Ost.
Die Sonne geht im Osten auf.


霧が晴れた

前線が熱を帯びている
どしゃぶりの雨がそれを必死に冷まそうとしているかのようだ
傭兵達は酷い厭戦の気分にかられたが、それでも
戦争を生業とし、また、過去に雨の中の戦場という経験をしているから
この時、自分たちが有利だと知っているため、デハンに優勢な状況を作っている

「雨がいい方向に向かうといいんですがねぇ」

「自分に聞いてみろ、お前達ですらうんざりなら、相手は相当だ」

「違いない、流石隊長」

「勝ちにいくぞ」

カインの声が男達を勇気づける
目の前で右往左往しているバンダーウの教徒達は雨でそのやる気を
大きく失い、また、酷くけだるい動きを見せている

「思っている以上に、奴ら疲弊が酷い、今なら叩ける」

「おうっ」

言うや否や、飢えとは少し遠いところにあるデハン側は
いよいよ本格的な攻撃をしかける
陽動とはいえ、それなりに見えるよう、傭兵に加えて、衛生班がついている
医術公の配下から一部という具合だが、これが非常に功を奏している
先頃の戦で、デハンの医療技術を見た以上、傭兵達は
酷くそこに頼ろうという気持ちが生まれた、それは
倒れかかるような弱さではなく、支えられる強さだ
少々の無茶をしても助かる、そういう思考にうまく昇華できている
自分たちを騙せている

「投石っ、急げっ」

ぐあいんっ、相変わらずの音の後、爆音がそちこちで響く
ただ、もうあと一発程度でこの玩具も不能となる
相手も馬鹿ではない、積極的な攻撃は全て
あの砲台に向けられている、それが幸いしてまだ、陸戦隊である
白兵の猛者達はほとんどの傷を負わずここに生存している
ぼこぼこと空いた穴はそれぞれ、それを埋めるために集まった
バンダーウの信徒で赤く染まっている、だが、
そこに見える顔はどれもこれも、雨と、長い戦に倦んだ表情
勝ち鬨はここだ、カインはそう信じて攻撃をしかける

「いくぞっ」

「おうさっ」

応答の声、同時に砲台の最後の一撃
目の前で人間が粉みじんに吹き飛んだ、哀れだ
少しだけ思ったが、それ以上は考えない
考えれば次は自分がああなってしまうはずだ
戦争での倫理は、自分たちが生き残るためにどう戦うか
その意義だとか、なんだとかは上の奴らが考えると信じて
戦の化身達は、剣を抜き連ね、いよいよ最後の砦へと殺到した

「振り返るなよ、ここが一番の稼ぎどころだ」

「わかってるっ」

傭兵達は次々に突入を始める
空いた壁はがらがらと未だ崩れている、その最中に
最早息絶えたと見える人形の肉塊がいくつか見える
それを踏み越えて、いよいよ進む
背中で大きな音とともに、ここまで戦ってきた虎の子が死んだのを聞いた
後でひょっとしたら金融公と言われた男に叱られるかもしれないな
与えられた兵器を躊躇無く壊してしまった自分たちを笑いながら
人を傷つけるためだけに、ここに存在する彼らはその職務を忠実にこなしていく

「全体、隊列乱すな、弓来るぞっ」

一斉に盾をかかげてそれを防ぐ、防ぎながら突撃をかましてくる敵兵と
もみ合いになる、もみ合いになると優劣差が縮まる、相手はなにせ
一人相手に10人は割けるような人員だ
うまく先に出てきた奴から傷つけていかなくては
そうやって戦意を殺いで行かなくては、どれだけ戦っても終わることがない

懸念というか、当然の疑問はある
果たして、これだけの数を相手にしてたかだか200そこそこの人数で
勝ちを得ることができるのかどうか
総力戦となった場合は勝ち目が無い、だが、相手は戦争の素人だという事実がある
ここが複雑なルールを作る、
精鋭とはいえ20人で100人以上が住む町を占領できる、そういう過去も実例も山ほどある
それには様々な要因があるが、今回は

「宗教、少しは勉強しておくべきだったかな」

「喋ってる暇ないぜ隊長、舌かんじまう」

次々と踏破していくが、その目の前には気が滅入るという言葉が
非常に自分たちを顕わすと解る、黒山の人だかりがある
そんな可愛らしいものだったらいいのだが、事実これだけの数が
自分たちの敵なのだ、殺しにくる相手なのだ、黙らせないといけない相手なのだ
しかも、宗教という特殊な要因が絡む、通常の人間なら諦めるところを
まったく理解を超えた解釈により、彼らは前へと進み出す
そことの誤差、差異が、溝が深ければ深いほど、広ければ広いほど
傭兵達が不利になっていく、彼らからすれば自分たちのほうが人間らしいとなった時点で
勝つことができなくなる、どれだけヒトデナシになれるか
そこにかかっている

「思った以上に時間がかかってるな、どうだ?」

「雨でわからんが、もう夕方と言って差し支えが無いと思う、時間を稼げたな」

「・・・・・」

「隊長?」

「いや」

短く切って、それでも腕や足は戦闘のため働き続ける
目的は相手を殺すことではない、痛めつけて反抗する気をなくさせることだ
もっとも殺したほうが手っ取り早い場合はそうするが、殺すのは
剣を使っていると、思った以上に重労働となる
カインは、受けた部下からの言葉を反芻する
時間を稼げた、本当にそれで正しいのか

「・・・・」

「隊長、いける、そろそろ・・・」

「いや、退避だ」

「はぁ!?」

一同が唖然とする、突入した250人で壁の向こうへとやってきた
ここには数えることもおっくうなほどの敵がいた
今は、30人くらいを殺しただろうか、その他、何人くらいを傷つけただろうか
敏感に敗戦というか、死に逃れに走りつつあるバンダーウ教徒が
恐慌状態に陥っている
何十発も、例の投石攻撃を受けたせいだろう
また、前線の崩壊がここまで浸透しているとも思える

「嫌な予感がする、理由はない」

「そんなのぁ」

「お前、さっき言ってたろ、陽動だから勝たなくていいって、それだ」

「いや、せっかくの勝機逃したら、水物だぜっ、これはよぉっ」

「だから怖ぇんだろうが、急げ、散ってる奴らも集めろ、後退だ、朝の位置まで戻って守るぞ」

「200で守れるかよ、あんだけの数をっ」

「隊長っ、新手っ、右手だっ」

!!!
「新手」という単語には全員、凄まじく敏感だ
それまでのもめ事雰囲気はとりあえずうっちゃられ
右側に向けて、短期でもっとも鋭い陣形が敷かれていく
たまたま右側にいた奴らは自分達の運の無さを呪いつつ
それでも、全員が大意志の決定に従って動く、カインはちょうど中央にいた
隊長としては最高のポジションにいたことになる

「数は、見えるかっ、前線3列は前へ、後ろ絞って支えろっ」

カインの声がよく通る、それに従って人間が動く
だが、目の前で、それを見たすぐあとだ

「!!、まずいっ」

言っている、驚いている間がもたない
敵の進撃具合が遠目で見て、明らかに今までと違う
傭兵達は狼狽えた、戦場の空気を吸い込んだ、匂いを嗅いだ気がする
連戦で浮かれていたツケがまわってきたと
一気に思考が褪めていくのがとてもよくわかる、わかりながら
自分たちの本分を全うするため、隊列は乱さず、受けている
だが、目の前には、今のこちらの布陣に対して有利な陣形に変化した敵がある
こっちがグーを出したから、あっちはパーを出してきた感じだ

「今までと間違いなく違う、奴ら、できるぞっ」

言われなくてもわかってる、傭兵達は思いつつも
心を備える方向へと向けて、中央突撃の形、一本の矢のようにして
敵は3人1列で突き進んできた、中央が食い破られる
ぶちあたる音がする、こちらは今の状態から両翼を絞って
真ん中を締め上げるようにする、しかし、相手のほうが勢いを味方にしている

「隊長っ!!!」

「馬鹿野郎っ、狼狽えるなこのくらいは基礎だろうっ、右だ右に寄れ、受け流しながら横から敵隊を切るっ」

隊長の声は、こういう時とても重要だ
傭兵達はそれに従い、素早く隊列を変えていく、受けながら戻る仕草は死に体に近い
それでも、必死に後ろが立て直す時間を前線は作る
全員が、全員のために働くことを潔しとした
カイン一家の狭義が、まだ、急速な劣勢を押しとどめている

「前線が崩壊っ、どうしますっ」

「5,いや、6列目以降っ」

カインは噛み締めながらそう叫んだ
5列目よりも前の兵隊は、囮というか、見捨てた
苦渋の決断をしつつも、それを聞いて何かにひっぱられるような
重たい気持ちを背負いつつ、傭兵達は陣形を変える
T字に構えていたカイン達は、Tの縦棒部分がそのまま横滑りし
横一線となるように動く、敵は一直線でT字の真ん中に突撃してきている
横棒に当たった部隊は、敵の向きを変えさせないために
その場で滞りながら、挟み込んで応戦
まずは敵のスピードを殺すことに執着している

「横移動完了っ」

「よし、ナナメだ、ナナメに切るぞっ、歩哨っ、敵の数よく見ておけっ」

おおっ、カインの声に呼応して傭兵達は各々の役割を把握していく
歩哨と呼ばれた数人は戦闘に参加しない、すぐに守備の分厚い場所へと移動し
そこから敵の数を正確に数える、部隊の前線に当たる人数は全てが武器を槍に持ち替える
それで遠目から刺し、できるだけ近づけさせないようにする
そのまま、つっこんできた敵部隊の頭数十人で分断する、運が良ければ
その分断が早ければ、遅延戦闘に取り残された傭兵達は
何人かが助かることになる、仲間のため、そして自分たちのため、傭兵の部隊は
生き物となって蠢いている

「黒衣、今まで正装とは司祭のみだったが、こいつら」

「まるで人種というか種類が違う、あれは戦闘用だと考えるのが相当だ」

「本格的な軍事目的の部隊か、それを宗教傘下から排出しているとすれば厄介だ」

「マインドコントロールされた戦闘のプロ、考えるだけで背中が冷えるな」

戸惑う、彼らの知識にはデハン教には騎士隊と呼ばれる戦闘専門の集団が存在するが、
バンダーウにはそれがないとされている
実際にその通りで、戦争となると全教徒が戦闘員となるだけ性質が悪いと
バンダーウのことを思っていたが、その中に、戦闘に精通したものがいるとすれば
また話が異なってくるだろう、とても厄介だ、数が多ければ手に負えないだろう

「分断成功っ、どうします!?」

「よし、後方だ、5区まで後退するぞ敵が戸惑っている内にこちらは逃げるっ」

「へへ、かけっこで奴らに勝てるかね」

「武器を捨てろ、生き残るのが先決だっ」

言うなり、傭兵達はすぐに手持ちの重たいものを全て捨てた
命を拾うために、捨てるものがある
黒衣の集団は戦闘用の装備らしくそれまでのバンダーウと違い
若干スピードに劣ると見た、実際そうかはわからない
ただ、逃げ切れるだけ逃げたい、一旦5区まで下がれば
壁があるだけ、少しは稼げる
そこで防戦とすれば、この強敵どもをここに釘付けとして
別働隊、いや、本隊ががら空きの敵をつけるというものだろう

「しかし、隊長の言うことは本当にあたるな」

「すまんな、もっといいことを当ててやりたいんだがな」

「これ以上は、ねぇよ」

部下達は、笑いながらついてくる、すぐさま走って逃げるのは
敗残という無惨で、惨めなものだが、顔にはどことなく
まだ余裕がある、何人か、いや、何十人かの重要な仲間を失ったが
自分たちはそれを踏み越えていきていく
5区の壁をくぐった、待っている救護班と合流しすぐに籠城、いや
壁際戦闘へ備えることとする

「敵数、おおよそわかりました」

「いくつだ」

「・・・・・1000」

「それは」

絶望的な数字じゃないか
カインはそう感じた、それでも、彼らはここで守るしかない
一番望まなくてはならない結末は
彼らが力つきるよりも先に、本隊が奴らのケツに火をつけることだ
幸い、籠城という行為は攻略に10倍の兵力が必要だとよく言われる
それを体現してみせる、幸い5倍程度だ、どっこいどっこいだろう

「よし、お前ら、人員すぐに割り直せ、籠城だ、楽しくなってきたろ」

「何がだよ、流石に笑えねぇよ隊長」

「馬鹿言え、今まで苦しい思いしてきた練習の本番を全部体験できるんだぜ」

「うれしくねぇ」

うへへ、笑いながら、すぐに5区内側で武器の再分配を行う
残っていた救護班が、かなり頑張ってくれたらしく
あの虎の子の砲台が復活している、これは大きな戦力だ
数は減った200人前後になっている、負傷者をすみやかに脱出させたい
それを言う時、しんがりから報告が入る

「か、囲まれてる!?どうして・・・」

かくして、現状、5区に傭兵隊、バイデン騎士団、治安公別働隊
他陽動2部隊全てが閉じこめられたことを知った
その情報が、どの部隊にどれだけ伝わっているのか
皆目見当も付かない、嫌な予感はよく当たる物だな
くよくよしつつ、カインは現状をもう一度頭から考え直すことにする
他部隊と連絡をとりたい、ここを抑えている間に
血路を確保したい、夕方過ぎた5区、まだ雨は酷く味方を打っている

「間違い、ありません」

部下が戻ってきてグイにそう告げた
耳を当てて、動きを間違いなく察知した
部下はそうグイに告げた
確信して、この成功をより完璧にするため、細かい指示を与える

「奴らが破って大方がこちらに来るまで待て、おそらく後ろから大多数の部隊が来る、
そいつらはここの天井を落として生き埋めにする、これはバンダーウにとって
掛け替えのない、勝利への光をもたらすこととなる」

年寄りや、子供が混じる部隊ではあるが、全員が
それに震撼し、自分たちの中のバンダーウをもう一度感じることとなっている
それをこの、目の前の司祭はもたらした、つまり、高位の司祭なのだ
神に選ばれつつある、細胞の一つではなく、どこか大きな器官の一つなのだ
脈々と生き抜く、バンダーウという生命を自分たちの連帯感にダブらせて
ただただ、今、ここで働くことが神の意志であると自分たちを奮い立たせる

「合図があるまで決して立つな、物音を立てるな、いいな、俺の声を聞くんだ」

浸透した、混ざり合った意志を、手応えを感じた
グイはいけると思う、先回の負け戦の時もそうだったが
実際のところ、自分が間違わない限り、自分が想定しないことが無い限り
全てうまく遂行されるようにできている、自分の思い通りに
こいつらは動くのだ、そう思いつつ、バンダーウに感謝をしつつ
己の力を、今一度信じる、その目の前

ぱらり

いよいよ、壁が崩れる、なんの壁か
それは、グイからは、とてもとてもステキなものに見えている

「空いた・・・・治安公」

「バイデン騎士団はまだか」

「雨で少し行軍が遅れている様子ですが、もう間もなく」

治安公?あのデハンサモンの一人か?これは大物がかかったな
グイはほくそ笑む、さらに騎士団の単語まで聞こえた
ここは間違いなく、デハンにとって要所だ
これを挫けば、間違いなくバンダーウは勝利を得ることができる
だが、この人員と人数で、最高の完勝を得るためには

本来なら、全てを引き込んで血祭りにしたいが、この部隊ではできない

歯痒い、己が9区で失ったあの者達を従えていれば
ここで最大決戦としても差し支えのない、素晴らしいこととなったであろう
それが悔しい、今、そのような大きな勝ちを拾うことができない
バイデン騎士団を相手にして勝てるわけがない、ならば

「今だっ!!!!」

グイが声を挙げた、すぐに水道の直上にいた男達が
足下を破壊してまわる、その声を聞いたのだろう、水道から見えていた数人が
慌ただしく、事態が悪化したことを悟っていくのが目に見える
そこへと矢を射掛ける、刺さる音と姿が目に飛び込む
何人かこれで殺したんだろう、相手にこちらがいることは知られただろう
戻っていくか、前に出てくるかどちらにせよ

「今だっ、後ろ落とせっ!!!!」

グイの声に従い、続けて水道の天井を落としていく
凄まじい音が響く、煙が穴のかしこから吹き上がる
何人かが、崩した天井もろとも落ちていったが
それは含んだ上での攻撃だ、グイはそこを考えて
あえてそこに年寄りを配置していた、無論納得させたうえで立たせた
だから、潔い顔のまま、年寄り達はその仕事をもって
バンダーウ教徒として現世で素晴らしい功績を残して、皆、先へと立っていく

喧噪が起こる、あとは殺到するのみだ、見たところ
わらわらと出てきたのは20人もない程度
流石に勝てるだろう、騎士でもない様子だ、いける、勝てる
この戦、この場だけでなく、この戦争についに勝てる

「今だ、血祭りだっ、異教徒どもを踏みにじれっ」

わらわらっ、内容が劣るとはいえ、圧倒的な数で殺到すればなんとかなる
そういうのが遠目で見ていてとてもよくわかる
扇動された教徒達が、わらわらと敵に寄っていく、必死になって抵抗を見せている
何人かのバンダーウ教徒が、同胞が死ぬ、または、動けなくなる
だが、それを踏み越えてすぐに次のが向かう、時間の問題だ
後ろは塞いだ、袋小路に追いつめた以上、絶対に勝ち得た

「しかし、敵ながら好いところを突いてきた、確かにツィーゲル宮を陥とすにはここが一番だ」

グイは感心しつつ、それを考えついたのであろう
「治安公」と呼ばれた神官に興味を持った
そいつだけは捕虜にしてもいいだろう、異教徒など
どうせ殺して家畜のエサにするか、奴隷としてどこかに売り払うのが
関の山だが、こいつは交渉の材料になりうる
それを戦の宰相に献上しよう、そこで俺は取り上げられ
あわよくば、宰相の右腕として、シヴァの近くに、やがて
目か耳か、どちらかになれるだろう、様々な希望的なことが
目の前に浮かんでは消えていく、グイの瞳がそんな色に染まる、おおよそ終着したのだろう
静まりつつあるホットスポットへ、グイが降りていく

「ようこそ、東ツィーゲル宮包括第1区へ」

「わざわざのお出迎え感謝するよ」

グイの言葉に返してきた男、おそらくそいつが治安公なのだろう
背は余り高くない、武力に長けるとも思えない
なるほど噂に聞いていたのとほぼ間違いがない大将クラスだ

「抵抗は無駄だ、貴様らの退路は塞いだ、それに眼前、これだけのバンダーウ教徒がいる」

「・・・・・・」

ずずんっ・・・、ずずず・・・・

「聞こえるだろう、あれはお前達が精を出して掘ってきた穴を埋める音だ
これで再度潜ってくるのは無理となったわけだ、投降しろ」

「すれば、何かいいことがあるのか?」

「無論、バンダーウのお膝元へと送迎してやるさ」

「話に、ならんな」

グイの挑発に、治安公が嘆息をつく
圧倒的な優位を言葉から思い知らせてやる
グイは性格が悪い、そういうのを必要以上、執拗に行う

「投降したほうが楽にいける、それが強いて言えば特典だろう、おい」

グイの声を聞いて、後ろにいた一人が弓を引き絞った
それを放す、至近距離でなら外すことはない
治安公から離れていたデハン教徒が一人射抜かれた、声を挙げる
痛みに声を挙げて倒れる、そこへもう一本が刺さる
かばった一人にも刺さった、二人が瀕死になった、わざと急所を外している
いや、致命傷なのは確かだから急所ではあるか
あくまで、見せしめを伴った殺しをするのが目的だ
グイは、満足そうにそれを見て、もう一度
交渉人である治安公を見る

「残念だが、お前達に交渉権はまるでない、何を言っても無駄だ、我々は
貴様らを殺してもかまわないし、殺さなくても金に変えるくらいだ、大して重要ではない、わかるか」

「・・・・・・」

「流石、賢いな、俺の機嫌を損ねないことが一番生きることへの近道になるんだ、売ってやるか
殺してやるか、さて、お前達はせいぜい気を付けるがいい」

「そのような、デハンの神を辱めるよう・・・」

「やれ」

ぱすんっ

「無駄に減るのもまぁ、いいさ、あとはお前もか、おい」

スカッ、すかっ、更に無関係と思えた二人を射殺した
もう10人程度となった、治安公はじっと我慢しているように見える
だがその我慢を決して表層的に見せない、実に素晴らしいことだ
グイはほとほと感心する、拳でも握ろうものなら、それに対して
また一人くらい殺そうと思ったが、なかなか、頑張るな

「お前のがんばりに免じて、もう少し活かしておいてやろう、おい案内して差し上げろ、
デハン側からの特使様ということでな」

皮肉をきかせてみたが、それに何も言ってこない
つまらんな、グイはそう思って、治安公という生き物から
興味を失った、もう少し何かあればよかったのだが
残念に思いつつ、連行していく
さて、次は港を抑える準備をしなくてはいけない
その指示を出すため、離れることにする

その瞬間をどうやら、狙っていたらしい

「!!!!」

「グイ様っ!!!!、ぁああああっぁあああああああああああ」

一瞬だった、治安公がそれまでまったく殺していた気配を
一気に解放した、その一撃がグイに向かって放たれた
だが、それを敏感にとった従者が、最愛の従者が
庇ってその凶刃に倒れた
治安公の心底残念そうな顔が見えた、そんなのはどうでもいい
グイの心に一滴の何かが注がれた
瞬間だ、それだけで充分だ、引き金を引いたのだ、奴は、この異教徒は

「殺・・・・いや、奴を残して、全て殺せ、血祭りだ、バンダーウに捧げよっ!!」

合図と同時に、殺到するバンダーウの教徒
彼らは、自分たちが今苦しいのはデハンのせいだと
シヴァによって信じ込まされている
事実そうなのかもしれない、その憎悪を不条理な形でぶつける
ぶつけられるほうは、されるがままとなる
精一杯の抵抗を見せるが、そんなのは火に油を注ぐのと一緒だ
あっと言う間だ、わずかな時間で10人以上の人間が死ぬという現実だけが
そこに残る
充分な、死臭と殺意と、どうしようもない空気が漂う
真ん中に敵の司祭が残される、それを睨み付ける、教徒が睨み付ける

グイが、睨み付ける
治安公は、黙ったまま、ただ、青い顔をしてその場にいる
最早覚悟ができている、そういう瞳がまた
グイを苛立たせる

デハンの敗走が始まった

つぎ

もどる







推敲してないので
明日には変えているかもだよだよと思いつつ
週に一度のアップを行ったりする昨今

友人のけんさんから一次創作バトンというのを回されたのだが
回す相手がいないので困ったなとか考えているこのごろ
しかし、それにのせられてほいこらと
自分の過去の作品を読むにつけ

今の悪いところがとてもよく見えて切なくなったとさ
言い訳、説明、説教臭
これらを消さなくてはいけませんよ、私、早くギャグなさい

駄文長々失礼しております
R(05/10/24)