Edelstein ”Karfunkel”


「8つ?」

ゼーは耳を疑った
斥候の役目も担いながら、大胆な采配で
現在、紅の国側の前線に陣取っている
城都から3日の位置、ゼーは自分の指揮下にある蒼騎士隊を連れ
その道を順に過ごしてきた
敵の姿については、先行隊からの報告で
デハン方であると確認された、だが、同時に訪れた報せは
予想だにしないものだった

「この短期間に8つも砦を陥とされてるのか?」

「はい、主に北回りに8つ、前線が広がりすぎているようにも見えますが・・・」

「そんな戦略のことはどうでもいい、なぜこの短期間に8つも陥ちるかが問題だ」

「それについては・・・」

神妙な顔で報告者は隊長のゼーを見る
不可解を瞳に宿した青年は、少し汚れた彼の声に耳を傾ける

「とてつもなく強力な兵団がついている様子、どうも極東のそれらしいのですが」

「極東の武装兵団がどうして・・・・傭兵か?」

「その類かもしれません、率いている大将格にデハンの武力担当神官と
ツィーゲルの港で雇われていた傭兵団の隊長が居たとのこと・・・」

「しかし、8つとなると・・・兵力も膨大だな」

「いえ、それが・・・」

報告の兵は、事細かに集めた情報を披露した
敵方の人数はさほど多くはないこと
陥とされた8つの砦のうち、保持されているのは3つ程度であとは破棄されたこと
ブライテストタールとの間に強力な兵站線を引いたこと
聞くにつけ、敵の情勢が浮き上がってくる
ゼーは、じっくりと地図に目を落としながら報告をそこに書き加えていく
放棄された砦は破壊されたらしく使い物にならない
それを潰して、保持されている砦を見ると、確かに北巻きで城都に辿る
一番固い道を確保しているらしい

「・・・旧街道か・・・一番地盤がしっかりしてるところをとってきたか」

「ここを抜ける中央新道はとってきませんでした、新設の砦をかわしたのかと」

そうか?
ゼーは少し違和感を覚える、新設の砦が強いとは限らない
むしろ、最近できた砦は弱い、脆い、貯蔵庫という役割が強すぎて
戦争に向かないようになっている
平和が長いのだから仕方がないとはいえ
城都に通ずる道の関門となるにはいささか弱い
そこを敢えて攻めずに、もっとも固いところを攻めてくる
ゼーでは、それの狙いがわからないが、グイ導師、あるいは軍師様なら
なんとかしてくれるだろう、そういった情報を集める役目だ

「その後のブライテストタールはどうだ」

「ピストン輸送を続けております」

「そっちのが問題だな・・・ツィーゲルがついてるのか」

海路でどんどんと物資を運び入れているらしい
その物資を使って、攻城をなしたと説明がされた
戦術は奇妙と言うのか、あまり見ないそれ

「先行隊が穴をあけて、後続が侵入壊滅、壊滅を待たずして先行隊は次の砦に移動しました」

平定せずに、掠奪や虐殺を目的としているのだろうか
残念ながら、陥落した砦については逃げ延びた兵力が少なく
破棄された砦からは、何もなくなっていたという情報だけが得られた始末
ともかく、ブライテストタール陥落から10日で、随分と敵に地盤を造らせたのは確からしい

「わかった、とりあえずそれを後続に送っておけ、我らはその前線に向かうぞ」

蒼騎士隊をひきつれる
その動作と同時に、斥候をまた放つ
ゼーは小さく、一人だけにその役目を与える

「敵が紛れているかもしれん」

「密偵が?」

「念のためだ、貴様にだけ特命を与えておく、ブライテストタールに侵入して見張っておけ」

「・・・・一人で・・・ですか」

「仕方在るまい、二人、三人も割けぬ、お前の腕を見込んでのことだ、
なに、平定の様子を見たらそれで充分だ」

青ざめた顔をしていたが、密偵はふらふらとしながらも消えていった
ブライテストタール陥落は些細なことだが、その後すぐに
別都市を攻撃するほど余力を持たせたそのカラクリが見たい
ゼーは、後々自分が質問されるだろう答えを探しに行く

「整いました」

「よし、蒼騎士隊出陣、敵の顔を見に行くぞ」

返答の雄叫びがそこかしこから上がる
蒼騎士隊、総勢1000名
敵方、確認できた数700人

「ゼーがな・・・・なるほど、思わぬ成果があがったものだ」

「にゃ、ひゃいっ!!ゼー様が、よ、よくぅ、いたしてくらさいますっ」

可愛らしいピンク色の声を上げる
女王は、ねちねちとその声を上げる動物を嬲る
相変わらず手は使わず、足先で、ずぶちゅくと水音をたてながら
女の柔らかいところを丹念に虐げる
踏まれるほど、蹴られるほど、罵られるほど濡れる
実に不思議な穴だ、その持ち主を見ながら、女王は思索の顔を晒す

「まぁ、よかった、お前もようやく娼婦として出来上がってきた様子」

「じょ、じょおうさま、も、う、うぁあ、あああああっっ!!!」

がくがくがくがくがく
唐突に、ブリッジしたかと思うと、あっと言う間に果てた
結局女王が望む、いつまでも耐える生き物にはならなかったが
それなりに淫乱に育ったのでよしとしよう
その満足をはかりながら、弓なりに反った女を蹴倒す
きゃぁっ、声をあげるが知ったことではない、それよりも今、人を踏みたい気分だ
そういう瞳で、じく、リズを睨む
睨まれた女は、よくわかった様子で、おどおどとしながら五体を投げ出すように倒れる

「おー、きたない、きたない」

「ひゃ・・・はっ・かはっ!!!」

ずぬずぬ、突然に踏みつけた、しかも喉を
力を入れてしまえば頸骨をやって死ぬだろう、だが
女王は殺すことで情欲を催す高貴な趣味を持たない
あくまで、嬲ることに興味があるらしい
すぐに一瞬の死を覗かせた女の、別の場所に足の裏を置いていく
柔らかい肌は、相も変わらず保たれている
女王はその張りと艶に、少しだけ嫉妬する
若い娼婦はだいたい、そうされて一人前になるのだ、その嫉妬を晴らす
そのために、リズはされるがままで、女王よりもはるかに劣る様を見せつける

「さて、足で用足しもそろそろ卒業ぞ・・・手で相手をしてやろう、喜べ」

「は、はい・・・きゃっ」

ぱちん、ぺちんっ
平手が腿の当たりを痛打した、リズがびくりと震わせて痛みから逃れようとよじる
叩かれたそこは、すぐに紅く色づいてきた、女王は観察するようにその様子を眺めては
また、もう一度はたく、たたく、ぱちんぺちん、ぱちんぺちん、ぱちんぺちん
調教は念入りに、じっくりと、様子をみながら
一仕事になる

「ほら、立たぬか、ほら、立ってその汚い尻をこちらに向けなさい」

「ご、ごめんなさ・・・んあっあっ!!!い、いたい、いたいっ!!!」

っっぱああぁあんっ
一際大きくひっぱたたいた、尻に真っ赤な手形が現れる
叩かれた瞬間に、思わず痛みか反射か、リズはまたのけぞるようにして
口を大きく開いて悲鳴を上げた、つあ、何本かはしたないヨダレが銀色を伴って飛んだ
ひりひり、その感触を尻に感じながら、膝立ちになった、またそこに

ぱあっんっ

「ひぎっ!!!」

「ほら、尻に意識を集中しろ、そのだらしなく、のぼせあがった己の、腫れ上がった尻肉を」

「は・・・う・・・・うぅ」

「泣いている暇など、な、あい」

ぱぁあああんっっ!!!

「ぎゃああっっ!!!」

「そうだ、いい声で泣く、もっとだもっと」

ぱぁんぱぁんっ、ぱちんぺちんっ!!
打擲が激しくなった、まだ全て平手で行われている
叩かれる度に、頭の中から何かが抜けていくような
妙な感覚にリズがだんだんと震えはじめた
体はよくできている、耐えきれないほどの苦痛を与えられて
それに抗うことができなければ、どうしたらいいか

苦痛ではないと思いこむのだ

「ひぎっ、ひぁっっ!!んうおあああっっ!!!」

「どうした、だんだん、よい声を出せるようになってきたではないか、ほら、ほら、ほらっ」

ぱんぱんぱんぱんっ!!!!

「ひぎっ、いた、いたいっ、お、お尻がじんじん・・・うふぅううっんなああああっっ」

ぱちゅんっ!!!
不自然な音が混じった、ぷしゃああ、とうとう漏らしたらしい
真っ赤に腫れ上がった尻肉は、果物のような色づきを見せた
女王は満足そうにその紅い実が、果汁をこぼす様を眺める
痛みに耐えきれなくなって、ふるえながら漏らす女
痛みの衝撃がなくなったが、じんじんと尻が痛いの、それをそっと撫でてみる

びくっ

「ふあ・・・い・・・・う・・・・う・・・」

自分の指がそっと触れただけでも、その腫れは大きな痛みを脳へと伝えた
ぞくぞく、もう座ることができないんじゃないか、そう思われるほど
たっぷりと腫れてしまった
ふと、痛みが和らいで、自分のはしたない姿に気付いた
四つん這いになり、尻を高くあげながら、小便を漏らす
ああ、私は最低の何かだ
人間ではない、最低の何かになったんだ、こんな姿なのに、

気持ちがいいと思っている

「いい顔で泣くな・・・そうだ、そうやって己がどういうものか理解していくといい」

女王はうっとりとした口調で優しく言うと
そっと近づいた
辺りには、リズが零したものが泉を造っている
今更、そんなものに足をつっこんだとて、動揺するような弱さはない
女王は慣れている、その慣れのまま、今回もいつもと同じように
最後の仕上げにかかる

ぴ、と

「きぃぃぃぃいいあああぁやああああああああああああ!!!!!」

びくびくびくびくびくっっ
リズは全身を震わせた、その震えを声に変えていく
よくよく震えの通った、腹の底からの声を上げる
腫れ上がった尻の肉を、女王はしっかりと掴み、捻るかのように、じっくりと
じりじりとした痛みを、鈍痛から激痛に変えて与える
残っていた尿が、だらしなくリズの股から零れていく

「い、いだっだだだだいぃぃぃぃい、じょ、じょおうさあまああっんつ、にゃあああっっ!!!」

「痛い?痛いだけか?ほら、もっと、よくよく、お前の貝はほどよく腫れておる」

にゅむ、掴む手と逆の手でリズの陰部を嬲る
だらだらと零れていく、ぬめりのある液体は一度、尿によって洗われたが
それを覆い隠すように、大量の淫液がほと口から溢れている
びゅる、男のように飛ばすことはないが、明らかに、どろどろとしたものが
太股を伝っていく、震える腿は生白く、溢れる液体は白濁を覚え
真っ赤に腫れた尻と、紅く火照った陰部の影がカクテルになる

「ほら、痛いだけか?ほ、ら、」

「あふぅんんんんんっっ、き、きもちいいですっ、う、うぁああっ、も、もう」

「そう、楽になるがいい」

つぱぁああんっ!!!

「きゃあああああああああああああああ」

がく、糸が切れるとはこういうことを言うのだ
リズはわけのわからないまま、どたりと意識をやった
壊れろ壊れろ
満足そうに女王はその様子を見て、腰を上げた
ちゅく、自分の股にも淫乱なそれを見つけるが、そのままにしておく
濡れたが、扇情されたほどではない
そういうことらしい、色々と汚れた自分の体をゆっくりと拭う
全てを洗い終わるが、やはりどこか、淫靡な臭いが残るように思われる
もう一度部屋で、ソープを使おう

ぎぃ

「・・・・・珍しい、いや、そうでもないか・・・」

女王は一人呟いて、眼鏡の侍女がいないことを指摘した
男ができると女はどうかする
その典型を歩んでいる

「可哀想なことになるかな・・・まぁ、それもよいか」

女王は淫事に挑みながらも、現状をよく把握している
グイ導師に戦争のそれは任せているが
国王の仕事は戦争だけではない、戦争はむしろ、政治の手段の一つなのだそうだ
そういう教練事を思いだし、少しだけ笑った
言葉は陳腐だ、なんせ、娼婦を罵り育てるそれとほとんど変わらない
女王は、それらと同じようにしていく
全て、手習いをしたあと、自分でアレンジを加えていかねばならない
教練に近づくのではなく、教本を追い越していくように

地下から戻ると、ツエクが突然訊ねてきた
一瞬、後にもう一度と、断ろうか
己の淫臭を気にしたが、それを許さぬほど、鋭い目をしている
一大事か、そう気を引き締める

「どうしました、ツエク」

「母上・・・・いや、女王様、このような大事にいったいどこへと」

「申し訳ありません・・・しかし、万事、今はうまく動いておりますよ、
グイ導師が指導し、軍師殿の帰りを待つ、当然の采配です」

「違います、そのようにどうして落ち着いておられるのか・・・有事ですよ、
今までの北方移民がどうしたとか、そんなレベルじゃない、本国が攻められているのです」

「そうですね、しかし、実際の宣戦布告もされていない、相手もわからない
そこで、反射のようにすぐ固まってしまっては、様々な情勢を見逃してしまいますよ」

「とはいえ、あまりにも・・・」

ぽふ、女王は優しく息子を抱いた
一瞬、目を開いたかと思うと
ツエクはゆっくりと、視線を和らげた、母の匂いを感じて
そうならぬ者はいない、ツエクは自分をそう許した、まだ幼い
それが理由だとは認めない

「御免なさい息子よ、貴方の言うことは正しく、清々しい・・・母は確かに弛んでおりましたよ」

「母上・・・」

「でも、大丈夫です、母はこの国と貴方を10年育ててきました、母はだからこそ油断できるのです」

「・・・・・」

「大丈夫、絶対に大丈夫だと、この10年を思い、そして、今の貴方を思う限りに」

ぎう、しっかりと抱き締めた
ツエクは少し顔を紅くしたが、ゆっくりと
自分の母を抱き締めた、もう既に、ツエクの体は男を形成しつつある
華奢な女を、抱きすくめれば、身長だけならば同じほど
骨格ならば、遙かに凌駕する雄々しさがある
ツエクは、母よりも大きくなってきた自分を自覚した、して、尚
守るものを認識した、表情が一つ、大人になった

「女王様、私に出陣をお命じください」

「ツエク・・・」

「私が、国と母上を守ります、だから・・・」

「それは、なりません」

どうして、ツエクはそうすがるような視線を見せる
女王は、母としてそれを受けるのに苦痛を伴うが
ぎゅっと堪える、やはり、得体のしれないものにツエクを当たらせるような
危ない橋は渡れない、ツエクの力でどうにかできるか信用できない
そういう裏でもある、であるが、これは当然の思考だ
ツエクを信じていると言いながら、危険がある場所には行かせたくない

「前線へは、マリーネがまもなく当たることとなります、それなのに
貴方までいなくなっては、城都を誰が守るというのです、マイグレックヒェンは親衛隊なのですよ」

「・・・・・」

「ツエク、貴方こそ油断をしているのかもしれません、相手の力がわからぬ以上、
守勢が中途半端に攻勢に出るのはよくありません、守りながらも得るものがあります」

「申し訳ございませんでした・・・しかと、城都の守りを全うして見せます」

「そう、その意気です、ツエク・・・その金剛石が、きっと貴方を守るでしょう」

「はい」

煌びやかな宝飾をまとった剣は
未だ、ツエクの腰に飾られている、やがてその宝剣は
より一層の血を吸うこととなるだろうか、その未来はわからない
わからないが、ならないようにするため、女王は国を操る
この日、マリーネ率いる朱騎士隊の出撃も決定された

この話は、全て同時間に起こったまったく別のことを追っている
ゼーが配備されて、いよいよ敵を見るため移動を開始した時
女王が娼婦を嬲って一通りの快楽を嗜み、ツエクと母子のそれをしている時
その時、紅の国から見て敵方であるものの動きが以下である

「歯ごたえのない者でござるな」

「余裕ですな、ゴンロク殿」

極東兵団の親玉と、英雄騎士アルの会話だ
未だ、アルと女王がここに降臨したと知る、紅の国方の勢力はない
それが知れ渡るまでに、もう少し前進しておかなくてはならない
彼らの攻め手は、ともかく早い、今まで全ての城塞をその方法で陥としてきた

「攻城戦で、これほどたやすい戦を、私はしたことがない」

「百戦錬磨の貴方だからそうなのだろう、平和に弛んだ国など、落とすにたやすい」

「そうかもしれぬ、この勢いのまま、次のあれもよろしいか?」

「そう、だが、あれはなかなか手強いはずだ」

「ほう?」

「城主はどうだかはわからないが、城塞の出来がおそらく、紅の国で最もよい、
一番頑強な城塞だよ」

アルは、目の前にどってりと腰を据えた
大きな城塞を見つめる
アルは、この城塞を造られる前から知っている、出来上がるまでを見ていた
かつて、彼の上司だった男が建築指揮にあたっていた
根っからの戦争屋で、まだ弱かった紅の国の唯一の武力といって差し支えない
その男が、対北方移民の完全なる戦争要塞としてこしらえたのだ
もし、今も生きているならば紅の国三代に仕える英雄だろう

「貴方の国では、物に魂が宿るとか・・・」

「よくご存知で、万物には、全て魂が宿る」

アルはまだ、魂というのをよく理解していない
ゴンロク殿が言うには、魂とは精神のような、なんというか
人間が持つ思考や、感覚や、命といった
なにやら重要なものの根源なのだそうだ、理解できないものだが
ゴンロク殿の中では確固たる地位があるらしい

「それならば、あの城が持つ魂は尋常じゃない」

「それは・・・ようやく、歯ごたえのある話だ」

ゴンロクは瞳を輝かせた
強力な敵をというのを感じ取ると
とても嬉しそうな顔をする、圧倒的な、絶望的な状況で笑う
そういう気概が、極東の民にはあるらしい
アルは、薄ら寒いと思う傍ら、どこか、畏敬の念を抱いてしまう

「あれをこしらえたのが、おそらく最高の武人だからね」

「アル殿の師匠にあたられるかたか?」

「鋭いな・・・多分、そういって構わない、そういう人だ、雄々しく、頑固で、大きい」

アルは少し、語りすぎていると自嘲する
しかし、それを察したのか、普段から妙な笑顔の絶えない彼らだが
より一層、深い笑みを見せた

「それは立派なもののふだ、我らも、素晴らしき武人には、等しく、雄々しさと頑固さと大きさを感じる」

ダイヤの10
札遊びでは、そのあたりが、相応しいだろう
アルは師匠のことをそう思っている
絵札ほどの力がありながら、絵札にはならない
どの力とも言い難い、だが、雑兵が束になってもかなわない力がある
圧倒的な実地主義、前線でのみ経験できる全てを備えた男

「ともかく急ぎましょう、あの要塞を陥とし手中にするのが肝要」

「無論、既に拙者らの物見も出したが、なるほど、今までと違い敵は防備を整えた様子」

アルは、少し驚くが、改めて漲る力を覚えた、ゴンロク達が本気になりつつある
彼らは、実に職務に忠実な男だ、極東の男というのは皆そういうものなのだろうか
300人からなる、彼ら一団を見ていて、つくづく
戦争上手のそれを伺う

「ようやく、戦争らしいことができるというもの」

ゴンロクが目を細めた
もともと細い目だが、鋭くなると糸のようになるが
不思議と、それまでよりも強い眼力を発するように思える

「さぁあああああああああっっ!!!!!」

目を見開いて、雄叫びを上げる、その声にあわせて
部下達も一斉に声をあげる、そして気合いを腹から外へと
うねり出すように、全身を鼓舞させ突撃を開始する
目の前では、狼煙があがっている
既に潜んでいた、調略方が内応と混乱を引きずり出した
どんなに堅牢な砦も、結局守るのは人間だ、人間が弱い限り完璧なものはない

「隊長、わかってる、ゴンロク隊に遅れるな、攻城斑準備いいか?」

「おおうっ」

「こちらも突撃だっ、声を上げろ」

「おおお!!!」

アルが騎馬にまたがり、剣をふりあげた
それと同時に全員が駆け始める
攻城兵器は、ずいずいと、近隣で捕獲された牛によって引きずられていく
どでかい投石器だ、投岩器といってもよいほど
ぴしぃぴしぃと、牛のケツを叩く鞭の音がする
アルはそれらがよい位置に移動するまで、時間を稼ぐ
眺めてみれば、あっと言う間にゴンロク達が城壁をよじのぼっている
不思議な術なのか、手に鉄の鈎をつけて、わしわしと器用に上っていくのだ
足下も革靴ではなく、藁を編んだ風変わりなものをつけている
それが功を奏しているのか、そそりたつ城壁をたやすく攻略していく

「弓隊!!前へ、ゴンロク隊を援護せよ!!!、歩兵3列平行で正面門に突撃開始!!!」

アルの声が戦場に響いてわたる
その声に従って、ついてきた部下達はそれぞれの役目に自らを投じていく
弓馬隊は前方に展開を見せると、そのまま、うなる強弓で
ゴンロク達の上で、石など落とそうとしている輩を射殺す
当然砦から、こちらの騎馬隊に斉射も行われるが、怯むことなく応射を続ける
ど、ぉ、おおんっ!!!
爆音が響いて、門が大きく揺れた、歩兵隊が火石を使ったらしい
ブライテストタールに温存されていたそれらは根こそぎ彼らの持ち分となった
揺らいだそこに、満を持して攻城投石が始まる、ぐあん、空気を歪める音とともに
一瞬だけ、全ての人間の天井から光を奪った、大きな雲が横切ったような
そんな体験をすると、ど、ご、ぉ、おっ、爆裂音がして、いよいよ煙をあげて門が大破する

「思ったよりも脆いな・・・いや、火石のおかげか・・・文明は恐ろしい」

独り言をごちりながら、アルは手応えを感じて
すぐに次の指令を言い渡す
後続の投石器を操る隊に合図を送り、全軍を門に向かわせる
その頃、ゴンロク達は首尾良く城壁を乗り越え、縦横無尽な働きをしているだろう
全てが、これまでと全く同じ手法によった
混乱に乗じて敵城に侵入をはかり、ごり押しで奪取、敵方の指令系統を粉砕し
あとは、ゆうゆうと現れる姫様の威光によって治まる
狡い、と言えるだろう
アルは、そんなことを思いながら、自身も突撃をはかる

「隊長、朗報か・・・わかりませんが、北方の紅の国に不満を持つ民族が加勢に現れました」

予定通りか・・・やや早いか
アルはその報せを受けて、静観するよう部下には伝えた
あらかじめこのあたりで不満を持っているものに手を入れてあった
それの効き目が出てきているらしい
近い過去、紅の国親衛隊に皆殺しとされた部族を見ての怒りらしい
それすらも調略の効果だが、とりあえず戦争状態を盛り上げておく
それが現在の目的だ

「アル殿っ!!!!南から敵勢!!」

「きたか・・・・よし、騎馬隊出るぞっ!!!」

城内はゴンロク達に任せて
アルは外へと出る
遠目にわかる、蒼い鎧を着た一群がやってくる
なかなかの数だ

「とりあえず前哨戦か・・・」

対蒼騎士戦が始まる

つづく

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遅い、遅いよ俺
本当は、もっとこの砦に苦戦するはずだろ俺
もう予定通りにならない上に、なんか展開遅すぎて
読み手様ついてこねぇよと心の声が聞こえたので
さっさと陥落していきます、さー、急ぐわよ
(07/03/13)