過日、想いは甘く優しく
「ねぇ、あの子知ってる?」
「知ってる知ってる、いきなり声かけられちゃったよ」
「びっくりだよね、なんていうか・・・・でも、かわいいかな」
またか・・・・・・・流石だね。
遠くで、その話を耳にしている
気を付けているわけじゃないのに、すぐに耳に届く奴の噂
恋じゃないだろう、好きなんじゃないだろう
知っている奴の噂が気になるだけだろう
憶測で、曖昧にぼかしたまま、卒業を終えてまた
入学を迎えた
黒川さとみは、かの暴れん坊と一緒に、先負学園に入学した
黒髪でボーイッシュにまとめたショートカット
黒く凛々しい眉、今時流行らないと方々で言われるが
気に入ってるから直す気は無い
「さとみ、また卓朗くん噂になってるね」
「あいつは、アホだからね・・・・どこいっても、何時まで経っても変わらないよ」
「・・・・・・・・・・・・・・さとみってさ、卓朗くんとどうなの?」
「は?」
「え、ほら、中学の時から仲良かったじゃない」
そうじゃないのよ。
言うけども、この話題の時に、さとみの口元は薄く笑うらしい
そうやって誤解を生んでいるのが、最近の悩みの種だ
違う、卓朗は確かに優しいし、なんだかウマが合うけど・・・・
これは、言っても理解されないことだと
半ば諦めている節がある、実際、そういう関係なのだから
なんとも言いようが無い、ある日だって
「なぁ、さとみ」
「なに?」
「・・・・・・・なんていうか、お前とは気が合うよな」
「合わないわよ、私全然ジュースとか飲みたくないし」
「そうやってすぐに俺様を疑いやがる所とか好い感じだぜ」
「はぁ・・・・・仲間にしないでよね、本当」
「ナニ言ってる、本当はうれしいくせに」
「殴るわよ」
「なぶるわよ?」
「マスターに・・・・・」
「本当ごめんなさい、俺様」
これじゃダメなのよ。
ロマンスのかけらもない、そういう会話じゃダメなんだけどな
さとみは困っている、こう、違うのだ
先のような会話を聞いて、取り合い方が上手いよねとか
周りが向けてくる、さとみへの「大人びた感じ」というフィルターを通った視線
別に振る舞いが大人びているわけじゃなく
そういう奴だから、そうやってるだけで・・・・・・本当は、普通の女の子のような
いや、むしろもっと夢見がちな部分があるのだ
「さとみって、なんていうかやっぱ大人っぽいよね」
「だからー・・・・・・」
相変わらず繰り返されるそういう言葉
ナニも変わらないで、私たちは高校生になった
そして変わることなく、高校生の終わりまで続くのだろう
絵に描かれた景色のように
これは、不変なのかと疑った
そこに、安心していたのに気付く
「あの・・・・・・・」
「え?」
遠慮がちに声をかけてきた女の子
長い髪を後ろに結い上げている
スポーティーな感じがにじみ出ている、立っているだけで
明朗で快活だと、充分に伝わる
卓朗が声かけそうな子だな・・・・・
そう感じた、ややも、既にかもしれない
「すいません、陸上部の練習場ってどこになるんですか?」
「ええ?あの、私も新入生だからわからないの・・・・」
答えたさとみに
大慌てで、失礼しましただか、なんだったかと声を出して
おたおたしながら、走り抜けていった
なにあれ?どうしたの?馬女?
さとみの後ろで、女友達が口々に言ったが耳に入らない
「先輩に間違えられたのかな、なんでもないし行こうよ」
すぐに彼女の話題はなくなった
式も終わり、一段落するところ
「おやおや、なんだか今日は蒸し暑いわねぇ、もう春もすっかり過ぎたかしら」
「うるさいぞ」
「どうしたの卓朗くん?暑いの?」
ふふっと笑いながら、さとみが近づく
卓朗の右の頬には真っ赤な紅葉が幾重もついている
想像にたやすい、いや、細部まで探るのは容易ではないが
女の子にそういう事をした、それだけはすぐにわかる
「本当、ナニしたのよ」
「ちょっと胸を触って、スカートをめくらせてくれって頼んだだけだったんだがな」
「重罪ね、本当」
苦笑する、廊下の窓にもたれかかるようにしている卓朗
上半身だけを、外に放りだし春の陽をさぁっと浴びる
彼にとっては普通の動作だが、どこかやんちゃで
なにか素敵だ、こういう所は本当変わらない
「なぁ、さとみ・・・・・・・・・桜木舞ちゃんて知ってるか?」
「さくらぎさん?・・・・・・・・あー、無理よ卓朗、あんたじゃ」
「そんな事聞いてんじゃねぇよ」
「なに?もしかして彼女にやられたの?」
「バカ言うなよ、舞ちゃんがそんなマネするわけねーだろ、これはな・・・・」
「ああああーーーーーっっっ!!!!!!」
「って、言ってるそばから、悪いさとみ、俺様は忙しいっ」
言いながら、卓朗が窓から飛び出した、たしか二階だったはずだが
彼の強靱な肉体は、その程度でどうこうなるわけがない
そして続けざまに、髪を後ろで結い上げた女の子が走り込んでくる
「逃げられたっ!!!!このぉ・・・・・・・」
どたどたどたどたどたどたどた!!!!
さとみの事など眼中に入ることもなくすぐに廊下を
同じスピードで戻っていった、取り残されるさとみ
さきほどまで卓朗が居た窓に手をかける
少し身を乗り出して下を覗く
「待てぇぇっっ!!!!!」
「ふははははは、俺様に追いつけるはず・・・・・・って、は、早い!?」
「このぉぉぉぉおおおっっ!!!」
どたどたどたどたどたどた・・・・・・・
遠ざかっていく二人、その背中を、校舎から見ている
そんな二人を、眺めるように見ている女の子を二人見つける
そして、その脇に、男の子も見つける
やがてみんなが見ている、入学初日にもう出来上がった彼のキャラクター
頭を抱えている女教師と、それを微笑ましく見守っている保健医
そうやっていくつもの視線が、彼を見つめている
その中にさとみも含まれている、同じ視線を彼に向けている
「本当・・・・・バカなんだから」
呟いて、一本のサクラの木の下に視線を移す
そこに一人の少女が立っている、花が一輪咲いたようだ
唇が小さく刻む名前「さくらぎまいちゃん」
「なるほどね・・・・・・・」
言葉で全てが事足りた
どうと表現しようがない、納得してしまうその姿があった
この後どうなるかは、やはり想像にたやすい
烏合の男子どもの視線と、憧れと嫉妬の女子の視線
そして
卓朗の全てに平等な(ある意味特化した)視線
彼女は幸せな時間を過ごすことになるだろう
偉そうな事を考えて、そこを離れる、右手に窓側を見る
ゆっくりと歩く、日が高くまだ、上から光が降り注いでいる
そして気付く、もう一人の男の事に
後日、彼女らと彼らが、同級生という一つの物語を作るのは余談
からんころぉん♪
「ありがとうございましたー」
玄関のベルがかわいらしい音を奏でて
客の帰りを知らせている
まもなく閉店時間だと気付き、表の看板を中へと片づけることにする
「きれいな夜空ね」
いい気分になって、玄関のライトを消した
しんと静まる辺り、駅前からやや離れたこの店で
それなりの繁盛をして、計り知れない日々を送る
「さとみ、風邪ひくぞ早く中入れ」
「はいはい、大丈夫だってば」
「だけど、子供がな・・・・・」
「なによ、この前まで、裸にエプロンとかつけさせてたくせに」
「知らない」
「子供か、お前は」
からんころぉん♪
ベルが鳴って、扉がしまる
扉には、Closedの文字
変わらないと思っていた情景は
凄いスピードで色鮮やかに変わっていったと思った
だけど
少し距離を置いて、時間の中に寝かせると
それは、やはり描かれた情景のままで
「ま、とりあえずベッドにいこうか・・・」
「っとに、避妊しなくて良くなってからそればっかじゃない」
「愛してるからだよ」
「はいはい」
「本気なのに」
「そういえば、昔の事思い出しちゃったよ」
「なんだ?俺様の栄光の時代か、まだまだ続いていくんだぞ」
「本当、そうなんだね」
変わらない彼と、大人びたわけじゃなく、大人になったさとみ
少し遠回りをしたけど
幸せは、春の終わりから続いている
そして、次回は、三人で
恋は、激しく燃え上がるばかりだけでなく
ゆっくりと絶やさない炎のように続く
平穏で、面白くないかもしれないけど
さとみには、それが
何よりもうれしい恋なのだ
過日、想いはなおも続く
あとがき(反転読み)
初めて描いた、卓朗×美沙というED以外の同級生です。
オフィシャルでもあるように、また、実際のところ
美沙とくっつくのが最も適当な、卓朗の話ですが
敢えて、不得意な、さとみでのハッピーエンドにしてみました
結果は、いかがなものだったでしょうか
恥ずかしい表現が多いのは、半分くらい酔っぱらってるのが
災いしています(最近その言い訳ばっか)
シラフで読んで、おそらくは死亡するほどの衝撃を受けるでしょう
もう一つ、これと同じ冒頭で違う結末も考えたのですが
ありきたりだったので、今回は見送りました
気分が良い時に、そっちも書こうと思います
駄文、失礼しました
つうか、ギャグヌキはそろそろ辞めないといけませんか?(死活問題)
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