スピリット オブ ヤーパン
太郎の妹、斉藤 春
花の従姉妹だと自称して、いや
書面まで持ってやってきた娘
からくり
と、言うほどでもない、単純に叔母の養子という地位で
花とは義理の従姉妹という、限りなく薄い、字面の上だけの血縁なのだ
これは、太郎が死ぬ前に決まった縁組みで
仇を討つ為にわざわざ仕掛けたわけではない、偶然だ
花は無論知らなかったが、太郎との関係に気付いたのは
随分と早い時だ、面影が驚くほど似ている、そんな事で
確信をしていた、女の勘と言うと曖昧な気がするが
これが侮れない、その理由だけで
春の隠しきれない花に向けた殺意の説明をつけていた
女26歳てのは、そういう機敏な生き物だ
「・・・・・・・・・・どうした?抜かないのか?やるんだぜ?」
花は、めいっぱいの気を入れて
そう挑発する、春は狼狽えている、いや
迷っているという顔だ、今なら、間違いなく花が勝つ
それは春自身が一番解っているらしく
ぎりぎりそうさせない為、間合いだけはきっちりと外している
狼狽えて尚、備えを忘れない・・・・・・・・兄妹揃って大したもんだ
花は、なんだかうれしいらしい
身体や感情が何かをひとくくりにして、目の前の若い娘の強さを喜んでいる
花は判然と気付く、自分はことごとくこの娘を
義妹だと愛でて、兄と同等以上の好意を寄せている
強い奴に会えたからうれしいとかいう
わけのわからない感情ではない
自分の妹が強いというだけでうれしい
それもある
だけど、代わりでもないけど、太郎の形見
そんな風にも見ている、それは花にとって
掛け替えのない、大切な人
無条件で、全てを理解、抱擁したいと強く求める
だからこそ、今
「受けてやるんだ、さっさと来い」
「・・・・・花さん・・・・・・」
春はようやく口をきけるように
自分を取り戻したらしい、目が鋭くなった
殺したい、欲求というと浅ましいが
自ら望む事象を瞳に宿して訴えている
「本当に、近江太郎を殺したのは・・・・・・花さんなんですか?」
「そうだよ」
「付き合っていたのに・・・・好きだったんじゃないんですか?」
「好きだったよ、愛していた、何度も抱き合ったし、夢も見た、具合も良かった」
「そういうことじゃないです」
ぎぃっ、歯がみが聞こえる
そんなアサハカな事じゃなく言いたい事はあるだろう
伝えたい兄の姿もあるだろうに、花は挑発する口調を止められない、
そして春も、言われる事がイヤで仕方がない
異常に神経を高ぶらせ、感情を抑えられなくなっている
普段からでは、全く考えられないほど
二人揃って幼稚だ
「私は・・・・・・」
春は、一度、ぐっと何かを呑んだ
少しうつむいて目元がやや、暗くクマを作った
「・・・・・好きな人を、理由はどうあれ、殺すなんて赦せません」
そうだろうな
花は、昨夜の周を斬った春の声を思い出す
赦せないんです、あの言葉は春が自身に向けたわけじゃなく
花に、向けた言葉だったんだろう
周を斬った事で、初めて花の側に立った
それでもなお、赦せない感情だと
「だから、私を殺りたいんだろう・・・・・・・さぁ、お前は抜かないと不利なんだぜ?悪いが、私の居合いはナマクラじゃない」
花の言葉は高慢ではない、事実だ
花の流儀は、脚使いを重んじている
それが口伝で、奥義も全てその巧緻な足技による
間合い外しや、歩き居合い、はてには、下がり踏み込みなどという
攻防一対の技まで持っている
居合いとしてこの上なく極まった流儀の、免許皆伝だ
弱いわけが無い
春もそれくらい判断できる、幸いにして
今、目の前でその技を見た、剣士としてこの情報のありがたさ
重要さというのは何よりも得難い、武専特級は、看板だけのハリボテではない
何より、膳所の次期当主を斬っている、これは当世において、第一の武功だ
春とて、そこらの小娘とはわけが違う
サン、
言われて春は二本を抜いた、構えが太郎とは違う
太郎は二天一流だが、春のは
「柳生か・・・・二刀術」
「兄の流儀は、兄にしか使えませんから」
落ち着いた口振り、そして驚くほど大きな構え
気合いは充分だし、目も鋭い
よくできてる、仕上げは近い・・・・・・
花は思考を止める、感情が動き出しそう、もっと
共有したいという棄てるべき気持ちが今にも沸いて溢れそうだ
義妹にたくさんの事を教えてやらないといけない
だが、それには
義妹の好きなようにさせてやらなくてはいけない
説明が、腐るほど居るような感情論だ
花の中には、諭すという必要性が浮かんでいる
何を、と問われると、それを説明する為にまた言葉が居る
螺旋は続いて、ついには何を言いたいか
一つも伝わらない、それが解るから、考えずただ、斬り合うという物騒を選んだ
面倒だ
早い話そんな事だろう
太郎に対する様々な想いは、この敵討ちに応じて、迎えるであろう結果で
初めて成就、完遂、終了のいずれかに落ちる
そうやって信じている、死に場所を探しているのとは違う
事実、花は勝機をひたすらに探している、矛盾しているようだが
人間とは存外、そうやって出来ている、死んでもいいという気持ちは
投げやりとは全く異なる感情だ、花に望んで死ぬ気は無い
佐幕の女は、そういう風にできている
そしてこの生き様を完成させることが、自分を唯一発現できる方法だ
対して、春は
いや、春も考えるのを辞めようと動いている
ここ一ヶ月で大人を知り始めた春には
この兄の仇という、殺すべき対象に、殺したいというまでの
怒りを保てなくなっている、だから迷っている
しかし迷えば、花を殺さなければ、それまでの自分を否定することになる
思い出そうとする、花を殺したいと強く想った時を
初めて、太郎の死を知った時を
好きな人を失う痛みを
たとえ、どうしようもないことがよのなかにはある、なんて
バカみたいな事を薄々知るようになってもなお
赦せない、叫べ、叫ぶんだ、大好きな兄さんを殺した奴は、もう、目の前なんだよ
頭の中が重たい
春が兄について思い出す出来事は、人には言えたものではない物ばかりだ
血縁なんて関係無い、本当に好き合うには当たり前の契り
そんな言葉にするだけで、下品極まりないが
そういう次元じゃない、春はそう信じている、二人の関係は尋常の男女なのだ
春の、本当の姿
近江 春は、中層ではない
これだけでその関係は、ごく自然だと理屈が通る
初の兄殺しの件を聞いた時、春の感情は
他の誰よりも複雑だった、その殺された兄の事、初の事
わからいでか、解るのは、私くらいだ
愛するという浅はかな単語の、重い側の意味を身を以て知っている
そうやって、初の事と、自分の事を説明する
若いから、思いこみは途方もない、強く、思念は、呪いのようにどす黒く濃い
『春、お前も表に出ろ、斉藤さんてのはかなりの裁量だ、絶対に大丈夫、立派に身を立ててくれる』
「だけど兄さん・・・・・・兄さんどうするの?」
『俺も出る、大丈夫だ食い扶持が見つかった、お前並に俺も器量がある、心配すんな』
近江 太郎は死にましたよ
長坂 花とかいう人が殺ったらしい、後ろからだまし討ちだったって
太郎ってのも強かったが、存外間が抜けてるねぇ
背中の傷ってのは、恥以外のなんでもないさねぇ
どうも花ってのが、ツレだった女らしいから
可笑しいねぇ、そんなもんなんだねぇ
春の脳裏に絵が浮かぶ、
いつかの夜に見た
花と太郎との写真立て、笑顔で写る似合いすぎる二人
思い出した、私はこの女を
自分に似ている、いや自分が似ているこの女を赦せない
殺さないといけない
っ、つま先が地を蹴った
アスファルトは少しだけホコリや砂を持っていたらしく
じゃり、と鳴った
それをかわぎりに、音が奔る、鋭利な、冷たくて、透き通って
とても綺麗な音、官能的にすら聞こえた
次の刹那、春の足が右、左と地に着いた時には
全てが過去になった
長坂 花、即死
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
太郎の最期
初は風邪の為だったが無断で休み、花、太郎の二人だけで
あのCの女と一戦交えた事があった
Cの勢は数も多く、すぐに乱戦になった
果敢に挑んだが、たった二人で太刀打ちできる集団ではなかった
善戦するものの
Cの女の含み針に、脚をやられた花が大きく崩れる
太郎は慌ててそれを庇う
稀代希に見る使い手の太郎も、一人を守りながら多勢と戦うことは出来ない
途中から、逃げることやむを得なくなる
そこで、花は、自らが死ねばなんとかなると太郎を励ました
しかし、太郎は頑としてそれを受け入れない
それどころか、なんとしても花を生かそうとした
背中を見せて、花を抱えて脱兎となった
結果、それが怯懦とされ、社内で太郎を殺す必要が産まれてしまった
前述の通り、真っ直ぐな性格が過ぎるから
守旧派には、どうしてもウケが悪く
いつかはそうなるだろう、また、そんな機会を常に伺われていた節があった
天才的な剣術の使い手、二天一流を扱う勇
そんな突出した性質があったからこそ、誰も何も言えずその無法に思える
奔放さを咎めることが無かった
しかし、そういうのは一度のつまづきが命取りになる
怯懦をそしられる
この事件で最も悪いのは、花である
とするのが普通だ、実際一番の年長でチームのリーダーなのだから当然だろう
だが会社としては、小賢しい太郎、下層の初
どちらかを葬りたかったらしい、そういう世間だ仕方が無い
そこで、令が下る
太郎には、初の死をもってこそ償える
初には、太郎の死をもってこそ償える
花には、どちらかを殺す必要が説かれた
3人にそれぞれ別命を与えたのだ
誰が考えたのかはわからないが、決着は誰かが死ぬことでしか
免れないとされた、3人はお互い相談できるわけもなく
煩悶した、しばらくの謹慎時間があったが
その間、3人は一度も連絡を取らなかった、いや
太郎はしきりに、花を訊ねたが、花は迎えなかった
呆れる程考えた、花と初は、答えが出ない問題の前で死ぬ程の沈痛を受けた
だが、太郎は違う
当然のようにして、この上意に背いた、性格上我慢がきかない
謹慎だと言われているのに、どかどかと出社
そしてあろうことか、神域、総務に不平をぶちまけた
その騒ぎの程は、三菱始まって以来の汚点とされるほど
驚愕せしめた、何人かを叩きのめした挙げ句、総務部長にまで
剣を向けようといきり立った
「がたがた文句ばっかりつけやがって、いい加減に身分だとかくだららねぇ事でケチつけんのぁっ」
「バカは、死ななきゃ治らねぇ・・・・・うつけっ、身の程を知れっ!!!」
ずどんんっ
窓ガラスが割れるかというような
凄まじい衝撃音が響いた、一瞬で喧噪は沈黙した
そして、轟音が3つ、4つと立て続けに鳴り響いた
「・・・・・・が・・・・・く」
「阿呆がっ!!!!」
太郎は正直、自分の天分と才覚を良く解っていたし
その上で最強が近いと思っていた
しかし、それを数百段上回る猛者が立ちはだかった
部長の瀬田だ
ぶんっ、と音はするが誰にも見えない
音の度に太郎は吹っ飛び、派手に顔を腫らして、血を吐いた
瀬田が止めに入ったおかげで、騒動は終息を迎える
止めるというより、殺すような形で叩いたおかげか
部下の非礼を詫びる、瀬田が静かに頭を下げると
沙汰はその場で収まった
予定通り
これをしかけた人間はそうやって呟いたであろう
この事件は、謹慎事件などという些末な問題はどうでもいい
近江太郎を生かしておくわけにはいかない
そういう空気を社内に充満させるに充分だった、そうとも知らず
花、初は謹慎を済ませ出社する
そして
「・・・・長坂・・・・・・・」
「部長?」
この時まで瀬田とは、まだほとんど話したことがなかった
花は、雲の上から話しかけられるようなものだ
「・・・・・・すまん」
「え、な、なにがですか?」
わけがわからない
雑兵ずれの花如きに、営業部長が頭を下げるなど
狼狽える花は、それをそのまま顔に出す、若い
「お前と、原田は俺が直々に預かる・・・・・・」
「な、直参?・・・・なぜ・・・や」
太郎は?
そこに上げられない名前、うっすらと気付いている
が、怖くて口には出せない
「・・・・俺からの、最初の下知だ・・・」
いやだ
「近江太郎を・・・・・粛正しろ」
いやです、
とは、言えないほど大人になっている
さらに、目の前の男は言わせるほどの余裕を持たせてくれない
「原田を救いたい、そういう理由でかまわん・・・・・もう、近江は助からん、お前が斬ってやれ」
「・・・・・・・・・・」
「言っておくが、お前が死んでも、どちらかは確実に・・・いや、お前が死ねば二人とも死ぬ、解れ、いいな」
瀬田はそうやって諭した
太郎を斬れば、初は助かるそんな後押しらしい
いや、他に言ってやれる言葉が無いんだろう、苦々しい口振りからも解る
瀬田が太郎を可愛がっていたのは、薄々、花も知っていた
しかし、それでもなお抗しきれない
組織に居るとはそういう事らしい
その頃、初と太郎が事件後、初めて顔を合わせている
言葉少なく、誰に聞かれることもなく
「初さん・・・・・・・・花さんが、死なねぇように見といてくれや」
「何云ってんだてめぇわ」
「いや・・・・・ほらさ、ふとした弾みに腹でも斬られちゃかなわんだろ?
そういうの見張るのは、俺よか、初さんの方が近いじゃねぇか、な」
「お前は、頭いいな」
「顔が、そう言ってねぇよ・・・・・ま、いい、頼む・・・・初さん」
いやなくらい真面目な顔で言ったらしい
初は不審も思ったが、とりたてて気にしなかった
それよりか、謹慎中に太郎か自分のどちらかが死ぬ
いや、おそらく自分が死ぬだろうと、覚悟をしていた
太郎を殺すより自分が死んで決着した方が気持ちがいい
そう考えているから、太郎の申し出は滑稽な気すらしていたらしい
このくだりが
初と太郎との約束
そして、そのすぐ後、地下の更衣室のあたりだ
初はエレベーターで上に上がり、花は階段で地下に降りてきていた
思う事が山ほどある
けど、ついと、突然肝が据わった気になる
花は覚悟を決めた、私が斬れば全てがうまくいくのだろう
遠回りをした気がする、結局
こうなるしかなかったのに、随分と考え過ぎた気がする
全てが遅かったんだって
「花さん?」
「太郎・・・・・・謹慎明け、どうだ?」
「どうもこうもねぇさ、どいつもこいつも目の敵みたいに見やがるよ」
へへら笑ういつもの太郎
花は、その屈託のない顔を見ると、どうしても
何かが臆してしまう、ぎゅぅと唇を締める
「?・・・・どっか悪ぃのか?大丈夫かよ、花さん、顔色悪いぜ」
「うん・・・・いや、ちょっと、なんかに中たったみたい」
「そりゃいけねぇな、俺が薬持ってきてやるよ」
心配顔をした後に、太郎は
花に背中を見せた、顔が見えなくなった
途端に、枷が外れた
どず、
ニブイ音、脇差しが肉を求めた感触
どん、と倒れ込むように、花は忘我のうちに
太郎の背中を頼った、思い切ったおかげだろう
1尺8寸の脇差しは鍔もとまでを太郎に埋めている
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仲間意識か?花さん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なぁ、花さん、はみ出たのか、はみ出されたのか、俺には解らんぜ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・そうだな、俺ぁ陳腐だったね、安い正義を振りかざして大局が見えないバカ野郎だったからな
だけどよ、大好きだぜ、死んでからもよ!花さん」
「声が・・・・でけぇんだよ・・・・・たろう」
ぼろぼろと情けないほど大粒の涙が流れた
太郎は自分の命を燃料にしてまで、花を好きだと言った
おびただしい血が花の手に伝わってきた
がたがたと、預けた身体が震える
大きな背中に、じっと、ぬくもりをまだ感じて
「・・・・・・・花さん、無駄に死ぬんじゃねぇぜ・・・・こりゃぁ、約束だ・・・・・」
「・・・・・・・・」
「九泉の下で俺ぁ待ってる・・・・・でも、くだらねぇ事で来たら、二度と付き合わないよ」
「たろう」
ずんっ、どこから沸いたかわからない
凄まじい力で太郎が脇差しを背中から抜き取った
刃は未だ、花の腕にある
真正面を向いた、相変わらず気のいい顔をしている
花は思う、大好きだ、他の言葉なんて何ひとつ要らない
そこまで思った、涙は止まるものか
「さぁ、仕上げだよ・・・・俺ぁ、頑丈だからさ」
ぐいっ、
花はいきなり唇を奪われた、初めての時のように
強引で荒っぽくて、鉄の味がする
カニバリズムでもないが、現状に酔ったせいだろう
血をすするのに抵抗が無い、むしろ愛着があった
愛おしいとすら思った、少し唇を離す太郎
「こうしないと、楽になれねぇんだ・・・・・・・・ありがとう、花さん」
ずむりっ
夢から醒める、そんな感触が全身に伝播した
声は出ない、ただ
涙だけをぼろぼろと流して、いま、太郎に支えられた腕は
刀で彼の胸元を貫いて、熱い液体をしたたらせた
背中ごしに、突き抜けた刃が見える
この瞬間に、血の塵が見えた
観念的な情緒だろう、血しぶきが上がるような傷じゃない
だけど
散華する命が、血の塵に見えた
どさ、膝から崩れる両者
抱き合う・・・いや、一方通行だ
抱き締めるだけの花、目の前で人が死んでいく
たまりを作る血が、とうとうと波打つほど、彼は冷たくなる
もう、死体になっている
とうとうと、とうとうと、赤くまみれて
花はぼんやりと唄った
最後までお前はバカだったよ・・・・・だけど、私は、もっとバカだ、ごめんね、守ってあげられなくて
事件は幕を引いた
これを知るのは瀬田くらいのもので
今となっては、覚えておくような物でもない
居ない人間の話など意味が無い
抜けるような青空の下
墓石にはそれぞれ男と女の名がある
刻まれた姓は同じ、ただ、女の方は新しい
夫婦なんだろう
墓に花を活ける女がいる、ポニーテールの
とても美しい娘らしい、寺の男が一度墓の事を訊ねたらしいが
女は、ただ笑顔を見せただけだったそうだ
心からの綺麗な笑顔
だけど
どこか、寂しげな微笑み
男、23才 近江 太郎
女、26才 近江 花
花を活ける縁者の女は、信心深く手を合わせ小さく囁いた
ありがとう
こんな私を活かしてくれて
赦してくれて
花は散る
墓石は、まだ遠い
春を想う
(了)