姉SS

アン エール オア シャウト オア スピリッツ


第24区画

赤い人間が住んでいる。
赤い人間は誇りを大切にする人間だ。
自然との共存、いや、自然への服従に近い、自然という曖昧な概念に敬服を示し
全ての恩恵は大地と太陽から与えられ、命に関わる大切なモノは全て、神から与えられる
余りある与物は、月の光や風の声、美しい大地だと信仰する
それら、精神を豊かにする(もっとも彼らはそんな言い訳のようなコトは考えない)全てのモノが
神から与えられた、贈り物

赤い人間が住む土地、第24区画

「結局、逃れられない運命」

「これも神から与えられたっていうのか?ハハ、とんだお人好しだな」

「言葉を慎め、全ての事象は神の思し召しだ」

「神だ、神だっ、全部カミサマのおかげかよっ、俺達が何をしたっ、大地に従い生きてきた俺達が
奴らのような、全てを力でねじ伏せようとしてるような、あんな汚物どもにっ」

「言葉を慎めと言う、お前、言葉遣いが似てきているぞ」

「・・・・・・似てもくるさ、こんだけ晒されてたらな、奴らの文化とやらが、毎日迫ってきやがる
影響を受けないでおこうなんてのがそもそも間違ってる」

煌々と、空には紅い月が昇っている
いつからか、月は紅く染まった、赤い人間達は先祖の血が空に昇ったんだと泣いた
ばかばかしい、そんなワケがない、きっと大気が異常を来しているんだ
奴らが、俗物の汚物、奴らが空を汚したせいだ、綺麗だった空気が濁って
取り返しが付かない、だから、月が血を流したんだ
彼は、そう考えている、赤い人間の中では、青年になる、若造、半人前、モノが解ってない
そういう台詞で、いつも片づけられる、彼は、苛立っている

「今日も月が紅い」

「あいつらのせいだっ、セキユやセキタンが月に傷を付けた」

「違う、先祖の血が月を紅く染めたのだ、月だけじゃない、大地も、もともとは赤く無かった、流れる血が」

「爺さん、もういいよ・・・・」

彼は、ぴらぴら手を振って見張り台を降りる
爺さんは、開いているのに細い、そして彫りの深い目だ、夜の月の光を上から浴びて
なんだか、哀しい顔を連想させる、もともと赤い人間は少し哀しげな表情をしている
彼は、まだ若いから、凛々しい、そして猛々しい、爺さんも若い頃はそうだったんだろう
だが、他の大人達もそうだ、若さを失うのと同時に、表情からも、精神からも
猛々しさを失っている、代わりに、哀しさを携える
彼は、そんな風に赤い人間を考えている

「・・・・・・・・ただいま」

「おかえり、見張り終わり?早くない?」

「爺さんがやるってよ・・・・・・・寝る」

家に帰ると、赤い人間の女が待っている
彼よりは2つ、3つ年上だ、穏和な表情をしている、赤い人間にしては珍しい
若いのに優しい顔立ちは、あまり見ない、本来なら、強い意志と気高い誇りが、眉や鼻立ちに現れている
だが彼女は、優しい面立ちだ、黒い髪が、赤い肌には良く似合う、アクセサリは石だ、当然のように

「そう、お疲れさま・・・・・・・明日も良い日で・・・」

「やめろっ」

「!・・・・・・ん、だけど、神様に感謝をしないと、今日一日を、全ての恵みに」

「やめろ・・・・・・・違うよ、いい加減に気付けよ、そんなの間違ってるって」

頭をがりがり掻きむしって、彼は床の上に座り直した
祈りを続ける彼女に、必死に言う、もう何度も言い続けている
彼女は、それを何度もにこにこと笑顔のままで聞いている、聞き流しているわけじゃない
実際受け止めている、だけど、変えない

「頑固だぞっ」

「そうね、お爺さま譲りだって」

「そういうのはどうでもいいだろ・・・・・・」

「でも、ほら、やっぱり全ては与えられているから、私があなたに出会ったのも神様のおかげ」

「ち、違うだろっ、俺が祭の夜に誘ったんだろっ、俺が」

「ダメだよ、俺が俺が、って我を強くすると、人間は小さくまとまるよ、教えを忘れてはいけないよ」

諭すような口調が、いらいらする、彼は苛立つ
どうしてこう、信仰に汚染されているんだ、その信仰が優しすぎるから
奴らがつけあがる、だから、毎晩見張りに上がらないといけないんじゃないか
ただ住んでいるだけの俺達を、わけのわからない意識で追いやる

言う彼も信仰に、浸透している。彼は、差別という単語を知らない
信仰は文化と同意だ

「もういい、はいはい、カミサマありがとうございました、明日一日も、あなたの知恵と力をお貸しくださいっ」

ぶっきらぼうにそう唱えて、どさっと寝込んだ
女は、仕方ない顔で笑って、ふてくされた彼に毛布をかけた
そして、小さく本当の祈りを彼女が、月に向けた

「!!!」

「!!・・・音っ!?」

ざわっ
報せだ、風から全ての赤い人間は報せを受け取った
何かがやってきている、いや、何かなんて濁す必要もない
五月蠅い、この騒がしさは、奴らだ、全ての男達が立ち上がった

「やいやいやいやいやいやいやああああああっっっ」

「爺さんっ!!!!」

「やいやいやいやいやいやいやいやあああああああっっ」

彼は慌てて見張り台に昇る、見張り台の上では、爺さんが叫んでいる
合図だ、総てに報せる合図だ
奴らがやってきた、力の限り爺さんは吠えた、しかし、それにしても月が紅い

「うおおおおあああああああああっっっ」

「うおおおおおおおおああああああああっっっっ」

「おおおおおあああああああああっっっ」

お互いを鼓舞するように、返事があちこちで上がった
総ての言霊が、空に昇る、月が紅い
男達は外に出て、力の限り吠えて応えた

「ね、ねぇっ」

「いい、お前は家に入ってろっ、俺も行くっ」

彼は見張り台の上で、奴らの位置を確認し
だんっと力強く飛び降りた、皮の上着を羽織り、斧を持つ
部屋では心配そうに、優しい顔が脅えている
脅えた優しい顔に、キスをする、ぐっと強く唇を奪う
そして彼は、手の斧で自らの腕にわずかな傷を入れる、血が浮かぶ、紅い線が赤い身体に這う

「ん・・・・・・・・カミサマ・・・・・・」

「大丈夫だ」

優しい顔は、その傷を、その浮かんだ赤をそっと嘗め取る
彼は残った自らの血を、目の下に塗りつける
意識が覚醒する、力が躍るのがわかる、ぐっと斧を握りしめて外へと飛び出した

「やいやいやいやいやいやいやいやいやああああああああああっっっっ」

「うおおおおおおおおおおおああああああああああああっっっっ」

外では相変わらずの雄叫びが所かしこから上がっている
報せの雄叫びは爺さんだ、この第24区画で最も大きな、偉大な声をしている

「けど・・・・古いんだよ、いつまでもこれじゃ勝てるわけがねぇっ、精神論で勝てるほど甘くねぇっ」

彼はひたすら走った、たしたしと地面を蹴って、奴らが通ってくると思った道の脇に向かう
そこで潜む、赤い人間の常識には考えられない行動だ、それ故に、奴らも油断しているに違いない
彼は、自分のやることは間違いないと信じている、卑怯とかいうのは間違っている
勝つ努力総てが、卑怯になってしまう、これは勝つための努力だ

「くる・・・・・・・・・・・・・・・うりいいいいやああああああああっっ」

どんっ!!!

首が飛んだ、力一杯振り下ろした斧が奴らの一人の首を飛ばした
驚いた奴らにすぐ、斧を喰らわせる、ずばぁっ
力強いその武器は、いともたやすく奴らの頭を砕いた
ぶわっと血が吹き上がる、空と同じ、大地と同じ、月と同じ色だ

「はぁはぁはぁっ・・・・・」

だかだかだかだか、そして彼は走る
次の奴らを狙う、そんなゲリラ的な攻撃をひたすら繰り返す
彼は自分が常に勝ち続けていると思っている、事実、彼だけを見れば勝っている
身体能力が奴らとは違う、攻撃に対する重みが違う
だしだしだしだしだしっ、屋根の上を蹴って走る、そして奴らの一団を見つけて飛び込む
がばぁっ、大きく空に踏み出した、背中から紅い光を浴びて、赤い身体が岩のように降って降りる

「!!!!!!!!」

気付いた奴らは、死んでいる
力の限り、斧が空を舞う、月が紅いせいなのか、彼はずっとずっと紅く輝いている
奴らは恐怖している、勝てると彼は思っている、だから振り回す
どがんっ、鈍い音が、爆発したような衝撃で奴らを吹っ飛ばす
鬼神だと、奴らの誰かが呟いた、鬼神てなんだ?
紅い人間の彼にはわからない、だが、次の言葉は解った

「この悪魔がっ」

「!!!!!」

どっちがだよっ!!!!!!
憤りのままに、ひたすら斧を振りかざした
全身から汗が噴き出している、きらきらと彼は光る
紅く光っている、凄まじい形相で、彼はひたすら悪魔となる

「?・・・・・・・な?」

ふいに気付いた、異変
おかしい、紅い人間の声が聞こえない、不思議だ
精神が飛んだせいか?いつも以上に猛る自分に少し酔っているから?
彼は戸惑った、味方の、紅い人間のあの、意味のない雄叫びが無い
そんな意味のないことが、気になる、不安になる
そして、脱力感が襲う、なんだろう、走る、焦る、悪魔が彼から居なくなる

「じ、爺さんっ!!!!!!」

血を噴いている
爺さんは、いつもと同じ、哀しい表情をしている
だが、凄まじく美しい
どうとは言い表せない、越えた美しさだ、神の降臨を思わせる
きらきらと輝いている、赤い身体が、煌々と輝いている
爺さんは、戦士の衣装を纏っている、そして大きく舞う
血が飛ぶ、汗が弾く、光を浴びてことさら大きく見える、爺さんっ、爺さんっじいさんっ

どがっっっっ!!!!!!

「我らが誇りの為、男は前に、神の力は、下がるモノには降りてこない・・・・・・」

「今更信仰なんて吠えるなよっ!!!!!このぉぉぉおおおおおおおっっ」

爺さんを囲んでいた奴らを蹴散らす
爺さんは、攻撃を受けても、舞い続けた
もう声は出ていない、出そうとすれば、口から赤い液体がおびただしく流れる
目を見張っている、あんなに細い目を必死に、もの凄く大きく
それが、美しい、ただそう思わせる

彼は涙を流した

「爺さんっっ!!!!!」

「おわああああああああああああああああああああ」

他の大人達が、爺さんの舞いに鼓舞されまた叫ぶ
雄叫びをあげて、そして戦う
奴らはまだたくさん居るようだ、次々にやられていく大人達
次々に、爺さんの声が無いだけで、何かが、何かが足りない
足りない分だけ、大人達が倒れていく、更に足らなくなる

「ちくしょおおおおおおおおおおっっ、なんだよっ、お前らっ!!!!うおぁぁっっ」

泣きながら彼は戦った、斧を振り回す
後ろでは、血を全身から流しながら、まだ舞い続ける爺さんがいる
どんっ、どんっ、どんっ、どんっ、どんっ
踏みしめる大地の音が、叫ぶのと同じくらいの何かを身体に与えてくれる
彼は、ともかく戦う、大人達も戦う、だが、倒れていく、次々に
だが、大人達は静かに、やられながらなお、音に合わせて戦う
爺さんの足音に合わせて踏み込み、爺さんの舞いに合わせて振りかざす、美しい

奴らが、うすら笑っているのがわかった
彼は無力感に襲われた
畜生、信仰に頼っているから、遅れているから奴らに勝てない
力の強い奴らが正義、そんな、既にそれこそが奴らの考え方だというのに
ああ、俺はどこまで奴らに影響されて、どこからが、赤い人間なのだろうか

疑問がぽっかり浮かんだ
自分が赤い人間を間違ってると称した、その大本の考え方がそもそも
赤い人間ではなく、奴らと同じ所から来ている

クソつまらないコトに気を取られていた

どさっ

爺さんが倒れる音がした、その音が、総ての終わりを告げたような気がした
もう、踏み込むあの足音が聞こえない、心が震える雄叫びも聞こえない
心細くなった、不安になった、臆病になっていく自分がわかった
信仰の力を、否定していた自分が、最も恩恵を受けていた、そう気付いた、遅いよ

どうでもいい

月が紅い

その下

「やいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいああああああああああああああっっ」

声が響いた、やや甲高い声だ、爺さんのとは違う、重みが無いんだけど

「やいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいああああああああっっっ」

聞き覚えがある声だ

「やいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやあああああああああああああっっっ」

下がった、彼はひたすらに下がった、牽制をしながらだが、早足に下がった
そして声の下に、爺さんが舞ったその上、見張り台
爺さんを飛び越えて、戦い抜いた戦士を飛び越えて
そこへ昇る

「なにしてんだよっ、女は下がってろっ!!!!」

「やいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやああああああああああああああっっっっっ」

優しい顔は、毅然と叫んでいた、雄叫びがかくも偉大に空を包んだ
呆気にとられる彼、だが、心が鼓舞されるのがわかる
爺さんの血が、騒ぐ、彼の中の爺さんの血が騒ぐ
彼女の声で躍る、大人達の声がまた聞こえてくる、応えが返ってくる

「うおおおおおおおおおおああああああああああああああああああ」
「やいやいやいやいやいやいやいやいやいあああああああああああああ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああ」
「やいやいやいやいやいやいやあああああああああああああああ」

どだんっっっ
だだっだだんっ、だだっ、だだだだっっっっ、だんっ、だんっ、だだだっ
地面が揺れた、大地が揺らぐ
大人達が地面を踏みしめる、そして、声をあげる
指揮するように、優しい顔が、合図を報せを吠える

女は、獣の毛皮を纏っている、そしてひたすら叫び、舞っている
姿が総てに晒される、紅い月の光に浮かんで、毒々しく禍々しく、大きく見せる
だけど、横顔が、一等、美しい、ただ純粋に

優しい顔に、愁いと哀しみが浮かんだ、ああ、赤い人間の顔だ、柔和な下にしっかりと刻まれている

月が紅い、揺れる大地

「ううううううううおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああ」

どだんっっっっっ
若さを引き替えにしたように、怒声を上げて彼が飛び降りる、地面を踏みしめる、音が響く
大地が揺れる、舞う、力いっぱいに大地を踏みしめる
声を上げろ、空気が割れるように叫ぶ
総てを揺する声、大地が割れるような力、怒りと哀しみの表情

彼は戦い続けた、力の限り舞い続けた、踏みしめて
形相を強ばらせて、細い目を見張り、身体の奥から、恐怖という卑怯者を追い出す
大地を踏みしめて戦う、声を上げて戦う
地面を踏みしめて、大地が揺らいで、斧が奴らをこらしめる
神が降りる

前に進むものに神の力は降りてくる



男達の死骸は、全身を紅く染めていた
だが、総てが、前にのめっている
女達も、前に向かっている、誇りは自らの手で守っている
一歩踏み出して倒れている、下がっているもの下がらされているものは居ない
ただ前に出ている

信仰と意志が、空から降る、紅い月がそれを照らす、墓標など立てることもない

「・・・・・・・・・・・・・遅れてる?」

「・・・・・・・・・・ああ、奴らからは相当遅れてる」

「本当に?」

「・・・・・・・・・・もしかしたら」

「したら?」

「俺達の方が、先なのかもしれない」

「そう、気付いた?」

「でも、ずれてるのは確かだ、奴らはずれているものが嫌いだ、また来る」

「うんそうね」

「俺も、前に向かう、信じるとかじゃなくて、当たり前だって、思い出した」

「そう」

「お前の声が気付かせてくれた、ありがとう」

「違うわ」

「?」

「神さまに向かって、与えられた勇気と、気付いたあなたの誇りに」

「「感謝」」

第24区画は、赤い人間の土地だ、流れた血が赤く染めた、彼らの土地だ
紅い月の下で、影が黒く、二つが一つに重なる、躍動が癒える






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ついに、統一はナサレマシタ
総ての文化が一つになり、総ての人々が平等な世界がやってキマシタ
みなさん、カミサマに祈りましょう
総てが、主よ、あなたの生み出された人間は、

一つになりました。

月は、いつまでも紅いだろう、力強く舞うことで諫めてあげなくてはいけないけど、もう舞える人間は居なくなってしまいました






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差別的だなぁ・・・・・
とか思ってしまいますが、まぁ、なんだ
ありがちな話題を、ありがちな形でやってみました
誰でも思いつく話ですな

今回は、難しい言葉を排除して
分かり易くを務めたんですが、やっぱりどうも
RRの兆候が見え隠れしてます、鬱です、失格です(;´Д`)

姉SSである意味がさっぱり無いですが、気にしないこと
駄文長々、失礼いたしました