姉SS〜作者の趣味です〜

ありがちな夏

「さくら姉ちゃん・・・・・ジュース買ってきた飲むだろ?」

「あ♪、ありがとう」

その白く細い腕を伸ばし俺の手からジュースを受け取る
夏の日差しを避けるため2人で木陰に入って座っている

「しかし、いい天気だよね・・・・・・・明るすぎてくらくらするよ」

「いつも部屋に閉じこもってるからだよ、このお嬢様育ちは」

かしゅっと、プルタブを引いて買ってきたジュースに口をつける
さくら姉ちゃんも続いて同じようにする

「毎年同じ事してるんだよね・・・・・」

さくら姉ちゃんがまぶしそうに目の前の道を見つめて呟く
白いワンピースにきれいな短くまとめられた黒髪、風が吹くとさらさらと
それが揺れてすごく綺麗だと思う

「嫌?」

「ううん、そういうんじゃないの・・・・・不思議だなって思って・・・・」

2人の間に血の繋がりはない、姉ちゃんと呼んでるのは年上だからだ
ずっとガキの頃から、夏になると俺はここへ親に連れてこられて避暑を楽しんでいる
物語にありがちな、そういう出会いをした2人だ
知らない土地で知らないガキ同士が遊ぶなんてのは珍しい事件じゃない
気付いたらここでの遊び相手はさくら姉ちゃんだった

今、俺は16、さくら姉ちゃんは19
出会ってから、もう、十年は経っているのかもしれない
けど、毎年夏のこの時期にしか会わない、実際は一年にも満たない付き合いだとも思える

「そろそろ歩こうぜ、まだまだ先は遠いし」

俺が立ち上がって、ぱたぱたと腰のあたりを払う
それに習うように、さくら姉ちゃんも続く、何時からだろうか
最初は逆だったのに・・・・・気付いたら、俺の方が先に動くようになり、何かを提案するようになり、目線も追い越した

「背・・・・・高くなったよね・・・・・」

「姉ちゃんが縮んだんじゃないのか?」

「バカ言わないでよ・・・・いーな、男の子はそうやってぐんぐんおっきくなれるから・・・」

俺の事をうらやましそうに見る、なんだか照れくさくなり姉ちゃんをこづく

「いたい・・・・・・・・」

無言で先を行く俺、多分背中の方では、いたいいたいと頭をさすりながら姉ちゃんがついてきているのだろう

「待ってよ」

「追いつけよ」

「いぢわるだなぁ」

「甘やかさないようにしてるだけだよ」

ようやく追いついた姉ちゃんが、ぷーっと頬を膨らませて俺を見る
そしてすぐに元の笑顔に戻る、こういう日がこの短い夏の間は続くのだ

「まだあるのかな?」

「あるさ」

「どうしてわかるの?」

「なくなって欲しいのか?」

「そういうわけじゃないけど・・・・・」

困った顔で横をついてくる姉ちゃん、その頬をそっとつねってみる

「わわ、いたいいたい」

「変な顔ー」

ぽかぽかぽかぽか、姉ちゃんのかわいい拳が俺を叩いた
目的地が近づく、視界というキャンパスの大部分を占めていた青が
緑にその領域を乗っ取られていく

「ほら、まだあった」

「本当だ・・・・・・でも、相変わらず汚いよね」

小さなお堂のような建物、今まで広い広い何もない田舎道だったけど、ここは少し木が生えて
鬱蒼としている、少々暗いけどそれは今までの道があまりにも明るすぎたせいだと思う

「不思議・・・・・こういうのって祠って言うのかな?」

「知らない」

「頭わるー♪」

ぽか

「いたい」

姉ちゃんを軽くこづいて2人でお堂の扉をそっと開ける
ぎぎぎぎ・・・・・・・・・、軋みとともに、扉の上の部分から埃が落ちてくる
今まで暗く閉ざされた場所に光りが侵入する、それを待ち望んでいたように
中にずっとずっと昔からいらっしゃる、ご神体のような物が姿を表す

「今年もきましたよー・・・・・・・」

「誰に遠慮して、そんなに小声なんだよ・・・」

「え?・・・だって、なんか暗がりだと声って小さくなるでしょ?」

光りが入っても外から比べると遙かに暗いこの小さなお堂の中で2人そっとご神体に挨拶をする
何をかたどった物なのかわからないが、石のような物が座布団に座っている、不思議な物
それを、何が楽しいのかまじまじと見つめる姉ちゃん、白い肌がきれいだなと思ったので口に出してみる

「さくら姉ちゃんて、本当、白いなぁ・・・」

「え?・・・・・・おかしい?」

「ううん、きれいだなって思って」

照れた笑いを浮かべて、ありがとうと耳打ちする姉ちゃん
いい匂いがするなと思う、先に姉ちゃんがお堂から出る、俺は俺なりの方法で
ご神体に敬意を表して   そっと撫でてやる   外へ出る

暗い所から明るい所へと急に出ると目がちかちかするよね、と来る時にも
聴いたような事を姉ちゃんが、困った顔で話す
それを軽く聞き流し元来た道を戻っていく
道すがら姉ちゃんは、色々と普通の事を楽しそうに話す、俺もそれを普通に返事をするけども
姉ちゃんはそれを聞いて、楽しそうに笑う

強い日差しを受けて、じりじりと音がしそうなくらい肌が熱いと訴える
姉ちゃんは、暑いのはきらいだけど、熱いのはきらいじゃないよと、言葉の上では
意味のわからない事を言って俺を困らせた、姉ちゃんは大きなツバの麦藁帽子を被っているから
なんだか夏の少女という感じがすると言ったら、まんざらでもない様子だった

「姉ちゃんは、今なにしてるの?」

「家事手伝いだよ」

「あれ?大学行くってのは?」

「やめたの、面白くなさそうだし勉強嫌いだし」

ぺろっと舌を出してから笑う、俺は苦笑しながら、高校の話をした

「学校楽しいんだね」

「そうかな?」

「そうだよ」

「どうして?」

「楽しそうに話すもの、ま、私も楽しかったけどね」

日はまだ高い、二時くらいだろうか渇いた風が心地よくて
さらさらした空気が美味しいと思った、まだまだとりとめもなく続く会話
姉ちゃんは楽しそうに風に遊ばれながら俺の話に笑顔を見せた、髪が揺れる

「姉ちゃん」

「?」

「・・・・」

「!」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「わわ・・・・・」

「・・・・・・・・・」

ぽかぽかぽかぽか、姉ちゃんのかわいい拳が俺を叩いた
顔を真っ赤にして、困ったような笑っているような複雑な表情で、ばしばしばし

「ごめんごめん」

「もー、びっくりしたー、えいえい」

「いたいいたい」

「えいえいえいえい」

姉ちゃんがぽかすかぽかすか俺を叩く、ぽふぽふという音が俺の身体から出る

「びっくりしちゃったじゃない、びっくりしちゃったじゃない」

「ごめんごめんてば」

姉ちゃんの目から涙が落ちた、それでも俺をぽかすか叩き続ける、肩たたきみたいで
気持ちの好い振動が俺を揺らす、ばかばかとか言いながら姉ちゃんが俺を叩いて
飽きたのかやめて笑った、涙がはらはらと落ちる

「本当にびっくりしたんだから・・・・・・」

「うん・・・・・でも、したかったんだ・・・・・・」

「うん・・・・」

気恥ずかしそうに姉ちゃんはうつむいてからまた2人で歩き出した
またいつもみたいな普通の話をする、俺は普通に答えると、楽しそうに姉ちゃんが笑う
夏は日が長いからまだまだ遊べるねと姉ちゃんが言うので、日が沈んでもまだまだ遊べるよ
と俺が答えた、子供は暗くなったらお家に帰らないといけませんと言うので、もう子供じゃありません
と答えた、姉ちゃんが、ぷーっと頬を膨らませて俺を見る
そしてすぐに元の笑顔に戻る、こういう日がこの短い夏の間は続くのだ

姉ちゃんが涙をふいた右手の薬指に光るわっかの意味を俺は知っている

でも

まだ、短い夏は三日もあるんだ

「姉ちゃん、明日も行く?」

「いいよ、他にすることないしね」

こういう日が短い夏の間は・・・・・・・・・・続くのだ

<おわり>

もどる

わけわからーん♪
てなわけで、とりあえずおいらの思う姉SSシリーズ(シリーズなのかい)
の第一弾です、あい、予定ではこの後も続くんですが
このおねいちゃんとキャラかぶり荘で次の話、少々困ってます
ってこの隠しコメントに果たして気付くかな?(バカ)

なんて言いつつ、避暑地のお話でした
あい、基本的にこういう場所に行った事ないから
わからない事ばっかりですが
夏の雰囲気を楽しんでもらえましたでしょうか?
冬なのにね(現在1月)

短い夏っていう単語が好きなおいられした

次回も失恋の話ーって今回失恋だったか?