足音など立てるコトもなく、静かに林を抜けるスナ
じっと、前を見つつその足下の風景を見つめて進む
「・・・・・・・・・・・・!」
突然、足をとめて木の陰に身を隠した、そして深呼吸をする
「・・・・・1・・・・・・2・・・・・3,4・・・・・・・・・全部で10人か」
とりあえず自分のいるエリア内の敵の数に目星をつける
先の場所にあった、わずかな落ち葉の乱れから、だいたいの数とその腕を
見る・・・・・、中程度の兵隊だ、おそらくオーナーが飼い慣らしている兵だろう
「すー・・・・・・・・・・・・・・」
すぱっ!!!!
静かに息を吸いながら、一歩踏み出した足下にしかけられたトラップに
わざと足をかけ、素早く地に伏せる、大きく地面から爆発が吹き上がる
その場所に一斉射撃が向けられた、その弾道を記憶し、敵の場所の把握をする
そして、間髪を入れず最も近いと思われるポイントへと移動をする
タタタタタタタタタタ・・・・・・・・・・・
細かい足音を響かせて、スナが走り抜ける、その音に怯えた表情の兵がみるみる
スナの瞳に大きく写っていく、もっとも、その次の瞬間には死んでいる
マシンガンを携えていた男が二人いたが、すれ違うと同時に、一人の頸椎にナイフを突き立て
その男からかすめとった銃で、もう一人のアゴから脳天へと一撃をお見舞いし走り抜ける
敵パーティーは恐怖を感じないでいられないであろう、瞬時に味方が二人殺られ
その姿を失ったからだ・・・しかも、明らかに自分達の位置はスナにばれている
その恐怖に耐えられなくなった、何人かが無謀に銃を撃ち放つ
「バカ!!!やめろ、味方同士撃ちあ・・・・・・・」
ずばっ!!!!!、制止をかけた男の咽喉が大きく裂けて鮮血が吹き上がる
恐怖に支配されたモノはどんな時でも負ける、そこに残った7人が次々と死体へと
変わっていった、最後の一人の背中をとり、そこにあった、堅い木の枝を、左の脇から肩へと
突き通した、もちろん途中に心臓を通る、そして、すぐさまそのポイントを離れた
「・・・・・・・・・・・・まだ、いくつも居る・・・・・・一個中隊??・・・・下手すると一個師団連れてきてるか」
息を乱すコトなくその場を走り抜けていくスナ、やや離れた所にて男どもの奇声が上がった
まだ、ラクも生きているようだ、出来ればここで死んで欲しいものだと素直に思う
このまま、すぐに戦線から離脱しても好いが、今後このような輩が出ないように見せしめの
ためにも、この戦闘での完全な勝利を目指すコトにする、スナ
軽快なフットワーク、そして不規則な動きにて、狙撃されるコトもなく、林を走り抜けていく
目の前に、男が現れた、手にしたマシンガンを乱射してくる、姿勢を低くして、一気に間合いを詰めるスナ
「ちぃぃぃぃぃぃ!!!!」
男が何事かうめいた時には、懐に潜り込んでいた、サバイバルナイフを抜いて、男に向けて伸ばす
男もそれを素早くかわし間合いをとりにかかる、その時
ズダダダダダダダダダダダ・・・・・・・・
間髪入れずに、男ごとスナを狙った銃弾が放たれた、瞬時に肉塊と化す男
意表をつかれたが、それをかわし身をひそめるスナ
「・・・・・・・プロか」
ごくりと、唾をのみこむ、味方の損害よりも、ターゲットの消去に全てをかけている
間違いなく仲間意識を持たない、はぐれた傭兵崩れの仕業だ、傭兵としては邪道だが
プロなのは確か、気を引き締めて銃を抜くスナ
「・・・・・・数が多い、不利だな・・・・・・」
初めて表情が変わった、わずかに眉が動いたスナ、そして戦闘が始まる
先手を撃ってきたのは、相手だったスナの隠れている樹に向けて、ショットガンを
連射し、吹っ飛ばす。次の樹へと向かうスナに向かって、マシンガンが火を吹く
全く手を緩めるコトのない波状攻撃をしかけてくる敵、近づくコトも出来ず
長距離対応の武器を持たないスナには不利だ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・手榴弾でもあれば・・・・」
スナがうめくように言う、次いでその五感がスナに警報を鳴らした
「!!上!?」
ざざっ!!・・・・・・
敵が降ってきた、二人の男が樹の上から攻めてきたという形か、発見の速さのおかげで
最悪の事態は免れたが、危険な状態にあるのは確かだ、スナの五感はなおも危険を告げ続ける
降りてきた、男に銃を撃つ一人は殺ったがもう一方が、正確なショットを見せてきた
「ちぃっ・・・・・・・・」
スナが後退しながら銃を撃ちその場から離れる、二、三発被弾したが、致命傷でもない
かすり傷にしては重いが、戦える状態だ、ともかく走り五感の警報が鳴り止む位置まで逃げる
「くそう・・・・・・・」
走る先々にトラップが仕掛けられ、次から次へと敵が現れる
「もらった!!!!!」
がしっ!!!、軽快に逃げ続けていたがいきなり拘束を受けた、肉弾戦となるとスナは絶対的な不利を
認めざるを得ないコトとなる、確かにそれなりの体術を学びはしたが、所詮は女の身体
力という点でどうしても男に勝るコトが出来なかったのだ、急激に締め上げられる首
ばぐっ!!!!!!
「!!・・・・・・・ふん!!」
突然の衝撃音、その直後に締め上げていた男の頭部が腐ったスイカのように砕け散り
制御の効かなくなった男の身体が痙攣を起こした、それを振り払いその男の腰にあった
マシンガンを奪い取る
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マシンガンを豪快に弾がつきるまで、撃ち続ける油断していたバカな兵が幾人か
血祭りに上がる、スナがしびれる左腕をそっとさすりその場からまた走り去る
締め上げられた瞬間に、小型の火薬入れを男の後頭部付近で爆破させたのだ
流石にリスクが大きかったが辛うじて腕は繋がったまま、しびれはあるが怪我はない
走り続けて、ふいに空気が変わったのを感じた
「血の匂い・・・・・・・・・・・・・・・」
まさしく戦場の匂いがその先にあるコトを感じた、あれだけあった敵の気配が
この先は薄れている、ただ一つぎりぎりと伝わる殺気がある・・・・・・・・
スナは恐怖を覚えた・・・・・・・・
「そっちは終わったかい?」
殺気の主がそう話しかけてきた、やはり変わっていない、優男な顔つき
だらしのない服装・・・・・・・ただ、違うのは黒ずんだ拳の色と、鮮やかに染まった
服の色・・・・・・・へらへらとした笑顔の主は、ゆっくりと近づいてきた
自然と後ずさりしてしまうスナ・・・怖い、今はただそう思うだけだった
「さて、残りも片づけてご褒美でももらうかな・・・・・」
スナの目の前でにやりと笑い、そっと唇を奪っていった抵抗するコトなくラクにされるがままの
スナ、気をよくしたようにラクが落ちている武器を拾い上げスナに渡した
「ま・・・・・・・・がんばろうや」
サードオペレーションが始まる、同時にスナは自分の任務がぐっと楽になったコトを悟った
ラクの話はかなりの噂として聞いていた、相当の腕の持ち主だという話・・・だが、所詮
一級の傭兵など、自分と大差などないと思っていたスナだったが、一線を越えた存在という
モノを認めざるを得なかった・・・・・・・・・・・・
「この男の本当の力は、気配を消すなんてちゃちなモノじゃない・・・・・こいつは・・・・・」
その背中を追う、その力の恐ろしさにただただ圧倒されたという感じだった、勝てるわけがない
この男が負けるわけがない、そう思い知らされた
ラクの真の能力、彼を一級の傭兵へと成らせしめたモノ、その存在における、絶対恐怖。
この男と対峙した時、必ず感じる恐怖、相手はそれに飲み込まれた瞬間に敗北、死が決定する
スナが最初に覚えた恐怖もそう、相手に恐怖を植え付けさせるコトが出来るのだ
全てが桁外れ、それ故とも言えるこの能力・・・・・しかし同時にこの能力を支えるモノも
スナは見破っていた・・・・・・・