今でも覚えてるような気がする、なんとなく、あの、なきたかった気分を

もう、ずっとずっと前から、僕はこの場所に住み着いてる
もっと小さかった時、僕は俗に言う飼い猫だった、かわいい女の子の居る
お家に住んでいた家猫だった、だから、肉球も今みたいに、堅くなかった

いつだったのか、わからない・・・でも、昨日よりは前
その時に僕は、段ボールの箱に入れられて、知らない所の電柱の下に
置かれた、女の子がいつもと違う顔して、僕を見てた

そして、走っていった

その日はもう、迎えに来てくれなかった
次の日に、食べ物を持ってきてくれた、なでなでされてうれしかった
その次の日も食べ物を持ってきてくれたけど、お母さんが来て女の子を連れていった
その次の日、来なかった
空から水が降ってきて、怖かった・・・・身体が震えた、だんだん苦しくなってきてた
その時、一生懸命ないた

にゃー、にゃー、にゃー、にゃー・・・・・・・

家猫だったから、あんまりなくってコトをしなかった僕だったけど、どうしても
なきたかった、一生懸命ないたけど、女の子は来なかった

次の日、僕はそこから出た、で、今、この紅い柱の立ってる、大きな
家の下に住み込んでいる、幸い誰のなわばりでもなくて、助かってる
なんだか、朝早くから夕方くらいまで、たくさんの人が来るここは、僕にとって
非常に助かる存在、顔を、出すと食べ物をくれる人が、たくさんたくさん

今日は、ちょっと違った・・・・・

「・・・・・・・・どうか、高校へ通うコトが出来ますように・・・・・」
いつもみたいに、顔を出してその声を見る、女の子だ
「あ・・・・・、かわいい。おいでー」
呼ばれたら当然、近寄ってこびを売らないと、とてとて歩いて女の子に近づいた

足下ですりすりと僕が頭をこすりつける、柔らかい手が、僕を撫でてくれる
「ここが君のお家なの?」
女の子が聞いてきた、僕は応える

にゃあ

「そう。かわいいね、君は・・・・・。明日は、食べ物持ってきてあげるね」
そう言って、女の子は行っちゃった、なんかうれしい

次の日、僕は身体が黒いから日の光を受けるとぽかぽかして気持ちいい
だから、大きな家の、みんながおがむ前に何かを投げ入れる箱の上で寝てた

「あ・・・、こんな所で寝たらダメだよー。ほら、こっちにおいで。」
昨日の女の子だ、何か持ってきてくれたんだ、うれしいな
僕はぽかぽかする身体を起こして、ひょいっとそこへ飛び降りた
また、撫でてくれる

「ごめんねぇ、なんか残り物ばっかりで・・・・」
そう言って、女の子が箱に金色のモノを投げ入れて、何かお祈りしてる

「どうか、無事通うコトが出来ますように・・・・・」
僕は猫だから、女の子の考えてるコトが聞こえる、喋ってる言葉もだいたいわかる
うーん、どこかに行きたいんだ、この女の子

目の前におかれた魚をたいらげて、女の子にすり寄った
「また、明日ね・・・・ばいばい」
ぴらぴら手を振って女の子が階段を降りていっちゃった

それからずっと、そういう日が続いた、だんだん日差しがあったかくなってきて
僕はうれしい、女の子も寒そうな格好からすこしずつ変わってきた、短い髪の毛がかわいい

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・・ごめんねぇ、ちょっと疲れちゃった・・・・ふぅ」
女の子の様子が最近おかしい、なんか階段を上ってくるのが辛そうだってわかった
うーん、どうしてだろう運動苦手なのかな、だから、その次の日から、下まで迎えに
行くコトにした、女の子が喜んでくれた、うれしい

「ありがとね、くろねこさん。私、がんばるね」
にっこり笑ってくれて、また頭を撫でてもらった、うれしい
がんばろう、僕も

また、少し後の日。女の子の顔が今日は紅い、なんか辛いのかな
「ごめんねぇ、でも、もうちょっとだから、頑張るね応援ありがと」
女の子が撫でてくれた、一生懸命周りをうろちょろして、着いていく喜んでくれるから
うれしいけどなんか気になる

次の日、水が降る日だ。すごく心配だ、女の子に会いたいけど、会っちゃダメな気がする
なんだろう、おかしいな・・・・いつもより、少し遅れて女の子が来た
「ふぅ・・ふぅ・・・・・猫さん・・・・がんばろうね、応援してね」
こくこく、僕は頭をふりふり、にゃあとないた
「ありがと・・・・・」
女の子の、顔が昨日より紅い・・・・・なんかいやな気分になる、どうしてどうして

次の日、晴れた。よかった、これなら昨日より大丈夫そう、女の子を待つ
昨日より、たくさん待った、いつも、女の子より後に来るおばあちゃんが、先に上っていっちゃった
おかしいな、身体をそこで円くして待った

「ごめんね、くろねこさん。さ、行こうか」
今日は後ろから声をかけられた、振り向いて、にゃあって応えた
顔が白い、すごく白い・・・・・・・僕はこわい、手を差し出されてまた、頭を撫でられた

「あと、ちょっとなのにね・・・・・・がんばるよ」
女の子が言う、その日のお参りが終わった、いつもみたいに、ご飯を置いていってくれた
いつもより、多い、どうして?

次の日、暗くなるまで待ったけど、来なかった
代わりに僕が、おいのりをする

にゃあ、にゃあ、にゃあ、にゃあ

大丈夫、女の子の分まで僕ががんばろう
それから、僕がお参りしてる、にゃあにゃあ、たまに、人に見られると
不思議そうに僕に話かけてくる

「君は、何かお祈りをしてるの?猫でもするんだ、何お願いしてるのかな」
「猫が、祈るわけないだろ、いくぞ唯」
「あー、まってよお兄ちゃん」
猫だってお祈りくらいするんだよ、不思議に見えるのかな

水が降って来る日も、がんばった濡れるのは凄く嫌いだけど、頑張るって決めたから

にゃあにゃあにゃあにゃあ

ぎゅ・・・・・・
え?
「・・・・・・・・・・・・・・ずっと、お祈りしててくれたの?」
聞いたコトのある声だ、僕を抱き上げてくれてる
「ごめんねぇ・・・・ありがとう」
うれしいな、女の子が来てくれたんだ、顔をぺろぺろしてみる
「くすぐったい・・・・・」
あれあれ
「・・・・・・・・・・・・がんばってくれたのにね・・・・・・」
ぎゅ・・・・・・・、あれあれ?顔が濡れてるよ
「ダメなんだって・・・・・・・」
どうしたの?お祈りしてたのに?
「・・・・・・・・・・今日は、ちょっと一緒にいようか」
にゃあにゃあ、僕は応えた、女の子が座ってその横で円くなった、日が気持ちいい
あの手が、ずっと僕を撫でてくれる、しばらくされてなかったから、うれしい
「きれいな空だよね・・・・・・風も気持ちいいし・・・・もう春なんだね、ねこくん」
いつもなんか違う名前で僕を呼んでくれる、そう、あったかくなってくる季節だね
「桜が咲く頃だよね・・・・・・・・・桜はきれいだよね」
さくら?・・・・・あの、薄い色の花の咲く木だな、にゃあと応える
「くろねこさんは、名前はあるのかな・・・・・あたしはね、桜子っていうの」
へー、さくらこちゃんか、覚えておこう
「・・・・・・・・・・・・・・」
なでなでなで・・・・・・なでなでなで・・・・・・・・なでなで・・・・・・・なでなで・・・・・・
・・・・・・・、・・・・・・・・・、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

!!

僕は急いで目を覚ました、しまった、寝ちゃった
きょろきょろ回りを見る、いない、いない、いない

にゃあ、にゃあ、にゃー、にゃー

いないいないよ、どうして、ごめんごめん、寝ちゃったのはごめん・・・・

にゃーにゃーにゃー

きょろきょろしたけど、いない・・・・・・座ってた所がちょっとだけあったかい・・・・・
そして、その向こうに僕のためのご飯が置いてある
見たコトある、前にお家で飼われてた時に食べたモノだ、美味しいやつ・・・・・
あうあうあうあうあう、きょろきょろしたけど、いない・・・・・・・

僕は、美味しいご飯より、一緒にいたかったのに
僕は、美味しいご飯より、さくらこちゃんがばいばいって言うのが聞きたかったのに
僕は、美味しいご飯より、・・・・・・・・・・・・・・・・

さくらこちゃんがすきなのに

覚えてる気がする、どうしても、なきたかった時
今、そうだ、この感じ・・・・・なかないと、なかないと、なかないと

にゃー、にゃー、にゃー、にゃー

さくらの木が、薄い色の花をつける

終わり

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