へその下三寸を丹田という。腎臓の動気といわれるものはここにある。『難経』という医書に「臍下腎間の動気は、人の生命なり。十二経の根本なり」と書かれている。ここには生命の根本が集合している。気を養う術は常に腰を正しく据えて心気を丹田に集め、呼吸を静かにし荒くせず、事をする時には胸中から何度も軽く気を吐き出して、胸中に気を集めないで丹田に気を集めなくてはならない。こうすれば気はのぼらないし、胸は騒がないで身体に力が養われる。 身分の貴い人に物を言う時も、大異変にのぞんで多忙な時でも、このようにするがよい。やむなく人と論争する時でも、そうすれば、怒り過ぎて気を損なったり、気が軽くならないで間違いは生じない。芸術家が芸術に励み、武人が武術に励み、敵と戦う時にも、みなこの心がけを主としなければならない。これは事に励み気を養うためのよい術である。 とにかく技術を行なうもの、特に武士はこの法を知らなくてはならない。また道志が気を養い、僧が座禅するのも、みな真気を臍の下に集中する方法である。これは主静の工夫であって、彼らの秘訣であろう。 |