ein rotes Kleid,
Sie ist Prinzessin.


思えば、この異国との文化融合というのをしたくて
南を取った、この港を取ったのかもしれない
アルは、ようやく思考が姫君の足下あたりまで来た
今は、数十人の人夫を使い、風呂を建設中だが
唐突にそれに思い至った

東の国についての様子は、おびただしい数の手紙で
姫君は、吸収に務めていたようだ
その片鱗を、あれこれと、毎日の謁見の度に聞かされている

「順調か?」

「はい」

「そうか・・・・一度、見ておかねばなるまい、近く案内せよ」

「かしこまりました」

定例の報告を済ませる
姫様は、背中で会話をし、その実はまたひたすらに筆を走らせている
このところ、特に頻繁となっている、また返事も合わせるように早くきている
時折見せて貰うが、なかなか面白い、興味深いというべきだろう
土地それぞれで、まるで異なる文化

「驚いたな、奴らは、魚を生で食べるようだ、オリーブもつけず、妙な黒い油をつけて」

「随分と野蛮なことですな」

「お前はリンゴを食べる時、わざわざ火にかけねばならぬのか?」

「失礼いたしました」

普段なら、ここでいかにその軽率な言葉が
愚かしく、恥ずべきものかを、こんこんと時間をかけて
ゆっくりと刷り込めてくるところだが、この最近
姫君はとんと、そのような様子を見せない
ただ、その新しい情報を真剣に読みとり、そしてつぶさにこちらの状況を伝えている
そんな様子しか見られない、そのせいか、甘い香りのする妹も
ここ数日は、随分と弛んでいるように見える
どこか油断をしているような様子が見てとれる、アルが気付くほどなのだから
当然気付いているはずだが、それを放置するほど
そちらが忙しいのか、執心で暇が無いようだ

風呂の完成が近づいてくる
日焼けがすすみ、随分と色が浅黒くなった
なんだか汚れたような感じだ、いっそのこと、この温泉でひとっ風呂浴びたい
アルは思いながらも、もくもくと黙って働く
そして、アルがそんなだから、働き手達も手を緩めないし、温泉に入らない
頭目の動作というのは規律を整える
アルは知らないが、世の中はそうなってる、人間は弱い、誰かに遠慮をする
自己中心的なくせに、自分が傷つかないように遠慮をする

「ふむ、近くだ、ものの一週間ほどでいよいよ使者がくる、明後日、風呂を見るぞ」

「かしこまりました」

「お前も、随分働いた様子だな」

「いえ」

「薄汚く、汚れたと言っておるのだ」

「申し訳ございません」

ぷい、そして報告はいつもの通り終わる
アルはおそるおそる、姫君を仰ぎ見た
既に視線はアルにない、それがなんとなくわかっていたので
久しく、していなかった行為に身を投じた、
許しの無い場において、姫君を直視するということ

美しくなられた、本当に

すぐにそして目をふせた
胸が高鳴った、早鐘がずんずんと脳をゆするほど鳴り続く
理由を考える、いや、思考を追う
胸が高鳴った理由は、久しぶりに直視した行為自体の犯罪性
通例ならば、もしも視線が交錯したならば、腕や脚がなくなればいいと妥協するほどの
何かが振る舞われていたことだろう恐怖
続いて、なぜそれまでに恐ろしいことを、今してしまったのか
弛んでいるのは、妹君だけではない、自身も弛んでいる
何か、不安を覚えてしまった、最も近くにいる自分が弛んでいるのでは
枝葉については、いったい・・・

「アル、この武器をどう見る」

「は」

「これだ、サーベルのようなシタールのような、不思議なものだが」

「お預かりいたします」

急に声をかけられたが、うわずりながらもすぐに返答をした
目の前に差し出されたサーベルを見る
随分と変わった装束をしている、鞘は木でできているようだが
表面はつやつやとして、不思議な質感をしている

「これは」

「デアルカの国では、主力の武器らしいのだ」

ぐい、思いっきり引っ張ってみるが
鞘からサーベルが抜けない、?????
疑問というか不思議という表情を素で顕わして、アルが悪戦苦闘する

「くっくっく、お前はいい顔をするな、アル」

「は、いや・・・その」

「柄と鞘とを握り、親指で柄の前の輪を押すのだ」

チキ、言われた通りにすれば、驚くほど容易に抜けた
美しく磨き込まれた刃が姿を現す
金属から削りだしたかのように美しく、そして鋭い

「・・・・・・・・・」

「美しいであろう、兵器でありながら、その姿、デアルカの国ではこれを魂と呼ぶらしい」

「魂・・・?」

「精神や、気概や、己の根源を現す言葉だそうだ、不思議な国だと思わぬか」

「物に信仰を持っておるのですか?」

「・・・・・・・信仰・・・・な」

姫君は驚いた顔をした
アルにはわからない、その台詞が思ったよりも、いい事を言っている
抜いたはよいが、それをどうしたらよいかわからない
アルは、刃を主にだけは向けないようにしつつ、少し持て余す

「それでな、本来ならば岩が斬れるそうだ」

「ばかな・・・・・・は、し、失礼しました」

「やはりそう思うか・・・・一度振ってみよ」

「はい」

慎重に間合いをはかり
絶対に姫君へは、何一つの脅威が及ばぬように計らって
ゆっくりと構えた、思いっきり振りかぶる、そして
振り下ろしてみる

ぶぅん

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・弱そうだな」

「申し訳ございません」

「ふむ、お前ほどバカみたいに人を殺すことばかり練習した男ですら、扱いが難しいのであろう」

「・・・」

「文にあるには、一撃で人間が真二つになるそうだ、そして音すらせぬらしい」

「・・・・・・・」

「よい、使者が来た時に披露をさせよう、楽しみが増えた、下がれ」

想像もつかない
ただの鉄の棒で、人間が真二つに割れるなどあり得ない
包丁とて、叩きつけて肉を裁断するのだから
おそらくはそういう類のことを言っているのだろう
アルはそう思ったが、姫君の機嫌を考え、そこは黙った
それよりも、二つになるべきものを見つけておかなくてはならない
そう思った、願わくば自分ではないようにと

二日後、約束の通り温泉の下見が行われる
アルは姫様を呼びに、登城する
しかし、様子がおかしい

「姫様」

「少し黙れ」

「・・・・・」

返事すら黙る
アルは、明らかに焦りを表情に現している姫を見た
はたはたと、手元に届いたばかりとおぼわしき手紙を見ている
目が凄いスピードで進んでいく
いつになくせわしい、取り乱しているとも取れるほど
アルに対して、いや、他人に対してこの表情を見せたことは
ついぞ無かったはずだ、それほどの狼狽が
今、姫君の動きを作らせている

「・・・・・・・・どう見ても、まずい」

「・・・・・・・・・・・」

「アル、貴様、何しに来たのだ」

「いえ、温泉の下見の準備ができましたので報告を」

「・・・・そうか、そんな約束をしていたのだな、そうか」

「いかがなさいました」

「全てが台無しだ、おそらく使者はこない、そして」

言葉が切れた
沈痛な面もちと、重苦しい空気
姫君は一つ、ため息をついてから手を振った

「・・・・下がれ、今日は止す、誰も部屋に入れるな、妹よ、お前も外へと出ていなさい」

部屋の外へと出た
妹君は戸惑った様子で、おろおろとアルの後ろをついてきた
扉を閉めると、アルはそこに立った、姿勢を緩めず、気を付けの姿勢

「あ、アル様?」

「私ごときに、様など勿体ない、呼び捨てでかまいません」

「・・・・・そう、あの、あ、アル・・・・・あなたは何を」

「姫様の命令です、私はここを守らなくてはなりません、妹君様におかれましては、御自室へとお戻りください」

褐色の娘は目を丸くして驚いた
この騎士が、ごくわずかな会話の中から、命令を読みとり
そしてそれをただちに、何も私意を挟まず遂行していることに
震えを覚えた、弛んでいた気持ちが引き締まる
いや、それよりも今まで、どんな危険に自分があったかを
ようやく思い出した
こうでなくてはならないのではないか、それでなくてはまた、おぞましき仕置きが
青ざめて、静かにそこを後にする、アルは何も言わない
騎士は姫を守るのが仕事だ

「・・・・アル騎士」

「すまぬ、姫様は気分が優れぬようだ、今日の外遊は中止だ、皆に伝えておいてくれ」

「かしこまりました」

遅い為、様子を見に来た若い騎士が去った
マイグレックヒェンにおいて、隊長のアルから見て、すぐ下の階位に居る
若いが働きもよく、忠誠も著しい、その見聞にそぐわぬよう
理由は聞かず、ただ行幸中止の旨だけを持って帰った

窓から外が見える、まだ午前中の柔らかい光が
飛び込んできて、廊下を明るく見せている
その光の位置が90度近く変わった
途中、二度、侍従が食事を運んできたが、全て下げさせた
無論、アルは一口たりとも食べてはいない
当然、中の姫君もその通りだ

やがて光が、赤みを帯びる頃
中から声がかかった

「アル、今から向かう」

「は・・・・?」

「温泉だ」

すぐに仕度を整えなくてはならない
アルは、聞いて、また若い騎士を呼び出し
人数を揃えさせた、出発まで十五分
馬車から、護衛の手配までを滞りなく隅々まで渡らせると
三分時間が余った

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

姫君を見る
姫君も見る
視線が交錯して、アルは始めて口を開くことを自らに許し
次の「命令」を遂行する

「何があったのでしょうか」

「今朝、この手紙が届いた」

「それに」

「これの内容自体は、ここ数日の話が書いてあるだけだ、まもなく
国の統治が終わると、その為、優秀な部下を前線に送り込み
交戦に当たらせている等な」

「それが」

「問題は、その配置と経緯にある、おそらく、デアルカは今頃
翻意に当たって、・・・・・・・死・・・ぃゃ、滅びているだろう」

珍しく、姫様は言葉を選び損ねた風だった
苦々しい顔をしたが、また元通りの表情に戻り
ため息をついた

「自らの兵を2000だけにして、遺恨のある部下を極近くの統治にまわしておき
主力を全て、遠方の前線に送ってしまった、軽率すぎるミスだ。
デアルカらしいのだがな、自分本位で、他人の動向を興味が無くては思考に入れない
だから、この機微を見逃した、おろかだ、デアルカを裏切るこの男もおろかだ」

言っている内容の半分以上は、アルにはわからない
最近の彼の国の情勢を愁いているのだろう、だから内容がわからない
仔細がわからない以上、より強く気持ちがくみ取れる気がした
珍しく多弁
いや、いつだってこの国のことを話す時は多弁だった
そして随分と情熱というか、感情が動いていた

「・・・・・・・・・済んだことだな、時間か」

「はい、では」

静かに先へと促す
姫が部屋を出、それにアルが続く
出るすがら、机の上に分別された手紙があったことを
初めて目にした、今までアルに見せていたのとは
違う手紙、そして、机の上の僅かな染みを見つけた
それが何か、この時はわからなかった

まだ解らないじゃないですか

と、バカげた事を言うほどアルは暇じゃない
城を出る際、何か物が届いていると通達があった

「いかがいたしますか」

「持て」

言われるまま、アルはそれを前に差し出す
円い玉が入っている、くすんだ、不思議な匂いがする
何かは、アルにはわからないが

「そうか・・・・これが・・・・・・、アル、これを携えよ」

馬車へと乗せたあと、アルは馬にまたがり
その横をついていく、馬車の中は外からでは見えない
アルは緊張を自らに強いて、辺りの気配を伺いながら
ずるずると温泉まで連れだった

「立派なものだな」

仰々しく、一軒家ほどの風格があるそれを見て
姫君は、感想を漏らした
すぐに中へと入っていく、着替え場のようなところでは
きょろきょろと、そのデキを確かめている
文から聞きづてたそれは、はたしてこれで好いのか
それを、じっと見ながら、思い出している様子だった
いつもとは違う、声のかけづらさがずっとつきまとった

「折角だ、一つ入ってゆく、外を見張れ」

「かしこまりました」

言うとアルはすぐに下がった
外で待っていた護衛騎士達の視線が集まる
アルは、手だけで合図を送る
無駄な音は立てず、すぐさま防衛の陣を敷いた
アルは、そのまま門扉の前に直立する
辺りは暗くなってきている、空には星が見える、さらに暗い青みが増す
少しして、中から声がかかる

「アル、5分後、先ほどの玉を使え」

「え、使う・・・・とは?」

「筒が一緒にあったであろう、そこへ入れ、縄に火をつけよ、その後は、地面に置き少し離れる、よいな」

言われるままに
アルはそれを実行する、興味深そうに他のものが見ている
時間をはかり、そろそろと見る、火をつける
少し離れろとあったが、どれほど離れるのが得策か
考えながら下がること数秒

っっっっかっ!!!!!!!!!!!!

「!!!!!!」

「のぁっ!!!!」

「な、にが」

ぱぁっ、
辺り一面に、凄まじい光の洪水が起きた
呆気にとられる陣営、続いて、雷とも違わぬ轟音が響く
ずししし・・・・、地面を揺るがすように
全身を重たい音が巡っていった
空に一瞬だけ開いたそれは、もう跡形もない
全容を理解するのに時間がかかる
アルも、度肝を抜かれ、いつまでも
何もなくなってしまった空を見るばかり、そしてようやく
火薬の焦げた匂いが脳までわたり
それが、そのようなものであったと思考が至った
まだ何人かの騎士はその場にへたりこんでいる、若い騎士は立っている
だけども顔は、アルと同じく呆気にとられている

「なるほど、確かに、空に咲く花だ・・・・・デアルカ、ありがとう」

露天となっている温泉から
天を見上げていた姫君は、誰も居ないことを理解した上で
そして、光の後、轟音が出ることも知った上で
姫君は、一つの台詞を叫んでいた
届かないだろうとわかっているが、伝え聞いた幾ばくかの知識に恃み
普段ならバカげていると一笑に付すような

言霊だとか
天だとか
魂だとか

それを初めて
神とやらが居れば、それに祈るというのが一番近い
しかし、天というそれすらをも超越する
存在ではない現象に向けて
叶わぬ願いを叫んだ
東の国では、いや、デアルカが初めての窮地
3万の敵に3千で向かった時の事を思い出した

音に響いた大きな波紋が一つ
湯面を飾り
それにわずか、彩りを添えるように
もう二つ、あるいは、三つと波紋が広がった

雫の落ちる音は小さい

あまねく全ての願い、思いと並ぶほど
儚いそれは、砕けて、一面の湯へと姿を消した

まだ二十歳を越えない娘の話だった、それだけのことだった

つぎ

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言い訳が見苦しいので
しばらく、何も語らずに
進めてみようかとか
思ったりなんだったりしながら
ようは、書く事が無ぇちう話で

取り戻したい形をおぼろげながらに思い出したので
今は、それに向かいたいと思います

年内というか、出来る限り早く終わらせようね、俺
駄文長々失礼しております

R(04/08/23)