12月31日、京都の八坂神社では「祇園削掛の神事」が行われます。寅の刻になると削り掛けの木に火を点じ、若水を汲んで神前に捧げるのですが、篝火には≪オケラ≫が加えられます。参拝者はこの白朮火をもらいうけて、家に持ち帰り元旦の元火として、雑煮や大福茶の火種にすると無病息災のご利益があると言われています。これは古都に生きる数少ない風習です。 また、昔の薬屋や民間の間でも、梅雨時期に防虫やかび防ぎ、湿気払いのためにオケラを焚くことが行われていていたようです。「日本薬局方」ではオケラの根茎の外皮をとったものを「白朮」といい、中国産のホソバオケラの根茎を皮をとらずに乾燥したものを「蒼朮」と言います。両方とも身体の余分な水分をとる作用があり、白朮にはさらに消化機能を高め身体を元気にする作用も持ち合わせています。ですから、両方とも浮腫や下痢、食欲不振などに使用します。 オケラは寒い季節の無病息災に願いをこめた元火と言えます。 余談ですが、大晦日といえば除夜の鐘が有名です。この除夜の鐘は108回打つうち半分の54回は弱く、54回は強く打ちます。また107回は年内に打ち、最後の1回を新年になってから打つという決まりがあるそうです。 108という数についてはいろいろな説がありますが、1年を分けた数(12ヶ月、24節気、72候)を合計したものだという説とか、または人間の煩悩の数を表す場合もあります。これは、執着心が起きる根の6つ(目、耳、鼻、舌、身体、心)に対する認識に仕方(苦、楽、善、悪、好、嫌)が6つあるため、6*6の36種類の悩みの種をつくり、これが≪過去、現在、未来≫の3通りのものがあるため、3を乗じて108とする場合もあります。いずれにしても、年の節目には、昔からいろいろな習慣が残っていて、これは心身の無事を祈っての行事が多いようです。 |