしている
足の裏に圧されるそれに欲情を見せて、瞳の色が桃色に変わり
どろり、その視線で男を見た、刹那
「女王を足蹴にして笑うかおろかものよ」
冷たく言うとすぐに、側に置いてあったナイフが一閃を見せた
ボディーガードは一瞬どうなったのかわからなかった、ただ、自分のそれが
まだまだ脈打ち、次の射精を心待ちとしている、その紫に光るそれが膨張をきわめている
その様を見ながら、脳は人生で最高の快感を催した、痛みを亡くし絶命する
めまぐるしくこの光景は変化していく
女王は、女王である自分を取り戻した
グラスはこの事態に、初めて遭遇した、過去に何度も弱気になって
打ちのめされたいという欲求に流される女王を見たが、その最中に反転する様は初めて見た
女王様の中で、何か変化が起きた
グラスは生唾を呑み込みながら、じっと主人を伺う
真っ赤に染まった地下室で、黒い石だけが妖しく光続けている
全てがいつもの通り、紅の国は混乱を覚えることなく
この有事に向かうこととなる準備ができた、だが、それでも
女王の胸下にはうずきがある
自分がサディストであり続けられる今の地位が
根底から覆される、そういう凶事が目の前に広がる様が見えるからか
あるいは
姉に服従する心が胸中にあるからか
すまない、明日またなんとかして再考します
ご、ごめんなさい、こんな出来でごめんなさい
一週遅れてこれかよと、思われつつ、酔っぱらいすぎて
もう意識不明であります
(07/04/02)
というわけで追記修正でありました
(07/04/03)