ein rotes Kleid,
Sie ist Prinzessin.
「騎兵隊切り込めっ!!!!!!」
号令に促され、わっ、と軍がなだれ込む
逃げまどう相手兵士を、残らず叩き伏せていく
迅速、俊敏、速攻
凄まじいスピードで闘いは進んでいる
近代戦と言うべきなのだろうか
「姫様、谷の砦も陥れました!!」
「姫様、裏の砦に続き、町へと続く路を確保いたしましたっ!」
次々と報告が辿りつく、指揮官のもとへとそれはついついと運ばれる
指揮官は、ほくそ笑む
真っ赤なドレスを身に纏い、豪華なイスにしなやかに身体をなじませた娘
凛とした態度、気品と同時に得も知れぬ色をくゆらせる視線
「進軍だ、一気に貶める。ともかく走り抜けなさい、速さが戦いの全てを決めるわ」
閉じられた城門、いや街全体を高い石の壁が囲っている、その門
敵は中に逃げ込んだ後、あわてて応戦とばかりに
その城壁の上から矢をいくつも射る
しかし、攻撃側はひるまない、盾をナナメ上に掲げてともかく走り抜ける
ばうんっ!!!!
轟音がすると、投石機から岩石が投射される
城壁に凄まじい圧力をかけると、がらがらとそれを亡きものにしようと
次々と襲いかかる、城壁があっという間に崩れ去る、そしてそこへ
数百という兵士が一気になだれ込む
制圧まで、戦いが始まってから1時間と経たない、まさに速攻であった
当時の、月日、下手をすれば歳月を費やす長期戦が常であった戦争形態からは
全く考えられない出来事が起きている
彼女が女王の座についてから、まだ3ヶ月、怒濤の勢いで近隣諸国を制圧していた
列強と恐れられた強国も、彼女の「速さ」の前に呆気なく崩れ去った
他国はこの国を脅威とした
「陥落いたしました・・・・・・」
「まぁまぁね・・・・・・さて、次を見据える・・・・・アル」
「はい」
騎士位の彼を近づける、他の周りを取り囲む者にはわからない
彼が脅えているという事に
それがわかるのは、彼女、女王でありながら姫という冠を捨てない娘だけ
アルは用意してあった地図を女王に渡す
微かに手が震えている、それを見てほとほと満足したように
甘いため息をついた、ぞくりと彼の背筋を悪寒が走った
神官達が周りを囲んでいる、文官や他の将軍位の者も同席している
作戦会議なのだ、一つの戦が終わってすぐにそれは始まる
「どう?」
「はい、既に山脈を伝い、平野に至るまでは、我が国の領土となりました」
さっと、文官が地図に筆を降ろして、おおよその真新しい国境を描く
その筆先をじぃっと見つめて、女王は世界をそこに見る
「そろそろ内政にも気を配らなくては、なりませぬが」
「ふーん」
「この度の戦いによって、同盟国である西側が仇とばかりに兵を動かしておるとの情報です」
「ふん、生意気、いいわ、この勢いで落としましょう、先を取る、今から向かえ」
「!!そ、それは流石に・・・・・・」
「バカねぇ、まだ動けるでしょ?・・・・・・ちょうどいいわ、地図でこの中腹、この盆地まで落とすの
ご丁寧に、壁まで作ってあるからここまで進軍して、この壁と砦を取れば守れるわね。いい、やりなさい」
「じょ・・・いや、姫様、いくらなんでもこれ以上の進軍は志気と、国内への不安が・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・それは、謀反だね」
ぽつりと女王は呟いた、それから文官を見つめた、透き通る瞳が魅了する
一瞬にしてその場の空気が凍り付いた
わずかに反論・・・いや、苦言を呈しただけの文官が蒼白をさらす
周りは止めもしない、女王の薄い唇が言葉を刻む
上目遣いの鋭い視線が、文官を貫く
ぱちん
指を鳴らした音がすると、文官の首はすとりと落ちた
全てに最速を求めよ
彼女が唯一無二とした信条、国の決まり事として決定した言葉
それが今執行された、即断、即行動、即実行
さっきまで生きていた男のなれの果てを
ずりずりと引きずって下男が去っていく
一人減ったが、軍議にはアルをあわせまだ、7人の人間が残っている
彼らに求められているのは、彼女の行動を止めることではなく
どうしたらさらに速く攻める事が出来るか、あるいは
速く遂行出来るかという助言のみだ
下手な事を言うくらいなら、黙っている方が随分と賢い生き方であると
アルは遠目に見ている、彼は参加しているという建前で
事実上、彼女の後ろで見つめているだけだった
「いい?今から進めるの、動ける・・・・・いや、まだ動かしてない部隊の編成を
すぐに出しなさい、それを見て判断します、お願いね」
女王は最後だけかわいくそう言うと、微笑を浮かべて部屋を去った
重鎮達は慌ただしく次の戦の準備にかかる、彼らも必死だ
彼女が描いた通りにいかなかった場合、人選ミスでまた首が飛ぶ
そうならないためにも必死だった
アルは思う、賢い人だと
自分以外には何も考える暇を与えないことで、意のままに操り
その道化を見て愉しむ、実に彼女らしい’娯楽’だ
アルだけが知っている、この戦の意味
暇つぶし
暇つぶしの一言で、何万という人間が死ぬのはどういう事だろうと
思わないこともないが、彼女から見たら、そんな下々の人間の事など
ハエが死ぬのとあまり代わりは無い、飽きた頃にようやく内政という
新しい刺激を、戯れにして没頭するのだろう
知らぬ間に、天上人となりつつある彼女、才覚は世の全てを以て彼女を除く他無し
アルが先日何かの本で読んだような言葉を、もそもそと口にしてみた
文脈がオカシイ上に、意味がわからないのは
彼が貧しく勉強する潤いが無かった、悲しいほどの無学に、とってつけた教養をひけらかしたからだ
さもしい男である
「アル・・・・・・・・・・どう?」
得意になった口調で、アルに質問をする
他の重鎮は下がり、アルも女王と共に部屋へと移ったので当然
二人きりだ、アルは近衛の騎士として最も高い位と貴い地位を
無条件につけられ、このような時に二人ぎりとなる事を許されている
前国王の時からの旧臣で、最も彼女に近しく、そして革命に最も貢献した男
国民、その他大勢にはそのポジションは当然のように映っている
だが実際は、そういうしがらみという鎖でがんじがらめにされた、飼い犬だ
「凄いの一言です・・・・・・姫様の実力には本当・・・・・」
「わけのわからないお世辞は要らないわ、あんたなんかに褒められても、ちっともココがうずかないし」
指先は左胸を指さしている、やれやれという感じで
視線が面白くないという言葉を投げかけている、とりあえず取り繕った
女王という衣装を取り払って、リラックスしている、ドレスは相変わらず彼女を締め上げているが
気持ちの枷を外して、表情が、無垢そうな笑顔から、邪悪な不満顔に変わった
彼女らしいひとときとも言える
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・志気が落ちてる?」
「え・・・・・・・・いや・・・・」
「いい、正直に言いなさい、どの程度?今日のだって、随分速力が落ちてる・・・
私の思い描いた速度は出てないわ・・・・・どうなの?」
「流石に、強行軍がたたっています・・・・・・・・内政如何は私にはわかりませんが
事実、兵全体に疲れが見えています」
「そう・・・・・・・・・・・エサが必要か・・・・・」
呟いて最近お気に入りの眼鏡をかけた
どこで聞いたか知らないが、眼鏡というのをかけると胸が大きくなるという
妖しいこと極まりない俗説を聞きつけて、早速試しだしたらしい
まだ胸がたわわに実るような年齢には達していないのだから
そんなに焦る事は無いだろうになどと、アルは思うのだが
それはそれ、女の子の心は非常に難しいのだ
「よし、今元気そうな奴らを集めて、騎士隊を作ろう」
「え?・・・・・・騎士隊ですか?」
「そう、特殊な部隊みたいな肩書きつければ、どうせ俗世の豚ばっか
大喜びで働くでしょう?ウマの鼻先に人参ぶらさげるのと一緒よ」
酷い言い方だが、間違いない意見だ
彼女は少し考えるような仕草をした後に、すらすらと
丁寧に書面にそれを現した
マイグレックヒェン
「部隊名ですか?」
「そう、アル、あなたが騎士隊長を務めなさい、志気はそれだけで上がるわ、いいこと?」
数日後、達しの通りアルは騎士隊を編成した
それ特別の鎧を作り、左肩には騎士隊の証である
「マイグレックヒェン(スズラン)」のエンブレムが刻まれた
選ばれた精鋭は29名、そこにアルを騎士隊長として入れて総勢30名となる
最も速い馬を与えられ、装備は軽いモノが選ばれた
「・・・・・・・・・・白か、死に装束のようだ」
誰にも聞かれないように一人呟くアル
真新しい真っ白な鎧はあきらかに軽装だ、槍で一突きされればそのままイけるだろう
ある意味それはそれで最速か・・・・・・
深く考えるのは止す、彼女の思惑は多分、そこまで深い意味を備え付けないから
しかし選ばれた騎士は随分と誇らしげにしている、やはり地位というモノは
それ自身に意味がなくとも、何かしらの作用があるらしい
「さぁ・・・・・・行くぞ」
アルが静かに号をかける
先頭をきって女王との約束を果たしに向かう、砦の占拠そして西側への威嚇
与えられた時間内にそれを達成できなければ処刑されるだろう
全速力で駆け抜ける、西の砦は現在占領した国の残党しか居ない
10数名の門兵が居るだけらしい
土煙と共に馬が駆けた
矢が降ってくる、残党の最後の悪あがきだ
選び抜かれた精鋭だけに無傷でそこを走り抜ける、門の前には
槍を持った重装騎士が立ち並んでいる、数は10
一番槍をアルが取る、馬で走り抜けると同時にランスをさっと前に差し出す
敵のナイトキラーがわずかに頬をかすめていった
どごんっ
音とともにランスが敵を貫く、そこで槍を手放しすぐに剣を抜く
サラリという渇いた音に陽光がきらめく
姫様の言う事は実際なのだな
あらためてスピードの偉大さを知った
彼女が言うには速さが力を産むらしい、力というのは破壊力
鋭い突撃をすれば弱いモノでも充分に攻撃を加える事が出来る
今までの戦では、重装兵などと言うものは岩でもぶつけない限り
倒せないとして厄介だと思われていた
が、鈍いその動きは的にしか見えず、一気に突き抜けるだけで
馬の力でそのまま倒す事が出来るらしいのだ
ばたばたと敵を骸にすると
敵は降参したのか、扉を開き命乞いをしてきた
「どういたしましょう」
敵の因子ってのは、姫様、お嫌いになるからな・・・
と、アルが考えたかという所で
「いいわ登用なさい、無駄に血を流す必要もない、それに強いと聞くし」
と冷たい声が通った
恐れを顔に浮かべて振り返る、姫だ
既に来ている、後ろに500の見慣れない兵を率いている
その先頭に、彼女が乗ってきたであろう、車がある
白が高貴な色ともてはやされる時代に、彼女の車は紅で塗られていた
だが、廻りを固める衛兵の白と相まって、その姿の美しさは筆舌しがたい
異点が人に印象を焼き付ける、彼女は学ばずして知っているらしい
危なかった・・・・・・
彼女に追いつかれた時点で達成出来ていなければその場で敵もろとも殺されていた
窮地を敵にしろ味方にしろ作って志気を無理矢理上げる
彼女の言う帝王学という奴らしい、恐怖が全てを支配する上で一番確かな方法だと
だから彼女は見せしめを多用した、意味もなく死んだ奴らが山のようにいる
だが、時折このように仏心を見せて、名声と忠誠を上げるような事もする
気まぐれでやっていると、アルは思っている
事実、彼女は機嫌が悪い時はことごとく人を処罰するからだ
さて、どうやら連れてきた500の兵士も、敵から取り込んだ屈強らしい
彼女にしては随分と珍しい事だが、どうも新しい車がお気に入りで
機嫌がいいらしい、人払いをし、アルと二人になる
「・・・・・・・・・・・・私は戻るけどあの500の兵を守りに使いなさい
んでもって、あんたはマイグレックヒェンで敵の出鼻をくじいてらっしゃい」
「い、今からですか?」
「当たり前じゃない、相手は知らないのよ、ここがこうなってる事を、叩けば大きいわよ」
他の兵からは見えない所で彼女がらしい言葉遣いで、アルに言い渡す
当然断る権利は無い、アルがやれやれと緊張がやや抜けた顔をした
刹那
「・・・・・・・・・・・・・・2日後には帰ってらっしゃい、調子乗ってるようだから出来るわね」
無理だ
アルは思えない、実際無理なのだが、無理を承知で彼女が言っているからだ
微笑みが、可愛いとかいうのを超越している
2分もせずに次へと向かう、敵は3000