姉SS
手遅れ
ぐつぐつぐつぐつ
「まーだー」
「まだだよ、ちょっと待ってなって」
「まーてーなーいー」
「頭悪い子みたいだから、やめなさい」
「先輩頭いいもんねー」
「そういうことじゃない」
大学生活というのは自堕落なもので
若者の大半は、この怠惰な時間を
非常にありがたく、本人達だけの濃密な時間として
捨て去っていく
決して悪いことじゃないし、こういうのはむしろ
歓迎すべきイベントだと思う、ただ
少し、80年代くさいテイストだけども
下宿は男の部屋だ
メガネで背が高くて、あまりぱっとしない
そんな彼の部屋では、もあもあと鍋が冬の景色を作っている
それを見て、じっと待っている髪の短い女の子がいる
実は高校生だ、男の後輩にあたる
家庭教師と教え子というような感じで、仲良く、先輩と後輩の図柄だ
「先輩、この間はありがとうね」
「この間?」
「うん、夏の、雨の日の、ほら、泊まりに来たじゃない、泣きながら、あたし」
「・・・・・言葉の順序が、めちゃくちゃだよ」
「照れてる、かわいい」
メガネの下の顔が紅い
男は、えてしてそういう感じで、終始この後輩に主導権を握られている
煮え切らない男という異名が非常によく似合う
一度、ぱかりと蓋を空けた
忙しい地獄絵図から、もあああっと白い煙があがった
思わず後輩が目を見張る
「うあーーー、おいしそー、ちょっと、もういいじゃん、食べようよ」
「まーだーだーめ、これからだよ、仕上げに卵を溶かないといけないし」
「なんで、男のくせにそう、まごまごと凝るのかなぁ」
「男はみんな凝り性なんだよ」
「先輩、男っぽくないくせに」
「うるさいよ」
ぐらぐらぐらぐら
弱火に切り替えられて、鍋が少し大人しくなった
テレビはわけのわからないバラエティ番組を映している
特に二人とも見ているわけじゃない
「というか、話途中、ごめんね、わかってると思うけど、付き合ってた彼と別れたんだ」
「・・・・・・そうか」
「棄てられたみたいな感じで、寂しかったから・・・・でも、先輩、ありがと、寂しいからって私をそういう気分だけで
そんなことしなかったもんね」
「後輩だもの、手なんて出せないよ」
「なんていって、先輩、好きな相手以外にはそういうことしなさそうだもんね、キモい、今時」
にたにたにた
女の子は笑う、メガネの男はもくもくと鍋を見ている
ばつが悪そうに顔をそらす、言い分が首をもたげる
好きな相手にだからこそ、手を出せないもんなんだよ
言ったらバカになる、バカになるくらいうれしい
先輩はこういう展開に、ほとほと慣れてない、言わなくても伝わるものだと
勘違いをしている、漫画や小説でしか育たないとこういうことになる
「よし、できる、卵いれるから、蓋あけて」
「あいよ」
かぱ、
するー、伸びるように溶かれた卵が鍋に吸い込まれた
手際よく、くるくるとかき混ぜると、なんだか不思議な模様になる
うどんが大半だったりするが、鶏肉、白菜、ねぎ、しいたけetc
様々な具が、ぐらぐらと躍ってる、そこを卵が一回り、二回り、三回り
「よし、蓋おとして」
「ん」
待つこと5分
ようやく鍋が完成した、うれしそうな後輩が
目をきらきらとさせる、先輩が皿によそう
おかわりはたっぷりある、すごくおいしそうな冬が目の前にできた
「なんつーか、マジおいしそう、いただきまーす」
「熱いから気を付けろよ」
二人でそれをつつく
もくもくとつつく、BGMはテレビ
外は雪でも降ってるかもしれない
すげぇ寒いのはわかる、小さなこたつに二人は入って
目の前の鍋をつついている、こたつという密室には二人の下半身が沈んでる
狭いのに、どうやったらわかるのか、決して二人の足は触れ合わない
いや、どうやったらもなにも、先輩の足はきちんと折り畳まれて
温かい範囲ぎりぎりのところまで撤退している、後輩の足配置はわからないが
触れるわけがない
「しかし、寒くなかったのか?」
「寒いよ、なに言ってんの先輩」
「いや・・・・じゃぁ」
なんでそんな短いスカートなんだ、とは言えない
今、現時点で見えてない物証について、いきなりつっこむわけにはいかない
ただ気になって仕方ない、そしらぬふりをしようとするが
脳の下のところから、それを暗喩するかのような言葉が出てくる
男ってのは、どうしてこう、欲望に負けるタチなのだ
悩む先輩をよそに、女子高生はやや厚めの下唇をほてりとさせて
うどんをつるつるとすすっている
「あー、スカートのこと?長いの持ってないから、仕方ないのよ、今のうちしか出せないし」
「今時のジョシコーセーはそんなコト言わないだろう」
「るさいな、先輩もおっさん臭いよ」
「へいへい」
七味が鼻にぬける感じ
白醤油で整えた、ステキ鍋には黒七味がよく似合う
独特の風味が鼻腔をくすぐる、蒸気がたちのぼり
部屋の中は温かい
場が暖まってきた、温かくなると、なにかしら弛む
「ていうか、アレ?ひょっとして、やらしーこと考えた?」
「ば、ばかなコト言うな、ばかっ」
「そんな、必死に否定せんでも・・・」
「あのな、お前みたいな子供が、そういうコトを言うからだなぁ」
「・・・・・・だなぁ?」
「・・・・いや、その・・・・」
「子供とか言うわりに、先輩の方がずっと子供だよね」
「お子様に何云われても、知りません」
「子供子供、その反応もだけど・・・・・ねぇ」
どろり
おかしな雰囲気だ、先輩はおぼこい
だから、こういう女に弱い、後輩はそういう女にまだなった所だ
なおさら、下にできる男に容赦がない、甘噛みができない
そういう下手くそ同士が、慣れないことに首をつっこむと火傷する
「先輩オクテだもんね、知ってるよ、先輩の一個上の、なんていったかな、井上先輩だっけ?」
「・・・・・・・・」
「好きだったんだよね、でも、告白するゆーきが無かったんだよね、見てるだけで伝わるとか思ってたんでしょう」
「・・・・・・・」
「そんなわけ、無いんだよ、言わなくて伝わるなんて都合のいいこと」
鍋が終わる、二人とも結構食べた
具がほとんどなくなったので、片づけようと、会話を切ろうと先輩が立ちかける
「あたしが、片づける、先輩座ってて」
「ん、ああ」
唐突、何事もなかったみたいに
ジョシコーセーは噂の素足を見せて台所に鍋を片づける
片づけるといっても、持っていくだけだ、洗ったりするわけでもない
ただ、こたつの上の遮蔽物がなくなっただけだ
分もまたずに戻ってくる
ジョシコーセーがこたつに入る
後輩の脚がこたつに潜る
ぴ、と
「!!!」
「・・・・・・・・先輩、本当反応がうぶいよね」
「ばかなことを」
「するな?・・・・・本当に?」
するする
「いい加減に、しないとっ」
「じゃぁ、こたつから出たらいいのよ、どうして?先輩大学生だからわかるでしょう、それくらい」
さすさす
こたつの下
靴下をはいた女の足が、男の脚をぺたぺたと
踏んだり蹴ったり、さすったりしている
女の目はじっと男を見てる
男はばつが悪い、戸惑うとか困惑とか、そういう言葉で逃げることを許されない状況
追いつめられている、簡単なことで、頭だけの人はすぐに窮地だ
閉塞感が息苦しくて仕方ない、どうしてそんなコトを言うんだ、どうして欲しいんだ、どうしたらいいんだ
慣れない彼は、すぐに答えが出ない、無理にでも解こうとする
「ほら、いやじゃないんでしょう?うれしいでしょう」
「・・・・・・・・・」
「なんたって、あたしの脚見てたもんねぇ・・・・男って、結局そうなんだよ、やだやだ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・な」
んて冗談、驚いた?
後輩の言葉は遅かった
ばこ、スローの世界は音もあまり大きくなくて
こたつは、小さくて布団を上にかぶせただけだから
簡単にひっくり返って
女子高生の伸びた脚が、不用意なままで
先輩は、こわばっているけど、随分と素早くて
驚くほど、男で
きつく、怖く、恐ろしい
得体の知れない、強い力にしいされる状況が明るい部屋の中で、怖い
「・・・だ、ちょ、先輩っ」
「僕だってな、バカにされたままだと思うな、男をいい加減に思ってると、こうなるんだ」
「なに言ってっ、そういうことじゃっ、ちょっと、待って、ごめん」
「遅いんだよ、言わないと伝わらないって言ったよな、そういうことなんだよ、言っても遅けりゃ意味なんか」
ぎし、みし、ぎし
もみくちゃとなる男女
覆い被さる男、いや、覆い被さるというのは少し違う
細かく描写すれば、脚を投げ出した姿勢の女に
真正面から男が近づく、やっぱり覆い被さってるか(ぉぃ
ただ、下の女は抵抗をする、怯えて、涙が自然とたまる
「ごめん、ごめんてば、先輩、やだよ、こんなの、やだよっ」
ぐい
先輩の手は、後輩のまずいところを捉える
おびえは本当の恐怖にかわる、ショーツの両端に
指がかけられる感覚、守らないといけないと、反射する、けど
「先輩っ、やめてっ、やめてってばっ」
「止められないよ・・・・・・・好きだから、仕方ないだろっ、こうでもしなきゃ、伝わらないんだろ!?」
意味わかんない、唐突だよ
切ない表情、先輩が泣きそうな気がする、実際はそうじゃないんだろうけど
最初に思ったのはそれだ、だけど後輩は次に思う
私も好きだよ、だけど、これはダメだよ
萎縮して、言葉がでない、ただ逃げる女になってる被害者になってる
だから、そんなに必死で、自分を前に出してくる人を受け止めきれない
言葉は空に白く消える
私だって、先輩のコト好きだよ、ごめん、だから、ごめんなさい
「先輩、やめてっ、ダメっ、ダメだからっ」
「るさいっ」
「だぁめぇっっっ」
ぐいっ
降ろされるそれ、追いつめられて反発した男
好きな人に好きだって言って、そのシチュエーションがあまりにこうだったから
歯止めがきかなくて、自分が何をしてるかわかってないまま、そうした
この人が、こういう人で追いつめられたらこんな風に取り乱すなんて
まずった、私は、この人をもっと、うまく優しくしなくてはならなかったのに、私の失敗だ、私のせいだ
「先輩・・・・・・・・・ごめん・・・・・今日、ダメなんだ、ダメなんだよぅ、先輩・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「今日は、ダメなのぉ・・・・今日は・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
立ち上る臭いは、どうやっても好きになれない
ショーツは二重で、色気のない分厚いのの下には中学の時の安い奴
腰を冷やさないような、そういう見せたくない物が
一番見せたくない所を隠していたのに
「・・・・・・・・・先輩・・・・好きだよ、あたしも好きなんだよ、本当だよ、嫌いにならないで、お願い、先輩、ごめんだよぅ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「先輩、好き、大好き、先輩、先輩っ、好きだからっ、お願い、先輩、ごめんなさい、せんぱいぃ・・・」
バカだな、言わないと伝わらないってわかったはずなのに
言ったって、手遅れになることがあるってわかってたはずなのに
なんでもっと早く、もっとうまく言えなかったんだろう
赤い色と喉に染みるような臭気が
全てを現実に戻した
下宿はあいかわらず狭いままだけど
なんでだろう
全然、近づけないよ、どうしてなんだろう
こたつのせいかな
敷き直したら、また、近くなれるのかな
鍋を、つつけるのかなぁ
fin
むかーし、むかしに
某高馬という男のHPにて投稿SSを書いておったんですが
それの完結編だとはよもや思うまい(知らないし、知られても別に)
脳味噌に何か涌いたときにしか
全然読めないような、反吐が出てたまらないしろものですが
4年ほど前のおいらは、こんなSSを書くためだけに
毎日パソコンに向かってた気がします
ちなみに、今日、2時間で書いたですよ
某所で、エロいSSが流行ってると聞いたので(いやらしいなぁ)
とりあえず、先制打
いや、エロいかっつわれたら、どうかなと俺も思うんですが
とりあえず
女のひとが読んだら、嫌悪感どころの騒ぎじゃないだろうな、バカだね
駄文長々失礼いたしました
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