Ost.
Die Sonne geht im Osten auf.
西ツィーゲル城
「・・・・・・」
「スビエ王・・・」
呟いた金融公の顔はいつにもまして白い
色白が彼の美徳であり、モテる要因ではあるが
今のそれは、不気味と思うほど白く、生きている人間を思わせないそれだった
黙ったままの王は、腹心であるサモン神官達の同様の表情を見て
瞳を黒くしている、何も物語らない表情を瞳に宿す
心の内では、様々に撃ち殺さなくてはならないものがたくさんある
その作業に没頭するため、今は、無表情と無感動を晒す
東ツィーゲル城に報告が来たのは
バンダーウ教徒による5区包囲網が完成し、なお
怒濤の攻撃にて5区内を蹂躙しつつある時だ
血みどろになった斥候が息も絶え絶えに伝えたそれは
衝撃を通り超えて、錨(いかり)よりも重い、自らを引き止める重石に思えた
5区に留められたデハンの精鋭は、バンダーウ教徒の包囲網内にあり
絶体絶命の窮地に陥っている、また、武威公、治安公、傭兵隊、それぞれが
どのようになっているのか、全く判別がつかない
5区とデハンは断絶された、前線が孤立したことを意味する
どうしてこうなったのだ、辛い、苦しい考慮を超えて、まず、現状の解析に務めよう
スビエ王は落ち着かせようと努力を惜しまない、かつての治安公は
その術に長けているのだ
「医術公の隊は?」
「それが、先の戦勝に煽られて、彼らもまた5区内に」
「金融公、他戦力となるもの、また城内の武器について至急調査を」
「はい」
「大丈夫です、デハンの聖戦は発動したばかり、その本当の力は発揮されていません、
まもなく神の力が、その地上での具現である武威公にもたらされます、彼らは
必ず生きて帰ってくる、それまで、我々は彼らが帰ってくるところを確保しなくてはならない」
スビエ王はすらすらと暗記していたように一息で語った
動揺はまるで見られない、美しい声は、やはり
最高司祭のそれで、幾分かの安心をそこにたえた
その他のサモン神官もそれぞれ、持ち場へと戻りつつある
戦闘配備を次の段階へと進めることとなるだろう
普段、文官のようなことをしている輩も、全てが戦時のそれになる
聖戦の第二号が解放される
「お呼びに?」
「今、治安の諜報はどれだけ城内に残っている?」
「半分は戦地にて治安公と行動を共にしておりますが、未だ、城内に10名ほどは待機しています」
「その内、隠密は?」
「5名」
「全部残していったのか、治安公は・・・」
驚いて、思わずそばに寄った男を見たが
スビエ王はすぐに顔を戻した、この男はスビエ王がまだ治安公だった時の腹心だ
スビエ王になってからも、幾分かのつながりを持っていたのだが
デハン内でこれを知るものはいない
「ならば充分だ、いいか、治安公が報告していなかったことがいくつかあるはずだ、
それを私のもとへと持ってこい、また、現状、治安情報に関わる業務は全て
このスビエが代行する、以後、逐一の報告を義務とする」
「了解いたしました」
「ふむ、聖なる光が降りることを祈ります」
最後のは、お決まりの台詞のようなものだ
それから手で神への祈りを顕わす印を切って、治安の従者を外へとやった
治安公の手持ち諜報部員は25人、そのうち、隠密と呼ばれる
他神官も存在をしらない人員が5人いる、スビエ王が治安公となった時に
こっそりと作った組織だが、それを兄が引継、大変有効に利用していた
だが、それを置いて戦場へと出たということ
どういうことだろう
その意味をはかりかねつつ、スビエ王は一人思索にふけることとなる
「瞑想に入ります」
「かしこまりました」
残っていた神官の一人にそう残して
瞑想の部屋へと足を向けた、だが、ふと気になることを覚え
いつもの瞑想の部屋ではない場所へと移ることにした
戦いは、5区以外でも始まっている、誰に言うでもなく、スビエ王は瞑想の部屋に
暗号のみを残して、別の場所へとひきこもった
暗号は無論、治安諜報部員御用達のそれで書かれている
話し相手が欲しい
その言葉のうち
「話し」の内容も、「相手」の存在も、決まっているのがおかしいと思いつつ
5区からどうやって全てを救うか、また、その後どうしなくてはならないか
一つ一つ考えていくことにする
まず最初に考えなくてはいけないのは、どうしてこうなってしまったか、それだろう
☆
「どうだ」
「黒いのが消えたから、まだやりようがありますぜ」
「よし、お前もしんがりに近いが頼むぞ」
カインが勇気づける、壁際から下を臨む
相変わらずわらわらとやってくる
とりあえず、見える、手の届く範囲はハシゴでもかけられれば
全てひっくり返すようにしているので、今のところはなんとかなるだろう
ただ、いかんせん労働力が違う、やってもやっても湧かれては
流石に持つわけもない、間もなく、こちらからはカバーしきれないところへと
敵はとりついて登ってくるだろう、おそらくこの壁面以外の所からは
既にいくつも侵入を許しているのではないか
この5区はツィーゲルの中心にあるだけあってでかい、その分壁面も長い
現在、カイン達傭兵隊はいつもの通り3人組に別れ
それぞれの仕事をこなしている
壁際で三人が、交代交代に顔を出してはひっこめて、一人落としてはひっこみと
とりあえず不規則に出たり入ったりを繰り返している
子供だましだが、この雨と、何せ高い位置にあるというのはいい
相手としては、それなりの人数がここにいると錯覚するはずだ
それをするのに残った人数の3分の2が当てられている
残りは血路、退路の確保へと急ぐ
調査を含め、確かな道を確保に走る
「隊長」
「おう、もうできたか?」
「はい、当面の退路は確保できています、そろそろ」
「よし、1番から順番に後退だ、先導に続け、バレるなよ」
小さい声で隣の男にそう言うと、それが、つらつらと
壁を伝わるように、はりついている男達の耳に届いていく
最後まで届いたのを全員が確認すると、決められた者から順番に撤退していく
喧噪と怒号は相変わらずけたたましい、ばらばらと壁も簡単に崩れて、かなり危うい
「くそ、下手くそな工事しやがって、ボロボロじゃねぇか」
「敵さんの仕業かな?」
「そうだろう、このことを想定してたんだ、なかなかキレるな相手方は、まぁ、まだ抜けてるがな」
「っく、さっき敗走かました将がよく言うぜ」
「うるせぇ、お前も退却側だろ、早くいけ」
笑い声とともに男達が少しずつ減っていく
だが、減ったことは運動量でカバーできる
負担はきつくなるが、これは約束事だ
退路に立てるものは、先の黒敵どもと戦った時
盾となった、あるいは、しんがりになった奴らが行く
余計なことを考えず、順番通りに逃げれば、混乱したまま
細い通路につっこんで圧死などと馬鹿なことは起こらない
水は重力にひっぱられるからいけない、だから詰まる
人間は意識が運動を操作するからいい
理性が働く内は、想定外の渋滞は起こらない
「隊長、いいものがあった」
「お」
言うと、しんがりになりつつある男が長い棒をいくつか持ってきた
それを見ただけで、全員がそれは使えるとうなづき
活気が戻る、相変わらず下の様子は雨でよく見えないが
泥まみれで、あまり頑張ろうという気力がない連中に思える
「よし、さらに焦らせる、もう少し稼いだら、あれは飽きる、頑張れ」
「おうっ」
かけ声をあげて、男達が長い棒をまた横へと渡していく
それを壁際に横に置く、相手のハシゴがかかる、棒で落とす
鉤詰めが棒にかかる、横にずらして鉤を跳ね上げる
そろそろ上の人数が減ってきたことに向こうも気付いている様子だ
「最終隊まで撤退完了、いよいよです」
「おう、じゃ、いくぞ」
言うなり、別に何かしてから終わるというわけじゃない
一斉に全員がいなくなった、本当なら小麦粉でもまき散らして
目つぶしとかやりたいところだが、この雨だ、そんなことはできないし
雨粒が代わりになってくれる
もう振り返らず、あとはただ逃げる、しんがり隊は
敵が登ってくるまでに、脱出口を隠す必要がある
「よし、お前らご苦労、さっさと退けっ」
「逃げてばっかだな、しかし」
「文句言うな、それともいつもの通り、しんがり戦闘をやりたいか?」
「いや、ありゃもうたくさんだ」
ほいこら、あとはただ逃げるばかりとなった
一時的に逃げて、退路の確認をし、そこからは少人数になり
なんとかこの囲われた5区内から逃げ出すことを考える
手元に地図はあるからなんとかなるだろう
「揃ってるか?」
「おうよ」
「ま、聞いておくが、ここを脱出できたらあとは好きにしていい、
その代わり、マスターのもとへと戻らなかった奴の分の報酬は
戻った奴のものになる、いつもどおりだ」
覚悟を確かめるでもないが、契約をはっきりしておく
義理立てはおおよそ済んだだろうし、政治的に何か為す集団ではないから
局地戦一つでその後、滅亡まで付き合う義理はない
それをもう一度、隊長から説明する
全員深く頷いて、おおよその腹づもりをすぐに答える
「その前に、聞いておきたい、隊長はどうすんです?」
「俺は戻る、ローザヴィも置いてきている、それにランディシーの名を残さないといけないからな」
「傭兵が名誉欲に囚われるとろくなことにならない典型だな」
「うるせぇ、お前らはどうすんだ」
「そうだ、さっきの質問、ちゃんと答えて貰ってねぇ、隊長はこの戦の趨勢どうなると思う?」
「んなこと、一度も聞かなかったろう」
「それは答えじゃないよ、隊長、どう思ってんだ?」
「・・・・・」
カインが黙った、傭兵隊の隊長というだけで、別に目上の人間じゃないから
こういう物言いが平気でできてしまうのだが、その場の全員が
その答えを待っているように視線を向ける
どうも、カインが戻るまでにそれが一番の話題だったようだ
「だっておかしいだろうがよ、今まで、負けると思う戦には手ぇ貸してこなかったのに今回は」
「そうだぜ、退けるところはいくつかあったのにこの一番ヤバイ時になんつーのはよ」
「だから、後があんじゃねぇか?もっと美味しいか?って、あんたの話を聞きたいんだよ、隊長」
何人かが、さらに続けて何か聞いたが
おおかた、聞いている内容は上の三つと一緒だ
三つとも内容一緒だから、ようは、儲かるか儲からないか、それを聞きたがっている
カインはじっと見返す、自分の人徳みたいなもんについてきているかと思ったが、
都合のいい解釈を自分でせせら笑いながら、思いを呟くことにする
「これは負ける、東方のほうが強いし、何より速い、籠城戦でもないのに
これだけ、戦力の量が違えば、喧嘩にならんさ」
「そうか」
「解ったか、ほら、で、何人戻るんだ?それによって、俺も考えることが」
「いや」
話をまとめにかかったカインを遮り
一人が、皮肉な笑顔を浮かべている
不審に思ってそっちを見る
その口が、こう言う
「そりゃ違う、何人逃げるかを聞いたほうが早いぜ?」
「はぁ?」
「へへ、なんたって、ほとんどがあんたと一緒に戻る派だからな」
「なにいって」
「だって、賭の弱いアンタの読みだろう、そりゃハズレに違いねぇさ、
あんたがそうやってゴタク並べたことは全部外れるが、瞬間に、考える暇もなく
どっちかで選んだことは、だいたい合ってんだからな、うしし」
「お前ら・・・」
馬鹿にされているのか、それとも、そういうギャグなのか
わからないが、カインは不快を催さない、うれしいと素直に思った
点呼をとってみる、180くらいが残った内、30人ほどが抜けることとなった
150人、まだまだ、充分な戦力になる
30人はすぐに散っていった、それなりの傭兵ばかりだから
逃げようと思ったら、うまくやれるだろう、何人かはダメかもしれないが
それは運の問題だ
「よし、これだけ残れば、逃げ口を探すよりも作れるな」
「そういうこったな」
言って、立ち上がり、すぐに移動を開始する
同じ所に長い間は居ないようにする
面倒で浪費が多いのだが、今までそれでうまくいってた
だから今回も、そう思い、考えながら移動を続ける
「隊長、あれ」
「?・・・あれは」
デハン側の旗が見えた
それもかなりの数がいることが伺える
一瞬目を疑ったが、真実は変わらない、騎士団がこの区画内にいる
慌てて、すぐにそれを追う、その先頭に大柄の神官の姿が見えた
「武威公っ!!!!」
「?・・・、カイン殿か」
「何やってんだあんたこんなところで、1区に奇襲をかけてんじゃ」
目を見開いて武威公がカインを見返す
「なぜ、それを知ってる」
「なぜもなにも、お前らがそうするために俺らが囮役やったんじゃねぇか」
「馬鹿な、なんで貴様らが囮だと、貴様らが知って・・・いや、知ってて、囮をしたのか?どうして?」
「んなもんは仕事だから当たり前だろう、っつうかそんなのはいい、どうしてここにまだ居るんだ」
「まて、兵の目がある、あまりせっつくな」
「す、すまん」
食い入るように近づいていたのだが、少し恥じてカインが距離をとった
二人の男が並ぶと、王侯貴族を思わせるような
風格が見える、騎士、その神話が顕在化している
「どこまでお前が知っているかわからんが、ともかく俺はここにいる」
「作戦が失敗だったということか、ならば、治安公は?」
武威公はじっと見返す
まだ、もう一つ信用をできないそう思っているから
その言葉一つ一つ、そして知っている事実の一つ一つが気になってしまう
「今、ここにいるのは我々と、あとは医術公の部隊だ」
「別2隊は?」
「なんとか逃れてデハンへと戻っているだろう、外に少なくともそれだけの兵力がある」
「で、肝心な話だ、治安公の隊はどうした?」
「・・・1区に入った」
「それは」
カインはそれだけで黙った
推測で足りうる、恐ろしいことが解った
「今は、ここから出ることを考えている、カイン殿のほうは、撤退ということは前線が崩れたのか」
「だいぶ持たせたのだが、申し訳ないな、だが、まだ少し巻けるように細工はしてあるが、他もある」
「確かに、随分持たせたんだろうな、お陰で退路の確保ができた」
言いながら、医術公が話に入ってきた
彼の部隊は後詰めで、本隊と異なるが
それでも騎士あがりの神官がいるのは、部隊として心強い
全部をあわせて500を超えるくらいだろうか
先に見た黒の集団と、これで戦えるか、カインはそれを思ってしまう
「退路とは?」
「囲まれているが、厚いところと薄いところがある、どうもこの罠は工費が足らなかったんだろうな、
そちこちにあらが見えるのだ」
医術公がそう言い、その場所を地図で確認することとなる
ここで、5区が作り替えられていること、また、現状との差異について
カインは初めて知ることとなった、それだけで
治安公の失敗がどうしてか、また、その後どうなったかまで
疑いようのない、それでいて、救いようのないことを推測してしまう
「囲みながら、すぐ、5区内の掃討を始めたことから、バンダーウの奴らは急いでいる、
だから薄いとか厚いとかそれをカバーしている暇は無かったんだろう、
これはチャンスだ、追われる立場だが、あちらのほうが焦っているからな」
医術公はさらに続けて
地図をさす、そこは現在地から最も近い薄い場所らしい
カインも武威公もそれを聞き、そこへ向かうことを考える
ただ、500人もの人間が移動すれば、自然
そういう空気がまわりに漏れてしまう、ことを急がなくてはなるまい
医術公はそう言って話を締めた
「いや、急ぐよりも部隊を分けてはどうか?」
カインはそう言ったが、まったく聞く耳を持たない二人にその案は棄却される
物見が戻ってきた、包囲網が小さくまた、侵入しだした敵兵が
こちらへ向かいつつあると報告がある
一刻の猶予もない、そう告げて医術公と武威公の案に
カインはのっからざるをえなくなった
「おかえりで?」
「ああ」
「浮かない顔だな、隊長、なんか言われたのかい?金払えねぇとか」
「いや」
苦笑いを返しておく
「なんだ、あんたがひっかかることは重大だ、言ってくれ」
「バンダーウに詳しい奴が居たよな、まだ生きてるか?」
「ここに」
「一つ聞きたいんだが、バンダーウ教の布教圏は東にどのあたりまで言ってんだ?」
「どのあたりって、大山脈を超えるかどうかくらいまでだとか聞いたことは」
大山脈というのは超えるのが厳しいと噂の
自然の壁の異名を持つ山だ
そこよりも東はあまり知られていないのだが
一説では大きな都や、街があるという
西側とは海路で繋がっているが東側は波も荒く
その山脈を超えての細々とした交易が主流、一部海路を使っているらしいが
ごく一部のこと、その実態はほとんど知られていない土地がある
「そうか」
「何か?」
「お前ら、東方兵法書は知ってるよな」
「そりゃ、当然」
「奴らはそれを見たことがあるだろうか」
何をいきなり言い出すんだろう
傭兵達は一瞬呆気にとられたが、すぐに思ったことを跳ね返しておく
東方兵法書は、その実態のわからない土地からもたらされた
高度な兵法書のことである
「それは無いだろう、あったら、こんな間抜けな戦争してねぇ」
「そうだな」
カインはそれで黙ることにした
東方兵法書にある「虚実」の章を思い出す
曰く、兵に虚実あり
兵法において、本隊を叩くことが終結なのだから
いかに実である本隊を隠し、本隊ぽいものである虚を作るか
また、敵の意図せぬ弱い虚を探し、強い実を避けるか
それについての文脈を思い出した
バンダーウが作ったという虚実はホンモノだろうか、彼らが知ってやっているなら
今から向かう場所は、死出の入口、いよいよ全滅になりかねない
それを危惧して分隊にする案を出したが、却下されている
カインは考える、どうするのが一番なのか
デハンを守ることか
傭兵達を守ることか
己を守ることか
「カインどの」
迷う内に武威公が近づいてきた
傭兵達には出立の準備を促しそれに向かう
「どうされました」
「いや、確認しておきたいことがあってな」
改まった調子に身を引き締める
ふと、忘れていたような雨足がまた強くなってきたのを感じた
幸い、この雨音のおかげで逃げる足音がかき消されるだろう
「先の作戦の話だが、貴公は治安公から聞いたのか?」
「あ、ああ、治安公からは何も聞いていない、聞いていないが、そういうことだったんだろう?」
武威公が黙った
判然つけがたい表情をしている
カインとしては、こんなことしてる暇があったら
脱出用に何か一つでも工夫をしたいと思っているのだが
それを許さない瞳が目の前にある
「なぜ、解っていて、受け入れた」
「いや、だってそれが仕事なんだからな、確かに説明はして欲しかったが、仕方あるまい」
「どうして、そう思えるのだ?」
「契約が第一さ、それを解った上で引き受けているんだ」
「なぜ、引き受けようと思ったんだ」
「なぜって」
カインは意外そうな顔をして
一瞬だけ答えにつまった
今までそんなことは考えたことがなかったんだが
目の前の真面目な男はその答えを欲しているらしい
だから渡す必要があるのだろう、そうして、答える
「義侠さ」
思いも寄らぬ答え、その言葉の意味はなんとなく知っているが
どういう文脈でそれが繋がるのか、武威公はわからない
それを表情で出したから、さらにカインは続ける
「自分がそうだと信じたことに胸を打たれた、まぁ、そんなとこだろう
よくわからんが、こういう商売をしていると、そんな
商売をヌキにして、いい生き様というのが見えてくる、それを手助けしたくなったんだよ」
からりと言う
「まぁなんだ、デハンの言葉とやらを借りるなら、これは、贖罪だろう」
「贖罪?」
「ああ、どちこちにせよ荷担することで罪のないものを殺してきたんだ、生業とはいえ無体だからな」
武威公の中でその言葉は耳から入った溶解液となった
するすると、何かが解けて、光の溢れる草原を想起させる
武威公が、改めてこの目の前の傭兵を一人の人間として見る
「そうか、貴公は無宗教だと言ったが、そうではないな」
「は?」
「異教について私も調べたことがある、それは、遙か東方で流行っている教えらしい」
「そ、そうなのか?」
「どこかで、貴公も読んだのだろう、でなくては、「無体」などという単語は出ないはずさ」
武威公はそれだけ言うと
何が聞きたかったのか、それでどうしたとか
全く説明しないまま、すぐに行軍へと戻ろうとする
カインが何もないが、思わず呼び止める
振り返る神官、見つめる傭兵、傭兵が言う
「いや、なんでもないんだが、その、宗教とかはよくわからんが、守りたいものがある、信じたいものがある」
「わかっている、いや、今、わかった」
「だから、俺は傭兵でありながら、あなた達についたのだ」
「ありがとう、共に帰ろう」
武威公が柔和な笑顔を見せた
初めてみる表情だった
カインは、多分、これは彼自身にとっても希な笑顔なんだろう
そうやって感じるほど一等のそれであった
500の行軍は、脱出を目指す
この状態になったことで、今までの戦争とはまったく考え方が変わった
今までは領地のどこを獲ったということが先決であったのだが、
相手を殲滅させるかどうかに変わった、敵の本拠地をどちらが先に叩くか
そういうルールの戦争になっていく
「武威公、まもなくだ、バイデン騎士団を頼むっ」
遠くからまた、医術公の声が響いた
雨は酷いまま、夜を迎えている
俺はなぜ、自分が勝手に書いているもので
締め切りに追われているんだ
愕然としながら、皆様に額をすりつけての土下座を披露してしまう
このごろであります
知っての通り3日と5,6日と休みのこの日程で
時間が足らないというのは、俺が三国志やってばっかだったせいなんだが
それを間に合わせるために、不完全な形でどうして俺は
連載を続けようとするんだ、バカチン、謝れっ、きぃっ
そんな俺の尻を叩いてくれる姉を探しながら毎日生きておりますが(最悪)
また、ご託が増えて、そして意味のわからない俺節が
鼻につくこのごろ、見捨てないで貰えるようなものを書くこと
今の命題であります
駄文長々失礼しております
R(05/11/07)