志保〜ピンクの風(笑)〜
(ネタバレ注意です、Win版Toheartをクリアした方でないとわかりません)
「ぶらんにゅ〜はーと♪・・・・・っと、ただいまー」
志保の声が、家の中を抜けていく、返事はない
「・・・・そっか、無理矢理旅行に追い出したんだった」
一人呟いて、頭をかきながら玄関を抜ける、暗い家の中は春ももう過ぎる頃というのに
まだ空気が冷たく感じる、軽い足取りで台所へと向かう
がこっ・・・・・う゛ーーん・・・・・
冷蔵庫の唸るような音が響く、暗い部屋で冷蔵庫に内蔵された明かりが
志保を照らす、少し赤みを帯びた頬を冷やすように、取り出した、紅茶の
ペットボトルを顔に触れさせる、しん・・・とした冷気が心地よく志保の火照りを
鈍らせる、ついで冷凍庫から氷をとりだし適当な入れ物に入れた
「・・・・・えっと・・・・・・あった♪これこれ♪」
立ち上がり棚の中に無造作に置かれたブランデーを取り出した
氷と紅茶とブランデー・・・これをもって、自分の部屋へと向かう
かちゃ・・・・
扉を開くとなんの変哲もない、女の子の部屋が広がる
少し散らかった部屋には、情報誌や簡単な走り書きが散乱している
適当にテーブルを片づけて、ぺたりと座った
じん・・・・・・・・
「っつ・・・・・・・・、・・・・・・・・・」
鈍い痛みが、心地よく身体の中を走った、そっと下腹部を撫でる
少し思う所を頭によぎらせ顔を赤くする
「さて、一人で馬鹿なコト考えてないで、志保ちゃん特製紅茶らんでぶー♪といきましょうか」
先ほどもってきた、氷をグラスに入れ、ブランデーを注ぐ、そして紅茶で割る
からんと、涼しげな音を響かせ、グラスの氷が静かに躍る
ゆっくりとグラスを揺らし一人大人な気分に浸る、最近覚えたコトだ
若干の間を持つ、揺れる氷を目で追う
「・・・・・・・・・・・・とうとう、したんだ・・・・・あたし」
グラスを見つめながら、呟く。
酔いがまわってきたわけでもないだろうが、頬の赤みが増し
目の潤みが常の時と違ってくる、そう、ここへ来る前のコトを静かに思い出している
とめどなく溢れた自らの想いはせき止められるわけもなく、不器用な形でその姿を晒した
いつからだったろう・・・・どうして、あいつを好きになったのか・・・・・
そして、それを形として表した、あまりに不格好で恥ずかしい形だったけど・・・・
後悔は・・・・・ないと思う
「あいつ、あたしでイったんだよね・・・・・あたしで・・・」
グラスにうれしそうな笑顔が写る
好きな人と結ばれた、それがなんとうれしいコトなのか、その感覚に今酔いしれている
でも、この酔いは今日だけ・・・・明日からはもう、ずっと・・・・永遠に酔うコトの出来ない感覚
三人だから・・・・・、ん、二人だからどっちかが引かないといけないもの
最初は悔しかった・・・・いや、本当の最初はお似合いだと思ってた・・・だから
あいつのコトをあたしが好きになるなんて、思ってもいなかった・・・・
あいつにはあかりがいること、百も承知だったのに・・・・優しかったあいつに
惹かれていく自分がいた、でも、その本当の優しさの対象はあたしじゃなかった
中途半端に優しい男は困る・・・・・・本で読んだのと全く一緒
悔しい・・・・そう今は素直に思う、もっとあかりが嫌な女だったら、まだどうにでも出来たのに
あの子がいい子すぎて、あいつが優しすぎて・・・・あたしは、どうしたらいいのかわかんなかった
一時は本気で奪おうとしたのに・・・・結局二人とも好きあってるんだもん、どうやっても
あたしに勝ち目がなかったもん・・・・・だから、ぎりぎりの関係でいたのに
三人がうまく付き合うコトが出来て、あたしがあいつの近くにいられる、その関係を保ったのに
学年が上がって、クラスがあたしだけ別れた時、あの時決めた
今までより遠くなってしまう、あいつとの距離
だから・・・・・いっそ近づいてしまおうと、そして、最も近づいた
あかりもまだ、辿り着いていない場所まで近づいた、最高だった
お互いを邪魔するモノが何もない、二人の間が限りなく近づいた瞬間を感じてきた
気持ちよかった、いままでずっと想うコトでしか満たされなかったモノをないものねだりにも
似た一人の夜を越えた、二人の夜、あいつがあたしを満たしてくれる、うれしかった
安っぽい誘いにのったあいつが、あたしを抱いた
あいつの手があたしの身体を這い、あいつの舌があたしを慰めた
今まで憧れるコトしか許されなかった行為に身をよじった、潤むあたしはあいつに
どう写っただろう・・・淫乱、卑猥、下品・・・いずれにしろ、いやらしい女だと写ったのか
でも好かった、あたしがあいつに満たされ、あたしがあいつを満たした
ただそれだけで十分だった
最後にあいつの気持ちよさとの代償を吐きかけられた時の感覚、
痛みと快感が交錯した、何にも代わるコトの出来ない感覚
あたしは、あいつと一つになった、あいつがあたしに欲情を見せた、それだけでうれしく
横たわるコトが出来た、顔を伏せて涙を隠した・・・・バレてたかな
「・・・・・でもちょっとサービスしすぎたかしら・・・・飲むコトはなかったかな」
そっと、唇に手をあてる、今は紅茶とブランデーが唇に光をたたえさせている
あの後、ゆっくりとシャワーを浴びた、丁寧にあいつとの思い出を洗い流した
そのおかげで、今はもうあいつの匂いはしない、あいつの触ってくれた感覚もない
あるのは、ソープの香りと、スポンジの感触
「もったいないコトしたかな・・・・・・・」
余韻に浸るコトを許さなかったのを少し後悔、でもこれでいい
未練ももうない、あかりより先にあいつに近づけたそれだけで好かったはず
これからもう、離れなければいけなくても好いと想ってる
いつかは来るはずだったんだから、自分の手で決めてみてもいいじゃない
「あたしってば、大人・・・・・・よね」
「いっとくけどね、一回あたしとHしたからって、自惚れてんじゃないわよ、あんたなんか、あたしの
彼氏でもなんでもないんだから、あんたは、あたしの通過点にすぎないのよ」
本当にそうなの?通過点だったのは、あいつの方じゃないの?
あいつにとって、あたしがただの通過点だった、そう・・・・・今は、まだ思いたくない
最後に一生懸命強がって、あたしの調子を見せて、出てきた
さり際にちょっと、不用意なコト言っちゃったけど、あいつ気付きはしないからな・・・・
「・・・・・・・ん、ちょっと、紅茶少なかったかな・・・・」
ゆっくりと空けたグラスを見る、中に氷が光っている
飲み干した時、ふと感じた
ちょっと苦い
分量を間違えたかな・・・・・・
ブランデーが多すぎたかな、悪酔いしないようにしないと・・・・
ぽろ・・・・・・ぽろ・・・・・・・
「・・・・・・・・う・・・・・・んく・・・・ひっ・・・・・ん・・・・う、う・・・」
ぽた・・ぽた・・・・・・・
グラスにゆっくりとおかわりを注ごう
ぴと・・・・ぴた・・・・・・
「うっく・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・ん・・・・・・ひっ、うん・・・・」
注ぎ終わったグラスに波紋が広がる
よかった、意地でも親を外に出しておいて
広い家に一人じゃないと、ちょっと出来ないコトもあるよね
(終わり)