嗜欲というのは、耳が音を聞き、目が物を見、口が物を飲食し、身体が色を好むという人間の身体の各部の欲望のことである。欲望は、本質的にむさぼるものであるから、飲食・色欲などを抑えないで、欲のむさぼるままにすると、節度を越えて、身体を悪くし礼儀を失することになるだろう。すべての悪は欲望を思うままにする事から起こるのである。耳・目・口・身体の欲をこらえて、これを抑制することが欲に勝つ道である。さまざまな善は、みな欲をこらえて好き勝手にしないことから生ずるといえる。だから忍ぶことと、「恣」欲しいままにすることは、善と悪との起こる根本となるのである。 養生をしようとする人は、それゆえに、専ら好き勝手なことをしないで、欲をおさえて我慢することが肝心である。「恣」の一字を捨てて、「忍」の一字を大切に守らなければならない。 |