後悔?
「・・・・・・また相談にのってもらっちゃったね、ありがと♪」
「なに、他ならぬくるみちゃんのためさ、いくらでも相談に乗るよ」
「本当?じゃ、また来るかもしれないから、よろしくね」
「ああ、今度は、深夜のホテルの一室に二人っきりでね・・・・」
「やぁだ、相変わらずHなんだから、私は一哉君の彼女なんだから」
くるみが笑う、さっきまで、別れるかもしれないと泣きべそをかいていたのが、嘘のようだ。
「・・・じゃ、またねー」
「一哉に飽きたらいつでも来なさい」
ぴらぴらと手を振るくるみを、静かに見送り電車に乗り家路へ着く
たたん、たたん、たたん、たたん・・・・・・
電車の音が耳につきまとう、仕事を早く切り上げ、くるみの相談に
乗った後だ、何かけだるさとも違う、むなしさのようなモノがある
「たく、変わらないな・・・くるみちゃん・・・・」
流れる景色を、追うわけでもなく外へ視線を向ける、やがて駅に着く
・・・・かちゃ、
「ただい・・・・・・・ま・・・・・」
少し前までの習慣が今も残る、自分しか帰らなくなった部屋に入るのに
迎えを期待した言葉を発してしまう、自嘲気味に自らが答える
「・・・・・・・おかえり」
半年前から、独りになった・・・・・いや、独りに戻ったのか
高校最後の夏、あれから、もう二年が経つ
机に仕事鞄を置く、狙い澄ましたように写真立てが倒れた
「・・・・・・・・・・・・馬鹿美沙」
・・・・・・・・・・・・・・・・半年前
「だから、俺が何したってんだ!!」
「ふざけないでよ、何よ、誰なの?この間歩いてた娘は!?」
「だから、あれは仕事場で知り合った人で、別に・・・」
「どうだか、もう手出してたりしてね!!」
「んだとぉ、俺の言うコトが信用出来ないのか?」
「信用しろって方が無理よ、だってあの先負学園の・・・」
「だー!!」がばっ!!
言葉半ばの美沙を、ベッドに押し倒す
「馬鹿、お前以外の女は・・・・・・・抱いたこともないこともない」
ばぐっ!!
「なんで、そこで弱気なわけのわかんない言葉が出るのよ・・・」
「・・・・・・・なあ、美沙」
「?」「・・・・・・・・・・・お前こそ、この間歩いてた男、誰だよ」
美沙がゆっくりと身体を起こす
「別に・・・・・ちょっとした知り合いよ・・・」
がしっ「!!」急に美沙を振り向かせる
驚く美沙に言う
「お前、あの時気付いたはずだ、俺がいたことに・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうして、あんなコトしてたんだよ」
問いつめる、美沙が拘束を振り払い、立ち上がる
「・・・・・・ごめん、心配だったの」
「?何が?」
「本当にあたしのコト好きなのか、心配だったの・・・・」
「?・・・・・・・あの時俺を弄んだのか?」
思いも寄らぬ答えに、慌てて美沙が否定する
「ち、違う!!そんなんじゃない、ただ心配だったの」
「そんなに俺は信用がないのか?そんな騙してまで確かめないといけないほど・・・・・・っち」
そっぽを向く、美沙が執拗に食い下がってくる
「違う、違う!!そんなんじゃない、た、確かに試したんだけど・・・けど」
「わかったわかった、もういい、俺は信用のないダメな浮気男さ・・・・・」
しれっとそんなコトを言ってしまった
ばむっ!!
「のわ!?」
急に、クッションを投げつけられた、美沙が仁王立ちしている
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」
何か言いたげだが、言葉にならない、しかしその時、心が痛んだ
「・・・・・・・・ばか」
たたたたたた・・・ばたむっ!
「お、おい!!!」
小さく言葉を残し、美沙が出ていった
「・・・・・・・追わねーよ、俺はそういうんじゃないからさ・・・・」
そう吐き捨て、ベッドでふてくされる・・・・・
「・・・・・・・・・ああ、もう!!!」
結局追ってしまった、くまなく探し走る
「はあ、はあ、はあ、くそ!!足だけは速ええ・・・」
先負のバンビは伊達でない、そのうちに変な女がひっかかってきた
「あーら、いい男、あたしと遊ばなーい?」
「うるさい、俺様は今忙しい、独りで遊んでろ」
うっとおしそうに、振り払うが、ひたすらまとわりついてくる
「ねー、ねーってばぁ、安くしとくからぁ」
「あー、うっとおしい!!!」
引き剥がそうとしたそのとき、前方にポニーテールがなびいて見えた
「!!!み、見つけた、お、おい!・み、美沙!!!」
その様子を見て美沙が、声もかけずに走り去っていった
「じょ、冗談じゃねえ!!どけ、この馬鹿女!!」
変な女をつきとばし、慌てて追う
結局部屋に戻ってきた・・・・・・かちゃ!
「美沙!!」「・・・・・・・・」
「い、いっとくけどなあ、さっきの女は・・・・・・」
「わかってる・・・・・・・・・でも、もう不安で仕方ないの・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「怖いのよ、あなたが女の人といると・・・・・あなたを知ってるから」
「・・・・・・・・・・・・」
二人に沈黙が訪れる、美沙が自分の荷らしきモノを持つ
「・・・・・・・・・・・・・」
そして、横を通り過ぎて行った
「勝手にしろ!!!」
げいんっ!!ゴミ箱を蹴り上げた、もう追わなかった・・・追えなかった
・・・・・・・・・・・・・そうして、半年が経っている
「・・・・・くだらねーコト思いだしちまったな・・・・」
ゆっくり、タバコに火をつける
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あの時蹴飛ばしてへこんだ、ゴミ箱にゴミを投げ入れる
すか・・・・・・・・、見事に外した
「・・・・・・っち・・・・・・・」
面倒くさそうにゴミを拾いに近寄った
かちゃ・・・・・・・・・・・・・・「・・・・・・・・・」
部屋の扉が、開いた。ゆっくりと視線を上げる、
「・・・・・・・・・・ばか・・・」
あの時と同じ言葉だけど、ずっと何かが違うなんとなく
心が、躍るというような、不思議な感じが駈ける
ゆっくり、立ち上がり、向かい合う
「・・・・・・・・・・・おかえり、ずいぶん遅かったじゃねえか」
不思議に自分が笑顔であるコトに気付く、
ちくしょう、何笑ってんだ俺様は・・・・・これじゃめちゃめちゃ
かっこわりーじゃねえか・・・・・・・・
そう、心の中で本心に静かな抵抗を見せたが
ゆっくりと、招き入れた時そんな気持ちはとうになくなってしまった
「・・・・・・・・心配してなかったぜ」
「嘘ばっかり・・・・・」
扉が静かに閉じる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうだ?いいシナリオだろ?」
同僚が声をかけてきた
「プログラムの方はしっかり頼むぜ、これ結構自信作なんだよ」
シナリオライターが、そういいながら笑う
「・・・・オチが面白くねえな、こんなハッピーエンドはそうそう転がってねーよ」
うっとおしそうにそう答えた
「お前って・・・・・・・まあ、いいか・・・・・・・」
同僚が離れていった
仕事を終え、帰宅する、がらんとした部屋
ただいま・・・・・・と言わなくなってどれくらい経つか
「お笑いだな・・・・これがあの俺様の顔かよ・・・・」
鏡に映った顔に語りかける
机の上に、伏せた写真立てがある、それを見て
ふっと笑い、タバコに火をつけた
へこんだ、ゴミ箱にゴミを投げ入れる
すか・・・・・・・・・・・・・・・・「・・・・・・・・・」
部屋の扉が開くコトはない
期待してしまった自分に思わず笑いがこぼれる
「・・・・・・・・・・・・・・・・あーあ、かっこわりぃ」
また独りだな・・・・・・・・・・・・
タバコの煙が静かに上った