Ost.
Die Sonne geht im Osten auf.


「雨が止むだろう」

「そうなのですか」

「そうなのだよ」

東ツィーゲル宮にて、従者を横に
相変わらずの戦装束に身を固めた神の代弁者は
空を見上げて、ぽつり、会話をとりなした
扇をもった童子は、そちらも相変わらずで
ゆっくりとそれを上下させ、緩やかな風を作ることにいそしんでいる
ただ、言われた台詞を吟味して
ぼんやりと外を眺めてみる、もうすっかり暗い
だから目で、雨かどうかは判別付けがたい、頼る耳には

わんわんわんわん・・・・

球体空間を行き来する、美しい鐘の音が反響を重ねる
不思議な心持ちを催しつつ、その音色に
だんだんと引きずり込まれ、やがて睡魔に襲われてしまいそうになる
堪えつつ、また、扇を上下させる
ここに宰相は居ない、本来在るべき、シヴァ教祖の自室に
シヴァそのものは降臨している
姿勢は崩れることがなく、それでいて、ゆったりとした全身の様子
神の声を聞き分け、それを零す口元には
笑みのようなものが常に浮いている、それは嘲笑するそれや
蔑みを含むそれとは全く異なる、純然たる、そういう言葉で顕わしてよいのならば
無垢な、そして、優しさをたたえた微笑みだ

「シヴァ様」

「通しなさい」

言葉なくとも、既に知っていたかのような振る舞い
事実知っているのだろう
告げにきた従者の一人は、疑問を差し挟むことなく
敵の旗に包まれた、敵将を運び入れる用意を整えた

「旗を取りなさい」

「いや、その」

従者は狼狽える
あまりに酷い仕打ちの痕を目に触れさせたくない
そう思うのだが、伺うようシヴァの顔を見ると
その瞳には、逆らえないと悟る
しぶしぶ、と表現すればよいか、旗にくるまれた敵将が姿を顕わす
もともとはどのような顔つきであったのか
目元を失うだけで、人間の顔はまるで判別をつけにくくなる
まして、この状態でならば

「下がりなさい」

「しかし」

「よい、敵将とはいえ、我らに勇気をもった戦を挑んだのだ、勇者は共に讃える、それが礼だ」

「は」

従者が下がる、後ろに控える団扇を持った従者は
その醜い者に、大きなおびえを抱いたらしく
手元を震わせている
しかし、その場を去ることはできない、じっと
主人の仕草を見ている
慈しみの視線をそこに落としている、肉の塊は
異臭を放つのではないか、そう思うほど酷いものだ
だが、それを愛おしいように、何度か撫でた
そして、その手を放すと、一言従者に言葉をかける

「剣を持て」

「はい、た、ただいま」

言われるままに、反りの強い鋭利な刃物を持ってよこした
するり、その銀色を輝かせるそれは
鏡のように美しく磨かれていて、その刃に教祖の顔が映り込んでいる
その瞳は相変わらず、水を思わせるようなひたひたとしたそれだ
外の雨音が、少し遠のいているように思う
その目の前、雨が足りないから、それを満たそうとしたのか
従者はそう思った、思うほど、多量鮮血が上がり
血の雨に視界が染まった

従者はそこで気を失った

「・・・・・・大丈夫か?」

「あ、し、シヴァ様、申し訳・・・」

「よい、少し刺激が強すぎたな、気にするのではない」

そう言う教祖の背中側に、真っ赤に染まった肉がいる
いや、肉には既に衣装が施され、見事な骸に仕立てられている
どうも汚く、と言うか、醜く腐りかけていた
木槌にて潰されたのであろう、脚を切り落とすなどして、それなりに整えた様子だ
その上に礼を尽くした、美しい服装に着せ替えてある
薄汚かったそれらは全て飾り上げられた、気を失っている間に主人がそうしたのだろう
見られるようになったそれはコンパクトというべきか、ともあれ、
人の残虐な狂気に触れるその跡は取り除かれたように思われる
ただ、顔のただれは如何ともしがたいのだろう、そのままとされている

「?ああ、そうか、顔が、可哀想だな、確かに」

視線で悟られてしまったらしい
従者はそう思い、すぐに取り繕おうと、愛しき主人に視線を向けた
だが、そこからは、とても美しい視線が落ちてきた
くらり、頭が何かに揺らされたような、そういった一瞬の視界の変化に気付く
次の瞬間

「これで、よいであろう」

呟かれて、そこに目を移す
奇蹟が起きている
焼けただれていたそれが、確かに、眼孔はくぼんだままだが、
酷く腐臭を思わせたその部分が、元の、みずみずしさを取り戻していた
従者は驚きで声を失う、失って、もう一度主人を見た

「礼を尽くさねばならない、これにてこの戦は終わるのだろうから、新しき未来のために」

シヴァはそう言って、従者を撫でた
目の前で奇蹟を起こした手とは逆の手、左手で撫でられた
優しい温もりがそこから、確かに伝わった
この方は、本当は神なのではないだろうか、代弁者ではなくそのものではないだろうか
拙い頭で、思い描くバンダーウ、その顔は目の前の主人のそれと同じに見える
教えられていないから答えようがない
胸の内に湧いたその感情は、涙を伴うほど暖かく、そして、愛おしいと思えた
従者はそう思った、シヴァ様、その存在に包み込まれる感触が心地よく幼い男の子を包んだ

「不思議か?神の声が聞こえるということは、力を赦されることでもあるのだ、なんら、不思議ではない」

ことつら
説明をして、じっと従者を見つめた
その通りだと思う
脳が判断して、従者はぼうと主人の顔を見つめ返した

「神より借りた力だ、やはり、神の力は偉大だ、バンダーウはかような異教徒も造り上げられたのだ」

「港、さて、どうしたことか」

黒衣の集団を従えたグイが、港に姿を顕わして
相当の時間が経過している
現在、諜報活動にいそしみ、その攻略へ向かう糸口を探そうと躍起になっている
敵の主力は5区内で駆逐されるとして、ここは
確実に、手堅く落としておきたい
グイは前線に居た頃を思い出すような、なんともいえない
戦場の高揚感に酔いしれている、勝つ、勝ち戦を自分で作る
その快感に飢えている
今ならそれができる、できるだけの力がある、それが嬉しい

見た所、敵兵の守備はそれほどの人数を持っていない
だが、流石に要所となるだけあり
その守りは建築様式からして強靱だ
港は不可侵のそれとして、バンダーウ、デハンのいずれも利用ができ
むしろこの周辺ではどちらの教徒もいがみ合うことなく
生活を営んできていた、遠目で見れば理想の土地だった
ただ、グイのようなバンダーウ至上主義的な観点からすれば、赦されない土地柄
異教との共存など、考えるだけでも頭がおかしくなる

「落ち着かれましたか?」

「いや、ムカムカしている」

打ち解けたと言うのが適切かはわからないが
黒衣の主導者と話を交わす
この者とグイには、何か通ずることがあったのか
もしかすると黒衣の中で、コンタクトをとる役目を請け負っているのかもしれないが
ともかく、グイと会話をするのはこの男に限られていた
他の者は隊列を乱さず、待機をしている
警戒態勢は整えたまま、同じ顔をして、同じ目をして、同じ衣装を着ている

「俺はツィーゲルに来て2年ほどか、まだ日が浅いせいだろう、こんな異教徒と交わっている場所は吐き気を催す」

「その最果て、いや、間違いなくもっとも混ざった場所にあたりますね」

「そうだ、だから許せない、異教徒などという悪魔の遣いが跋扈する場所など」

「しかし、世界には未だ多くの、バンダーウを知らぬ者がおります」

くるり、グイがむき直した
軽い笑顔が浮いている

「未開は仕方があるまい、だが、奴(デハン)らは知った上でそれを認めず、我々の家族を殺すのだ」

だから、殺し返す、殺さなくてはいけないのは自明なのだ
そう続くのだろう、黒衣の主導者はその情感を見てとった
そして、不安ではないが、何か頷きかねるものを瞳に宿した
それに気付き、グイは少し顔を近づける
柔和な笑顔を作り、語気に優しさをこめた、説明をする

「解る、お前達は布教を繰り返してきたのだから、それは辛いことだったろう。
しかし、俺が見てきたことも辛いことだった。なぜ、飢えや病で苦しみ、
貧困にあえぐ者が数多くいるのか、その不公平は神が作ったものではない。
神を信じぬ者が作ったに相違ないのだ。未開の者が荷担していることもあるだろう。
しかしそれは、布教することで平坦になる。異教は違う。知っていて、己だけの
己だけを養うよう、富を不必要までに漁るのだよ」

「それは、お言葉ですが、宮においても」

「違う、宮、だけじゃない、バンダーウ教徒の中でも貧富の差はある。
だけども、それは、富める者に富めるだけの仕事があったからの報酬だ。
俺達は全ての信者に愛を注ぐため、どうにか足らない富を分配する。
無論、いくらかは不幸にもなるだろうが、そのいくらかを少しでも減らすよう、
そう働きかけている。その根幹を覆す奴らを後目にそうしている内はよかったが、
我らのそういった働きを横目で嘲笑うようにする。許せないだろう」

港を押さえるということは、貿易を司ることとほぼ同意だろう
貿易が無ければ、ほとんどの富は産まれてこない
いや、それに限ることではないが、海から、海運からもたらされる
利潤は、まさに魔法だ、ありとあらゆる貧困を救うだけの黄金をもたらす
グイの思想は理想なのだ
貧困に喘ぐ、バンダーウの下層階級にとってまさに救世の幻想だ
だが、熱く語り、また、それを為すかも知れないという実力を持つ
この司祭が言うからこそ、とても大切な意味を持つ
黒衣の集団は、シヴァに導かれこの司祭の元へと来た意味を感じている
自分たちの力が、全ての兄弟に役立つ時がくるのだ
居きる意味が、産まれてきた意味がここにあるのだと思ってしまう

「俺は思うのだ、全てが等しくなるのが一番なのだと、神に与えられた命として
当然の、重さに対する、当たり前の権利であり、保証されるべくしてされる、そういったことなんだと」

「グイ、様」

「よい、俺に様はつけるな、つけるのは、シヴァ様のみで充分だ」

グイはそう言って、もう一度
壁が厚い敵陣を見た
実際のところ、あれは敵陣とも言い難い
こんな話をしつつ、類い希な軍略を持つグイは、
既に港の内側にいるバンダーウ教徒とかなりの疎通を計っている
誰もそこに目をつける前に、早く、誰よりも早く
そこへと布石を打ち、戦況をさらに進めようとしている
戦を早く終わらせたい、グイはそう思っている、早く終われば
その分だけ平和が、等しい愛が世界を包み込むはずだから、バンダーウは喜ぶだろうから
横顔が一等美しく儚さを帯びた
儚さは美しさと隣り合わせのものだ、人の夢と書くそれは、その字と姿の如く
淡く切なく、愛おしく、とてつもない、どうしようもない、救い難くして手放せない
人を惹き付ける、筆舌に尽くしがたい魅力と魔力を秘めている
それを、いともたやすく表情に顕わすことができる
グイは、産まれ持った才気に翻弄されているとも思える

「物見が戻りました」

「報告をしろ」

「はい、港内にあるバンダーウ教徒によるコミューンが、我々への供与を約束しました」

「ふむ」

「東側、やや狭い門でありますが、そこを明朝解放するとのことです」

「そうか、それで内側へと攻め入ることができるな」

「仰せの通りに」

満足げに頷く
グイの計略はほぼこれで達成された
明朝、その報せとともに港の内へと入ってしまえば
数で圧倒的不利を見せているデハン方は、敗走せざるを得まい
もっとも抵抗をするだろうから、皆殺しにして港は易々とバンダーウ方に落ちる
熟れた果実を手元に置くのは最上の喜びだ
それがまた、熟れるまでの過程を自分が取り仕切ったとすれば
その喜びはなおさらだ

「よし、では、明朝、全軍をもって港内に総攻撃を仕掛ける、そこで敵の物資を奪い取り、
港の政権を我らが手中に納める、かくして、この戦は幕引きを得るだろう」

グイの高らかな宣言が、集まる信者に勇気の火を灯す
二度目の旗揚げをしてからグイについてきた、老若を問わない軍団は
その信奉をいよいよここに究めている
もはやこの集団の中では、グイはシヴァをも凌ぐ人心を集めている
それだけの功徳を滲ませているし、それだけの考えをもっているのだからそうなのだろう
シヴァはあくまで神の代弁者である、だが、神の声は平等に誰にでも聞くことができるのだ
ただ、それを聞き分けられるだけの何かを持ち合わせていない
一般の教徒はそう信じている、その何かを持つのがシヴァなのだ
だが、今、この現状を見るとシヴァ以外にも、遠回しはよそう
グイにもその片鱗が見えつつあるように思う、一時敗戦を経験したが
それは神の与えた試練であり、当然の結果だと思える
信者は一心をそこに集める
彼らは拠り所を常に求めている、今、最も確かなよりどころはグイだ
ここに決起した集団は、デハンとは比べるまでもなく、バンダーウ内でも異質なほど強固で頼もしい絆が見えている

「港が我々のもとにあれば、食糧を調達することができ、最早、
デハン如きに負ける要素はなくなる、ああ、ようやく終わることができる」

グイは感無量の様相で、そう呟いた
翌朝を待つために、興奮さめやらぬ中
眠ろうと、念じて、実際眠りについた
翌朝は、雨が上がり、晴天が空を支配することとなる
速攻を求める戦にとって、最高の条件が整う
天の理すらも、彼に、いや、バンダーウに味方したと思える朝がくる

ぎぃぎぃぎぃ

「昨日は霧と雨が凄かったが、打って変わっての晴天だな」

「少々遅れたが、なんとか寄港できそうです」

帆船が近づいてくる、商船の一団を率いている
その船首には、鋭い角が突き出ている
マストには、大きくその国籍を示す印が入れられている
この船のマストには
大きな、赤い盾が記されている
ツィーゲルよりもさらに西方、まだデハン教の布教は進んでいないが
その地でパトロンになることを考えている国のものだ

「しかし、久しぶりの陸だ」

「まぁ、2週間は確かに長かったな」

「馬鹿言っちゃいけない、遠洋で漁を営む者が聞いたら笑うぞ」

「はは、彼らは船が国だ、我々は違うから」

貴族風、と言えばいいだろうか
少しキザな感じを覚える、そういった輩が船の舳先近くで
待ちわびた陸の風景を見て談笑している
彼らは、商船の護衛でついてきている
商船自体は、多国籍なそれだが、ほとんどが西方で交易をしている国の出の者
ワインやチーズ、干し肉や織物など
貿易でそれなりの価値があるものを運ぶ
ただ、今回の船団は一つ様相が違う
積み荷は、武器と食糧
シンプルなそれが、とても行く先の情勢を物語っている

「さて、先に出てた話によると、デハン方の分が悪いそうだね」

「そうだ、思惑通りだな」

「よく言うぜ」

舳先には三人の男達がいる
どれも優男の風情だが、国元では貴族で
しかもそれぞれそれなりの軍団を率いるお偉方だ
正式には、お偉方の二代目なのだが、若い故にその不遜は隠すことすらない

「さ、お遊びはこれまでさ、退屈だった船旅も陸に上がってからはとても楽しくなるだろう」

一人がそう言うと
他二人もさもありなん、そういう顔で笑った

「ところで、お前、デハン教の話聞いたことあるか?」

「ああ、鼻で笑ったよ、しかし、金になるからな」

「違いない、うちのオヤジもそう言ってた、貧乏人から巻き上げるにはちょうどいい、バンダーウは邪魔だ」

「そうとも言えん、バンダーウには既に莫大な数の教徒がいる、マンパワーは革命に重要だ」

「本国で労働力も足らないことだしな、いくつか連れて帰るのもいいな」

それは奴隷という方法になるだろう
虜囚を本国へと連れて帰り、労働力という歯車、いや、燃料にして使ってしまおう
ツィーゲルのあたりと、彼らの本国との間では
それくらいの産業レベルに差がある
デハンのパトロンとなったのは、ひとえに、この肥沃な大地と
様々に交易を結ぶことが可能なこの港の魅力があってのことだ
安易な気持ちで宗教を受け入れている、まぁ、それなりに信奉するものがいても
問題はない、それはそれ、国の形をそのまま残すには
どうでもよいことだと彼らの本国は判断したのだろう

「おい、始まってる様子だ」

「あはは、本当だ、しかし、それなりに戦争してるじゃないか」

興味深げに、しげしげとまだ遠方のそれを
遠眼鏡で覗いている
船は細かく、ゆっくりと、左右に揺れて近づいていく
赤い盾のマストは風をいっぱいに受けて前へと進む
この船の船底には、ツィーゲルの、このオースト地方出身ではない
奴隷達が漕ぐために働いている、その動力でも前へと進む力を産む

「バンダーウのは、しかし、本当に顔つき、体つきがばらばらだな」

「相当の遠方から来てるという話だからな」

「うまいこと考えた統治方法さ」

一人がわかった風でため息をつく
目の前では、始まったのであろう戦風景が
煙をあげてこちらへと映像のみを送り続ける
港側からはわからないが、その表側
陸と繋がるそこで、大きな戦闘が起きているらしい
東側にあたる場所で派手な煙があがっている
おそらくそこが主戦場なのだろう、船から援護するにはまだ遠い
もっと港付近まで攻め入って貰わなくてはならない

バンダーウの民の外観が共通性をもたないのは理由がある
広く普及しているバンダーウ教については、このツィーゲルに
遠方の布教が終了した地方から人間を持ってきている
純然たるツィーゲル出身の信者はほとんどいないだろう
それらは全て、交代で遠方に住んでいる
ツィーゲルを首都としながらそれもおかしな話だが
その人間を入れ替えるという手法により、よりたやすく遠方での統治を進めている
オースト地方以外の国々では
宗教という種別はともかく、その、統治の方法については一つ注目している
領主がいかにして己の領地を広く、そして平定できるか
その一つの形を示しているからだろう、無論、この船団の国元も同じことを思っている

「うまいことやる奴はいらない、不器用で純真な奴らだけを我々は求めるのだ、さて」

一人は顔つきを変えた
思った以上にバンダーウの優勢が遠目にわかった
噂で聞いていたが、デハン方の劣勢は本当だったのだ
それを確認できただけでよしとした
彼らは、デハンを助ける、そのためにここにいる
名目上は商船の護衛だが、そうではない、政治上、彼らの国は
この港の覇権を握ることに飢えたのだ
三人が同じ顔つきになった、それなりの大将面となる

「さぁ、我らの仲間が窮地にある、助けに参るぞ」

おおお!!

貴族によって作られた騎士団がそこに待機している
それぞれの船がゆっくりと港へと近づく
商船は少し離れて留まる、沈められては商売にならないのだから当然

「各自持ち場へつけ、見ろ、デハン方は我々が攻撃しやすいようにこちらへと誘導している」

ただ敗走しているだけの彼らを
解っていて、そう宣言する
それを聞く部下達は、もうその戦準備にいそしんでいる
黒々とした筒が前へと向けられる

「気を付けろ、港そのものを壊すなよ、破壊するのは敵だ」

ぎりぎりぎりぎり
音とともにその筒は角度を保持する
ナナメ空
伸びたそれが敵の姿を認め始める

「撃てっ!!!!!」

どごぉおおんっ
煙と火柱とが爆音を伴って弾けた
ツィーゲル人には、オースト人にはまるでわからないであろう
現世において、最強の兵器、大筒という鉄の塊
産業の申し子がそこで火を噴いた
投石ならば轟音は着弾のそれだが、これは違う
着弾前に発せられる、が、発せられてから着弾までのスピードはハンパではない

ごがぁああっ!!!!

目の前で、小屋のようなものが粉砕されたのが見えた
それに巻き添えを食った形で敵兵のいくつかがちりぢりに飛んだのが見える
こちらに気付いた様子だ、哀れな奴らは
決して届かない遠距離攻撃をしかけてくる
哀れだ、哀れすぎる、その哀れの一団にもう一度大筒を振る舞う
轟音とともに砕け散るヒトガタの何か
貴族のボンは、楽しげにそれを見つつ
それなりの戦争経験から、勝機をたぐり寄せていく

「よし、あまり殺しすぎるな、奴隷の数が減ってしまうからな、さぁ、上陸だ、行くぞ」

3発ほどで港の中は大混乱に陥った様子だ
足速く、海をかけるようにして船が近づく
これは戦艦と呼ばれる
物や人を運ぶそれとは全く異なる、戦争をするための兵器だ
大筒と呼ばれる、火薬を使った兵器を搭載しているが
それだけではない、大きな石弓の数々も搭載している
船は近づき、いよいよ届く位置になって弓を使った
何千という弓を一度に発射することができる
矢嵐とでも呼べばよいか、その矢玉の雨が敵陣に降り注がれる
青い空を覆うように黒い矢玉がやりこめられる

「3発は使いすぎではないか?」

「かまわん、その分ここで稼げばいいのだ」

「確かにな」

バイザーを降ろす、三人の貴族もそれぞれが
意匠を凝らした素晴らしい鎧に身を固める
船が陸につく、上陸を始める、まだ敵は混乱のまま
この波止場まではやってこない、そうさせるためだったとはいえ
あまりに事が簡単に運ぶ、面白い、勝つことがわかっていても
やはりゲームで勝つのは面白いことだ

「行くぞっ」

船団の兵がここに突入を開始

「!?なんだ、アレは」

「グイ様っ、先鋒の隊がほぼ・・・」

「馬鹿な、ここまで、この、8割方我々が占拠したというのに、なぜ船が降参してこない」

グイの計算が大きく狂った
グイの中では、デハンを駆逐してしまえば
到達する物資は自然と彼らのものになるはずだった
それが、積み荷の分際で攻撃をしてきた
それも、驚くほど大きな力で

「どうやら上陸してくる模様」

「そうか、ならやりようがあるな」

グイが笑う、相手はどうやら甘ちゃんらしい
俺ならあの兵器があるなら外から確実に殲滅させてから上がる
そう思って、すぐに近くの黒衣の一人に告げる

「よし、我々で奴らをやろう、どうせ強奪のつもりだったのだ、どうせなら徹頭徹尾強奪といこう」

「心得ました、司祭様」

「様はいらぬ」

言って、本隊となる彼らは
先鋒隊のところへとかけていく、デハン方はこの際気にしない
どうせ来られない、それよりも、敵のあれを手に入れたら
それだけでまた、いよいよ西方にも我々の教義を広めることが
いや、西方の財力を我々のもとへとひきずりこむことができるだろう

この後、船を乗っ取る、取り返す
殺し、殺される
そういったことが行われることになった

つぎ

もどる







・・・・。
語る言葉も持たずとかかっこいいこと言えたらいいのでありますが
ともかく、一週間休んでこれかよという具合で
頭抱えるこのごろ、当初の予定と
EDの内容を変更しなくてはならないため
ない智恵を絞っている最中であります

関係ありませんが、年賀状を書かないといけないのが
とてつもなく憂鬱で面倒なこのごろ
みなさん風邪ひかないように注意してね

駄文長々失礼しております
R(05/12/05)