娘が一人、暗い部屋のベットに寝ている
「・・・・・・・・・・・・・・・」
落ち着かない風で、さきほどから寝返りを何度も打っている
「・・・・・・・あ・・・・ん・・・・やん・・・・・・・・うん、あう・・・・・ふぅん・・・わう・・・」
隣の部屋から女の悩ましい声が聞こえる、これが
彼女の眠りを妨げているらしい
「あん・・・・・あん、や、やん・・・・・・、あんあんやん・・・・あ、、あうあん・・・・」
「・・・・・・・・うるさい・・・・・バカ野郎が・・・・・・」
とうとう娘が身体を起こした、枕元に置いてある、銃を手に取り
引き金を引いた、ガチャン・・・・金属音が部屋に響いた、已然として
隣からは悩ましげな声が響いてくる
娘の名前は、スナ。名うての傭兵だ
年齢は不詳というコトだが、まだかなり若い、その若さとは反して
実に多くのオペレーションに参戦、ランキングもかなり上位に位置する強者だ
そして、スナを悩ませている隣の部屋には、ラクという傭兵がいるはずである
年は20代後半くらいであろうか、スナよりは明らかに年上ではあるが、それ以上に
多くの作戦をこなしてきた、精鋭である、二人、あるオーナーに一つの
オペレーションを頼まれ用意された屋敷に身を置いている
「・・・・・・・・・・・ったく、どうして作戦前夜に女を抱いてるんだ??恥ずかしい奴め」
スナが、銀色に鈍く光るモノを明かりに照らし調整を見る、引いた引き金を下ろし
マガジンに詰めた弾を見る、普通なら、隣になぐり込みをかけて、その場で女もろとも
射殺する所だが、これが奴のスタイルだから仕方がない・・・オーナーともその件について
了解をとっての仕事、今更破るわけにもいかない
「明日、ヘマでもこいたら、あたしが直に殺してやる・・・・・・・」
殺意を目に宿し、スナが壁の方に目をやった、ちょうどそれに合わせるように
隣の女の声が嬌声へと変わり、静かになった
「やっと、終わったか・・・・・・・ふぅ」
自分の髪をくしゃっとかき上げてまた、ベットに横たわるスナ、ライトを消して目を閉じた
「・・・・・・・・・・・やあ、またするのぉ?・・・・・だめだってばぁ・・・・あん、や、あ、あん、ああんん、ん・・・・・」
どうやら二回戦が始まったらしい、一瞬本気で殺そうかと思ったが、布団を深くかぶって寝た
翌日・・・・・・・・
「お前が、ラクか・・・・・・・」
目を覚まして屋敷の広間に来た時、朝食をとっている男と出くわした
「・・・・・・・ほー、今回のパートナーは女か・・・・・こりゃあ・・・・」
少し垂れ気味の目、眉はきりりとしているがどうにも、優男という感じが抜けない顔
品定めするような目でスナの身体を見る、その目にナイフでも突き立ててやろうかと
思ったが、ここもこらえて、朝食を取ることにする
「・・・・・・そうか、お前がスナとかいう女傭兵か・・・・・噂通りのコドモだな」
無視をきめこむスナ、着崩れただらしのない格好の男が、楽しそうに笑う
「まあ、そう怒るなって、どうせ昨日のコトだろ?・・・あれやらねえと仕事になんねーんだ」
ラクが、笑い説明しながらコーヒーを飲む、スナは視線を朝食にのみ向けて
寡黙に食べ続けている、全く繋がりを持とうという気もないらしい
「・・・・まあいい、仕事片づけたらそれっきりってのが傭兵だからな、次会う時は
敵同士ってのも十分あり得るわけだし・・・・・・」
ラクが、やれやれという表情をして、スナにそう言った
「ごちそうさま・・・・・・作戦、失敗した場合は・・・」
「どうぞ、ご自由に・・・・・・・」
さっと、席を立ちすれ違いざまにアクをはきかけたスナだったが、悪びれもせずラクに返された
オペレーション自体は難しいという印象はなかった、この屋敷の近くにあるという
武装集団の基地の完全破壊とその人員の抹殺、とりたてて究極のプロ集団というわけでも
ないらしいし、わずかな兵と、スナ、ラクの二人の傭兵で十分に片づけられるモノだ
「わたし、一人でもやれるのにな・・・・・・・」
「そう言うな、一応の念押しみたいなもんだろ?・・・・二人でやりゃあ楽じゃねえか」
手数を引き連れ、二人が先頭に立ち、足音も立てずに林の中を歩いていく
「・・・・・・・ここだな・・・・・じゃ、嬢ちゃん次顔あわせる時は、敵を殲滅させてからだな」
そう言い残し、ラクが数人の兵を連れて静かに消えていった、その素早さと隙のなさは
伊達に激戦をくぐり抜けてきたわけではない十分な証拠となる
少し感心した後、残った兵と共に、敵集落の手薄な所へと、スナも移動した
木陰に身を隠し、時計の針を追う・・・・ちき・・・ちき・・・・ちき・・・・・ちき
「・・・・・・オペレーションスタート」
静かにスナがそう呟いた、同時に反対方向で爆発が起きる、ラクの方が動いたらしい
「遅れるわけにはいかない、いくぞ」
スナが号を発し、一気に林から抜け出て銃を放つ
続いて派手に小屋が吹っ飛ぶ、完全にふいを突かれ慌てふためく雑兵など実に脆いものだ
手当たり次第に射殺していく、スナの横を、味方が通り過ぎてテントへと突入していき、次々に
目標を成し遂げていく、スナがその様子をじっと見守り遠くを見つめるような目を見せた
「・・・・・・・・・・総勢25,6人、・・・・・・・・手前の小屋に4人くらいか?」
静かに呟く・・・・・・・これが、スナを一流の傭兵にした能力である、一流の傭兵と
いうものは、全てのコトに関してAクラスのモノを持つ上に、もう一つ何か特出した能力が
必要なのだ、ある者は武器の扱い、またある者は地形把握、実に多岐に渡る戦場で
群を抜く能力である、スナはそのうち、索敵能力が常人のそれを軽く越えるものだった
視界に入った戦場の状況、耳に響く細かな音、微かに香る匂いそれら全てを瞬時に
取り込みそこにあるべき、人間の姿を見るコトが出来るのだ
「お前は、奥の小屋へ行け・・・・・ここは、私が殺る」
静かに連れてきた兵にそう告げて、目の前の小屋の扉に弾を撃ち込む
吹っ飛ばした扉を蹴り壊し中へと侵入する、流石に準備を整えた男どもが
中で待ち受けていた、一斉にかかってくる
その出来事は瞬間であった、確実に人が死ぬ音がそこに響きわたった
目の前にいた、二人の男に短銃で二発ずつ、眉間と咽喉を撃ち抜き、その身体を
弾よけに使い、銃を撃った男の銃がブローバックした瞬間に抜き去ったナイフで
男の右脇から左の肩にかけて切り裂きそのまま、左目へとナイフをつきたてた
最後の一人はその様子に逃げようとする所を、両足に一発ずつとどめに後頭部を派手に
吹っ飛ばした、別段顔色を変えるコトもなく、スナが小屋を出る
「・・・・・・・・・・・・・・・」
周りを見渡す、連れてきた8人の味方のうち、3人が無様に死体へと変わっていたが
敵の殲滅には成功したようだ、ふぅ、と一息をつく
派手に吹き飛んだ小屋の方へと近づき、そこに転がる死体に目をやる
「・・・・・・・・・ゼロ距離から、銃でしとめたのか?」
死体の打ち抜かれた側には銃弾による弾の抜けた痕があるが、その背中側は
大きく肉が爆ぜて砕け散っていた、わずかに肉の焦げた匂いがする、明らかに極近い位置から
破壊力の強い銃により打ち抜かれた痕だ、スナのように確実に急所を打ち抜くタイプとまた違うが
これもまた確実性の高い殺し方、しげしげとそれを見てまわる
「嬢ちゃんも、なかなか手際のいいこって・・・・・・」
「!!」
「ま、伊達に一流の称号をもらってねえってか・・・・・・終わったし、帰ろうぜ」
「・・・・・・・・・・・・・ああ」
スナの返事に生気はなかった、今ラクに声をかけられた時、ラクの気配を全く
感じるコトが出来なかったのだ、相変わらずの優男な顔、そしてオペレーション前と
全く変わらぬその姿に、へらへらとした笑顔、だが、確かに全く気配を感じさせずに
自分に声をかけてきたのだ、索敵には絶対の自信があったスナには恐怖に値する
(・・・・・こいつは、隠密作戦が専門なのか?)
じっと、ラクの顔を見る、特に殺気というモノを感じさせるコトのない顔、いつもなにか
へらりとした笑顔をたたえている・・・・・こいつの能力はこれだろう・・・そう、自分の中で
分析したスナ、次に敵として遭遇した場合の対処を考える所だ
「はーー、これでとっとと帰って、またいい女適当に見つけてこねーとな」
にやにやとラクが言う、いつもならそんな言葉聞き流す所だが
「どうしてそんなに女を抱きたがる?欲望のままにという奴か?」
スナが小馬鹿にした口調で聞いてみる、ラクがにやりと笑い答える
「俺にとっては、女を抱くまでがオペレーションなんだよ」
「何をバカなコトを」
聞いてやれやれという顔で、前をむき直したスナを突然、ラクが捕まえた
「・・・・・・・殺すぞ」
静かにスナが言う、変わらぬ顔だが間違いない殺意を秘めている
「男に抱かれなくて一流とは言えねえ、俺が一流にしてやるよ」
「あんなコト何がいい、時間と体力の無駄だ」
「ほうほう、一応は女ってわけか・・・・・・なら、今度抱かせてもらわねえとな」
実に女の扱いに慣れていると感じられる手がスナを抱き留めている
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「俺を雇え、お前の身体を懸けてな」
「結構だ・・・・・・・・・・・・一人で殺れる」
ざざざっ!!!!
二人が素早く道の小脇に身を隠した、途端に銃弾が弾幕でも張ったように降りかかった
「・・・・・・・はめられたか・・・・・・・・」
スナが手持ちの武器の確認をしながら呟く、気付くとオーナーから預かった兵はいなくなり
屋敷へ向かう道から突然の銃弾・・・・・・どうやらオペレーションを済ませたら、殺るつもりだったらしい
別に動揺するコトもなく、状況の把握につとめる、ふと、反対側の茂みへと消えたラクを探すが消えた
・・・・・・・・・・・やはり、気配を感じない・・・・・・ごくりと、喉を鳴らすスナ
「今は・・・・・・・・・・」
静かに新たに始まったセカンドオペレーションに身を投じた