はじめに
食事は毎日、必ず何回かは摂るものです。食事は呼吸をするのと同じように大切なものであり、生きる上で必要不可欠なものです。人間の体を車にたとえますと、車を動かすエンジンに必要なものは、ガソリンと空気です。そしてガソリンと空気がうまく混じりあって燃焼することにより、エンジンがまわって車を動かすわけです。この場合空気が汚れていたり、空気の吸い込みが悪かったりすると、車はエンストを起こしてしまいます。また普通の乗用車に重油を入れたらどうでしょう?エンジンが壊れてしまい車は動かなくなってしまいます。人間も原則としては、車と同じと考えることができます。空気は口から取り入れられ、肺の働きで血液に酸素が送られます。その酸素の多い血液は心臓によって体の隅々に運ばれます。一方、口から取り入れられた食物は胃を通じて消化され血液の中に運び込まれます。そして、肺から取り込まれた酸素と肝臓や筋肉で合わさる事により、体を動かすエネルギーに変化します。もし、汚れた空気を吸い続けたり、間違った食べ物を食べ続けたらどうなるでしょうか?車がエンストをしたり、エンジンが壊れてしまったように、人間の体もおかしくなってしまうのは間違いありません。これからお話する事は、どのような食事をする事がいちばん我々の体をうまく動かし、天寿をまっとうする最後まで体を大切に使い続けていけるかを、易しくお話します。
その前に幕内秀夫さんという方が「粗食のすすめ」という本をお書きになっていますが、その中で食生活改善の十ヶ条を提唱しています。とても興味深く、有益ですので、ここに引用させて頂きます。みなさんも是非、ご一読をお薦めします。
1、ご飯をしっかり食べる。(お米のご飯です。)
ご飯を主食にすれば、副食が適切になり、季節の野菜や、魚介類などが多い食事内容になります。ご飯等の炭水化物が少ない食事をとりますと、甘いお菓子や、ジュースが欲しくなります。ご飯をしっかり食べましょう。
2、パンの常食は避ける。
パンは余程選らばないと、砂糖や油脂だらけのほとんどお菓子と変わらないものになってしまいます。食パンにしても、イーストフードや油脂、食品添加物が心配です。精製した小麦粉も身体にはよくありません。また、パンに塗られるバター、マーガリン、ジャム等は砂糖や油脂だらけで毎日食べるものではありません。また副食もハムエッグやべーコン、ソーセージ等どうしても脂っこいものになりがちです。
3、液体でカロリーをとらない。
赤ちゃんは歯がなく、消化器もまだ未熟なため、お乳や離乳食等で栄養をとらなければなりませんが、歯が生えてきたらしっかり噛んで食べられるものにしなければなりません。良く噛むことの大切さは、また後の方でとりあげますが、年をとってもできる限り物を噛んで食べるようにする事が、脳の働きにも大切ですし、消化機能を退化させずに丈夫に保つことができます。炭酸飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料水、ジュース、牛乳等は止めましょう.番茶やほうじ茶、緑茶、麦茶、紅茶等にすべきです。
4、未精製のご飯を食べる。
ご飯は精白米ではなく、3、5、7分づき米、もしくは玄米にしましょう.米は胚牙がついていることにより芽を出し成長することができます.胚牙にはとても重要な成分がたくさん含まれています。これを捨ててしまってはもったいないですね。他に稗や粱、麦等の雑穀を入れることも良いでしょう。
5、発酵食品を常に食べる。
日本には、素晴らしい発酵食品が山のようにあります.味噌、納豆、漬け物などです。これらの発酵食品は多くの有用な微生物をたくさん含んでおり、これらが我々の体内に入り、腸内細菌の状態を改善したり、有害な微生物から身を守る働きをします。日本の風土にあった発酵食品をとりましょう。
6、副食は季節の野菜を中心に
旬の野菜は値段も安いですが、栄養価も高く、美味しいものです。季節の野菜、いも類、海藻等を肉類より多めに食べましょう。できる限りハウスものや、季節外れのものは避けましょう。
7、動物性食品は魚介類を中心に
高級魚よりは大衆魚を食べましょう。高級魚はクスリ漬けにされた養殖魚の可能性がありますし、天然物は高価です。さんま、鮭、鯵、鯖などは安価なうえにDHA等の大切な不飽和脂肪酸の成分も豊富です。肉類、ハム等の加工肉、乳製品も少な目にしましょう。肉類は脂肪の多さもありますが、飼料の質も心配です。また魚の脂肪よりも飽和脂肪酸が多く動脈硬化をひき起こしやすくします。
8、砂糖、油脂の取り過ぎに注意
砂糖の入った飲料水、菓子類の取り過ぎに注意しましょう。これらを食べて、代わりに主食のご飯を減らす様なことは本末転倒で必ず身体を壊します。てんぷら、フライ、スナック菓子も少なくしましょう。中華、洋食は基本的に油脂の使用が多いものです。和食を基本とすべきです。
9、できるかぎり安全な食品を選ぶ
これは、当然の事ですね。あまり神経質になることはありませんが、基本的には毎日食べるもの、食事の内容に多く使われるものは注意をしましょう。例えば主食としての米などの穀物類、調味料としての味噌や醤油、漬け物などです。副食類に使うものは季節や日によって違いますから旬の物を選んでいれば間違いないでしょう。
10、食事はゆっくりと、よく噛んで。
これは、早食いのところでまたお話します。
以上10項目ですが、これを毎日の生活で実践していけば多くの生活習慣病、慢性病は治癒しないまでも軽快はしていくでしょう。病気を考える上で大切なのは、毎日の生活パターンであり、食生活だと思います、これらの改善の上に適正な治療が施されれば病気の治癒もより早く、確実なものとなるでしょう。
@腹八分目の原則
もうこれ以上食べられないと言う程食べる人がいます。これはダメです。胃腸は食べ物を一時的に貯める器であると同時に入ってきた食べ物をゆっくりと消化していく働きがあります。一度に沢山の食べ物を胃腸に押し込む事は、高速道路の入口にたくさんの車が、一度に押し寄せてくる様なもので必ず渋滞をひき起こします。消化管も一度に沢山の食べ物が送られてくると、胃腸に大きな負担をかけてしまいますし、消化に多くのエネルギーが必要となり、他の臓器にエネルギーや血液が行きずらくなってしまいます。食べた後によく眠くなる人がいますね。これは消化のため胃腸に血液やエネルギーが取られて脳の働きが低下するためです。疲れている時などは特にそういう傾向が強いのです。ですから疲れている時や、病後の回復期などには一層腹八分目を心がけるべきでしょう。風邪の時や、疲労の激しい時に沢山食べれば体に力が出るといってバカ食いをする人がいますが、これは差し控えるべきでしょう。
A早食いは万病のもと
良く噛まないで食べる人がいます。口に入れたら4〜5回噛んですぐ飲み込んでしまう人です。そういう人はだいたいがせっかちな人か、忙しい人です。このような人は長生きしませんね。では何故長生きしないのでしょうか?噛むことにより、食物は細かく小さくなり、良く唾液と混じりあい消化されやすくなります。さらにその味の刺激で胃の蠕動運動が強くなり、胃酸や膵液、胆汁等の分泌が高まります。ところが、良く噛まないで食べた場合は、唾液等による消化作用が弱められるため、直接胃に食物が送られて、胃の消化作用におおきな負担がかかってしまいます。いつも胃の調子が悪いというひとはだいたい、早喰いで良く噛まない人か、歯の噛み合わせが悪いか、歯そのものが悪い人です。このような生活を続けていると、他の臓器にも悪影響が出てきてしまいます。胃腸は後天の気を取り入れる大切な臓器であります。他の生物からエネルギーを取り入れなければ我々は生存していかないわけですから、そのエネルギーを取り入れる大切な器管を弱めてしまうと長生きは出来ないわけです。
B身土不二の原則
身とは自分の体を意味します。土は自分を取り囲む外界環境を意味します.つまり、自分と自分を取り囲む環境、国土は一身一体で密接不可分である事を表わしています。自分の生れ育ったその土地で生産されたものを食べてゆけば間違いないということを意味します。寒い土地に生活している人は、寒い環境に適したものを、熱い土地に生活している人は熱い環境に適したものを摂取していけば体に良いわけです。熱帯などの熱い土地でできるものは、水分が多く、体を冷やす性質のものが生産され食べられているわけです。もし寒冷地の人が熱帯の食物を食べ続けたらどうでしょう?体は冷えてしまいますし、浮腫んでくるとおもいます、そしてこのような間違った食習慣が病気を作り出してきます。自分の生まれ育った土地から生産されたものを、旬のうちに食べることが食生活の基本になるのです。夏のものは、夏のうちに、春のものは春のうちに食べることが大切です。冬にトマトやキュウリ、レタスを食べることは異常ですし、夏に白菜を食べることも異常なわけです。季節から外れたもの、旬でない食べ物は、それ自体が異常ですし、異常なものを食べれば体もいつしか調子を崩してくるわけです。ビタミンやミネラル、カロリー等のみで食品の善し悪しを判断しがちですが、食物が作られた環境とその食品の性質も考えなければいけません。
C寒性食品、温性食品、平性食品
寒性食品とは文字どおり体を冷やす性質を持つ食品です。ですから夏の暑い時期に食べるといいですね。キュウリ、トマト、スイカ等です。その反対が温性食品(熱性食品)、これは体を温める作用のある食品です。ニンニク、ネギ、ニラ、ショウガ、羊の肉等です。平性食品は味が淡白で飽きのこないもの、寒性にも温性のどちらにもあまり偏らないもので、主食になる様なものです。代表的な食べ物は、米です。寒性の食品も炒めたり、熱を通して温かく調理して頂くと温性の食品へ変化することがあります。例えば魚も生で刺身など食べると寒掠性の食べ物になり冷えを助長します。ところが、ショウガなどを入れて煮魚にして頂くとこれは立派な温性食品です。
D玉子について
この頃、玉子を毎日食べる人がいます。アメリカ映画の影響でしょうか、朝はかならず玉子料理を食べる人がいます。玉子は西洋学的にも東洋医学的にも完全食品に近い物があり評価できるものです。一つの玉子には、ひな鳥が生まれるのに必要な全ての栄養が含まれおり、そういう意味においては完全食品といってさしつかいないでしょう。しかし人間にとって完全食品とは言えません、ある人にとっては玉子の一つの成分、例えばコレステロールなどが過剰な場合があるわけです。また現在の玉子が生産される過程を見てみますと、抗生物質などが多量に含まれた合成飼料を狭いゲージの中で食べつづけるニワトリから生まれでてくるわけですから。放し飼いにされた物とは質的に違います。毎日食べる食品ほど気を使わなければならないと思います。
E乳製品について
玉子と同じように、この頃の食卓や冷蔵庫に欠かせない食品の一つとなりました。世界中でこれほど民族や習慣に関わらず飲まれたり、食べられたりしている食品はないと思われます。確かにその栄養学的価値は優れたものがあります。ですから、上手に食品のレパートリーの中に取り入れることは大変良いことだと思います。カルシウムの含有率も高く、その点からも、発育期の子供には必要なものと思われます。しかし、乳製品の多くは日本の国士、気候に適合しない点を持っています。日本は四季に恵まれている素晴らしい国ですが、海に囲まれ山岳地帯を中心に持つ国でもあり、特に本州では春から秋にかけて大変湿度が高くなる傾向があります。乳牛は元来、高温多湿を嫌います、ですから牛乳の生産地は北海道や、八ヶ岳などの高原地方になるわけです。高温多湿のところでは、乳製品はすぐ腐敗してしまいます。反対に湿度の低い冷涼の地方では保存性が高まるわけです。乳製品は一般に粘りの強い、膩性の高い食品とされています。ですから乾燥の強い地方では身体を乾燥から保獲する上で大変有用な食物となります。しかし湿度の多い地方に住む人は一般に、湿気を身体に溜めやすくなり湿気や、水毒の病気になりがちです。膝の関節に水の溜まる関節水腫、鼻水や涙がいっぱい出てくる花粉症などが良い例です。このような地方の人が乳製品を食べ続けると、身体により強く湿をよぶことになり、病状は悪化することになります。自分の体質をよく考えて乳製品を取らないといけません。アレルギー体質、膠原病体質、湿度が高くなると痛む様な病気、喘息、糖尿病等の人は気をつけるべきでしょう。
F健康食品
この世の中で健康食品はものすごい数でまわっています。本当に必要なものなのでしょうか?本当に安全なものなのでしょうか?毎日毎回の食事に気をつけている人が本当に健康食品とよばれる、補助食品を取る必要があるのでしょうか?多種類のビタミンを含有する錠剤を野菜が取れないからといって飲む人がいますが、これが野菜の代わりになるでしょうか?基本的に毎日の食事で口に入れるものはなるべく人工的な変形や加工が加わっていないものを摂取すべきです。原材料が良いものでも人工的な加工がなされることにより、原材料とは全く異なる効果のものができてしまう可能性があります。ほとんどの健康食品は、加工されて錠剤や粉末になっています。もし健康食品を摂取したいのであればその使われている材料をうまく食事の中に取り入れるべきでしょう。人工的に簡略化、簡便化されたものは日々の食生活の中に取り入れるべきではないと考えます。健康食品と医薬品はどのような違いがあるのでしょうか?医薬品は使用する上で、厳しい基準があります、例え漢方薬にしてもです。厳しい基準を設けることによって知識のない人が濫用するのを防いでいるわけです。健康食品は、名前だけ食品としておきながら、その効用は医薬品以上の宣伝であったりします。質的に医薬品と同じ様な性格を持ちながら、なんらの規制もなく、知識の乏しい人たちが、その宣伝文句に釣られて多用、濫用しているのが現状だと思われます。ビタミン剤にしろ、クロレラにしろ、鮫の軟骨にしろ、アガリスクにしろ人類の長い食文化において特異な食品なのですから、摂取するにあたっては十分な注意が必要でしょう。
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