Ost.
Die Sonne geht im Osten auf.
「??何時の間にこんな・・・」
「グイ様?」
「お前達は知っていたか?」
「はぁ、それは、我々が作りましたので」
そういうことじゃない
グイは苛立ちながら、ついてきている信奉者達を従えている
自分が前線に居た時とはるかに何もかもが違っている
街並みを変えたというよりは、作り替えたというべきなんだろう
見たことのない通路ができている、それも少し見ただけでは気付かないような場所に
「前線に居たころ、どこも金が無いと生活に苦しむものがいたというのに」
「それは現状でもそうです、シヴァ自ら断食を行っているとも」
そんなのは、そういう演出だよ
グイはずっと苛立っている、腹が減ってるからかもしれない
食料庫にわずかにあった分を奪ってきたはいいが
前線、と、言わず、この移動のすがら
違和感、意図的に作られた違和感を覚えてきた
人を随分馬鹿にしてやがる、宰相どもは神の名を借りて
大きな嘘をついている
「この工事にどれだけ金をかけたのか、この分を前線にまわしていれば」
こんな博打のようなことをしなくても
じわじわと勝つことができたはずだ
前線で勝利をつかみ取り続けた司祭は、後ろでのうのうとしている宰相の腹づもりが
憎々しく、疎ましいと思う、無論それを許すシヴァ様もどうかしている
そうなると、やはり俺が一刻も早く、シヴァ様の側に仕える必要がある
「よし、急ぐぞ、全てのバンダーウの民のため、俺達は戦うのだ」
「わかってます、グイ様」
ついてきているのは皆、信奉者だ
バンダーウ教グイ派とでも言うべきだろうか
前線で戦い続けた司祭は、その戦勝と、人一倍の信仰心から
東ツィーゲル宮にいる宰相を凌ぐほどの人心を集めている
9区では敗戦を喫したが、むしろ、その後に
逃れてきた彼をかくまう他の信徒達、そして再起を誓う彼に
多くの賛同が集まっている
貧困、それが新しい指導者を求めていたのだ
「まずは仲間を集めなくてはならない、ほとんどが徴集されているようだが」
「はい、総動員で全ては5区の周りへと」
残されている老人や女子供、いや、女もほとんどが前線に出ていると見える
幼い子供と年老いた老人、本当に役に立たないものだけが
そちこちにおかれている、もしこの状態の場所をデハンに襲撃されたならば
彼らは死ぬしかない、選ぶことも何もあったものではない
「そうか、5区に誘い込んで全員で襲撃か、考えたものだな、確かに」
グイはそれ以上語らずに押し黙った
その為に、前線ではデハンが脅威であるという扇動が行われ
浮き足だったバンダーウ教徒はことごとく敗戦、そして、5区を明け渡すに至った
わざと負けるためにそんな噂を流して、どれだけの信徒が死んだというのか
我慢がならないほどの怒りが体中を支配している
「いいか、今宰相どもは、神の名を語り偽りを述べ、俺達下々のバンダーウの化身たる我々を
ないがしろにしている、許されることではない、俺に賛同するものはついてこい、
バンダーウの意志にもう一度耳を傾けろ、聞こえるはずだ、俺達は皆、バンダーウの子だ、身体だ
集え、起きろ、己を解放しろ、自らの正義に従うものだけ、ついてくるがいいっ」
相変わらずの扇動調子は厭戦気分ともいうほど
疲弊した彼らに希望をもたらした、年老いたものは惜しげもなく
残った物資を差し出し、また怪我のためこの地に留まっていた若者も
次々と参入し、膨大とまでは言わず、200人ほどの勢力を形作るに至っている
「どうされるのですか?」
弱々しく、最愛の従者が訊ねてきた
相変わらず、無自覚な媚びが酷く悩ましい男子だ
グイはその瞳を強く見つめ返し、答える
「心配するな、反旗を翻すわけではない、無論、この作戦には乗る、ここまで整っているのだ、
その上前をはねることを考えているんだ、一番いい場所で最高の手柄を俺は立てるぞ」
「そ、そうですか」
「安心したか」
「はい、とても」
にやり、笑ってから従者の頭をぐりぐりと乱暴に撫でた
グイはそれだけして、すぐに先頭に立った、どこへ導くべきか
少しだけ考えて、すぐに答えを出した
5区の南側だ、主戦場の5区を臨みつつ、その次に要所となる
港への睨みが効く、最高の場所で働くべきだ
幸い、そこまでの道筋は大工事によって作られている
「グイ様、例の傭兵どもが」
「わかったか?」
「はい、5区の前線で、腕の宰相様と交戦中の模様です」
「腕の宰相様か」
グイが様をつける宰相は腕の宰相だけだ
彼によって戦を教えられてここまで上がってきた
ただ、彼がここまで上がったグイを好ましく思っていないとは知らない
今回の作戦は耳の宰相あたりの仕業だと思っている
一瞬だけ腕の宰相への加勢を考えた、が、ここは初心を通すこととする
「かまわん、そこは宰相様にまかせよう」
「はい」
「宰相様の近くでは、手柄を立てにくい、あの人にはかなわぬからな」
にやりと笑うと、報告した信徒も釣られて笑顔を見せた
心に余裕と志気が漲っている、それを計り終えて
すぐに走らせる為、集まった人数をもう一度整列させる
10分も経たぬうちに出られるだろう、グイは集まりつつある
自分の信徒を満足そうに見ている
「?・・・雨か・・・」
「だいぶ降ってきました、霧もいよいよ終わる様子、北では早くから降っていたみたいです」
「ほう、誰に聞いた」
「いや、聞くまでもなく、ほら」
従者は少しだけ得意げに用水路を指さした
水かさが増している、なるほど用水路、これはツィーゲル一帯を走りまわっている
それの水かさで他の土地のことがわかるというものだ
この水は5区あたりから流れてきているのだろう
「・・・・・?」
その流れに少し気を奪われた、間もなくグイの隊は一通りの準備が整うだろう
グイはその様子を見ることなく、ただ、用水路を、その水を見ている
濁った水が流れている、随分と汚い、仮にも用水路である場所を
そのような水が流れているのはおかしい、ひっかかった
「おい、ここはこんなにも汚れるものか?」
「はい?あ、確かにこれは少し酷いですね、どこか崩れたのかもしれません」
「崩れる?よくあることなのか?」
「いえ、まぁ、簡易工事をやった後は随分なものでしたが、最近は、でもこの雨のせいでしょう」
「最近は無かったんだな」
「は、はい」
グイはじっと見つめている、そして流れの上のほうへと視線を写す
ずずっとそこから汚れた水が流れてくる、水全部が汚れるではなく
ヨゴレた水とまじって水が流れてくる、近くで崩落があったということか
「おい、この先は、これの上は5区だったか?」
「は、そうですが、水場に繋がっていますが、それが」
「地図をもってこい、この水道、どこの地下を通ってる、5区壁際の直上の場所を探れ、至急だ」
グイの声が何人かの人間を走らせた
そして、数少ない屈強の男どもにその場所の破壊を命じた
ただし、破壊といっても石畳を剥がしていく工事だ
薄くして、後一歩で崩れるところまで進めさせる指令を出した
残った人員はこの水道の出口、用水路への入口近くに潜ませることにする
「奴ら、ここを通ってくるつもりだ、いいな出鼻を挫いた上で、トンネルを崩落させろ
通路を封じるのとついでに生き埋めにしてやるんだ」
グイは毎度、部下達にその本来の意味を語ることで
事の重要さを認識させる
宰相達の隠し通して、結果としてそうなるようし向けるわけではない
手法が違う、そしてその手法の違いが、人心という掛け替えのない力を彼に与えている
水道から、相変わらず汚れた水が流れる
水かさが増していなければ、気付くこともなかったそれ
その先に、デハンの治安公と50人の部下が潜んでいる
いや何も知らず先を急いでいる
雨がひどくなってきた
☆
「前線が東ツィーゲル宮にあと一歩まで迫ったそうです」
報告を受ける、そればかりを続けている
外はしとしととずっと雨が降り続いている
いやなことだな、スビエ王は憂鬱を瞳に宿しているが
その体躯全てからは、慈悲と親愛をほとばしらせている
王という地位は、それだけで人間に大きな力を与え賜う
「諸侯は皆、無事なのであろうか」
「はい、武威公、治安公、また、医術公いずれも健在とのこと」
言葉だけで、もう何度目だろう、この気休めを聞いたのは
スビエ王は押し黙るという職務を全うすべき今、少し饒舌になり怠慢を象っている
聖戦を発動したいま、王がうろたえるようなことは
断じて許されることではない、そう自分で自分に言い聞かせ
奮い立たせた勇気を傍らに確かめながら、王座に座っている
円卓が目の前にある、いつもの人数から随分と減っている
それぞれが戦地へ、また、戦場ではなくとも戦時に突入している
「金融公」
「ここに」
「どうだ?」
「大丈夫です、全ての神の子を集めて1ヶ月は耐えることができます」
「そうか、ありがとう」
スビエ王は後ろ向きなことを考えてしまう自分を
少し疎ましく思う
だが、施政者はそうでなくてはならないのだろう
前線で戦う将軍は前を向き、後ろで見守る者がその後を支える
戦費に心配はない、ただ、物資は少ない
南の港に次の輸送船団がくるのは2日ほど後だと聞いた
この雨で遅れるかもしれない、ただそれでも耐えられる
それを確かめて、また、深く王座に身を沈める
外のどんよりとした空気は、相変わらずじめじめとこの城を包んでいる
「そういえば、サロンのほうが随分賑やかだとか」
話題を大きく変える
少し空気が悪くなった、そういう機微を敏感に感じ取り
王はつとめて明るい笑顔を見せた
「ええ、婦人は活気に溢れております」
「流石、デハンの女は気骨が太いな」
「刺されますぞ、王」
金融公とそういう会話を楽しんで、周りの反応を伺う
今の会話の軽さはともかく、実際、サロンは賑わっているらしい
噂はいくつか聞いている、どうやらあの傭兵の妻という女が入り
随分と明るく騒がせているとのことだ
スビエ王はそこに興味を寄せている
女が明るいと国がよく保つ、そんないわれを思い出してしまう
「気品に溢れておりましてな、どうにも西の都の出ではないかと」
聞かずとも、金融公はカインの妻ローザヴィのことを王に教える
サロンの情報に詳しいのは、そこにいる女の内何人かが
彼の何かだからなのだが、それはそれ
男の甲斐性であるし、神官の立場上、妻が無い生活を潤す術である
「そうか」
言葉短くしてまた窓の外を見る
どんよりとして、しとしとという、音、風景、肌触り
全てが目の前にたわっている
それらのイメージが脳を犯してくる、そう思い
振り払うため、そう言い訳をし
彼女を呼ぶことを決めた、そうしよう
「金融公、会ってみたいと思うのだ」
「かしこまりました」
スビエ王はデハン教の全てだ
禁忌とまでは言わずとも、神聖なる地位のものは
妻帯や女と過ごすことをよしとしない教義に基づき
サロンへは赴くことができない
女によって男は堕落する、古くからの言い伝えがそのまま教義となり
王となり生きていくのは酷く窮屈だ
ただ、傾城をまねくことがないのだけは本当だろう、雨を聞いて少し待つと
円卓からは全てのサモンが消えて、代わるように
一人の女が入ってきた
「光栄です」
なにが?
短い最初の言葉に、そう返そうかと思ったが
美しい瞳が真っ直ぐに王を射抜いている
彼は少したじろぐ、強い人なのだな、そう頭で整理できてからは
そこにスビエ王という偶像が現れる
「こちらこそ、そなたの伴侶には助けて戴いています」
「それが仕事ですので、ありがとうございます」
「なんというわけでもないのですが、少しお話をさせていただけたらと思いまして」
「王ともなられると大変でございますね」
嫌味でもないんだろうが、皮肉めいた台詞
だが、言った本人にそう自覚は無い様子だ、
スビエ王はただ微笑みをうかべて、少し間をあけて彼女と対面している
地位の無いものと喋る、それは政治上差し支えがでる
だが、一個人としてはそういう経験を欲してしまう、王は何度も
そんな欲望と言わず、人間として当たり前のことを許されない現状に悩み
こんな機会を作るという、方法を考えた
彼が王である以上、これは正当化されていて、表向きには瞑想とされている
「少しおかしな具合ですが、そちらのイスをどうぞ、私はここより降りることができませんので」
「そして、私はそちらへ昇ることが許されないのですね」
「ご不便をおかけしますな、貴婦人」
言われるまま、ローザヴィはイスに腰掛ける
背中には円卓がある、殺風景というか
男臭い空間に、とってつけたような婦人用のイス、そしてそこに座るのが
信徒ではない女、王座には女を側におけぬ王
なんの絵だろうか
「貴方がサロンにて随分と雰囲気を明るくされていると伺いました」
「いえ、それは誤解です、ご婦人は皆明るくお話好きですから、私が物珍しいだけでしょう」
「はは、それはなおさら、一つお伺いをしたいことがありまして」
「なにか?」
にやり、初めて王はその虚像ではなく、スビエ、いや治安公の弟の表情を見せた
それを目にして、女は少し驚いた様子を見せる
真っ直ぐな表現方法だ、いい女なのだろう、王ではない男がそう呟いた
そういうことにしておこう
言い訳を頭のなかで回転させながら、スビエは表情を崩したまま
言葉を滑らせていく
「いやなに、どのような事柄が婦人方の心を捉えるのか、聞いておきたいとな」
「それは」
「はは、他の信徒の女性には聞けぬことさ、スビエ王はそういったことから
一番遠くなくてはならないからな、しかしだ」
「まるで、お噂通りでございますね」
「噂?」
「いえ、サロンでは、王のことでもちきりとなる時が多いのです、覚えておいでですか?
まだ、治安公であそばせた頃、そのような雰囲気で女性を口説いておられたとか」
「ちょ、ま、そ、そんな噂、台無しじゃないか、これは」
くすくす、面白そうに婦人は手の甲を当てて笑う
美しい崩し方をされるな、なぜか敬語になってしまう自分に苦笑しつつ
まいったな、とか、まんざらでもない様子を晒しておく
その噂は意図的に彼が蒔いたものだ、よく芽吹いている
淫蕩と見せて、その実、そんなことは一度もなかった
サロンで知った女は全て、その耳と口に惚れて親しんだ
女にどうしたということはない、が、どうしすぎていると思われた方が
様々に都合がいい、治安公の頃、市井から城内までを見てきた結論だ、余談
「王が、今は神代になられたとはいえ、現治安公様の弟君であられるともお伺いしました」
「これは、困ったものだな」
「いえ、町々の人々も皆知っておいででしょう、以前より人望厚かったのですから」
「私の話はいいんだ、他には何も話さなかったのか?」
「申し訳ございません、あとは兄上様、と呼ばせていただいてよいのか、治安公様のことくらいで」
「それは、どんな」
純粋に興味が湧いた
彼は後でそう自分に言い聞かせることになる
ローザヴィが出した意外な話題に引き込まれ
つい即答というか、問いかけをした
「いえ、なかなか愉快な方で、神官でありながらよくサロンにおいでだとか」
「はは、けしからんね」
言いながら、思わず笑ってしまう
自分もそうだったことをこの婦人はよく知っているのだろう
「金融公と二人が、ごくまれに鉢合わせることがあって、その顛末など」
「ほう、それは、紅のドレス(Rotes Kleid)の話かな?」
「はい、お二方が当時流行だった紅のドレスをサロンの婦人にお送りになったという」
「2年、いや、もっと近いかな、西方の都より紅のドレスが流行とともにやってきて」
「そう、お二方とも女性がそういうものに弱いと知っておられて、それでいて間が抜けているから、
同じ物を贈ってしまったとか」
「間が抜けているは酷い」
「女からすれば、そう思います、そこがまた愛らしいのですけども、王も、無論」
「はは・・・」
少しみじろいだ、そのサロンの女はその時3着の紅のドレスを手に入れている
二人と、そして、スビエ王たる彼から、それを彼女は知っているんだろう、困るな本当
大の男が三人揃って馬鹿を見た、愉快な、サロンでは上等な話だ
普段仲の悪い、兄と金融公が、それを機にまた妙な対抗心を燃やして
しばらくかの女は毎日違うドレスを着てサロンに出たとか、酔狂だ
「兄は、なにせ負けるのが嫌いで、そのくせ頭がまわりすぎて女性に逃げられる口だった」
「そのようで、何人か言い寄られた様子ですが、女はあまりに賢しい人は、少々敬遠してしまいますからね」
「違いないね、兄は真面目で、本当に大切だと思ったことのためになら、なんだってする」
「元来は熱くなりやすい性格のようで」
「そんな噂も?」
「いえ、先日、武威公様とカードゲームをする機会がありまして、少し」
「ああ、兄はああいうことに熱くなってしまうことをよく悔いていたからな、でも、やめられないらしい」
「魅力的なことです、それに、武威公とも仲がよろしいようですし」
「男の友情は、人生を豊かにするからね」
なぜか得意げに喋ってしまう
王となってから、もう、そういう友情も、女との会話も
他愛のないことが全て取り上げられてしまった
それをこの目の前の、異教の女性はもう一度持ってくる、教典によれば
なるほど、確かに女は悪魔の使いだな
王はしみじみと思いながら、悪魔と同居することをまんざらではないと思ってしまう
「武威公は兄を、兄は武威公を、それぞれがお互いを補完して、デハンの中核を担っています」
「そうですか」
「兄は、悪い噂が多いでしょうが、そうではない、貴方は解っておいでのようだが」
「いえ、そうでも」
「真っ直ぐに、国の、デハンのことを第一に考えて行動をしている、兄は不器用で、
女性に対してもそうだが、つきつめてしまうから、うまくやれないのですよ」
「ステキな御仁だと思いますよ」
「そう、あの人は本当の意味での信仰に篤いんだ、教義や教理を守ることを第一とする教団で、
それらを破ることでしか解決できない矛盾に遭遇すると、躊躇無くそれを踏破し罵声を浴びる
結果として全てを活かすことになる、よくやっています、私はその点、教団の王となりながら汚れている」
「そのようなことはありません、ありもしないマイナスを挙げ連ねるのはよくないことです」
「いや、マイナスではないんですよ、私はこのヨゴレを自覚することで王であり、施政者となれますから」
「紳士の考えることは、私にはわかりません」
「なに、淑女の想いはいつも複雑だ、貴方のことをもっと知りたい」
「ふふ、それじゃ私は揺らぎませんよ、手が古いです、王」
ぺし、額に手をやって、スビエはおどけて見せる
大した女性だな、サロンで中心となりえただけある
あの異世界でそれなりになるには、資格が必要だ、彼女はそれを有した
その上で、さらに高みを臨みかねない
「あなたは賢い、本当に」
「お褒めにあずかり光栄です、ですが」
「?」
「女をくどくときは、徹頭徹尾、口説いて貰わなくてはかなわないですよ」
柔らかい笑顔が飛び込んだ
どきり、スビエは一瞬我を忘れた、それだけの一等を見た
美しい女だ
一瞬燃え上がりだしたそれだが、じめじめとした所では延焼しない
彼は心をずっとそうやって湿らせてきていた、それが幸いする、落ちない
だが、落ちないままで経験することができた
傾城の女というのは、実在するのだ、神はだからそれを畏れ私にこの境遇を与えたのだ
「それは失礼、だが、もう一つのほうはうまく行った様子」
「なんのことかわかりません」
「そう、それでいいですよ、ここで聞いたことそれは貴方に委ねます、ローザヴィ」
「いえ、治安公様をそこまでお想いになる、そのことはなかなか、サロンでは話題になりますよ」
「参ったな、それはできればナイショにね」
「ふふ」
「もう一度、いえ、また、お会いできますね」
「お呼び頂けましたら、いつでも参ります、遠出をする夫を持つ身は暇を余していますから」
「また、楽しいお話をしてください」
「そうですね、それまでにもう少し、お時間を戴きます」
時間が過ぎた、どちらもそれを言わずに
それを悟り、そうした
時間は短い、10分も無かっただろう、サモン達が戻ってくる
誰彼も、そんなに早いとは思っていなかったらしく
慌ただしい様子が伺える、王の顔に戻り、王の様子を作り、王の威厳を体現しつつ
その裏で、まだ、治安公の弟は笑っている
とぎれていたサロンとの繋ぎを得た、金融公からの噂では心許なかった情報が
おそらくこれで補完できる、兄が戦場にある以上、私がその役をもう一度すべきだろう
もう一つと彼女に伝えたそれは、彼の耳となること、それだ
元・治安公、その術、その手腕、デハンで並ぶ物を見ない
「兄上、後ろは固めました、御武運を」
誰にも聞き取られないように呟いた
先に話をしたからだろうか
なぜか、兄の面影がうつらうつらと頭をめぐる
私が表で兄が裏をする、そう決めて私は王である
デハンは、兄弟と、そして愛する民のために守らなくてはならない
雨は続いている、そのせいで、前線の声はまだここには届かない
つじつまとか難しいこと言わないで
泣き言から始まるのはいつものことでありますが
先日素で26だと思ってた自分の年輪が27本であると気付き驚愕
もうダメだな、うっすら思う私のもとへと
次々と結婚式の招待状や報告が届く昨今であります
そんな切ない年頃の独身男性がこれを書いていると
思っていただけたら、少しは同情をかえるだろうかとか
思ったりしながら、思ってばかりですね
教義とか決まり事を考えるのは、私には難しいんだと悟ったお話
駄文長々失礼しております
R(05/10/17)