ein rotes Kleid,
Sie ist Prinzessin.


勝機はある

「いいか、兵力が100分の1でも勝機はある、大丈夫だ、奴らの出鼻をくじくだけでいい
砦まで奴らの陣を乱しておけば、あとは砦の味方がなんとでもする」

アルが描いた戦術をつらつらと説明した
馬に乗りながら、しかも走りながらもその声はしかと味方に届いた
こういうのは天性である、王女にどんなに虐げられていても
実際は大した天賦を持っている

昔から英雄というやつは声がでかい、いや、戦場の喧噪でも良く通る
偶然、アルにもその素質がある、自分でも少しだけ気付いている
英雄っぽい風格が最近備わってきたなどと

だが、その自分像が作られているとまでは知恵が廻らない

「見えた・・・・・・」

ゆっくりとした足取りの敵が見えた
まだこちらに気付いていない、アル達は横に回っている
正確には、森の中の道を敵の軍はぞろぞろ、アル達はその脇の森の中
規則正しく並んだ敵、そこの真ん中を横から寸断する

「いいかっ、ともかく走り抜けろ、確実にしとめなくても構わない
生きて向こう側に抜けていければそれでいいっ、ついてこい」

言うとアルが馬を蹴った、さらにスピードを上げる
味方の志気が上がった、アルが敵には恐怖していないという事実がともかく働く
敵が気付いた、どよ、そういう擬音が目に見える、だが遅い
何かするわけでなく、ただ驚いている奴らの中にアルの馬が飛び込んだ
そして走る、動揺のまっただ中をつっこんでいく、一直線に並び槍のような一団がつっきる

ずどんっ

目的が殺すことではないとなっていれば、他の兵も安心したものだ
闇雲に剣を振るい、止まる事もなく走る
四角いと形容できるような並びであった敵軍を、まっぷたつに寸断
真横から強い力が加わる、たわむ四角、上から見るという事を想像しよう
人の列が、横からの圧力によって、わらわらと反対側によじれる

切れ味の悪いナタを木に打ち込んだようなブサイクな切り口が出来た

「来てるか?」

突撃してから5分、疾走していればそれは一瞬、反対側の森に吸い込まれた
味方に幸い死亡者は出ていない、思った以上に白騎士達は頑強だ、戸惑っているのは敵兵ばかり
肝を据えた分だけこちらの方が強い、やけっぱちという奴は、短期戦には最も効果的だ
考え方が、知らない間に姫君に似てきている、少しそれに苦笑しつつ
もう一度アルが馬首を返す、しかける

「いくぞっ」

アルが撥ねた、後ろに10騎、やや遅れて10騎、そして残り9騎
これらが馬がぶつかり転びそうなほどギリギリに寄って走っている
一枚の板が走っていく、森を抜ける、待っている敵

「声を上げろっ」

先頭のアルの声が敵を震え上がらせ、味方を鼓舞する
呼応する声がすぐ後ろの一団から、遅れてその後ろ、更に・・・・・
3重の呼応の声が、偽りの数を作り上げる、敵が勝手に数を見誤る、数が多いなどと

乱戦になった、敵は陣を乱している、というか元々ただの行軍隊列だったおかげで
随分とずさんだ、槍を持った重装兵などが、慌てて向かってきたが、軽々とかわし
軽装の剣士を狙った、馬でふみつけるなどして、まさに暴れまわる
危なくなれば森に逃げ帰る、そして別の所から参上する、5騎ほどで一組になりそれを繰り返した
馬は有利だ、逃げながら戦う事が唯一許されるから

「敵はすぐそこだっ、動揺は凄まじい、全員で討って出るっ」

砦に向かいアルが力の限り叫んだ、鼓舞する志気



「・・・・・・・・2日、保つかしら」

王女が一人車の中で呟いた、がらがらと車輪は音を鳴らし
城都から別の場所に向かっている、護衛の近衛兵を引き連れて
ぞろぞろと一団が走る、窓から外を見る
肥沃な大地が広がっている、元々は彼女の父の土地であった
一時、敵に取られた、現在は、彼女が取り返した土地
ここ数年でこの土地は、本当にたくさんの生き血を吸った

じーっとそれを見つめていたが、ところどころに咲くスズランを見つけ
なんとなくアルをまた思い出した、眉根を静かによせて
ちょっとだけ考える、それから呟く

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ひょっとしたら死ぬかなぁ」

鼻にかかる声でそう呟いた、誰に聞かせるわけでもないのに
妙に色が懸かった声色で呟く、死ぬという単語をことされ、媚びるような調子で呟く
視線は車の中に戻った、暗い窓から馬主と馬が見える
揺れるたてがみを左右にやる馬の姿、もう一つ呟いた

「ま、いいか・・・・・・・・・・・そろそろ飽きたし」

がらがらがら、車はともかく城都ではない所に向かう



勝機というのは、結局流れの中にある

一連の流れを上手く見極めて、そこに上手に乗った奴が生き残り
無事勝利を手に入れる事が出来る、先を読む力も必要だ
読んだ所にどうしたらいいか考える力も必要だ
そして、それを実行するだけの力が、一番必要だ

どうにか日が暮れた、マイグレックヒェンは6人の死者を出した

事態は単純だ
砦の味方が、味方ではなかった
ただそれだけだ

「・・・・・・・・・くそっ、所詮仇かっ」

「畜生・・・・・・」

「どうしたら・・・・・」

動揺が伝播しつくしている、辛うじて野営を張る事は出来た
だが、ダメージは大きい、身体よりも心に特に大きい
部隊にとっては、それは致命傷だ

放たれた城門に一旦入った
だが、中には剣を抜きはなった幾人かの剣士が構えていた
いきなりの喧噪、狼狽える白騎士達
大慌てで迎撃をする、すぐに悟って声を上げるアル

こいつらは敵だ、駆け抜けろ、外へ出ろっ

精一杯張り上げ、なんとか導いた、入ってきた側は既に閉じられていたが
反対側は、先の迎撃戦で壊れたまま、開け放たれていたので
容易に脱出が出来た、這々の体で逃げた
ともかく走った、追っ手は来ない、不気味な沈黙、そして今にいたる

確実に勝てたかと聞かれると断言は出来ない
だが、少なくとも勝つ可能性はあった、アルは辛酸をなめる
所詮外から入れた兵などというのはそういうモノなのか
自分にわずかながら、カリスマみたいなモノを見出そうとかしていたが
いいように裏切られた、うぬぼれにようやく気付けば窮地だ

から笑いをしたい、そんな気分だった

「アル騎士・・・・・・・・・・」

「・・・・・ああ」

一人の若い騎士が側にやってきた、利発そうな顔立ち
確か剣の腕もなかなかで、部隊では最年少だった気がする
隊の中では、一番軽傷だ

「どうお考えですか?」

少年は真っ直ぐな瞳でアルを見つめた
少年は自分が騎士だと信じて疑っていない、そういう使命感みたいなのをオーラに纏っている
アルはその騎士団の隊長である、それ故に敬服を向けている
他の兵士とは少し違うな、そう感じた
他のはいわゆる寄せ集めのゴロツキという感がある、騎士とは名ばかり
傭兵とかそういう旅団としての名前が似合う連中だ、彼は違う

「・・・・・・・・・なにについてかな?」

アルは言葉を慎重に絞り出した
自分の本質が、どれほど愚かで下劣で騎士隊長という地位にそぐわないか
それを悟られまいという、虚栄にも似た感情で重鎮そうな雰囲気だけを保った
そこだけに注意している、毅然、雄大、尊厳、色々守らないといけない
彼自身のためではなく、アルの飼い主である、姫のために
重要なのはそこだ、アルに保身は無い

「いえ、その実は少しお耳に入れておきたい事がありまして」

「?」

「3000っていう敵の数、あれは嘘ですよ」

少年は嘘をつかない
それは解る、彼は神に誓った、いわゆる騎士だ
愚劣な手段は用いない

「遊撃の際に思ったんですが3000も絶対いませんでした。多くみても800くらい。」

「・・・・・・・・」

言われてみれば、懸命に走ることだけに専念してて気付かなかったが
確かに、3000も居たとすれば、もう少し抵抗が別だった可能性が高い
というか、そもそもあんないい加減な遊撃で、あれだけ動揺するのも
何かおかしい、アルの無い知恵が少し働く

「最初に3000と言ったのは誰だったのかな?」

「既に砦の中はそんな噂でもちきりでした、出所はわかりません・・・・・」

アルは考えた、中に間諜が居たのか?
全部がそうと見えないこともない、一斉蜂起した奴らの総大将が?
既にどこかで密約が交わされていた可能性もある
なんだろう、その割りには不手際が多い
砦の向こうとは、通じているそぶりは無かった

「アル騎士?」

「ん、いや、ありがとう・・・・・・・・・その話、みんなに聞かせてやっておいてくれ」

「い、いいんですか?」

「結束が一番重要だから、寝返りを目の前に見ると、どうしても通じたくなるのが人の弱い所だから」

アルは今まで見てきた人間を思い出してそう説いた
以前のあの動乱、あの中での人の流れは、自分を見失った人間が流されるままだった
勝手に自分の意志以外の何かが強烈な影響力を持ち、知らない内に
制御されている、あるべき支配の形だ
それをたくさん見てきた、アル自身は支配者の形が明確になっているので
なおのこと良くわかる、何もかもを凌駕する存在に対する、恐怖と服従

従うことが楽な行き方だと、身体が知っている、人間の性質、彼女の言うクズの宿命

「わかりました」

少年が下がった、アルはじっと視線をあらぬ所に泳がせた、自分の内にこもる
真剣にモノを考えている、多分、そんな自分に酔っている
様になっているだけで、それとない実力とは別の力が備わる
それを信じて、とりあえず考え込んでみる、自分が騎士団の隊長であると騙して

「・・・・・・・・・・・・・・・そうか」

明け方、アルがようやく一つの事に気付いた
日が昇り、二日目が始まる
約束の二日目、そもそも二日目の約束とはなんだったか?

『戻ってらっしゃい、できるわね』

そう、戻ればいいのだ、兎にも角にも



昼、高く上った日が、数百の死体を照らしている
激戦の後、血の余韻が漂い、先の砦は瓦礫になっている

朝方、討って出てきた敵兵に抵抗しつつ後退する白騎士達、また一人また一人と倒れる
いよいよ全速で退却する、悔しさに討ち死にを志願するものが何名か居たが
ともかく走らせた、アルはしんがり、追い立てるように仲間を逃がす
丘を越える、追ってくる敵

目の前に、二日前には存在しなかった、頑強な砦

敵はひるんだ、その瞬間に、スピードが敵を飲み込んだ
目の前から怒濤の軍攻、数はもとより勢いが凄まじい、いいスピードで追っていた敵だが
ひるんで加速が弛んだ、故に勝てるわけがない、逃げるには逆のベクトルが必要だ
強力な加速で追ってきて、いきなり方向転換などできるわけがない、自分達が作った力と
目の前から迫る力に潰れていく、観念的な問題だが、勢いの板挟みになった敵は
自分たちではもう、ベクトルを作ることができないと気付いた、その時に死んだ
あっという間だった、裏切り者だった奴らも、敵兵も残らず斬り殺された
波に浚われるように、飲み込まれた敵は恐怖の中に沈んだ、血の海だった

アル達は生き残った、白い鎧は赤く汚れている

城都

アル他13名の白騎士が並んでいる、王女の玉座の前、公衆の前でもある

「・・・・・・・・・・・・・・犠牲になった者達、そしてあなた達生き残った騎士達よ・・・私が至らぬばかりに」

王女が絞り出すようにそう呟いて、涙を零した
伏せている睫毛、その向こうに瞳がある、それがアルを呼んだ
慌てて、近づきひざまづく、見ている者には王女が弱っていると映る、なんと儚い姿だろうと
衆人、騎士、官民、彼女を見ている全員に、彼女がまだ幼い女であると錯覚させた

「あなた達の働きは、国を救いました、私のような至らぬ者の言葉につぶさに従い
その忠実な様は、どの神にも愛されるべき、騎士の姿です。胸を張りなさい、
影で寄せ集めなどと呼んでいる輩も居るようですが、今回の働きは、決して
あなた達以外には達成できませんでした、国を救った英雄として・・・・・・」

長々と口上を、さも悲しそうに嗚咽を交えて
高らかに宣言している、衆目は制御の対象に入っていく、魅入られている

「・・・・・・・・・ありがとう、そして・・・・・・・・おかえりなさい、騎士達よ」

喝采と歓声が包み込んだ
見たこともないような、美しい笑顔が騎士達を照らしている
ひざまづいたアルが見上げる、側だから、アルだからわかる
だって、ほら目元と口元に浮かんでいる

ああ、嘲笑だ

式が終わり、また二人

「ま、上出来だったかな?」

「・・・・・」

「よく帰ってきたわね、約束を守ったことは褒めてあげる」

「ありがとうござ」

「口を利くな、調子に乗るなよ貧民上がり」

アルを殺す
実際生命活動を停止させるわけではなく、形而上の話だ

「今回ので、ようやく欲しい土地が揃った。お前らがちまちまやってる間に、南の海までも占拠したし」

何時の間に・・・・・・、アルは狼狽する
二日前まで南についての事など軍議に上りもしなかったのに
西のアル達が小競り合いをしている間に、南も同時に攻略していたようだ
南は、西との戦いを戦争と判断し、手薄になった我が国を攻める準備をしている段階だったらしい
その前に叩いた、本隊はその帰りの足でアル達を迎えたようだ
スピードは助走をつける事で、さらに膨れ上がるらしい
南から全速力で向かってきた軍が、西を飲み込んだ形だ

「南に高名な軍師とかいうのがいたわ」

「?」

「捕まえてその実力がどんなのか試したかったから、チェスをしたの、私に勝ったら許してやるって」

また酔狂な・・・・・・アルは思う、口には出せない

「二分で片づいた、てんで話にならないでやんの」

「ターンを無くして、同時にいくつ動かしてもいい、ただし総てのコマが動いた後にしか動けないっていうルールにしたら
あいつ、コマ動かすの遅いのなんのって、バカよねぇ、既成概念から離れられない奴って、低俗で笑っちゃう
一度にたくさんを動かせないのよね、作戦はじっくり練るもんだと思ってんだから」

くすくす、それを思い出したのか笑ってアルから離れた

西が3000と言ったのは、他ならぬ彼女だった、裏切りを助長させたのも彼女によった
この意味は、敵の兵は裏切りを常とするから、これから躊躇いもなく殺す、その為の見せ物だ

「ようやく、海で遊べる♪、ふふ、お前も連れてってやる田舎者だから知らないだろう、海なんて♪」

戦争には、もう、飽きたらしい

つぎ

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( ゚Д゚)イミワカラーン

面倒になったので、さっさと終わらせないといけないと
気付いた昨今、ヤーパンとこれと、書いてる俺が飽きてる状況でした(ぉぃ
引退かねぇ