ein rotes Kleid,
Sie ist Prinzessin.


キルシェが使いに出てすぐ
紅の国の諜報部は、急報を次々と拾ってよこし始めた
今まで何一つ無かったというのに、それまでどこに
溜まっていたのか疑い深まるほどの情報が流れ込んでくる
紅の軍師が青ざめる
聞くには、あまりのことに脈を失い昏倒したとも
それほどの衝撃があった

ヴェステンを根城として、西から南界隈を
ことごとく「本隊」が潰している

「・・・・・・・・・・そうとしか見えなくなってる・・・・」

小さく一人で呟いた
造反をした覚えはないが、自分の中に芽生えたその感情を意識するが故に
次から次へともたらされる戦果が、どれをとっても
紅の国を包囲するために行われているようにしか見えていない
軍師の憔悴は著しい、使いがヴェステンに到着するまで
おそらく3日はかかるであろう
本来は1週間と見てもおかしくないが、ことが事だけに
急がせてはある、足の速い車で向かわせたのは
よくできたものだったと言える、だが、それにしても

「軍師殿、顔色が悪い」

「いえ・・・・・・少し疲れが」

ハンプが声をかける、出陣前のことだ
彼の耳にも当然その様子は入ってきている

「気に病むことはない、平定がやりやすくなったと考えるべきだろう」

「・・・・・・・・・・」

「お前がまずいのじゃない、姫様が優秀なのだ」

ハンプの頭では、彼が軍師としての能力勝負で劣ったことに悔しさを覚えていると思っている
そのあたりは浅い、所詮は一騎士である
軍師が国の中枢に入ったばかり抱いてしまった想いに
気付いてやることはない、裏を返すと
軍師の抱いたそれに気付いている人間は、まだ多くない

「大丈夫だ、そうそう姫様に取られるわけもないさ、俺が行って南でも主要なところだけは押さえてくる」

ぽんと軍師の肩を叩いて
騎士は翻った、軍師は去っていく背中を見送る
そうじゃない・・・・・
とは言えない、言わない、思いつきもしない
言い聞かせるよう軍師は静かに軍靴を鳴らして敬礼を送った
後ろ手で騎士が挨拶をする
若い群影が過ぎていく、落ち着きを取り戻したのだろう
頭が明晰になってきた
そして、もう一つ呟く

「ハンプ騎士、多分、間に合いません、貴方ですら」

ならばなぜ止めないのか
何に間に合わないのか
残った時間で、最善の方法を考えよう
彼は腹を決めた、静かに一人の世界へと入っていく

・・・・・・・・・・・・・・・

南方は移民が多い
港を包括するせいもあるだろうが
とかく様々な人種が集まり、それぞれがそれぞれ固有のコミュニティを形成しているから
ちょっとしたいざこざが起きるのは必至だ、もはや仕方ないことですらある
長い内乱が続く地域だが、先だって、紅の姫君が
皆殺しとしたことも手伝い、随分と静かになっていた
しかし利益を産む港があり、その利益を甘受できなくなった恨みは強く
もともとの反骨風土もあいまって、反乱としてはもっとも大きく
そしてもっとも厄介な地域である

「白騎士隊はいつごろだ?」

「は、もう間もなくだと聞いております」

「そういう適当な返事が一番いかん、貴様、腕立て300回からやり直してこい」

ヒゲ面の軍人はどっしりと構えている
生粋の軍人で、戦争が無くなったら多分やることを失ってしまうタイプ
紅の国にありながら、未だ、最もノロい重騎士を束ねるクラフト将軍の陣営
地道に、また、重騎士の姿そのままに、ゆっくりとした足取りで
踏み固めるようにして、確実に制圧を続けている

しかし、数日前から砦を一つ落とすのに随分と手こずっている
相手は足の早い騎兵を多くしながら、投石の類を使って籠城を決め込んでいる
重騎士ではねらい打ちにされて、散々な目に遭っている

「バカ野郎、当たると思う奴から当たるようにできてんだよ、あんな遠くから岩で狙って
当たるものかよ、よく見りゃぁ、どうってことねぇ、突撃だ、突撃っ」

無茶苦茶だが、実際この男に岩はおろか矢すら当たることがない
既に時代に取り残されつつある重騎士だが、それでもなお
ここに一勢力築けるのは、彼の実力のたまものである

だが、彼をもってしてもここだけは容易に行かないでいた
三度の突撃を試みて、既に半分の兵士を失った
流石にこれ以上減らすと、今後が厄介になる
仕方なく、応援をただ待っている

相手は、重騎士と見てまさに間断なく
投石を続けてきた、確かに通常はなかなか当たるものでもないが
雨のごとく放たれては流石に苦しい、気付けば、草原が
岩肌露わな山道のようになっている
どこからこんなに仕入れてきたのかわからないが
尽きることのない投石に足止めを喰っている

足の早い奴が要る

そうでなくては敗れないと見ている
だから、若輩とはいえ、台頭しつつある白騎士を待っている
ふと、空を見上げると曇りのない青空が広がっていた
クラフトは呟く

「ったく港ってのは恐ろしい」

「なにがでありますか」

「あれだけの石を運び入れたんだ、というか、うちの投石機より明らかに飛ばす
あれも輸入したもんだろう、世界が広くなると困ることが増えるものだ」

「なるほど」

「しかし青いもんだな、世界というのは」

「??」

「なに、自然に紅いものなんてのは、そうそうお目にかかれねぇんだなっつうことだ」

言ってる意味がわからない兵士は戸惑いの顔のまま
その耳に、軍馬の音が聞こえてきた
つい顔が明るくなる、皆が待ちわびた形で白い軍馬に目をやる
クラフトがちらりとそちらを伺い、うすら笑う

「おいでなすったか、スズランの騎士」

「!!・・・・・・クラフト将軍、旗色が違います、あれは」

「ぉぁ?違わねぇだろうが、紅の国の近衛つったら、白騎士アルカイン・シュナイダーだろうよ、おら、お前ら、敬礼っ!!!」

ザッ
老将の声はよく通る、この将軍に似た部下が多いせいか
どいつもこいつも古くさい軍人気質だ、命令にはすぐさま
頭ではなく身体が反応する、美しい敬礼光景
これだけの統一感を出せる軍隊は、なかなか見られない

「クラフト将軍」

「うむ、アル騎士、久しいな」

「随分やられた様子ですな」

「お前が遅いせいだよ、騎士隊長」

アルの後ろに続く白騎士は
ホンモノのマイグレックヒェンだ
霧散していた彼らは、どうやらアルの下へと集まったらしい
ここに居ない半分はハンプの下へと走った連中だろう
どうでもいい、クラフトはヒゲを撫でてアルを仰ぎ見る

「さて、お前らが来てくれたのは有り難いが、ここは一つ」

「攻城戦だろう、将軍、凄いものを見せるよ」

アル、らしくない台詞
会わない間にガラが変わりやがったな
老将軍はそう思った、よく見るとそれは気のせいではない
全身から殺気のようなものが漏れている
遠目で、知らぬ者が見たら、危険を察知するほど張りつめている
何かあったのか?いずれにせよ
クラフトは黙って、アルの所作を見守る

「??・・・・・なんだそれは」

「ヴェステンにあったんだ、戦車だよ」

「チャリオッツ?にしちゃぁ、随分」

小さい
その割りに不釣り合いな、必要以上の装甲を張り巡らせてあり
とてもじゃないが馬でひいて速度を出せる代物じゃない
重騎士から見ても、これは重過ぎる、クラフトは胡散臭そうな顔をする

「姫様が名付けた、『ロート・ホルン(rote horn)』」

「紅い角笛?お前、どうみても黒いだろうがよ」

「そうだな、だけどこれは、重騎士専用の攻城兵器なんだと姫様はおっしゃった」

「ほう」

その言葉は、アルがあらかじめ姫様に用意されていた言葉だ
それに釣られてか、クラフトはしげしげと
真面目にそれを眺めるようになる

「機体がいかんせん少ないんだけども、将軍、精鋭を10人集めて欲しい」

「あい、わかった」

言われるままに、がしゃがしゃと鎧を鳴らして
10人の屈強が集められた、どれもこれも
クラフト将軍と並ぶほどの偉丈夫、斧、もしくは、ハンマーが似合う
近距離の力を最も愛する部類の戦士達だ
アルはそれらを見て2人ずつに分ける

「二人がかりでこれを押して進める、合図で縄に火を点ける、それだけだ」

「・・・・・・」

「お前ら、返事はどうしたっ」

「はいっっ!!」

アルの説明を全く理解できていない風だが
将軍の一喝が聞いた、とにもかくにも
考えるいとまなく、言われた通りに実行しようと軍人達はそれぞれ5体の黒光りする車に身を寄せた
そして、じりじりと押し始めた、車輪が廻り始めると案外簡単に動くもので
滅法飛ばされてきた岩を乗り越えて、ごろごろと車は静かに砦へと近づいていく

「狙い打ちだぞ」

「その為の重騎士だ」

「なるほど、確かにこの距離の矢なら痛く無い」

クラフトは何度も頷いた
あの重たいものを所定の位置まで運び
なおかつ生きていられるだけの守備力が必要
当然、重騎士以外に考えられない
自分たちを前提として作られたらしい、その兵器に
随分と入れ込んできている風がある
岩が届くまではまだ距離がある
アルはまだ見ている、ゆっくりと手を挙げていく
クラフトがそれを見て、合図を送る

「おーーーーーしっ、今だっ!!!!!」

じぃっ、縄に火がつく
伝ってそれが車に吸い込まれる
重騎士達は以前、前に進んでいる命令通りだ
前に進みながら、火をつけそして

ドォンッ

黒い車は火を噴いた
角先から紅蓮の炎がほとばしった
同時、いや、わずかに、本当にわずかにだけ遅れて
陥とすべき砦の外壁が、木っ端微塵に吹き飛んだ

ゴォンッドゴオッ

続けて5組全ての車が炎を上げた
煙が角先より上がる、赤々と燃え上がる炎がくすぶる
手練れの重騎士10人は、腰を抜かすほどの衝撃を全身で受け止めた
全力で車を押していたからなんとかなったが
手を抜いていたら、衝撃に吹き飛ばされてもおかしくない
それだけの力が、この小さな鉄の塊から発せられた

「いくぞっ、突撃っ!!!!!」

「おおおおおっっ!!!!」

その破壊力を存分に堪能してから
アルが大きな声で、マイグレックヒェンに命令を叫ぶ
白騎士達が、この世界で一等の屈強で、悪魔のように俊敏な
つまるところ、最強の騎士軍団が砦へと流れ込む
立ち塞がれていた外壁、門扉は既にロートホルンによって
無力化されている、造作もなくそこへと突撃していく
遅れて出てくる敵の騎兵などとるにたらない

「よぉおおしっ、らちが空いたっ、出遅れるなっ」

「おうさっ、おうさっ、おうさっ!!!!」

クラフトの檄を受けて
重騎士達が大声を上げる、雄叫びをあげて
全身を、その装備をガラシャガラシャと揺さぶり
空気を、大気を、戦場を自分たちのものだと鼓舞する

流れ込む大きな力
こうなれば呆気ない
砦は落ちる以外に運命を、未来を知らない

「なるほど、確かにロートホルン(紅い角笛)だな」

「ああ・・・・」

制圧を終えて、騎士と将軍は言葉を交わし合った
一方的な虐殺とも形容できる戦果は
確かなものだ、これを姫君は予想していたし
その通りになったのだから喜ぶべきだろう

「・・・・・・クラフト将軍」

「どうした」

「さっき部下から連絡を貰ったんだが、ハンプの部隊が途中まで近づいて引き返したそうだ」

「ふむ、自分は要らぬと踏んだんだろう」

アルはそれを信じようとする
だが、無理がある
その想いはクラフトも抱いている
王座が不在となるだけで、随分とこの組織は
ブサイクになってしまったものだ
少し前までは、そんな派閥だの政治だのは、姫以外は考える暇が無かったというのに

「アル、なんでもっと早く帰ってこなかった」

「・・・・・・・・・」

「お前なら、姫様を守ったまま城入りするなぞ造作もなかっただろう、何があった」

「・・・・・・・・・」

「言えぬか」

「すまない」

「いや、お前のそういう所は好きだ、融通が利かない、そして、そういう軍人だ」

クラフトはそれ以上なじったり、責めたりすることはなかった
黒かった車は真っ赤に染まっていた
名前に恥じぬ赤を纏いて、今宵、その戦果を世界に知らしめた
火薬を用いた全く新しい兵器
火薬そのものを殺傷兵器とするではなく
火薬を用いて別の物体に使役とするが故、兵器となる
どちらにせよ、莫大な量の火薬が必要だ
これはヴェステンでのみ採取できている、現状ではそうだ

「これで平定も終わるな、我が家へと帰られる」

「・・・・・姫君は恐ろしいな」

「クラフト将軍・・・」

「お前だけに言っているんだ、わかっているだろう騎士ならば」

「それは」

「言わぬにこしたことはない、だがな、俺は重騎士として生涯をまっとうしつつある、そうなるとな
奇妙な正義感・・・・いや、信念が産まれる、ワシは生粋の戦争好きだ、戦争が無くては職にあぶれる、
だが、その戦争好きから見て、あの兵器、rote hornは、まずい」

「・・・・・・・」

「あれは戦争兵器ではない、虐殺を助長させるものでしかない、美学に劣る
戦いではなく、単なる殺し合いを助長させるに過ぎぬ・・・・・それを実戦に投入してしまう姫君、
恐ろしい他無かろうて・・・・・、わかっているさ、時代に取り残されていると、美学というのは
自分を騙すための法だとも・・・」

「自分をせめないほうがいい、それに、姫様はそこまで残虐行為を好む体質じゃない」

「・・・・・ほう」

「姫様は、そういうのを最も疎まれる、必要最低限の血しか流さない」

「・・・・・・そうだな」

クラフトはそれ以上食い下がらない
老将軍は頭がいい、傾注しているアルをなじるようなマネは無論
姫様に対する批判などするわけがない、軍人はあくまで
大将の言うことを聞くものだ

「第一あれは、攻城兵器だ、対人兵器としては想定していない」

そいつは、詭弁だ
クラフトは思ったが黙るのみ、空が知らない内に紅くなってから
暗く落ちてきている、開戦前に世界は青いと定義づけたが
実際は、そんなわけがない、こんなにも自然に紅いし、暗い、そして黒い

「そういえば嫁とは会ったのか?恋しかろう」

「まったくだよ」

最後のは、本当の笑顔だったように思える
南方の、港の制圧は済んだ
城都へとクラフトの軍は戻る
アル率いるマイグレックヒェンは、一旦ヴェステンへと戻る
戦地の状況はそのようなところだ、戦争は一方的な虐殺によって終了した

この戦況については、南方では語りぐさになるほどの衝撃で
また暫く、内乱といった小競り合いはなくなるであろうと
推測するに充分だった
戦況の報告そして、いよいよ、本土への帰還を果たすため
今一度、白騎士達、いや、アルはヴェステンの地へと足を踏み入れた

またこの戦果を聞いた紅の軍師
そして若き白騎士は、お互いを見合わせたという
強力な攻城兵器を携えた軍隊が今、ごく隣国に居る
これをどう受け止めるか、手下というべき
囲い込んだ貴族達は、ひっそりと出方と表情を伺った
人の繋がりなぞ脆い、ふと、そういうあきらめを覚えた
誰が?それはわからない、おそらくは
誰もがだ

ヴェステン

「ご苦労様、白騎士、既に戦果は聞き及んでおります」

「予定通りでございます」

「ありがとう、アル」


驚きのあまり、顔を挙げる
姫様に直々の賞賛を浴びるなど、考えもつかなかった
呆気にとられるように、その青い瞳を見つめ返した

「本来ならば、もっと多く労いをと思いましたが、それよりも騎士隊長には、何よりの喜びが」

ぱちん、姫様が鳴らしたわけではない
どこかで誰かが合図を送った
それに弾かれるように、するりと、女が姿を表す

「き、キルシェ・・・」

「久しくしております、騎士さま」

「本国より来た、使者である、一応は控えてもらおう、騎士殿」

「も、申し訳ございません」

すぐに我を取り戻すアル
かしこまって跪く

「では、アル、申し訳ないが、いつものように」

「はっ」

言われるままに、退席する姫様の後衛として
廊下へと身を投げていく、すれ違う妻君に
何かを言おうとするが、それを、キルシェが目で制した
できた女房だ
おっさん臭い台詞を思い立ったが
アルは、どこか喜びを感じている、愛し合ったという形跡が少々ある
人質という待遇の妻ではあるが、アルにとっては
唯一無二の女でもあると、彼は信じている
可憐なる心の持ち主だ

いつものように、石塀に仕切られ
遠く、ただ遠く分厚い岩壁により隔絶された部屋

「ご苦労、アル」

「はっ」

「おおよその準備は整った、仕上げに入るぞ」

「・・・・・・・」

「お前は私の言う通りに動いておればよい、くだらぬ事は考えるな、時間が少ないのだ、くだらぬことで手を取らせるな」

「はい」

「さて、明後日、紅の国へと帰還する、いよいよだ」

「・・・・・・・・」

「今夜がさいごだ・・・・こころせよ」

アルは、膝を折り
床へと腰を落とす
さいごだと言われた重みをつとつと思う
ぎぃ、扉が一度ぎり、開閉した音が聞こえた
目隠しをしている、だからそれの意味は想像するしかない
これは夢だ
最近は、そうやって思うようにした
つづいて目の前で衣擦れの音がするのがわかる
扉から入ってきた誰か
そう信じている

「さいごだ、思うざまに、今までに無いほど、狂うように」

この声は誰のものか
判別はつけられない
ただ、これから起こることを姫様がしているとは思わないし
思うことを赦されてはいない、こんな夜を
ここに来てからずっと続けている、気が狂いそうになる夜が毎夜続く

正座をしたアル、その肩に「顔前」から女が乗りつけた
娘の若い身体が、その生肉が顔に押しつけられる
そこを、愛撫せよと、高みから声をかける
その通りに、じゅるり、音が唾液とも、愛液ともとれぬ
淫猥な声が、ただ響く

「さぁ、ただお前は女の汁をすすればよい、あられもなくオスの本能に従い、ただただそれを甘受せよっ」

女の声が響く
アルの顔にまたがったまま
その頭を必死に掴み、がくんがくんと一人揺れる
両脚を男の背中側に投げだし
ばたばたと暴れては、後ろに倒れまいと
必死に、よだれを流して伏し目にして快楽に踊る

「もっとだっ、もっとねぶるように、ねちこく、どうしようもないほど下品に下劣に、淫猥を極めよっ」

アルから答えはない
それどころではない、目の前に押しつけられた
言われる通りの生肉をただすすり、嘗めあげ、愛撫を
いや、凌辱にも似た行為を続ける

「はぁっ、はぁぁはぁはぁっ、あぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁっ、っっっ、っっぅっ」

小刻みな吐息が聞こえる
目を塞がれているせいだろう、酷く耳が鋭い
アルの耳から官能が注ぎ込まれてくる
脳味噌がピンク色に弛緩する、わけもわからず
だが覚えている、女の味、これは誰というものではない
女という生き物が発する液体の匂い、それをひたすら嗅ぎ
挙げ句飲みくだし、その太股に挟まれたまま熱を浴びる
頭を押さえられるその手すら、いやらしくも愛おしいと覚える

見えないということは、恐ろしいことを見せる

「もっとぉっ、はやく、ずっと、奥、奥っ、早くっ、乗り遅れる、早くっぅぅっっ」

ばたばたっ
一層乗りかかった娘は激しく罵る
そう、本来は罵っている、言葉にならぬほどの嬌声で
愚図だの、豚だの、ケダモノだのと、それ相応の言葉で罵る
アルからは見えない
見えないが、その乱れっぷりが頭に描かれる
男の顔にまたがり、ばたばたと身もだえしながら
悦楽に心地の良い笑顔を浮かべる口元
その顔の持ち主は

「くぅっ・・・・・はぁぁああっ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁっ、い、いくっ、いく、ぃくっぅっ!!!」

ぶるっ
たまらず、その太股がぎゅぅと萎縮する
そして激しく鼻先から伝わってくる、快感の痙攣
ぶるぶると、娘は大きく果てたらしく、そんな匂いが鼻をついた
あーっ、あーっ、と、小さく、そして小動物を連想させるような
可愛らしい泣き声、語尾にハートがつくほど愛らしい
それと同時に伝わってくる快感の波
ぶるぶるぶるっ、太股と女のそれ自身が
激しく震えた、またがられた頭は今、その娘の力の限り抱き締められている
抱き締めて、そして、その部分を押しつけている
遅れるように、いや、実際はそんなに間を置いていない
だが、少しの間を感じたあと

しょわあぁぁぁああぁぁぁぁ・・・

じんわりと、生暖かい液体が顔中に広がった
液体は糸を引く、だが、それよりも水気が多い
もうどこから何が漏れて、どう濡れているのか
皆目見当もつかない
潮を噴き上げたのか、失禁をしたのか
そのどちらかはわからないが、ただ、猥雑で色狂い極まりない
そんなことを思った

「さて、いつもならここで終わるところだが、さいごだ、ほうびをさずけよう」

声がした、どこからしたかわからない
ただその声だけは、間違いなく姫君のものだ
それまで喘いでいた女とはまるで違う声色のようにも思う
アルは言われた意味がわからず、そのまま正座を続けている

する

「!!」

「案ずるな、このことは、妻君には言わぬ、安心せよ・・・・」

そういうことではない
アルは思った、姫様の前で、ロコツなそのような部分を見せること
姫様の前では絶対に、臨戦態勢などになるとは思っていなかったが
この数十日、たまりにたまったそれは
ついにその禁を破った、隆々と反り立ち
どくどくと脈打つ、赤黒いであろうそれを、姫様に見られている

「・・・・・・姫様」

「貴様に、喋る自由を与えた覚えはない、黙れ腐れ犬」

いつもの声色、いつもの調子だ
だが、それを聞いても屹立は弛まない
戸惑うが、身体は言うことをきかず、その部分は誰かに触られている
その触られている感触も少しすると

ぬるり

粘膜に包み込まれる感触に変わった
激しく悶える、口でされているのか、あるいは、既に接合したのか
混乱する頭、だが、下半身はただただ快感だけを
忠実に脳へと送り込んでくる、気が狂いそうだ、アルは思った
どれがどうなって、何がなんなのか、誰で誰なのか
もう何を考えているかわからないが
ただ、事実として

かつてないほど勃起した自身と、それを包み混む生暖かい肉の感触

それがむず痒いように後頭部あたりをくすぐっている
ずるずるずる、ずちゅずちゅずちゅ、動かれている
何度も、だが、極度の興奮状態のせいか
あまりに硬直したためか、それを快感へと変換しながらも
決してイクという予兆を感じられない、これはこれで拷問だ

「ほう、貴様も男だな、あまりに『そう』なると、男というのは痺れてしまい、役に立たぬそうだ」

「・・・・・・」

「役に立たぬはまた、別の意味か・・・・まぁ、いずれにせよ、甘受せよ、その見えぬ世界で己を恥よ」

ふるっ
最後の台詞で、急速に我を取り戻す
同時に、つまっていた何かが取れたように
全身を耐えられないほどの、絶頂が襲った
果てる、それがわかる、思わず声を漏らしたのは覚えている
だが、はたして

それをその粘膜の中で果てたか、その外で果てたか
そこは、不覚にも理解できなかった
圧倒的な絶頂感だけが、全身を支配した

ぎぃ、ばたむ

いつもの通り、誰かが出ていったとも取れる扉の音のあと
目隠しは外された、ランプによる薄明かりに
ぼやけた視界が戻る、アルの目の前には
主人がいつもの調子で座っている、上気も、そのような様子も
まったく感じられない、やはり、別の何者かが今まで痴態を演じたのだろうか

「下がれ、今夜も扉前の警護を頼むぞ、アル」

「・・・・・・・・かしこまりました」

答えるだけで精一杯だ
自分の痴態を見られたという、屈辱・・・・・とは違う
だが、なんとも言えぬこの感情を抱いたまま
扉を開き外へと出た、ばたむ、閉まる音がして
アルは覚醒する

「私は、姫様を守ることが仕事だ」

誰に言い聞かせるわけでもなく呟き、暗がりの廊下でじっと立ちつくす

つぎ

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はい、後半のエロシーンは無理矢理つけたしました
申し訳ございません
仕事の都合とか、おいらのへたれ具合があいまって
更新が滞ってしまい
なんというか、エロ小説と歌っている以上
待たせたらエロ展開が要るだろうと挿入しました

典型的なM思考による
SMになりましたが
当方そのような趣味は、ありませんよ、ありません

駄文長々失礼いたしました
R(04/11/08)