ein rotes Kleid,
Sie ist Prinzessin.
不思議な香りはその後も続いている
いや、より芳しく変化しつつある
どうも、そういう臭腺を持っているらしい
褐色の肌には、白いレースがよく映えている
ふふり
この数日、姫君は上機嫌で過ごしている
アルは居ない、今頃は例の港町を占拠するのにいそしんでいる
白騎士マイグレックヒェン
その蛮勇は、また数日中には近隣へと知れ渡るだろう
後は、適当に白騎士達が未占領地を回れば、全てが治まる
だいたいのカタがついた所で登場すればよい
そして理不尽な暴力により、涙ぐましい怒りというささやかな抵抗勢力を、各地に育ませて
頃合いを見計らって、あぶり出し一網打尽、役目は全てアルにやらせよう
丹誠込めて作られたものを壊す、これほど面白い娯楽は無い
それまでは、暇だ
だから、今は違う玩具が要る
「よく似合う、イイ」
こくり、
おずおずと相変わらず怯えた表情のまま
褐色の妹君は、うつむいた
すっかりと汚れていた身体は洗濯がなされ
よい食事が与えられ、よく眠ることが許され
わずかな時間で、みるみる美しく洗練されてきた
その対価だろうか、匂う身体はより甘く練るようになってきた
さとうきびのような、ラム酒に似た、とろける甘みが日々増している
「もともとがイイのね、元に戻ってきたと言うのが正解であろう」
目を細めて、姫君はそれを眺めて嘆息を見舞う
たまらない心持ちが頭の中をずっと支配している
娘は未だに戸惑っている
この新しい主人が、自分に何を期待しているのかわからない、何も説明がなく
時折投げかけられる賞賛のみ、目は冷たい、何を考えているかわからない
そんな人間が、ぽつりぽつりと自分のことを褒める
そしてうれしそうに笑顔を見せる、ただ笑顔は冷たくて怖い色をしている
褐色の娘は、ちぢこまって、過去の自分の経験から
今がどの状態なのかを懸命に探っている、奴隷として長く生きてきた
生きる為に主人の心を解さなくては、なんとしても
だが、そんな憂鬱を嘲笑うように、主人はただ、賞賛を投げ放つ、それを拾えばよいのか
捨ておくままでよいのか、どちらにせよ恐ろしい
が、どちらもしないのはもっと恐ろしい気がする
一つ褒められて、戸惑う度に何かを積み重ねられている気がする
積み重なったそれがいっぱいになった時、積み木が崩れるみたいになったら
どうなるのか、怯えるが、避けようがない、必死に考えても出口がない
ただ自らが造り出している恐怖に、じわじわと追いつめられていく、戸惑いうつむく
今はこれしか、褐色の少女が発せられるアクションは無い
じり、
焦れる、状態が膠着するにつれ
だんだんとそれに堪えられなくなってくる
妹君は、伺うような表情を見せる、いらへはない
声は未だ発せられない、何も言われない
許されるまで動くことができない、令がない
育ちがそうだったから、自然、簡単な方法へと逃げてしまう
こんな時、かつてはこうだ
どの主人であろうとも、男であろうと、女であろうと
求めてくるのは、これだろう
妹君は、初日にそれを披露した
しかし結果は最悪だった
「なんのまねか?」
ぞくり、
いつも冷たいが、こんなに凍えた瞳はその後見たことがない
魂を砕かれるかと、思うほど
確実に殺されることを考えた、始終、殺されることは
むしろ今からの解放だと望むところだが
そんな安易な逃避を許さない、人間以下、以前、動物として
絶対者を目の前にした、瞬間に逆らうこと、意にそぐわぬこと、怒りを買うことは
死ぬよりも恐ろしいものだと嗅いだ
それ以来
決してそのような振る舞いを見せることが無い
妹君はそれまでそれしか求められて来なかった、今まで、生きている内の大半
脳に刻まれた記憶の大部分、それしか無かったのに
それを許されていない
それどころかそれで嫌われる、ならば生きている価値はあるのか?
不安は積もり積もる、雪のように音を立てずに
それでも確実に、気付けば屋根を潰すほどに積もる
何日経っただろうか
わからない、側にいることを命じられ
わけもわからずぼーっと立って過ごしている
姫君は、それなりに忙しいらしく、執務をこなしている
メガネと呼ばれる不思議なものを顔につけて、文字を追い記している
妹君は文盲だ、当然の如くそのような素養は持ち合わせていない
だから、そこに何が書かれているのかわかるわけもない
悪戯に時間だけは過ぎていく
何度目かの食事のあと
唐突にそれを求められた
焦がれていた瞬間のような気すらした
今、自分は、ようやく価値を得て、必要とされている
短期間で、妹君は己が思っている以上に
精神と人格が発達した
思考が一つ段階を進めて、便所と呼ばれた位置から人間に近づいた
自分の存在価値から始まる不安、そんな高等な思考が備わった
いや、わざわざ難しく言うでもない
ともかくヤるしか脳が無い女だと自分を解ってる娘が、ようやくヤってやると言われて喜んだという話だ
だが、この主人は今までのどれよりも妖艶だ
痴態に躍らせるはずの妹は、躍らされることになるとまだ、わかっていない
「そうだ、見せるだけでいい」
ぞくぞく、褐色の肌に忘れていた感覚が蘇る
一人ぎりだ
主人は、じっと、イスにもたれかかり見つめているだけ
所望されるのは、裸体をさらすこと、無論、たださらすわけではない
ゆっくりと衣服を脱ぐ
脱ぐ順序を教わったわけでもなく、最も卑猥になるようにしていく
するすると衣擦れの音がする
なぜか、全身の感覚がブーストしている、すれる絹の感触が
じんじんと頭をノックする
レースの下着が身体をしめつけている
細いばかりで、肉付きのたらない、さらばえた身体だが
むしろそのことが、より下着の卑猥さをさらけだしている気がする
何度も言う、褐色の肌には白いレースが怖いほど似合う
薄暗い部屋だからか、下着が輝いて見え、それが一層、気分を高ぶらせる
少女は自分に酔いはじめている
知らず内に、酒を呑んだようにぐたりと脳がはみでてくる感じがする
肩を見せ、胸のあたりで一度服を止めている
ドレスからはみ出る肢体、いや、ドレスに飾られた肢体という趣だ
黒く美しい艶を髪は宿す、脱ぎかけたドレスはとかく艶めかしい
「いい匂い・・・・・さぁ、続けなさい」
ぴくり、一瞬目の前の存在を忘れていた
はっと気付いて、すぐに続ける、一度申し訳なさげに前を見た
見られている
薄暗い向こうから、白い肌と金髪が輝いて、青い瞳がじっと見つめている
背もたれによりかかり、頬杖をつき、片側へと身体を預けた風で
額にかかった髪を邪魔そうに一度梳いた、同時にアゴを上げて
見下すような視線が飛び込んでくる
どくん
心臓が撥ねる、なんという視線だろうか
なんという雰囲気だろうか、なんという重圧だろうか
不快とは違う息苦しさを覚える、震えながらゆっくりと衣服を自ら剥いでいく
脱ぐんじゃない、脱がされるでもない、剥ぎ取られる感じ
何一つ強制されていないのに、強要されている感覚が
妹をさらに追いつめていく、そして追いつめられるほどに
身体の奥から、にぶい熱がむせかえってくる、感情か、実態か
わからないが、何かがせまる感じがして窮屈だ
ストリップはまだ続く
ラム酒の匂いがする身体には白い下着のみが残った
幼い身体に、凝った刺繍とガーターは不釣り合いに見えたが
肌の色と匂い、そして、そうやって生きてきた経験が
その不釣り合いを帳消しにしている
少しうつむいた感じで、棒立ちになっている
白い布の這った身体を、一度だけ艶めかしく動かした
戸惑いがありありとある
これからどうしたらよいだろう
通例なら、一人でいたしてしまう所だが、新しい主人はそれを好まない気がする
おずおず、また伺いをたてる視線
青い瞳と交錯する、金髪の主人は静かに命令を与えてくださる
「続けなさい」
言われるままに、いよいよ一人を始める
右手の指先を自らくわえる、左手は平で全身を撫でる
初めは立ったままで、下着の内側へと滑り込ませる
上半身にとりあえずのアプローチ
「ぅぁ・・・・・・」
おかしい、火照っている
褐色の娼婦は不安を覚える、こんな感覚は薬を呑まされた時にしか無かった
もじ、自覚できる下のはしたない光景
おかしい、痛みを和らげる為に分泌されるはずなのに
逃れる為に流すもののはずだったのに
娼婦は、何度も行為を積み重ねてきたが、今夜が、本当の初めてとなる
姫君はそれを知ってか知らずか、ただ黙って見つめている
じっと、ひたすら見ている、娼婦はそれを感じて
さらに熱を帯びる、暑い、つぅと背中を汗が伝った、気持ちがいい
「少し遠いな、近くに」
返事の代わりに、行動で示す
じんじんとしびれつつある足を前後させ
数歩近づいた、主人の白い肌がよりはっきりと見えるようになった
薄暗くとも、輝く髪と表情は神々しさを覚える
殊更、より強くその視線を感じる距離になった
見られるという意識が濃くなる
褐色の女は、戸惑いを見せるが、はっきりと色香に酔い始めた
頬は上記し、かすかに息づかいが乱暴になってくる
白い下着の自分を客観的に見て、火が出るように恥ずかしいと思うようになった
だが、それでも続けたいと、欲している
「もっと楽にしたらいい」
言われるままに、膝をついた、股をやや大げさに開いて
左手で上半身をもう一度なで回す、いや、もっと強い刺激を求めている
撫でるではなく、掴むような、掌で強くこねるような、そんな具合で動かす
口の中で溶かした右手の指先を、身体のラインをなぞり降ろしていく
つぅと唾液が糸を引いた、白い下着は、随分と崩れてきている
ガーターを超えて、下の方へと到達する
「っ・・・・っ」
ぶるぶると、思わず震えが奔った
太股の内側が不規律に、痙攣を繰り返している
濡れた指先が外腿から、内へと流れると
それに合わせて、脚の筋肉が躍る、膝が笑う
膝立ちのポーズを堪えるのが苦しい、自然、後ろに重心が傾く
支えきれない上半身が後ろへと倒れていく
合わせて、下半身は前へと突き出る、わざと見せているように
その部分を前に突き出す、先ほど近づいたから
この格好は、まるで恥辱だ、頭がおかしいんじゃないか
自分をそう思うが、力が入らないのでそうせざるを得ない
続く、淫猥な踊りが続く、踊り続ける
自分の視線は、決して主人には向けていない
向けられない、自分の下の部分に視線を飛ばそうとする
当然構造上、見えるわけがないのだが
そちらへと視線を逃がしている
かくりかくりと、さする右手の動きに合わせて腰が揺れる
もう太股の張りがいっぱいまで来ている、上半身を必死に起こす
そして、尻をとうとう床につけた
ぺたり、
床に落ちると同時に、押さえつけられる下着がぬめるのがわかった
漏らしたようにシミは随分と広がっている、汗もあるのだろう
内腿のあたりはすっかり、湿気が、湿度が高く鬱そうとする
主人は相変わらず見下したままだ
こんなに近いのに随分と高い位置に居るように思える
脳が腐ってきてるような感じ、褐色の娘は溺れはじめている
必死に抗うように頭を左右に振るが
まったく意味はない、尻をつき、M字に開いた足、その真ん中を
丹念にねぶる、布越しに指はくねりくねりと、虫のように蠢く
むせ返るような匂いがたちこめている
甘い体臭が、体中からにじみ出している
白のレースは、ガーターをそのままで脱ぐことができる構造をしている
左右の腰のところで結んである
それを解きたい、これを外してしまいたい、直に触りたい
浅ましいまで、欲求に従い始めている
それでも、主人の許しが出るまではできないと、身体が覚えている
黙っている
部屋の中は、荒い息づかいとのたうち回る女の出す音だけが続いている
くちゃりくちゃりと水音は撥ねまわり、その度に褐色の娘の腰が躍る
気が狂いそう、そう思いながらも、ずっと下着の上からえんえん続けている
主人は、両手で頬杖をついて、足下で転がる生き物を見ている
ただ、ずっと見続けている
白いレースがまるで拘束具のように見える
褐色の肌にくいこみ、そしてその食い込みに逆らうように
玉の汗が、肌のかしこから甘い香りとともに昇っていく
掻き乱して、振り乱して、はぁはぁと強い息づかいが
暗がりの中で、出口もなく彷徨う
「苦しそうだな、楽にしたらよいぞ」
どれくらいそれを眺めていたのか
褐色の娼婦は歓喜して、すぐにその腰のものを、左右の紐を解いた
ぬっとりと重く湿った絹は、床にだらしなく広がった
同時にやや黒く沈着の見える、ナマモノが姿をさらけだした
すっかりと受け入れる準備が整い、だらしなく口を開いて
よだれをとめどなくあふれさせている
芽はやや膨れ、唇は厚ぼったく膨れ、中心は薄いピンクに白く濁った液体が
泡を交えて漏れている、すぐに、そこへ、手を、指を、視線を持っていく
「んぁああっっ!!!!!!!」
ぴくり、姫君は興味深くその生き物を眺めている
ようやく声を出した、初めて声を聞いた、このような声か
目の前の放蕩とはまるでかけ離れた事を思っている
褪めた視線で、まさぐる女の痴態を眺める
イスの上から決して降りることはない、黙って、見下す
じっと、のたうち回る生き物を蔑む
「あ、あ、あ、あ、ぁぅ、う、あ、ぅ、あ、あ、あ、あっ、っっ」
壊れた
自分のことをそう思った、意識しなくても勝手に身体は
右手や左手は、自分のそういうところを犯す
手で、自らを犯して、弄ぶ
ぶるぶると、脳が揺れるように、頭の後ろ、うなじのあたりが
うぞうぞと震える、そういうしびれが全身を伝って、ひっきりなしに
腰を震わせる、ぴちゃぴちゃと音は一層激しさを増し
白いレースはとめどなく濡れていく、投げ出された下着はまるでヨゴレモノだ
したり、
?
なんの音かわからなかった、主人が床に降りた音だとわからなかった
今は色情に悶えることに忙しい
褐色の娼婦はあられもなくそれを続けている
目の前に主人がいるというのは、オカズ程度でしかなく、それを主人として自覚していない
これは問題だ、姫君はとうにそんな状態の背反した娘をわかっている
だから、お仕置きを施す
甘美な仕置きだ
ぐち、
「はぁっ・・・あっ、ぅあっ、ぎ、ぎぁ、ああっっぅぐぁああああああっっ」
「黙れ、声を出すな」
くちっくちぅっ、くちっ
「うぎぃっああああっっ、だ、っ、、、、、あああっぐぃぃあああいぃぃあああっっ」
ぴちっ、ちゅぴ、ちゅぴ、しぱ、しゅる、じゅく、
むぐぅ、嬌声の後、必死に口を閉ざそうとする
命令には忠実に従わなくてはならない
だが、それは無理だ
イスから降りた姫君は、例の目で睨み付けて
右腕を、いや、右手をそこへと押しつけてきた
ぐちりぐちりと、自分のじゃないものがそこをまさぐる
それだけで、出来上がっていた身体は宙に浮く、弾ける
がくがくっがくんっ
「ひぃぃっひぃっひぃっ・・・ああぁぃぃぃぃぃっぃいいいぃっ、ん、んんんんうぅぐぅぐいぃ」
腰が躍る、身体の制御がきかなくなった
声を殺そうとするが、殺そうとしながらも漏れる声は
悲鳴に近しい
白い指先が何本も中で蠢いてる、まさぐられる度に派手に音をたてて
雫を垂らし、時折出の悪い蛇口のように、飛沫を飛ばす、吹き上がるように液体が飛び散る
その声が癇に障るかのように、主人は命令をする
「もう一度言う、だ、ま、れっ」
ぐぃぃいいっっ、白い手は細く美しい
それが褐色の肌へとめりこむ、飲み込まれるように沈みこむ
手首までが入る、当然だ、赤ん坊が出てくるような場所だ
それくらいは造作でない
姫君は、体験してそれを知っている、そして褐色の娘もその経験があると見える
常軌を逸した行為だが、平然と受け入れ、なお、褐色の娼婦は快感へと変換している
白目を剥くかのように、全身を硬直させた
挿れられた感触は、殺人的な刺激を持っている、死ぬと思うほど白く世界が飛んだ
「うくぅぅ・・・ん、んんんん・・・・・ぅ・・・・・・・×××」
差し込まれた腕、その肘から滴り落ちる透明の液体
腕を艶めかしく光らせ、なおとめどなく溢れている
ようやく褐色の妹は姉の言うことを聞けた
黙った
体中を竜が奔り回る
ずるりと、くわえこんだそこは細い腕とはいえ、なおも奥へと欲しがるようにひくつく
ブリッジをして、後頭部は地面に埋まるかのようにつけて
腰だけを高く、つま先立ちで上げる
ふるふると震える脚、これは支える為のふるえ
内腿が痙攣する、これは快感に伴うふるえ
瞳が泳ぐ
これは、姉への恐れからくる、ふるえ
ずちゅ、乱暴にヌキはなった、投げ捨てられたようにして身体を放り出す
その衝撃で、もう一つ意識を飛ばした、がくがくと小刻みに膝が震えて
はしたなく乱れた褐色の肌は、すっかりと力と生気が抜けきっている
姫君は濡れた腕をそのままに立ち背を見せる
初めて、そんな風に果てた
今まで強要されてきた時には感じ得られなかったものを
一挙に手に入れた、全身を快感が走り抜けて、まだ止まない
身体の内側にずっと気持ちの良い生き物を飼い続けている
だらだらと、下も上も口からよだれを止めどなく零す、糸を引く透明な液体は
たまりを作り、広がる
「服を着て、もう寝なさい、そのままそこで果てるようなマネは、私の妹である以上許せない」
これだけの痴態と色情をもってしても
白肌の麗人は全く乱れない
妹は振り絞る
「わかりました、お、おねえ・・・・・・・ヘルシェリン(ご主人様)」
ぱたむ、扉が閉まった返事などなかった
妹は姉の言うことをきいて、服を着る
腰に力が入らない、下着は汚れて使い物にならない
ぽかりと身体に、そこに、穴が空いて埋まらない
濡れた床を拭いて、居住まいを糺し、ベットに横になる
死んだように意識を亡くす
不思議と、解放されたような、そういう気分だけは漂っていた
・・・・・・・・・・・・・・・
「ご苦労、アル騎士」
「は」
数日が経過した、すっかりと地方の鎮圧は済んだらしい
アルが凱旋するとにわかに都は活気づいた
やはり白騎士というわかりやすいタレントは、こういう集団には必要だ
謁見と式典は厳かな雰囲気で行われた
いつもよりも、ずっと白く見える姫君は、それを隠すように
真っ赤なドレスで飾って現れた
衆人はこの美しい女を、主人としてすっかり受け入れている
愚民がごたごたと集まっている、だから、見せる顔、表情、性格が違う
ここは凛々しくある、高貴血統の前王の意志を継ぐ、主としての顔
白騎士のアルは黙って、褒美を授かる
その様子は、整然としていて、騎士らしく正々堂々だ
しかし
後ろ暗い噂はすっかりと浸透している
国における重要な位置にこの男は居るのだと
民の隅々にまで誤解が広がっている
どういうつもりでそうしたのかわからないが、ともかく民の間では、アルは英雄であり、悪党でもある
人々の噂に振り回されるほど
本当の主人の手綱は緩くない、だから、揺らぐことはないが、不安だと思っている
「ありがとう、アル騎士、あなたのおかげで、国は豊かに、そして世界は少しずつ平穏を取り戻しています」
「勿体ないお言葉」
「これからも、国の為に、働いてください」
「かしこまりました」
「いつまでも、そのままで・・・」
最後は消え入るように、そして囁くように言った
民は、これを信頼の表現だと取った、噂はどうあれ実力ある騎士だということだと理解した
アルは、これを命令だと解っている、民がどう思うとも主の命令は現状の維持だと理解した
式典はそこでフィナーレを迎えた
凱旋した騎士達が街を練り歩いていく
ただ、ここに騎士隊長であるアルは参加していない、姫君も当然居ない
「頼んでいたものは揃っているか」
「はい」
主人は強い調子でそれを訊ねた、かつりかつりと石の床を叩いて歩く
後ろにアルが従い、そして褐色の妹も着いている
大臣や近衛の類は寄せ付けていない
1人と2匹は、静かについていく、城にある隠されるべき監獄へと足を踏み入れた
「・・・・・・・・・よし、アル」
「は」
中には、何人かの見た顔が縛り付けられている
そのそれぞれの前には、ボウガンがセットされている
姫君は主人の座と呼ばれる場所に腰を落ち着けた
アルはてきぱきと、準備を整える
「さぁ、妹君様、どうぞ」
「??」
戸惑う、内容がわからないではない、なんとなく解るが、尋常ではないから戸惑っている
目の前にいるのは、何度か見たことがある大臣か何かではなかったか
おそらくこれは死刑なのだろう、だが、さぁ、と促されるのはどういうことなのか
「引き金を引くだけです、さぁ」
なぜ、戸惑いはおびえに変わって、上席の姉を見る
姉は視線を合わせない、じっと、その囚人を見ている
つまらなさそうに、やはりいつかと一緒の、背もたれによりかかりながら右側へ頬杖をつく姿
姫君は何も言わない
「な、なぜ・・・・ですか?」
「あれらは、規律を乱したのだから当たり前なのです、さぁ」
「そうではなく、なぜ、わ、私が・・・・」
「これから、姫様の妹君として居きられるには、強い心が必要です、民を生かす為に誰かを殺めることが、必ずあります」
うんぬんかんぬんと、アルは色々と説明をするが
どれも的外れで、自分がそれをしなくてはならない理由とは思えなかった
だが、既に全ては整っている、そしてやらなくてはならない、
主人のことを思えば理解するのは容易だ
震えて、ボウガンの前に立つ
目の前の大臣は命乞いをするような視線を向けている
猿ぐつわのおかげで、声は漏れないが、むぐぅむぐぅと嗚咽のようなものは聞こえる
この人がどんな規律を乱したのかわからない、いや、そんなことじゃない
あの人よりも私の方が今上なのだ・・・・
奇妙な満足感が波紋を広げた
今までずっと、下で、下層で、底辺で居たというのに
貴族と呼ばれるに相応しい人間を殺める役を司っている
上に立つことができる、いや、実際、今は上だ
「・・・・・・・・・・こわぃ」
思わず声が漏れてしまった、なぜだか
今まで自分はあの側だったことを思うと、途方もなく怖く思えた
戸惑いが、指先はおろか、全身を怯えさせている
「アル、妹が怯えている、助言を与えよ」
「・・・・・今まで、憎かった人の顔を思い浮かべて、そしてそれを撃つのです」
陳腐なアドバイスだこと
姫君は笑いを堪える、その台詞だけで、アルという人間の底が見える
妹君はそこまでまだ、わからない、わからないから言われたまま従う
やるしかないと、腹はキマっている、やり方がわからないこともない
後は気だけ、殺気が必要なだけ
がくがくがく
「・・・・・・・・・・・・・・・」
震える指先をトリガーにかける
そして目の前の人に、過去を重ねようと努力する
ずくんずくんと心臓が高鳴り、汗がいつかと同じように背中を伝う
だが、あの時と違って気持ちがいいとは思えない
「・・・・・どうしました」
アルが遠慮がちに聞いてくる
アルは思う、流石に無理がある、罪のない人間を殺すようなこと
この娘には荷が重いだろうと、なんとかしてやりたいの一心で
ちゃちな声をかけるに至った
だが、アルは見くびっている、彼女は姫様の妹にあたるお方である
「・・・・・・憎い人が・・・・・・たくさん居るから、どれにしたらいいかわからない・・・」
半笑いで褐色の女は答えた
「じゃぁ、皆殺しだな」
姉は、満面の笑みで答えた
バスッ、
この日褐色の娼婦は、少なくとも、5人の人間よりも上等だと確認した
一つ何かを登った、一つ何かが積み上げられた
一つ何かから解放された
これからどんどん、上等になれる
妹は自覚する
そしてまた、一つ人間のレベルが進む
どこまで進むか、わからない
匂いは、相変わらず甘い香りを放つ
褐色の肌に白いレースが、ただ、似合っている
Herrscherin(ヘルシェリン):女の支配者
さて、とりあえず18禁と謳った以上
そういうシーンを書いておかねばなるまいと
すげぇやっつけ仕事で、大変でございます
というか、勃たせる気がないのか俺
そんな具合で、大変ご迷惑をおかけしておりますが
この話しは10話もいかない内に終わる予定で
連載組んでますので、今暫く、おつき合い頂けましたら幸いです
駄文長々失礼いたしました
R(04/06/28)