Ost.
Die Sonne geht im Osten auf.
戦勝で大いにわいた
デハンの本拠である、西ツィーゲル城にて
凱旋してきたカインを含めた300人の傭兵隊をもてなす
大きな祝賀会が行われている
騎士階級以上へのお披露目の意味もこめて
この無宗教者たちを集めて、呑んで食べて騒いでいる
「いやー、よかった、本当、凄かったそうじゃないか」
「そうでもない、敵の大将を逃しましたからね」
「いやいや、だってお前、こっちほとんど減ってないし、凄いな、驚いた」
手放しで喜びを謳うのは治安公だ
心の底からの驚きで、そのはしゃぎぶりは目に余るほどだ
武威公も隣で一緒に呑んでいる、傭兵隊長は二人に囲まれるようにして
華やかな広間の一席を陣取っている、立食形式だが、集まっている人間の性質上
少しばかり上等な具合だ
「しかし部下に怪我をさせたのは正直、喜べるものではありませんよ」
「ああ、その点は大丈夫だ、あの傷だったら、なぁ?」
「医術公に頼んですぐに手当を施している、少々手間取るかもしれんが半月もすれば治る」
「半月、本当に?」
「はは、デハンの医学を知らないのか、世界で最も優れた医術知識を持つ国家だぞ」
治安公が笑いながら答える、嘘ではないらしい
傭兵は驚いたまま、手にもった杯を持て余している
それを見て、気を利かせたのか、珍しく武威公が話を続ける
「しかし、あれだけの強さ、惜しいな」
「惜しい?・・・と言いますと?」
「いや、本気の話だが、デハンの洗礼を受けてみぬか?貴殿ならすぐに騎士位、神官まで推挙できる」
真剣な眼差しは酔ったからとは言えない
それをやんわりと、かわすようにして苦笑いを作る傭兵
その口から、用意されていたかのように滑らかな言葉で
静かに断りをいれる
「ははは、それは買いかぶりすぎです、それに私には無理だ」
「無理?」
「いや、なに、私は妻帯しておりますので」
その返答に、深く落胆する武威公
治安公は知っていたのでどうとは思っていないが
どこかやはり残念な様子がある、女なんぞ正式でない契りとする方法など
この国にはいくらでもあるが、それを選ばずに妻帯の形を選ぶ
ここらが異人なんだな、そう結論づけて見ている
「そうか、結婚をしているのか」
「ええ、デハンでは騎士や神官の妻帯は認められていませんでしたね」
「そうだ、代々世襲が叶わないようになっているから」
そのために、生まれた子は私生児と見なされ
また、その重荷を背負うことで、未来永劫デハン組織の重役とはなれない
血族がはらまない分だけ、組織が健康で保たれると信じられてきた
実際は200年の間に、だいぶ色々な灰汁がたまっているがそれはよいとしよう
ともかくデハン教では妻帯が許されず、それが、カインを迎え入れることの障壁となる
そういう話
「そうか、それなら折角だ、その自慢の妻君に会わせて戴こうか、なぁ」
酒もほどよくまわってきているのだろう
陽気な声で治安公がそう武威公を誘った
唐突すぎるし脈絡がない、驚いた傭兵は、
慌ててその申し出を断ろうと手をふり口を動かす
「いや、そんなこの催しを抜け出すことになってしまいますし」
「なに、デハンの宴は終わりが無いのだ、明確な終幕を用意せずだらだらと過ごすのがしきたり」
「そんな、それにわざわざ紹介するほどでも」
「何、もう少し飲み直したいというそれだけのことさ」
言い終わると強引に治安公が二人を無理矢理連れて
カインの宿へと向かい始めた
まだ抵抗をしているが、虚しく終わると思ったのか
やがて傭兵が率先して、それを導くこととなる
武威公は黙ってついてくる、別段この男はそんなもの見たいと思っていない
そういう風に見える、治安公は好奇心に満ちている
見た目通りの感情で動いているのだろう
カインはそう理解して、仕方なくではあるが、彼の伴侶を紹介することとなった
「初めまして、ローザヴィと申します」
「これは、はじめまして美しい方」
挨拶に、答えたのは治安公だ
武威公は声も出ず、目を見開いてバカのように立っている
それに気付いてか、治安公が二、三、肘でこづき、正気を取り戻させると
しどろもどろという具合で、軽い会釈を見せた
その様子を優しい笑顔で見守っている
照れた様子の傭兵が、先ほどまでとはまるで違うようにみえるが
二人のおさまりの良さは、確かに、夫婦のそれなのだろうと容易に想像がついた
「夜分遅くに申し訳ない、少しばかり飲み直しをしたいなどとこいつが」
治安公が勝手に武威公のせいにしているが
こういうのも慣れたものなのか、武威公は黙っている
というかまだ、正気がどこか心許なく、目の前の武力喧噪権力から
まるで離れてしまった、同じ世で共に空気を吸っていると思えない生き物に
ただただ見とれているようだ、ばつが悪そうでもないが
主人であるカインが、何かを頼むと、さっと奥へと彼女は引き下がっていった
「今何か持ってこさせますから、どうぞおかけください、もっともここはあなた方に借りているものですが」
「いや、そう言わないで欲しい、ここは貴殿の家だ」
治安公ばかりが喋っている、武威公は使い者にならないと見て差し支えない
暫く傭兵と治安の神官が、他愛のない話をしている
それなりに会話が続いた後、言われた通りにローザヴィがワインを持ってきた
馴れた調子で栓を抜くと、三つのグラスにするすると音もなく注がれた
寸胴のボトルから、黄金色の液体が流れる、グラスに触れると
細かい泡沫を吐きだし、雪のように美しい
シャンパーニュと見えた
「珍しいものを持っているんですね」
「ああ、あちこちを仕事でまわっていますから、こういう変わったものばかりで、では改めて」
「「乾杯」」
グラスは合わせない、二人は向き合って静かにお互いの目線よりも上に
グラスを掲げて微笑み合った、それで充分だろう
そのまま口元へと甘い香りを運ぶ、喉をよく冷えて、それでいて
閃光を思わせる刺激的な液体が流れていく、一言、うまいと呟く
「チーズもあります、どうぞ」
しんなりとした様子で、皿に盛られた様々なチーズが出てきた
遅れてようやく武威公がワインを呑んでいる、そしてチーズを一切れ口に入れた
食に五月蠅い男だが、一口でそれを黙らせる旨さがあった
いいものを食べている、それが感想であり驚きでもあった
もっと貧相な生活を思い描いていたのを覆されたかのようだ
また一花、話を咲かせたが、手持ちぶさたとなってか
治安公がカードゲームを提案した、初めは渋ったが、ここも
なし崩されるようにして、カインが受けてたつこととなった
「しかし、まだ来たばかりだからか、使用人などを雇う予定はないのか?」
「考えてはいますが、そのあたりは妻に任せていますのでね」
「奥方が使用人を決めるのか?」
傭兵の唐突な答えに、思わず武威公が反応した
一家の主は男であり、それが当然と思っているのだから
それの関知しないことが、家の中にあることが不思議なのだ
傭兵は、カードを切りながら、それがルールだと言った
ゲームはポーカーだ、現在のルールは、チェンジが1回のみで
特に何も賭かっていない
「そんなに珍しいことですか?というのは愚問ですかね」
「というよりも、女の地位が高いなんてのはここ近隣ではまず見ないことだからな」
「そうだ、デハンに限ったわけでもあるまい・・・・と、勝負」
ぱら、
持ち手がばらされる、治安公3カード、武威公フラッシュ、傭兵役無し
武威公が勝った、ここまで、治安公が2勝、武威公が3勝、傭兵は勝ち無し
だらだらと会話を楽しみながら、ワインとチーズとポーカーが続く
ただ、流石にいい大人はそういう倦怠に我慢ができなくなる
「折角面白いゲームだというのに、これでは盛り上がりにかける、ここは賭けをしよう」
「よかろう」
治安公の提案に乗り気の返事を返す武威公
どうやら二人は、聖職者ではあるがこういったエキサイトが好きらしい
もっとも戒律で賭博については禁止がされていないのだから
デハンでは当たり前の娯楽である、ただ、意外なことに傭兵がまるで乗り気ではない
「賭けですか・・・」
「おや、男として面白くない反応だな」
「あれだけの戦ぶりを見せておきつつ、勝負事に逃げるなんざ」
「大分酔ってますね、お二人とも」
苦笑をして、なんとか誤魔化そうとするが
二人は既にやる気になっている、困ったな、そう思ったが
やはり抗うことができずに、カードゲームは賭事というクラスへ登った
不思議なものだ、安穏としていたゲームが
「賭け」という言葉だけで、とても殺伐としてスリルと興奮を催すようになる
ただ、傭兵はこういったことにまるで弱いので、仕方なしの顔をしている
「何、小遣い程度で張るだけだよ」
「貴方の小遣いと、私の小遣いでは額が違いますよ」
「財布を婦人に握られている時点で、貴様の失態だ、勝負は始まったもう逃れられん」
言うなり、武威公が最初の捨て札を行う
賭事となった途端ルールが変更となる
ポーカーには違いない、捨てた数だけ山からカードを拾う
捨て札は公開する、毎ターン毎にレイズ(掛け金上乗せ)の許諾
親が最後で、親がチェンジ(手札交換)しない場合はそのターンで終了となる
レイズは3回まで、つまり3回までカードチェンジが行われる
負けは賭け金に2枚をプラス、降りた場合は掛け金のみ没収
勝ちの総取り
それがルールで、その範囲内でやりとりをすることになる
男三人がワインを片手にカードに命を燃やす
「さて、真剣勝負か、楽しみなことだ」
「負ける気は無い、ワインを馳走になって悪いがな」
「お手柔らかに頼みますよ」
苦笑で答えるしかない傭兵
ただ神官二人は、この男が油断ならない実力者だと思っている
だからこのゲームも本気で取り組んでいる
あれだけの戦の駆け引きをするのだから、とんでもない強者だと
そういう想像から、最大限の力を使ってこのゲームに挑んでいる
初手、カインが親となった、カインの手札に1ペアが入っている
神官二人はレイズした上でチェンジをそれぞれ1枚ずつ
レイズで1枚切りということは、2ペアは間違いないのだろう
「レイズ無し、チェンジ3枚」
カインは宣言してから手札を交換する、場にはハートの札ばかりが並んでいる
手元に2ペアが入った、これで並んだだろうと計算を立てる
いやでも違うかも、などと、随分と長考する
それを急かすように、武威公がワインを人のみに煽った、それを見て慌ててカインの宣言
「次フェイズはない、勝負」
「降りない」
「同じく」
神官二人も勝負に乗った、手札を晒す
カインの2ペアが笑われるかのように、相手二人はフラッシュ
スペード持ちの武威公が先勝
とりあえず、カインの読みはさっぱり当たってないことだけよくわかった
傭兵は悟る、やはりこういった難しいゲームは自分に向いていないなんて
それでも続く、親が移り、ゲームが進む
ボトルは知らぬ間に空となって、チーズも足らなくなってきた
それを見てローザヴィが新しいのを持ってくるために席を外した
卓上では、傭兵の連敗が続いている、笑うしかないほど負け続けている
「しかし、本当に弱いな」
「いや・・・・参ったな」
「わざとやってるほど綺麗にひっかかるな・・・」
カインは手札に3カードを擁しての親番で
レイズの上に1枚交換だった二人に気後れして降りる
実際のところ二人、1ペア同士という大笑いの結末
完全に呑まれた具合で、圧してはいけないところで前に
引いてはいけないところで後ろへ、そんな具合で
現状で、彼の小遣いはおろか働きのほとんどを失うほどになっている
神官二人も、流石に悪いと思っているが、賭事で情けはかけられない
ルールがあり、その中で一つも違反をしていないのだから
これは仕方がない、武威公は気の毒そうだという顔、
治安公は、少し考え事のある顔をしている
お互い、手心は加えないが、せめてものと良心が働き
通常なら殴ってでも急かす傭兵の長考をそのまま見過ごしてやっている
それにしても長く考える、迷いまくりだな、それじゃ勝てんよ、神官はそう思う
「わざとでこんだけ負けませんよ、もっとうまくやります」
そろそろ辞めてはどうか?武威公はそう告げようと思ったが
すぐに次のゲームを治安公が始めた、となれば続けるしかない
戦の駆け引きができるわりにはこういった機微がまるで読めないとは、よくわからない男だ
武威公はそう思って、また次のゲームへと没頭することとなる
これだけ勝っていては、降りるのを勧めるのも難しい
「いや、少し待ってください、トイレに」
苦笑いのまま傭兵が席を外した、夜もかなり更けたが、まだ朝まではかなりあるだろう
入れ替わるようにして奥方が戻ってきた、新しいチーズが乗っている、ニューボトルも来た
なんとなくこの人に悪いな、そう二人は思っていた
じっとテーブルの上のチップを見ている
なんとなく気まずい、先ほどまで女なんて下と見ていたと思えないほど
この妙な家庭の雰囲気に大の男が二人呑まれている
「折角ですから、一度、混ぜていただいてよいですか?」
「お・・・」
「いや、やめておいたほうがいいでしょう」
治安公がそう笑った、ところが美人は微笑みを返して
先ほどまで傭兵が座っていた席に着いた、手を拡げて
待っているという仕草を見せる
そこまでされては、まぁ、一度くらいよいか
安易な気持ちで治安公が配る、武威公も付き合うことにする
「私が最初でよいのですか?」
「ええ、どうぞ、ルールは?」
「先ほどのでおおよそ、レイズ、そして4枚」
「4枚?」
「ルールはわかっておいでか?」
「無論です、さぁ、どうぞ」
ルールをわかってないのではないか
そう思う、1枚残すという行為の意味を掴めぬまま
武威公がカードを引き、親の治安公が当然のようにストップをかける
持ち手を確認し、勝負の如何を問う
「受けてたちますとも」
「それは、なかなか豪気な・・・」
夫婦でもこちらは考えなしでさっぱりしたものだな、
そんなことを思ってストレートを手持ちにして、治安公は笑う
その笑いから早々に察したのか、武威公は降りた
婦人と神官二人の勝負、札がさらされる
「クローバのフラッシュ」
「・・・・負けた、これは驚いた」
「ふはは、油断したな治安公」
「うるさいな」
言いながら次のゲームへと移る、親は武威公
手札が渡ると酔ったせいか、顔色にカードが映るように豊かな表情がでる
治安公は早々に降りることを考える、先の負けで気勢を殺がれた感もある
降りることを宣言しギャラリーに回る
先に3枚のチェンジとレイズを申し出たローザヴィ
それを見てから武威公が親番をつとめる
手持ちに2ペア、しかし2枚交換でフラッシュまで伸びる筋
自分の引きを信じて、ここはフラッシュ狙いに絞り2ペアを捨てる
負けじとレイズをかけて2フェイズへ移行
「続行ですか?」
「そう、どうされますか、ご婦人」
「レイズ、そしてチェンジ無し」
「ほう」
手を少し止める、婦人は先の3枚で何が入ったか
捨て札はスペードとハートの2のペアとダイヤの4
先の手も考えるとフラッシュが好みと見える
武威公の手元には、こちらもフラッシュの1枚落ちが入っている
「1枚チェンジ、レイズなし」
「怖じ気づいたか」
「五月蠅い」
茶化す治安公を捨てておき、手札をもってくる
フラッシュならず、1ペアのみとなった
もう1フェイズ行うこともできるが、既に出来上がっているフラッシュ相手に
こちらもフラッシュ仕掛けても愚行、分が悪いと見た
引くところで引かなくてはこのゲームは勝てない、必ずどこかで負けなくてはならないゲームでは
いかに多く勝ち、いかに少なく負けるか、当たり前だがその差し引きが面白い
武威公は引くほうを選んだ、今はつっぱる所じゃない
「残念、降りておこう」
「そう、残念でしたわ」
にこり、笑いながら手札を晒す
「わ、1ペア」
「あら、どうかされました?」
「・・・・」
男二人が黙った、ご婦人は最初の手で既に2ペア入っていたと見える
なかなか気の利いたハッタリをかましてくるじゃないか
男二人が、わずか2ゲームで手玉にとられて
すっかり頭に血が上っている、そこからはもう
それ以前の逆まわしを見るかのようだ
「続いて、私が親を務めさせていただきますね」
「そうさな、手加減はこれくらにしておこう」
「負け惜しみを言うなよ武威公」
笑顔で余裕を見せておきつつ、その実、心内で
傷ついたプライドをどうにかして癒す方法を探る
だがこの後、ローザヴィの安上がりが続いた
1ペアで3回、いずれも1フェイズで終わるためだ、これが利いて
子の二人はおいそれと大きな手作りをできなくなった
手元に役が入ればとりあえずそれを確保しつつ拡げることを考える
が、そうなると捨て札を見るだけで、中身が容易に想像できるようになる
親有利のルールだが、それが最大限まで伸びている
もう勝てる気がしない
「私は降ります」
「な、」
「ほう、なら」
5回の連ちゃん後、唐突に降りられて、
武威公と治安公の一騎打ちとなった、慌てたように
お互いのを見合わせ、たまたま治安公が勝った
これがまた、悪いことになる、治安公に親番が戻り
ローザヴィが立て続けに降りた、武威公と一騎打ちが続くが
親絶対有利のルール、当然治安公が勝ち続ける
3回の勝ちを拾った後、ローザヴィがストレートで上がり、親を流す
武威公に移る
「って、おいっ、お前なんでここ流さないんだよっ」
怒鳴ったのは治安公だ、怒鳴られたのは武威公だ
武威公は知ったことではないという顔で過ごしている
このターン、巧妙に治安公がハメられた
治安公は敵をローザヴィ一人に勝手に絞っていた、
ところが、負けがこんでいる武威公はそんなことを思うはずもなく、
ローザヴィを活かしても、治安公を殺すほうを選んだ
治安公は当然思う、裏切られたと
「ふんっ、勝負事で何を言いやがる」
「てめぇ、言ったな筋肉バカが」
ぶちっ、だんだん子供の喧嘩の様相を呈してきて
二人の仲が割れ、その上がりをローザヴィがかすめ取る
あれほど積まれていたチップが、婦人へのプレゼントに化けるのに
それほどの時間を要さなかった、長い小用から主人が帰ってきた
テーブルは席を外す前と違う気まずさで溢れている
「ど、どうされました?ローザヴィ、お前」
「いや、ご婦人は関係無い、この男の底意地の小汚さがな」
「何言いやがる、自分こそ戦場の空気と同じなどと言いながらの体たらく」
「さて、そろそろ夜も更けて参りましたし、このあたりでお開きとしてはいかがでしょう」
微笑みの声が会の終わりを告げた
いつもなら激しく抵抗をするところだが、やはり女だから
そう思ったのだろう、二人渋々とゲームを解散することとした
失われつつあったカインの財産はまた手元に戻っている
幾ばくかの利子をつけて
「では、明日会議の場にて再会を」
「はは、すまないな随分邪魔をした、では」
「ワイン、チーズ、今度は俺の自慢の奴を馳走しよう」
ぱたん、
木の扉が閉じると回れ右をして神官二人がツィーゲルの城へと戻っていく
機嫌の悪さを顔中から発散している武威公の傍ら
暗がりで表情が掴めない治安公、足取りは存外確かではあるが
歩みが遅い、見かねて武威公ががなる
「遅い、置いていくぞ」
「なぁ、武威公」
「なんだ」
「お前、どう思った?」
「悔しい」
「それじゃ、ねぇよ」
治安公が区切って喋った、何か考えているときの癖だ
武威公はそれを聞いて、機嫌の悪い顔を怪訝な顔にしてのぞき込んで表情を探る
暗がりで、一見したら口づけでもするかのようなシルエットだ
「近づくな酒臭い」
「なっ、もういいっ」
「いや、待てそれくらいの距離で話を聞け」
「??」
「つけられてはいないと思うが、聞こえない範囲で会話をしろ」
「・・・・」
警戒の温度を感じ取り、武威公の歩みが自然と
それまでの通常歩行から、間合いを探る色味を帯びた
思わず舌打ちをする治安公、さりげなくしろよバカ野郎
視線でそう訴えるが、根っからの軍人にそういうのは無理らしい
仕方なく、そのまま歩調はやや遅くして歩く
「お前が見て来た戦ぶりでは、まるで迷いが無かったと言ってたな」
「ああ、実に真っ直ぐで気持ちのいい物だった、また、驚くほど戦略が当たるしな」
「俺はそれを見てない、で、今カードゲームで見たあの男のあの様子」
「ふん、まるで惰弱だったな、もっとも奥方は相当のものだったが」
「おかしいと思わんか?」
「・・・・・何を疑ってる、まさか先のゲーム、手を抜いていたとでもか?」
「いや、それならいい、それなら問題は無いんだ」
「問題大有りだろう、そのような手心を加えるなど、神に背いた他人を貶める行為ではないか」
今時、そんな風にとらえる奴はお前くらいのもんだよ
治安公はそう片隅で思いつつ、はいはいと適当に聞き流しておき
確信につっこんでいく、間違いがなければいいが
ただそれを案じている
「あの男、傀儡ではなかろうか」
「傀儡?誰・・・・・と、まさか」
思わず言葉を呑んだ
武威公は目を見開いた、そんなわけがないと否定しようにも
自分の中だけで否定しようがない理由が
理由じゃないな、そうかもしれないと思う推測が鎌首をもたげる
「しかし、だからと言って何もあるまい、戦場では、お前の予定ではフェイク役なのだろう」
「・・・そうだ、そうだが、フェイクだとあのご婦人が感づいたら、果たしてどうするだろうか」
恐ろしいことである、それによって敵へと走られでもしたら
いかんせんどこの者かもわからない異教徒、いや
神すら信奉せぬ下品な集まりだ、どうするかわかったものではない
自分たちが捨てゴマだと知った上で、捨てゴマをやるような輩だろうか
それが治安公の不安だ、というよりも畏れである
「自業自得、とも言えるな」
「はは、お前ならそう言うかと思った」
神に背いている、その自覚があるからこそ
この偉大なる神官にそう突き放されるのがむしろ心地がよいと思っている
とはいえ、そんな自慰行為にふけっている場合じゃない
その場合、どうしたらよいか、やはり獅子身中の虫なのか
「まぁ、なんだお前の危惧もわからんでもないが、保証しよう、あの男はそうはすまい」
「ほう?」
「奥方がもし、動きを握っていたとしても、最終的に大きな判断をしているのは別にあるのだろう」
「別に?」
「まぁ、夫婦で別にってことだからカイン殿が握っているんだろう」
「どうして、言い切れる?」
脚を止めた、追っ手がいるとか
そういうのをもう、頭に置いていないと思える
もともと、そんなことをされるわけがないと治安公もわかっているのだ
あの傭兵が、ここに住む騎士以上に騎士らしいとわかっている
ただ、それを客観的に証明するような説得力を欲している
欲した上で、それを、武威公に求めた
「簡単なことさ、女のほうが奴に惚れている」
「ほほぉ、艶っぽい話だな」
「見ていてわかっただろう、かいがいしさ、それだけで解る、あの女は主人の言うことに、
決して逆らわないし、その中で主人が最も益を得られるように取りはからっている」
「随分、推測ばかりじゃないか」
「俺の勘はよくあたる」
「ははは、あれだけ勝負に負けた奴がよく言う」
笑って、また歩みを進めだした
先ほどまでよりも、心なしか軽い
「だが、そうだよな、そうでなくては困るな、奴らを本隊に組み込むわけにはいかんもんな」
ちらりと、棘を見せた
治安公は、最初、先の戦勝を聞いた時に
その闘いぶりから、むしろ、本隊にして正攻法を提案しようかと思っていた
だが、純粋信者ではない部隊を組み込むことを
決してこの武威公が許さないだろう、もともとそういう約束だった
悲しいかな、信仰のために、それを汚してまでの勝利は敗北に劣るとしている
「当然だ、もっとも・・・いや」
そこで黙った、その先は治安公もわかっている
パーティーの最初に、真剣に入信を進めたことから解っていた
同じように本隊として戦えれば、どれだけ有利になるかと
それを武威公はわかっているのだ
わかっているが、信仰のためにそれは棄却せねばならない
不器用なことだが、どうしても、優先しなくてはならないことがある
「では、予定通りで会議を進めよう、金融が五月蠅そうだから頼むぞ」
「大丈夫だろう、医術公がアレを買ってる様子だ、思惑通りだ、お前の」
「長く、なるかな」
「なに、すぐに終わるさ」
城につき、二手に別れた
お互いの部屋、家は反対の方角にそれぞれあるのだ
手をふって、別に声なんか交わすまでもなく別れる
夜の闇が降りている、とこしえな静けさがある
宴の後はいつもこんな具合だ
それまでの喧噪から、反転しているから、とてももの悲しい
月明かりがやけに眩しいと思いつつも
やはり暗い夜
満月、同じ月を東側の人間も見ているのだろう
同じ月を見て
同じ空気を吸って
それでも、宗教が違うから喧嘩を続ける
もう200年も当たり前のことだ、そろそろ飽きたんだ
決着をつけないといけないんだ
誰彼とわからず、そういう雰囲気が、今を作っている
よそ者を招き入れつつ、倦怠が下々を取り囲んでいる
ごめんなさい
もっとギャグっぽい調子で今回進めるはずだったのに・・・
というわけで、まるで人気ないのが
火を見るよりもよくわかっている作者であります
自慰行為はダメね、というか
書いている本人ですら、これ面白いか?と
疑問系になる時があるからもっとダメね
そんな言い訳をたくさん用意しながら
全然話し進んでなくておっかなびっくりであります
頑張れよ俺、早く面白い話書いて有名になれよ
駄文失礼しております
R(05/09/05)