姉SS
ア ミュージカルインストルメント ザット ネイム イズ ヴォーカル
ズージャ、ズージャズージャ、ズージャ
小気味がよいとはこのことだ
ブラッシのドラムスが、小刻みに震える
この音だけで、万人がJAZZだとわかる
だがJAZZはドラムだけじゃない
ベースとドラムがリズムを作って
もう一つ、ペットにせよ、サックスにせよ、ピアノにせよ
メインがある
酒を傾けながら、暑い日に、ブルーノートの雰囲気でやるのがいい
キープしたストロワヤを傾ける、だいぶ発酵が進んだ脳に極上のスパイスが飛び込んでくる
このバンドのメインは”ヴォーカル”だ
女、27,彼氏アリ
女の性を匂わせる衣装に、実力はホンモノ
甘く囁くような音、階段を登るように刻むリズム、主旋律という存在
タイトなワンピースが身体のラインを浮き上がらせている
スポットライトで浮かび上がっている、短い髪が意外な印象
声だけを聞いていたら、ロングで男好きのする顔をしてる
だが、そうじゃない
このフィメイルは、はすっぱでもなければ、すれてるわけでもない
よく知ってる
先日まで僕の彼女だったんだ
寝取られるという言葉を
体感して覚えた
年上の男に寝取られた、それでも僕はここに通っている
彼女の声が好きで、彼女が好きで、JAZZが好きだから仕方ない
彼女は僕を見ても、何一つ変わらず、ビジネスライクに唄を歌い続けるだろう
そう思いながらも、気が引けて、少し暗がり、やや離れたポゼッションで
黙ってストロワヤを傾ける、傍らにはよく冷えた水を用意している、万全だ
ヴォーカルが発動する
楽器と相違ない、声帯を震わせて音を発する
つまるところ、オーボエあたりと代わりのない楽器
それがヴォーカルだ
それを体現して、そして、麻薬的な声が相変わらずこの
狭っこいさびれたJAZZ BARを飾っている
僕はつくづくこの雰囲気が好きで、これを作る女が好きで仕方ない
彼女のソロが続いている、じっと視線を送る
人間は便利なもので、他人の視線を感じるという器官を備えている
彼女の目、瞳、視線が、僕のそれと交錯する
いや、錯はしない、交わって、そこで止まる
僕の瞳に彼女の瞳が釘付け、結ばれたように、呪われたようにそこで何もかもが止まる
いや、何もかもというわけじゃない、唄は止まらないし、楽器の音は続いている
ステージは続く
甘く切ない、全てを酔わせることが可能な
神に許された声が、終わらない夢のように続いている
この夢の続きを、僕は見ている
そんな気がする、夢は都合がいい、いつだって僕の味方になる
その夢を壊さないように、ビジネスライクな、僕の為ではなく
自分が生きていく為に必要な唄を彼女は謳っている
ステージが終わる、僕は「いつも」だった頃と同じ場所で彼女を待つ
100%勝てる博打だ、いや、100%の時点で賭けにはならない
だけど、彼女の性格と性質を知っているから
これは100%に違いない、そして、それに違わぬよう
彼女はかつての「いつも」通りにやってきた、遠慮がちな顔
困惑した表情、だけど
何もかもを拒むことができない、気弱い瞳
「なんで、来たの」
「今日もいい声だった」
「あ、ありがとう。あのね」
「もっと声が聞きたい」
「だ、ダメだよ、私は、こんなだから、ダメだよ」
「そんな、だから、僕は今日ここに居るんだよ」
「そ、そんなのズルいよ、ダメだよ、ダメ」
「でも僕はここに居て、いつもみたいに居るじゃないか」
「そ、それは、だって」
予定調和めいている、思えばJAZZもそういう風にできてる
分かり切っている雰囲気なのに、その味付けが違う
単純なリズムを繰り返すだけが、実は、複雑な偏拍子のはるか上を行くと
JAZZは知っている、そして、僕も知っている
この女が、そういう風に、単純に、簡単に、純粋にできてるのを
そのシンプルさがむしろ、複雑に感情を揺さぶるのを
「だ、ダメだよっ、そういうのは、だって、私はあなたを」
裏切ったというところだろう
続けさせる、僕は分かり切っているように
かつてと同じように優しくする
彼女の声が聞こえる、あの狭い店の中を宇宙よりも広く見せる
あの音を鳴らす、泣く、声が濡れる
「僕は、相変わらず、好きで仕方がないんだ」
「ごめんなさい、言われても」
「泣く声が聞きたい、染み渡る、そんな声が聞きたいんだ」
「私が、軽くなるから、やめて、お願いだから、ダメだよ」
年上のお姉さんぶって
そういう気がする台詞を、彼女は例の声で続ける
僕は一心不乱に彼女に執着する
柔らかい身体、美しい声、しっとりとした感触
嫌がる彼女、いや、本当に嫌がっているかは怪しい
僕の行為に、あの頃と、ついぞこの前と同じ反応を繰り返す
この女は、とんでもない、ズベタだ
そう思いたくなるほど
軽薄な女、うすっぺらな女、黒の下着が似合う女
いつもと同じように、そうやって続けていく
抗いの声が、気持ちよくリズムを刻んでいる
僕がこの声を、出させている
ねじ曲がった支配欲が、ぬるぬると満たされていく
くねり躍る、陰影、陽光
ボリュームはそのままで、強弱と高低が
音を司る
ダメだから
と何度も泣いて、涙を流した
フィナーレを迎える、到達した場所が、予定の場所と違う
僕は急速に男になる、悔しいけども
ずいずいと意識が、想像力をかき立てて、聞いても、見てもいないものを
真実だと悟るように、答えを導く
「多分、同じことを言ってたんだね」
「・・・・・・・・・」
「ダメだから、ってフレーズは」
「・・・・・・・・・」
「僕が知らない時、言ったんだね」
身体の中をねずみが走り回る
意識と記憶が離れてはくっつき、くっついては離れて
それを告げられた日の感情を思い出しながら、
その時よりもはっきりと心を逆撫でしていく
そうだろう
寝取られた時、この女は、同じ台詞で、あの男に
「同じことをされたんだ」
「・・・・・・・ぐす」
泣く女は何も言わない、声は聞かせてくれない
おそるおそると、泣き声の持ち主に触る
いやがることはない、そこに執着する
しがみつくように、手を振り払われないように
怯えて、掴む
答えが聞きたい、その声で聞きたい
「同じだったんだよね」
泣いているのは僕のほうだ
急に身の程を知った
弱くて、仕方ない
唄は聞こえない
ぐるりと回って
相変わらず僕は、このJAZZ BARで同じ席でストロワヤを傾けている
ステージには、相変わらずあの声がメインをはっている
この後、いつもの通り
いつもの事が行われる
僕はそこで、わだかまっている
満足できないというもどかしさが、蠱惑的な欲望をずっと引きずらせている
彼女は相変わらず、ビジネスライクに謳い
そしてその後は、僕によって鳴り響く
多分、彼女のこの声を出させるのは僕だけだろう
年上の男が出させている音とは違うだろう
なんとなくわかる
浮気と遊びと
寝取られるの違い
それが僕にはわかる
わかるから、この関係を続けるしかない
多分、寝取られたというのは僕の勘違い
最初から、取られるものじゃなかった
僕のものじゃなかった
だけど、圧倒的な片想いからくる喪失感は、多分、寝取られの感傷だ
でなくては、本当の寝取られに遭ったら生きていられる自信がない
楽器は難しい
それを活かすも殺すも担い手による
傲慢で、高飛車だ
抵抗もしないし、不平も言わないけど
担い手の力をそのまま出すから、下手な中傷よりも酷く傷つく
楽器は担い手を選ばない
だけど鳴り続ける
優しくて残酷だ
誰にだって鳴らせるのに
奏でるには、力を求めてくる
僕の力を生き写しに、彼女はその程度しか泣かない
・・・・・・・・。
違う、俺が書きたいのはこうじゃない
そう思っても、うまいこと
自分が頭に描いたことを、この文章に落とし込めません
辛いなぁ
さて、言いたかったのは
寝取られ属性
というのを唐突に覚えたおいらのこと
姉萌えで失恋萌えのおいらのソレを満足させるのに
究極の属性であるとようやく到達しました
寝取られ
個人的に、寝取られはかなり崇高で
また寝取られの良さは、自分がどれだけ傾いていたかと
それを裏切られたこと、そして、その仕返しで
寝取られではなく、単なる浮気とか遊びとかで終わってしまう
自分の程度が知れる感じ
これだ、これが書きたかったので
もう、とりあえず、地文にそのまんま書いてみたが
全くダメ
なんてダメなんだ俺、ムシケラ野郎
と、そんなわけですが
駄文長々失礼いたしました
R(04/07/04)