推赤心置人腹中

赤心を推して人の腹中に置く   『後漢書』

後漢王朝を起こした劉秀(光武帝)という人は、
不思議な魅力を持った人物だったようです。

反乱の兵を挙げたときは、勢力も小さく目立たない存在でした。
いつのまにか大軍団を参加におさめ、大勢のライバルを退けて、
ついに黄帝の位にまで駆け上がっていきました。

その秘密は、ある時に戦いで敵を破ったさい、
降伏してきた将兵にしかるべき待遇を保障して、自軍に編入しました。
しかし、相手は不安を隠しきれない。
それを知った劉秀は、自ら軽騎に乗って部隊を巡回しました。
相手の将兵はその姿を見て「赤心を推して人の腹中に置く。
いずくんぞ死に投ぜざるを得んや」と語り合ったといいます。

下手な駆け引きをせず、誠意を態度で示す。
それが、昨日まで戦ってきた人々を
「あの人のためならば、命を投げ出してもかまわない」
という気持ちにさせたのでしょう。