セバスチャン〜最強の執事物語〜

天気のいい日だった、ヒロが先輩に呼ばれて来栖川邸へと脚を向けた

夏の日差しが、じりじりとヒロの体力を削っていく、先輩に迎えを
よこすと言われたが、あの爺さんと遭うコトになるくらいなら、自分の脚で行くのを
選んだのだが、少し後悔している。

「暑い・・・・しまったな、せっかくだから、やっぱ、リムジンでぶいーんと、行ったほうがよかったな」
汗を拭いながら、おそろしく長く続く壁につたい歩いている、ちなみに、来栖川邸の
外壁である、白く塗られた外壁につたいようやく、表門の所についた

りんごーん、りんごーん♪

インターホンというには、豪華すぎるその呼び鈴を押してしばし待つ
反応が遅い所を見るに、どうせ、マルチがとちっているのだろうと思うヒロ
すると・・・・

「・・・・・・何奴じゃ」
「え!?・・・・ま、マルチ・・・ずいぶん老けたなぁ・・・俺だ、藤田だ、暑いんだ早く開けてく・・」
かーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!
「どわ!?・・・・そ、その声はじじぃか!?」
期待した、甘い舌足らずな女の子の声は迎えてくれず最悪の返答が返ってきた

「小僧、この程度の暑さで、音を上げているようでは、お嬢様に会わすわけにはいかぬわ」
「まてこら、何を根拠にそういう答えが出てくる(怒)、いいから、早くここ開けろ、俺は先輩
直々に呼ばれてるんだよ」
インターホンに挑発的な台詞を吐きかけるヒロ、一瞬爺さんは黙り、ゆっくりと門を開けた

がががががががが・・・・・・・
重そうな扉がゆっくりと開かれていく、なぜこんな広い敷地が一個人の為に広がる必要があると、
愚痴の一つもこぼしたくなるほど、広大な庭が広がる
「ひ、広いなあ・・・城(注:家)があんなに小さく見える・・・・」
遠くを眺めるヒロだったが、ふいに視界が黒くかすんだと思ったら、ふさがれた

「よく来たな小僧・・・・・ここから先へ進み、お嬢様とお会いしたくば、この儂を倒してからゆけい」
セバスチャンが、悠然と立ちふさがった
「だから、なぜそうなる・・・・・、どけよ、先輩が俺を呼んでるんだ・・・」
横を通りすぎるヒロ、しかし
「ぬわああああああ!!!!」
ずざざざっ!!、残像と砂煙を残し、素早く立ちふさがる
「・・・・じじぃ、いい加減にしろよ」
「今、お嬢様は、シャワーを浴びていらっしゃる、ここで待っておれ」
「ふざけるな・・・・・って言って通用する相手じゃないな、勝負だセバスチャン!!」
「貴様にその名を呼ぶ資格はないわ!!!」
ヒロが、またも力比べで勝負を挑む、あの日以来、密かに身体を鍛えていたヒロには
勝算があるのだ、爺さんと両手を組み合う、相撲で言う手四つの形だ

ごごごごごごごごご・・・・・・・
なぜだか、格闘漫画のような効果音が辺りに響きながら、二人の力比べが始まった
「じじぃ・・・・・・・・この前のようにはいかねえぜ・・・・」
「言うたな、若造・・・・・儂とて、無駄に齢を重ねておるわけではないわ!!!」
爺さんの僧坊筋が急激に盛り上がった、そして、タキシードを内側から破る(ぉぃぉぃ
「!!!・・・・お前、なんだその身体は!!!たかだか執事になんでそこまでの筋肉が要る!?」
驚くヒロ、その鍛え上げられたセバスチャンの身体は、筋骨隆々などという、生やさしいモノではない
例えるなら岩、動く様は流れるマグマを彷彿させる(なんだそりゃ)、ともかく凄い

当然はじき返されるヒロ・・・・・もんどり打って倒れるが、爺さんも急にうずくまった
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ど、どうした!?・・・・やっぱ、年寄りの冷や水か?」
ヒロが一応心配して見せる、セバスチャンは脇腹を押さえている、その押さえた手の下に
何か古傷が見える
「・・・・・・ふう、この傷がうずくような時期か・・・・・、小僧知りたいかこの傷のコト・・・・」
セバスチャンが、青い空を見上げ、呟く
「いや、別に聞きたいとは思わん、とっとと中に入れろ」
「あれは、まだ、あの地が亜米利加と呼ばれていた頃じゃ・・・・・・」
「だから、聞きたくないって・・・・・だいたい、今でもアメリカって呼ばれて・・・」
「儂は、流れモノの、ストリートファイターじゃった・・・・・・ーーーーーーー」

(セバスチャン回想モード)

「ぬああああああ!!!!!」
どさどさ・・・・・、若い日系の男が、黒人の大男を二人地面にはいつくばらせていた
「うぬら、自らの力を知らずに儂に勝てると思うてか!?」
若き日の儂じゃ、黒人二人は、あたふたと逃げていった
当時の北アメリカにおいて、NAGASEの名を知らぬモノは居らぬほどじゃった
ストリートファイトで荒稼ぎしていた儂は、常に腕に自身のあるモノから挑戦を受けていた
そして、その挑戦をことごとくはじき返し、最強の名を欲しいがままにしていた・・・・・

ある日、調子に乗りすぎていた儂は、そこらを治める悪党一家に
追われるはめになったのじゃ、間一髪で一命は取り留めたモノの、傷は深く
儂自身、もう諦めておった・・・そんな時、一人の若い娘さんが、儂を救ってくださったのじゃ

死の淵をさまよう、儂を懸命な看護で救って下さった、娘・・・名は、ジョアンナ
ジョアンナがなぜ、儂を救ったのかはわからぬ、儂もあのころは英語など喋るコトが出来なかったからな

儂とジョアンナは、言葉こそ通じぬモノの、それなりの生活を送るコトが出来た・・・
儂の傷は回復してはおったのだが、ジョアンナとの生活に闘う日々を忘れかけておった・・・
その時、儂はその平和な時間がずっと続くのを望んでおったわ・・・・しかしな、平和は
常に崩されるモノ・・・奴らが、儂が生きているコトをかぎつけたのじゃ

奴らが儂達の住む小さな小屋へと奇襲をかけてきおった
不意をつかれたが、儂も反撃を見せジョアンナを守った最後の一人となった時
その男は卑怯にも銃をとったのじゃ、狙いはジョアンナ

儂はジョアンナを素早くかばい銃弾を受けた、しかしひるむコトなく
その男を撃退したのじゃ・・・・・・
その後、ジョアンナは儂に泣きつきおったわ・・・・・、儂はその時決意した
ジョアンナをこのようなコトに巻き込むわけにはいかない・・・とな
儂が、色々と言ったが所詮は伝わらぬ言葉・・・・しかし、気持ちは伝わったのか
儂が出て行くコトをそっと悟ったようじゃった・・・・・

別れの時、儂は何も言わずジョアンナに背を向けた
最初は、何事か英語で喋っておったが、最後に儂との生活で身に付いたのか
カタコトの日本語で儂を送ってくれたわい

「ヌカに釘ネ」

「・・・そして儂は全てをその言葉から悟り、そこを後にするコトが出来たのじゃ・・・・・」
「ヌカに釘から、何を悟ったんですか(^^;」
「ぬ!?き、貴様は、メイドロボ!!や、奴はどこへ行った!!!」
「えっと、藤田先輩は代わりに聞いておくようにってあたしと代わって、お屋敷のお掃除に・・・・」
マルチが、にこやかに爺さんに言う
「おのれ、小僧謀りおったな!!!、ゆ、許さすま・・・・・ぬ?」
「Yes、Let’s hunting!!」
なぜか、レミィが来栖川邸の犬を引き連れて鳥を狩っている、驚く爺さんそして・・・
「ジョ、ジョアンナ!!!!!」
爺さんが叫んだ、その声に我に返り爺さんの所へ来るレミィ

「ジョアンナは、私のgrand−maの名前ネ」
にぱっと、きれいな笑顔で答えるレミィ、思わず色々訊く爺さん
「ジョ、ジョアンナは・・・・」
「??grand−maは、元気ネ♪、私に日本人はいい人多いって教えてくれます」
その答えに思わず涙する、セバスチャン
「・・・・・but、女の前から突然姿消すような男はよくないとも、いつも言うネ」
「!!」

ああ、さらば爺さん。あの時伝わらなかったのは言葉だけでなく想いもだった
実に半世紀を越えたその言葉は一人の男を灰にするに十分な破壊力を秘めていた
この日より一層、ヒロへのチェックが厳しくなったというが本当の所はさだかではない

「これが世に言う、恋は遠い日の不発弾ネ♪」
・・・・・・・・・宮内レミィ慣用句辞典より引用(慣用句なのかなぁ)

余談だが、なぜかこの数分後、来栖川邸浴室一歩手前において、藤田少年が
全身を強く殴打されて横たわっている所を、芹香嬢に発見されたといふ、合掌

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はふん。