昔の人は三欲を我慢せよ、といっている。三欲というのは、飲食の欲、好色の欲、睡眠の欲である。飲食を節制し、色欲を慎み、睡眠を少なくすることは、みな欲を我慢することである。飲食と色欲を慎むことはよく知られている。だが、睡眠の欲をこらえて眠りを少なくすることが養生の道である。とは意外と知られていない。睡眠を少なくすれば病気にかからなくなるのは、元気がよく循環するからである。睡眠が多いと元気が停滞して病となる。夜ふけて床について寝るのはよい。昼寝はもっとも有害である。日暮れてまもなく寝ると飲食したものが消化しきれないので、害になる。特に、朝夕において飲食がまだ消化しないで、元気がまだめぐらない時に早く寝ると、飲食が停滞して元気を害するのである。 古人が、睡眠の欲を飲食と色欲とともに三欲としているのはもっともである。なまけて寝ることを好む癖がつくと、睡眠が多くなってこらえきれなくなる。睡眠をこらえる苦しみもまた、飲食や色欲と同じである。最初から強くこらえないと堪えられない。つねづね睡眠を少なくしようと努めれば、習慣になって自然に睡眠が少なくなる。日頃から少なく眠る習慣をつけることが大切であろう。 |