ごろごろごろごろごろ・・・・・・
猫の喉を撫でているわけでは、もちろんない
雷が空でとどろいているのだ、その中を、みなつき先生が走る・・・・思い出した、約束のために
「まな、大丈夫か?」
「はうう・・・・だ、だ、だ、大丈夫ですよ、あはは」
まなが、ひきつった笑いを見せて歩いている、下校時刻なのは、いいが
先ほどから鳴り響いている雷に、完全に魂を抜かれている状態のようだ
これは、送っていた方がいいよな(^^;
「まあ、そう言うな、送っていってやるから・・・ほら」
ぐいっと、俺が手をひっぱるが、今日に限ってしつこく嫌がる
「?・・・・・・まな・・・・」
「あ、あの・・・・・・ち、違うんですよ・・・あい、別にその、大丈夫です、一人で帰られます」
ぺこりと頭を下げて、まなは走って行ってしまった・・・・・身体に似合わない大きな傘を
ゆらゆらと揺らしながら、雨の向こうに消えていった
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「追わないのかい?」
「っわ!・・・・み、水沢京一・・・・・」
「だから、フルネームはやめてくれって(^^;」
突然、雨の中走り去っていったまな。そして見計らったように水沢さんがやってきた
「・・・・・・・追わないのか・・・・って」
「まあ、いいさ、それより帰るんだろ?一緒に帰ろう、うん、この前の話しの続きもあるしな」
水沢さんが笑う、そう言えば、この前って言っても昨日のコトだけどな
水沢さんがさくさくと、フレンドリーに話しをしてくる、話題は最近の世の中の情勢から
女の子のタイプまで様々だ(^^;、うーん、この人のキャラは多分一生、俺にはわからないんだろう
そうこうしながら、家についた
「ただいまー・・・・・あっと、この人・・・」
「あら、水沢さん・・・・これは、これは」
「いえいえ、奥さん」
いきなり、俺以上に親しい母親が現れた(−−;;;;、な、なんだ、俺がいない所で何が起きてる!?
折角紹介しようかと思ったが、お互い軽い挨拶をして、お茶の薦め、と丁重なお断りの儀式が済まされてしまった
「・・・・・・何時の間に、家の家族と・・・・・」
「ははは、僕は郵便局員だよ、当たり前じゃないか」
郵便局員だからと言って、近所の主婦と仲がよくなるものだろうか・・・・まあいいか
とりあえず、階段をあがり部屋へと通す、ざぶとんを薦めてあげる
「じゃ・・・・・・・・・話しを・・・・・」
「ん・・・・・・・・・そうだね・・・・・・・・・・・・」
嘘級生〜終わるのかな〜
どしゃあーーーーん!!!、天が割れんばかりの轟音があたりにこだまする
みなつき先生は、走った。スーツは濡れてしまい、あまり傘をさしている意味がないほどだ
「・・・・・・・・・・・・・なんで・・・・なんで気付かなかったんだろう・・・・」
独り言を呟きつつ、ひた走る無論目的地は、あの空き地だ
そして、目的はあの女の子・・・・・・・・・雨を待っている女の子だ
不思議なコトだ、今、みなつき先生が走っているのは、約束を果たすという
使命からだけだ、その約束がどのようにして、交わされたのかは覚えていない
ただ、雨の中・・・・・・あの子と待ち合わせていた・・・・それを思い出した
あの子が、何者なのか、どうしてみんなから見えないのか、そんなコトはどうでもいい
今、本当に大切なコトは、約束を守るコトだ・・・・・・・先生は、走る
「・・・・・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・・・・・」
まだ、吐く息が白い。雨で気温が下がっているから当然ではあるが
それ以上に、先生の中で熱く高まる何かがあった、約束・・・・・・本当に遠い昔のコトのはずだ
みなつき先生が、まだ・・・・この学校の生徒だった頃じゃなかったろうか・・・・・・
ぱしゃ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・いない」
先生が辿り着いた、鬱蒼と枯れた背の高い草が視界を塞いでいる
いつも、彼女が立っていた場所は、踏み荒らされた形跡もなく、そこだけ土しかない・・・・何も生えてはいない
ざああああーーー・・・・・・・、鬱陶しい雨が身体を気怠くしていく・・・・・
「いない・・・・・・・・・・・なんで、雨だよ・・・・・・・・」
先生は、傘をおろして畳んだ・・・・・・・・冷たい雨が、容赦なく先生をうちつける
「・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで、気付かなかったんだろう」
後悔がゆっくりと、やってくる・・・・初めて出会った時に気付くべきだった・・・・
いくら、若いからって・・・・・あのころと同じままだからって気付かないのはバカだった・・・・
雨は降り続ける
「・・・・・・・・・・・そう、何時だって遅いんだよ、みなつきくんは」
「・・・・・・・・・・・・・・・そうだ、ごめんね」
「・・・・・・・・・・・・・・・あの時だって遅刻してきたし」
「・・・・・・・・・・・・・・・そう、あの時僕が遅刻してこなかったらね」
「・・・・・・・・・・・・・・・ねえ、先生になったんだね」
「うん・・・・・・・・あの時に言ってたろ、将来は先生になって、これ教えるって・・・・」
「みなつきくんが、教えるコト出来るの?」
「・・・・・・出来てるよ・・・・うん・・・・・・・・」
「体験談だから?」
「違うよ・・・・・・・・違うだろ?」
「そうだね・・・・・・・・・・」
みなつき先生の手に、一冊の本がある「Dream with Ghost」
「ずっと・・・・・・そのままなのかい?」
「ん・・・・・・そうだね、みなつきくんは、まだ来たらダメだよ」
「まだ、行けそうもないよ・・・・・・・・・・でも、君は全てがあのころのまま・・・・僕は変わっていくばっかり」
「・・・・・・・・・・・こういう時、なんて言うか知ってる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私は、この服装がこの髪型が好きだから、あたなに出会った時のままだから」
「なら、僕はどうしてこう、年をとってしまったんだろうね」
「あなたは、もっと美しい方へ方へとお移りなさりたがるから」
「あなたは、絵だ」
「あなたは、詩だ」
ある小説の一説・・・・・・・・・・・ちょっと、かっこよすぎるかな
「また、雨が上がると・・・・・・・・・・」
「うん、また、私は待ち続けるの・・・・・・・・」
「そして、僕はこのコトを忘れて・・・・・・いや、思い出せなくなってしまうんだね」
「そう・・・・・・・・・また、こんな雨の時に・・・・みなつきくんがそのままの時までね」
「・・・・・・・・・・どうしてこうなってしまったんだろう」
「・・・・・・・・・・もう・・・・・・あがる・・・・・・・」
あれだけ轟いていた雷が静かになって、雲に狭間が出来てきている
強く打ち付ける雨は、静かになった・・・・冷たい雨は、静かにあがる
「・・・・・・・・・・・また、いなくなってしまうのか」
「・・・・・・・・・・・ごめんね、みなつきくん・・・・・・約束なんてしなければね・・・・・」
「約束・・・・・・・・・・・そうか、あの日僕が、ここへ迎えに来る・・・そういう約束だったね」
「そう・・・・・・・・・でも、みなつきくんてば遅れてきちゃうんだもんね・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・遅れたか・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・雨があがる・・・・、ばいばい、みなつきく・・・・・・」
記憶が飛ぶ・・・・・・・・・・
雨に打たれてぼーっと、突っ立っているみなつき先生の姿がある
そこへ、雷が止んでほっとしながら、都合の悪いコトに、まなが歩いてきた
「??・・・・・せ、先生??」
まなが、おそるおそる訪ねてみる、ふらっと、みなつき先生が笑顔で振り返る、いや
目が泣いている??・・・・とりあえず、パニックになるまな
「・・・・・・・・・・・・・・・・・まな・・・そうか」
一人だけ悟ったような顔をしている
(はわわわ・・・・い、いよいよ・・・いよいよなの!?・・・・いや、イヤだよ、みなつきさん・・・・)
狼狽というか、ともかく顔面蒼白のまな・・・・・・・あうあうと、細かく震えている、がみなつき先生は
ご満悦の表情で何か晴れ晴れとした感じをしている
(ど、ど、ど、どうすれば・・・・あうううう、怖いよぅ・・・なんで、雨の中で泣きながら笑ってるんだろぅぅ)
確かに怖い
「・・・・・・・・・・・・・・・・雨、止んだな・・・・・・・・・」
「・・・!!・・・・・・・・・・・・・・・え、ええ、・・・や、止みましたね」
まなが、びくっと身体をひきつけながら、答える
「折角だし・・・・まな、なんか外で食べるか?」
(はわ!?最後の晩餐!!??いよいよ、無理心中!?)
まな、考えすぎ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・で、この前の・・・・その、夜に何があったんだよ」
「ん?・・・まあ、落ち着けって、ほら、いかさきでも食べなさい」
水沢さんが、俺以上に俺の部屋で落ち着いている、またも、主導権を奪われた感じだ
なにやら、持ってきたらしい、つまみと酒をいそいそと並べている
うーん、なんか、当利みたいだなあ(−−;;;;
「さて・・・・何から話したら好いモノか・・・・」
「いや、だから・・・・この前の続きからでいいよ」
「うーん・・・・・そうだな、それまでの僕の華麗なる人生か・・・・・・」
「いいから、前の続き!!」
「む!そうだな、えっと・・・・・・・・・・・焼き肉食べて・・・」
「違う!!!そんな話ししてない!!!」
完全に遊ばれている・・・ちくしょう、話し聴いたら海にコンクリで固めて捨ててやろうか(怒)
「そう、いきり立つなって・・・・・・・僕だって、あまり話したい内容じゃないからね・・・・・」
ふっと、真面目な顔を見せた、確かにそうだ・・・・前振りによれば、振られたという話しだし・・・・
ここは、黙って聴くかな
「・・・・・・・・・・・・あの夜はな、一緒の布団で寝たんだよ」
ぴしゃあああああああああんんんん!!!
なお、雷の音である、決して、俺が動揺したための効果音ではない(−−;
「い、い、い・・・・・・・・・・・」
「どっか悪いのか(^^:・・・・・一緒の布団で寝たけど、何もなかったよ安心しな」
一気に、疲れが出る俺・・・・・ダメだ、聴きたいけど聴くと寿命が・・・・・・
「霧島は、一人で寝られるほど大人じゃなかったんだよ・・・・・・・」
「いや、それは大人じゃないっていうか、もろの子供だったってコトだろ(^^;」
かっこいい横顔で、グラスをくいっと傾けて、そう呟く水沢さん
「まあ、そう言うことだ・・・・・ちなみに、僕は君と違って、ロじゃないから、何かしようという気にはならなかったんだよ」
「俺だって、ロじゃないやい(怒)」
俺が怒ると、楽しそうに目を細める・・・・・普通の人だなあと、ふと思わされてしまう
そして、この人とは、もっとじっくり話しをしておく必要があるのかもしれないと、そんな気にさせられてしまう
「・・・・・・・・・・もっとも、あの子に何かしようなんてコトは、思わない方がいい・・・・・そんなコトは、絶対に出来ないから」
「・・・・・どういう意味だ?」
「・・・・・・・・・・・・・僕は、拒絶されたんだよ」
さっきと、言ってるコトがかなり矛盾しているが、とりあえず
別れの引き金が見えた
ふふっと、自嘲気味に笑う水沢さん・・・・・なにか、寂しそう
「・・・・・拒絶って・・・・・・・・・」
「ん・・・・・・少し経ってからのコトだよ、俺も男だ、最初はただの幼い子だと思ってたけどな
時間ってのはおかしいもので・・・・・・色々と、関係が進んでたし・・・ちょっとって思った時だったよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「??・・・・どうしたんだい?」
「いや・・・・・・・・・・・・・」
何か、今の俺の状態に似ている・・・そんな気がする、まなを女の子から女として意識しだす・・・・・
進む関係・・・・・・まさかな・・・・・・
「まあ、もう少し煮詰めて話しをした方がいいか・・・・・・・・」
水沢さんが、腹を割ったという感じで、そう切り出した
そして本題が始まる