ein rotes Kleid,
Sie ist Prinzessin.
1ヶ月が過ぎている
「入れ」
静かにアルが居室へと入る
冷え冷えとした石畳が続き
それにより組み上げられた部屋は
涼やかで過ごしやすい、外の陽射しはきつく
空は青と白しか許されていない
中では、相変わらずメガネをかけた姫君が
でこをてかてかさせながら、せっせと執務をこなしている
傍らに、戸惑った顔の妹君が立っている
何か不審な様子がある、アルは訝しげに見るが
妹君はその視線から逃げる
「妹をいじめるな」
「は、申し訳ございません」
「私と一緒でな、男のどうのこうのした部分が嫌いなのだ」
何のことを言ってるのか、考えるのを辞めさせるだけに充分な凄み
だけど静かな台詞で、締めくくるように
ぽむりと文書をこしらえたらしい、封蝋の赤がなまめかしい
「そんなことよりもだ、アル、お前に面白い話を教えてやろう」
言いながら、封書を妹に手渡す
妹はそれを持って、ゆっくりと歩いていく
何かに怯えているような歩き様は不思議だが
アルは、毅然とした態度を続ける
妹君とはいえ、その目の前で、本来の主従関係を見せるわけにはいかない
これは、アルという存在をかけたルールだ
無論アルの保身ではない、姫君が望むことだ、嗜虐
「最近、私が手紙を出しているのは知っているな」
手紙だったのか
アルは少し驚くが、それは顕わさないようにする
黙って主人の言うことに耳を傾けておく
「遠く東のほうにな、ペンパルが出来て、それといわゆる文通というのをしているのだ」
・・・・・・・・・酔狂を通り超えて、なんだそれは
と、アルは思わない、趣味なのだろうと
全て認めてしまうから、具合がいい
姫君はそのやりとりをしたのであろう手紙の内の一つを手に取った
そして、それをアルへと差し向ける、からくりが仕込んであるかのように
アルはそれを慇懃に受け取る
「・・・・・・・・・・・・」
「お前の無学では読めまい」
ぐぅ、アルが少しばかり傷つく
こう見えて、バカに見えないよう努力を積み重ね
読み書きできなかったのをようやく脱却し
難しい言葉も少しずつ覚えてきたというのに、いきなりの異国語は難解過ぎた
姫君は、その裏の努力を知った上で、それを嘲笑う
「バカはバカらしくしておればよいのだ、そこにはな、異国のことがあれこれ書いてあるのだ」
「異国・・・・・東とは、谷の」
「更に東だ、谷を渡らねばならないから、時間がかかっていたが港を手に入れて少し近くなった」
「その、お相手は」
「国王だな、もっとも、話しによればかなり小さな国のようだが、小競り合いの多い地域らしい」
ぺらりと手紙をもう一度眺める、字なんだろうとはわかるが
本当に何が書いてあるのか、そもそもどっちから読むのかもわからない
今見ている方向であってるかさえ
そんなものを、どうして姫君が読めるのかわからないが
得意満面の様子は、さらに続ける
「そこにな、その国の面白い風俗が書いてある」
「風俗でありますか」
「どうやら、温かい水に入るらしい、これが山を掘ると涌いてくる水らしいのだがな」
「温かい水・・・・それは、涌かして」
「最初から涌いているのだ、湯と呼ぶ、凄いと思わぬか、東の国では別名をつけるほど水が近しい、特に湯は」
姫君はほとほと感心しきりで熱く語る
アルには言ってる意味がわからない
このあたり、やはり学が足らない、もっとも
一般の人間が、そんな感動を覚えるかどうかは甚だ疑問である
姫君の感性が鋭いというのが正解で、アルが凡人だという例だろう
それを聞いておおよその話しが見えてきた
アルは真っ直ぐに楽しそうな娘を見る、その視線に姫君は答える
「流石、騎士殿、わかったようなら」
メガネが板についてきた
グラス越しに見える瞳が、数段輝きを増している
手元には地図があるらしく、それを差し出している
アルはうやうやしく頭を垂れる
「すぐでなくて構わん、お前にも通常業務があるだろう、合間を使え、勤務を怠ることは許さん」
アルは下がる、入れ替わるように
よたよたと歩く妹君が帰ってきた
すれ違い様、なぜよたよたしているのか
初めて気付いた、思わず、ぎくりと背中が喋った
姫様は、それを逃さない、見えない瞳がアルを抜いている
「不思議だとでも思うか?」
「い、いえ」
「そうだろうな、嗜みだ、貴族ならではのな、まぁ私は王族だがな、たまには下の層も見てみるわけだ」
くすりと笑った、いや笑い声らしきものは聞こえないのに
侮蔑を含んだ、嫌な笑い、あざ笑いがあったように思う
背中だけで、アルは居室を後にした
台詞の意味が重すぎる、彼女のあの過去を知るが故にアルの肝は冷え切る
妹君にはわからないが、全てが伝わる暗号のようなものだ
頭がいい、そういう言葉を考えるまでもなく、すらりと言う、聡いとはこういうことを言うのだ
改めて格の違いやらなにやらを反芻し、立場をよく考える、そこから覚えるに
言われた通り、通常の仕事を続けなくてはならない
兵士の鍛錬、ただ、それだけだが
これだけを毎日、日が出ている内はずっと続けている
それ以外の時に山へ、温かい水、湯を掘りに行かなくてはならない
「妹よ」
「は、い」
「もう慣れたか?それとも、既に飽きたか?」
「ぃぇ」
「嘘をつくな、お前の過去なんぞ、おおよそ想像がつく、楽なことだろう、その程度なら」
甘い匂いが漂ってくる
実に些細ないたずらをしている
下着をつけさせず、棒を一本くわえさせている
姫君は言う「その程度」
妹君も思う「この程度」
そこを起点として、程度を違えるのが本質だ
姫君はこればかりに執着している、限りなくこれを楽しもうとしている、執拗に
「油断しているだろう、その程度だと見くびっているだろう、だから」
かつりかつり、わざとらしく靴を鳴らして近づく
冷たい笑顔がめいっぱい近づく
甘い香りの褐色の肌に白いレースの指が降りる
「先、アルに見取られた時、奔っただろう?」
「いえ、そのようなことは」
本心で答える
そして侮る、その程度でどうと思うほど、やわな過去を持っていない
もっと酷い、もっと辱められてきている、この程度は拍子抜けに近い
妹は言葉にならないまでも、感情がそう判断しそれが侮りという表現を纏う
金髪の娘は、それを見て続ける
「『嘘をつくな』は二度目か」
つあ、一瞬にして弛んだ気持ちが収縮して
緊張と恐怖が折り重なった
褐色の娘は自分を守る為にか、その甘い匂いを一層立たせている
瞳がるりるりと揺れる、涙の膜は薄く、だがガラスの玉を揺らすほどにたゆんでいる
直立する、思わず、そして挿入された異物感をなぜか意識する
ゆるやかな潤いが、一瞬にして枯渇した、「ほと」が渇いた
だからか、股ぐらの違和感が脳に侵入してくる
「私に二度、同じことを言わせなくてはならない、これが」
「も、もうしわけ」
「だまれ」
ぐい、降ろしている指、人差し指が
左の胸に刺さっている、薄いそれを楽しむためじゃない
心の蔵をえぐるように、そんなに強く圧していないのはわかる
なのに突き刺さり、心臓を貫かれるイメージがその指先から
伝わってくる、褐色の肌は、ぷつぷつと汗を噴いている
先ほどからいくつかあった残りだ、冷えてからは全くそういった機能が停止した
「奔るというのを何か勘違いしているのかもしれないね」
急に優しい口調になった
実際、妹君は嘘はついていない、それは神に誓える
それを懇願するような瞳で訴える
それを上手に汲み取って、青い瞳は
冷たい色をたたえて、褐色の肌を見ている
「気取られた時点で、お前は一つ気付いたはずだ」
指先が乳房をなぞる
はだけるほどではないが、胸元の開いたデザイン
それを十二分に、ひょっとしたらこの為に用意していたのかもしれない
それほどに活用する、隠れている乳首には触れない、ただ胸元と呼ばれる部分を
ゆっくりと指先が躍っていく、絹の心地がくすぐっていく
「お前は、私に恥をかかせている」
「それは」
「そうであろう、私がそのように下層の遊びに戯れていると知られる、この恥辱」
「・・・・・」
「そこでお前は賢いから解るであろう、姉上をそのような目に遭わせた、お前はどうなるのか」
すん、すん、鼻をすするような
すすり泣くような、そういう音が褐色の娘から漏れる
直立していたはずなのに、知らずうちに膝から折れて
腰をへたりと地に落としている、抜けかけていたそれが
より深くにぬぶりと刺さった、飲み込むようにそれを
はしたなくくわえこむ、はしたなく、渇いたはずのほとは
なぜか、今、感じたことがないほど、また、ああなっている
指先はいまだ、胸の上から離れない
一つ一つ、捏造されていく
そう思わなくてはならないのだ、そうでないと
そこから先は、想像力が苦しめる、どうされるのか
実際どんなことをするつもりなのか、されたことがないから解らない
推理は勝手に進む、今まで、この女性に会うまでに施されてきた
どんな酷いことよりも、一足進んだ、何か
それを行われる
他人の生き死にを司り、高位で、想像だにしない
未だ理解できない世界の身分、その人にされる、それら
「そう、お前は怯えて奔るわけだ、こういう奔るを私は聞いたのだ」
へたりこんだ妹をのぞきこむ
青い瞳に褐色の娘が映り込む
「特別だ、もう一度聞く、あの時、奔っただろう?」
「・・・・・はい、・・・・・・・・・・奔りました」
「そう、正直でなくてはならない、一つ教えてあげよう、私やお前の地位は嘘をつけない」
真っ直ぐな瞳
「ひとたび、口からこぼれた言葉は全てが真実になる、ならなくてはならない、わかって?」
言いながら、優しく唇を圧し当てた、絡め取るように姉の舌が内側へと侵入する
ぬぷりと、唾液をまとわせて、柔らかく、生暖かいそれが口唇をまさぐった
甘い匂いは、その時の姉の目を
忘れることはないだろう、そういう表情でキスをされた
唇を奪われる喜びを覚える、また一つ賢くなる、聡くなる
そうしてしばらくの日々を過ごすと
アルから報告が入った
例のことを完遂したらしい、まぁまぁの速さ
叱るには値しない仕事のできで、姫君は黙って妹をつれだって
その場所へと、アルに案内をさせつれつれと赴いた
「ご苦労、騎士殿」
「は」
数段精悍さを増した男は、忠実な犬として報告だけを済ませた
この数日、アルの働きはどこの誰よりも、人間の限界に挑戦するかのような
そういう働きだった
日に日に鋭くなっていく体つき、目つき、これを見て
騎士隊の者達は、隊長は訓練が終わった後、山に入ってまた自己鍛錬を積んでいるに違いない
そう思っていた、それほどまで体つきが強ばり、ほとんどの時間をそれに費やしていたのだ
よもや、山へ水を掘りに行っているとは誰として知らず
バカは一人でそれを掘り当てた、逞しいバカ、ステキなバカ、踊らされるバカ
姫君は三度、頭のなかでこの男をバカにする
「これが」
「は、まだ私が掘っただけで、左官等は施しておりませぬ」
「かまわぬ、元来、こしらえるだけでなく、掘ったすぐに入るのが粋だと聞く、早速」
「少々熱いようです、お気をつけくだ」
言う途中、既にドレスを脱いでいる
脱ぐというほど複雑な作りではない、何か、ストンと落ちるように
衣服は全てはだけた、最初からそのつもりだったのか
下着をつけずに居たらしい、思わずアルが戸惑い、そして
慌てて背を向ける
「?どうした、お前も来るのだ」
アルのことでは無い、妹だ
呼ばれた娘は軽く応える、姉の着崩したそれを静かに整え、こくり
褐色の肌は、おどおどとアルの方を気にしながら
ゆっくりとドレスを脱ぐ、今日は戯れを施されていない
それなのに、身体がはしたない、かつて調教されていた時とは違う癖がついている
身体が直接液体を吐くわけではなく、心が濡れるに伴って「ほと」が潤う
触れば濡れる人形ではない、口説くと濡れる人間だ
アルという存在を酷く気にしているらしく、動きが切ない
「恥ずかしがることはない、気にするようなものはどこにも居ない、豚と変わらぬ」
姉は優しく言う
わざわざ大きな声で言う
「尊いもの以外に気を配る必要はない、お前は服を脱がす従者に遠慮をするのか?」
「し、しかし、騎士殿は、わ、わたしではなく、姉様の特別な」
おどおどと
言われた姫君は、一度大きく瞳を開いた
思いもしないという表情だ
「アル」
「はい」
「こちらへ来い」
「し、しか」
「・・・・」
数秒の間から全てをサトリ
あわててアルは湯元へとやってきた
暑いこの時分でも、十二分に湯気は立ちこめる
白がかった世界に、透き通る白い肌、輝く金色の髪
そして麗々と灯る青い瞳
美しい女は、湯気の向こうにいる
傍らには、褐色の娘がこれもまた、いる
「アル、私を見てどう思う?」
「うつくし」
「ほら見たことか、この程度の言葉しか出てこないようなバカだぞ、わかるか?」
既にアルの役目は終わったのか
姫君は妹にこんこんと諭す
「わかりきったことを、ありきたりの言葉でしか言えない、しかも時折的を外す、バカ以外の何者でもない」
「・・・・」
「そもそも、こいつは所詮騎士位だ、王位、王族にはなれない、なれる器ではないのだ、器が違えば、次元が違う」
「わ、わたしも元は」
「肝心なことを教えていなかったか、お前は今わたしの妹だ、王族である、王族は他のどの生き物よりも尊い
言うなれば、王族とその他しか世の中には存在しない、だから、騎士であろうが、貴族であろうが、貧民であろうが
全て、等しく「下」だ、それをまず覚えること」
ざぱっ
言うなり立ち上がる、湯気が一度大きくあがる、美しい裸体は
それをまとい湯の中を踊った
アルはそれを見て、美しいとは思う、しかし、肝心の男としてのそれは起こらない
起こす場面ではないというのは違う、アルはこの場面以外でこのようなことになっても
絶対に奮い立つことがない
「その程度に見られること、恥ずかしいなどと思わぬことだ、知っているであろう
お前の過去が見てきたあれらは、等しく同じ目で同じ臭いで同じく低俗であったろうことを」
主従というしばりは、生理を超えて、深く何もかもをしばりつけている
アルは姫君に対してだけは、女性と理解しても男性を発揮することはできない
ただ、妹ならばあるいは、と余裕があれば思うやもしれぬ、今は場合が悪い
妹は場合が違えば、それもあり得る、長くなったが、姉では勃たぬが妹なら勃つ、そんなことだ
飽きたのか、姫君は下がれと手をふり
アルは引く、どっと疲れが押し寄せる、煙る湯気に中たったのかもしれない
湯に消える姫君の白い肌がやや紅潮する、白湯にゆっくりとつかる
全身を温かさが包み込み、得も知れぬ快感がたわむ
ぼんやりと湯煙で狭まる視界に
霧を晴らすような声を上げる
「アル、半月後までに、ここへ浴室を作れ」
「は」
「わかるか、室とは言ったが、城のように大きなものだ、それをこしらえろ、労働者を使ってかまわぬ」
ざぱ、湯から上がる音がした
アルは手早くタオルを差し出す、長い髪が丁寧に拭われる
無論拭うのは褐色の少女の役目だ
湯上がりのデコは一層につやつやと輝き
健康そうな表情をすっかり柔和にさせている
「半月・・・・おそらく、それくらいの後に、デアルカの国の遣いがくる、丁重にもてなすぞ」
「デアルカ?」
「東の国の王だ、奴の配下が近くやってくる、宴の仕度も手配せよ、外交という奴だ」
言いながら、拭かれながら
姫君はすっかりと全てを終えて車へと身を潜めた
褐色の妹も、やや髪に湿りを残しながら続く
妹は車で運ばれる、車は馬がひく、馬はアルが操る
アルは、姫君がこしらえた
ただ、姫君だけは、何にも使役を受けない
終わってねぇ・・・・
さて、そんなわけで
まるで意味の無い一話を使ってしまったわけで
話に深みも与えなければ、進展もしてない、エロいわけでもない
こういうのを失敗というのだと
過去数度の連載でわかってきたはずだったのに
なんとなしに、話進めるよりもエロシーンばかりを書いて
終わるのも酔狂とも思っています
駄文長々失礼いたします
R(04/07/28)