S.a.l


がごん

「揺れるね・・・・・・・・・・アスカ」

「仕方ないじゃない、あたしの腕でもこの夜の乱気流に入ったらさ」

がごごん

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・夜・・・・・か」

「・・・・・・なによ?昨日の夜でも思い出した?」

「え?・や・・・・ちょ・・・・・うん・・・・・・よかったよアスカ」

「は、恥ずかしい事言わないでよっ」

「だ、だって聞いたのアスカじゃないかっ」

「バカ、そういう時は適当にはぐらかすとか、ジョークを交えるとかするのが
男のたしなみってもんでしょっ!!!このうすらバカ」

「な、なんだよ、昨日の夜と全然違うじゃないか・・・・・・・・・・」

「うるさいわね、その話、もう終わり、話したくもない、忘れなさいよ」

「・・・・・・、・・・・・・・あ・・・・・・・・もうすぐだ」

「ん、・・・・・・・・・・暗くてわかんないけど、味方は?」

「・・・・・・・・・・・・・どうかな?昼に大きなのがあったみたいだから、あんまり数は居ないかも」

「本隊がそんなもんか・・・・・・・・・・・・・・・いよいよね」

「うん、もうすぐだ」

「そういう意味じゃないわよ・・・・・・・・もうすぐ終わるわ、この戦争」

「え?」

「ラバウル、トラック、ガ島が落ちた上に、沖縄まで、もう無理よ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・そういうもんよ」

アスカの脳裏に、ちらりと霧島マナの顔がよぎった
彼女が、シンジ達の元に依った時に既に気付いていた
アスカは聡明だ、機敏にそれを察して今後の展開が見えていた
見えていても闘い続けた、彼女は空を翔る事を望んでいた

「でも、あんたと二人なんて懐かしいわね・・・・・・・」

「そうだね、僕がまだ陸隊だった頃以来か・・・・・・・あの時はバイクだったけど」

「気付けば、あんたに続いてあたしまで海軍に来て・・・・・・・・彗星丙戦の馬車曳き、わからない物ねぇ」

「・・・・・・・・・・あの・・・・・さ」

「なによ」

「あ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、なんでもない」

「ムカツクわね」

「ええ・・・・ど、どうして・・・・・・・・・」

「いらいらするのよ、あんたのそのゆーじゅーふだんで、なんかめそめそなよなよしてる所が、シャキっとしなさいよ」

「なんだよ、たまに僕がシャキっとしてると調子に乗るなって怒るくせに」

「それは、本当に調子に乗ってるからよ、知ってる?好事魔多しって言葉」

「アスカって、時折、古いよね」

「悪かったわねっ」

ぐわんっ

「う、うわっ!!!!ば、バカ、や、辞めてよ、意味もなく旋回なんて、25番(250kg爆弾)積んでんだぞ」

「ふふん、このアスカ様が落とすわけないでしょ・・・・・ったく、海軍のボンクラが」

「うわ、酷いよアスカ」

「酷い?どこがよ、この前の戦闘だって、機銃が尽きたからって特攻けしかけておきながら
見事にすかして地面に激突でしょう?そのまま帰ってきてたら、まだ零戦に乗れたってのに」

「うう・・・・・・・・・・だ、だけどあれは、アスカが落とされたと思って・・・・・・・・・」

「誰が落ちるもんですか、勝手にあんたの尺度であたしの実力を測らないでくださる?」

「はいはい、一方的に僕が間抜けでしたよ・・・・・・・・・、必死になってバカだったよ」

「そうよ・・・・・・・本当にバカなんだから・・・・・」

「え?」

「見つけた」

「え?わ・ちょ、ちょっと・・・・・・・・どこ」

「もうすぐ、爆撃用意して・・・・・・・・・・行くわよ、一番はあたし達が取るんだから・・・・・・」

静かに、彗星が高度を落とし始めた、目の前には真っ暗な中に
多きな影がそびえている、沖縄だ、飛行場の位置をシンジが確認する
何度も立体模型を眺めてアタマにたたき込んだ地形を思い出す
シンジの手が、かすかに震える、レバーをぎゅっと握りしめて目をこらす
まだ敵は気付いていない、ごくりと喉をならす

「いいシンジ・・・・・・ぎりぎりまで引きつけて落とすのよ・・・・・・一番好いトコに連れてってあげるから・・・」

「うん、わかってる」

アスカが微かに昂揚している、シンジにはそれがわかった
そして昨夜の事をなぜか思い出した、そういえば、あのアスカはそういう感じだった気がする
突然部屋にやってきて有無を言わさずに奪われたような感じで
なんとも、男としては情けない話だったが、アスカ自身がいつものように
ただ明るいナニかで満たされているわけではないとわかって
可愛い
なんて思った。
「景気づけよ、他の奴らもみんなしてるみたいだし・・・・・なによ、あたしがしちゃいけないっていうの?」
「だけど、景気づけって爆撃前の主に男が・・・・・・・・」
「なによ、あたしが男勝りだとでも言いたいわけ?」「いやそうだけど、そうは言ってな・・・・」
なんか殴られた回数も非常に多かった気がするが、多分照れ隠しなんだろう
いや
アスカも、多分、怖かったんだ
僕はそう信じる事にした、彼女も同じように怖いんだと

っぱ
ふいにサーチライトがいくつも空に伸びた
シンジ達ではないどれかがしくじった、敵に感づかれた

「っち、誰よ、先に突っ込みすぎた奴・・・・・・・・・・・・・シンジ!来るわよっ」

「くそっ!!!」

基地に明かりが灯ると、ざわりざわりと辺りが騒がしくなる
どこのどいつかわからないが爆撃前に突っ込みすぎた、おかげで気付かれてしまったのだ
これでは夜襲に来た意味がほとんど無い、敵がすぐに臨戦態勢を取る、対空斜砲が
不規律に辺りを明るく照らしては煙を巻く、志半ばで落ちる同胞が真っ赤に燃えて闇に呑まれる
二人の彗星の横を紅い弾がかすめていく、そこは流石にエースと呼ばれた操縦士
槍ぶすまのような対空砲火をものともせずに先攻していく
そのまま敵基地上空にさしかかった、だが

「アイスキャンディー(対空砲火)が酷い・・・・・・・・・一旦上に逃げるわっ、急降下爆撃に変更」

「了解」

機体が上を向く、旧来からの機だが運動性能は他の爆撃機から見て
類い希な物を持つ、一旦戦地を離れて雲の上へと逃げる
迎撃機のように垂直に昇る事は無理だが、軌道軸をズラしてゆっくりと戦列を縦軸に伸ばした
ふわっと、上に辿り着いた、一瞬だけ空に止まる、
重力を無視する、内蔵が浮き上がる気持ちの悪い感じ
アタマに血が上って顔がむくれ上がる

永遠を感じる、重力が消えた瞬間、ナニもかもから解放された
そういう中で、ぼんやりと永劫という、時間を取り払った世界を思い描いた
覚悟を決めよう、シンジが再度、ぐっとレバーを握り直した
同時にアスカの手も操縦桿を静かに撫でた
声が混じり合う

「シンジ・・・・・・・・・・・・・・・」
「うん・・・・・・・・・大丈夫、アスカ・・・・・・・・」

ぎりっ、音がすると機体がいよいよ吸い込まれる、闇に向かって滑空する

「このおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!」

アスカの雄叫びが耳を揺さぶった
シンジの神経も否応無しに研ぎ澄まされる
後部座席だからその砲火がどう飛んでいるのかは、シンジにはわからない
おそらく操縦しているアスカの目の前には、まさにアイスキャンディーが立ち並んでいることだろう
コンマ何秒の世界での駆け引きを、彼女はやってのけている
シンジもゆっくりと高度をはかり機体の速度を推し量る
そっと外を見つめ、地形を確認する、記憶を辿る
どこだ、どこが一番好いトコなんだ?
アスカが連れていこうという、好い世界、そこで僕は爆弾を落とす
爆発させなきゃいけない

速度が臨界に達する、機体の揺れが凄まじい
ガコガコと酷いブレだ、強い風でも受けているのだろうか
シンジは、目の前の高度計だけを物として捕らえている、それがぴくぴくと動く
メモリを指さす長い紅い針が、ぴたりと止まったように見えた
1800
こ・こ・だ

「シンジっ!!!!今っ」

同時にアスカが叫んでいた、いや、わずかにシンジが早かった
がこっっと音がすると、機体が軽くなったのがアスカには感じられた
やるじゃないのっ、心の中で褒めてやる、そこからはアスカの出番だ
一気にラインを変える、地面とキスするには早すぎる
わずかな修正で、美しく、そして敏捷にまさに「彗星」の如くその空域を駆け抜ける
背中を真っ赤に染めた、凶暴な光が瞳に赤く映る、完璧な爆撃だ

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どう!?」

「ど真ん中っ!!!やったよアスカ」

シンジの喜ぶ顔がアスカに浮かんだ
刹那
ガゴォッ!!!!バキバキィッインンンンッ

彗星が受けている風をシンジも感じた
ぶるぶると震えるように機体を揺する風を直接顔に感じている
なんだ、ナニが?
奇妙な静寂が訪れた、いや、耳には発動機の不機嫌な音だけずっと響いている
バラバラバラバラ、生々しく重い音が内蔵を揺すっている
シンジは微かに混乱したが、口は解ったように呟く

「被弾・・・・・・・・・したのか!?屋根が??・・・・、そ、操縦せ・・・・アスカ、アスカっっ!!!」

バウウウウウウウウウウウウウウウウッッッ
彗星のエンジンが五月蠅い、アツタ発動機がぶるぶると震えている
屋根が飛んだおかげで、操縦席と後部席とに隔てる物は無くなった
シンジが必死に叫ぶ、だけど液冷式発動機は強固にそれを拒む
バリバリと吼え立てて、邪魔をする、壁になる、二人を隔てる

「・・・・・そ、そんな、バトル オブ ブリテンの仇を取るんだろっ!!!そんなわけないよな
・・・・・・・・・・・・・アスカ、アスカ・・・・あすかぁ、あすかぁっっ」

シンジはベルトを強引に外すと後部座席から無理矢理前へと移り始めた
機体は自らの意志で飛ぶように、水平飛行を保っている
シンジがとりついた、彼女の所に滑り込むようにして身体を器用に入れる
固定ベルトが風に弄ばれ、ばちばちと機体のへりを叩いている
シンジが並ぶようにして乗り込み、操縦桿を握りしめた

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あすか、行こう」

横にくたっとしたアスカを認めている
生死の確認はしてない、今はこいつを飛ばすのが先だ
そう思ったはずなのに、台詞は不思議とシンジのアタマで考えている事と
違う事を呟いている、アスカに行こうと呼びかける、どこへ?

旋回、7.7mmが残された武器、いや、武器はこれじゃない

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・好いところまで・・・・・行く、やってやる」

シンジが彗星を操作する、アスカのように綺麗な水平飛行は彼には出来ない
だがかえってそのぎこちないおかげで、低空に危なげな飛行を保っていた
地際ぎりぎりを飛んでいく、これなら途中で喰われない
一緒に行くんだ
想いを強く念じる、自爆する、最後にすごいのをかましてやるっ

ギュウウウウウウウウウウウウウッッッ
加速する機体、風を真っ向から受けて、もう息をするのも難しい
苦しい、酸素が足りない、だけどもっと速く、もっと速く
鋭い一撃で突き抜けるくらいに吹き飛ばしてやる
魂をぶつけてやる、ナニよりもデカイ爆弾を
爆発させてやるんだっ

「うおおおおおおおおっっ!!!!!!!!!!!」

バァゥッ
目の前が拓けた、木々がなくなり基地まで平野となる
稲妻のように駆け抜ける機体、発動機からは火花が飛び散り
目標からは赤いアイスキャンディーが矢のように飛んでくる
ばすばすばすばすっ
羽根が散るように何発か被弾する
だが速度は落ちない、もう来るところまで来た、直撃を受けない限り
たたき込むまで
誰も止められない

「い、いく・・・・・・い、いくぞ・・・・・・・・」

涙が止まらない事にようやく気付いた
がたがたと下半身が情けないほど震えているのがわかった
もう秒単位の時間しか残っていないのに
ここで恐怖を覚えた、怖い、そう

昨日の夜、彼女が僕に向けた言葉だ

切なくて、どうしようもないくらい僕に染み込んだ、大切な人の言葉だ

「うわあああああああああああああああああああああああ」













バラバラとエンジンの音がシンジを揺すった
目を開くとわずかだけど明るくなっているのがわかった
確かに、まだ暗い、でも、水平線の果てからぼんやりと明るくなってきてる
空が淡い色でグラデーションを作ってる
潮の匂いと頬にあたる冷たいしぶきで
なんと低空を飛んでいるのかがわかった

水面ぎりぎりを走っている
油臭い機械の身体を精一杯に稼働させて
彗星は、ぶるぶると震えて飛んでいる
懐かしい感じがした

「ようやくお目覚め?どう?気分は」

「・・・・・・うん、すごくいいよ・・・・・なんか懐かしくって」

「懐かしい?」

「だって、アスカが白いスカーフをなびかせて、僕がサイドでじっとしてる・・・・・・・・」

「そうね・・・・・・・・・いつだったかもそうだったわね」

ブゥゥゥゥウウウウウウウウンンンンン
小うるさいエンジンの音は、快調にそのいななきを聞かせている
海鷲は、広い海に一羽だけで
真っ直ぐに飛び続けた

「よく、覚えてないんだ」

「・・・・・・・・・・」

「どうなったのか、どうやったのか・・・・・・ただ、凄く怖かった事だけ覚えてる」

「・・・・・・・・・・そんな事はいいのよ」

「そうなの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あんたみたいに鈍くさい奴が自爆して真ん中に行くわけないじゃない」

ばらばらばらばら・・・・・・・・・・・・
海鷲は、果てしない海を渡る
やがて日が昇り、照らす頃に

「・・・そっか、・・・・・・・??ここ・・・・・・って」

「ドッガーバンク、ほら、もうすぐアムステルダム」

「な、そ、そんなぁっ!?」

「あんたが寝てるから・・・・・折角だから直々に案内してあげるわよ
私が、最も愛す、母なる国よ♪、ドイチェラント」

「う、嘘だよ、そんなわけないだろっ、何言ってんだよアスカっ」

「バカねぇ、あたしの腕ならなんとだって出来るのよ、いいわ、あんたに見せてあげるわよ
誇り高い、美しき黒き森の国を、世界最高のバイクを、私の二番目の相棒を!」

「二番目?一番は?」

「ったくっこのとんちんかんのとーへんぼくっ!!!!!このウルトラバカっ!!!それくらい悟りなさいよっ!!!」

「あ、飛燕・・・・・・・・・」

「あんた、バカぁっ!!!!!」

海鷲は飛び続ける
二人の行くべき、好いところ

それは、遙か遠い彼方まで

fin.

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終わり〜
靖国参拝がどうしたとか言うときに
実は出来てたとかそうでなかったとか・・・・
時期を見て上げてみたりだけども
一番反応の薄いトコなのでどうでもよいよい

というわけで

EVAではあり得ない
二人で、ノッキンヘヴンズドアーな、終わりでした
あい、このシリーズやめー
もう一本、綾波のがあるけど
やめー
ともかく
やめー
いいかげんに
やめー

あねー(オチ弱し