まなと、買い物に出た
「あうー、さり先輩・・・・何が好きなんでしょうねえ」
「そうだなあ・・・・でも、まあ、卒業の記念だから・・・・・・」
花でもと、言おうとした俺
「これなんてどうでしょう?」
まなが、携帯の灰皿を持ってきた・・・・なるほど
「いいなそれ・・・・・・それなら、いつまでも使ってもらえそうだしな」
俺が、思わずまなの頭を撫でる、驚いた後、うれしそうな顔で紅潮するまな
「はうぅ・・・・せ、先輩恥ずかしいです・・・」
「ん?」
なんか、いつになくかわいい反応を見せるまな、恥ずかしそうに、ぱたぱたと走って
レジに買いに出た、・・・・・・数m先で転んだ(笑)
店員に起こされながら、がんばって泣くのを我慢して、灰皿を買う
丁寧に包んでもらっているようだ・・・少し遠くからその姿を見る俺
「・・・・・・・・あれ?・・・・・くろねこ先輩?」
外を歩く人ゴミの中に、くろねこ先輩を見つけた
私服の時もかっこいいなあとか、思いつつ、行動を観察する
「??何してるんですか?先輩」
まなが、帰ってきた、潤んだ瞳で俺を見る、なお、潤んでいるのは転んだせいである
「いや・・・・ほら、あそこにくろねこ先輩が・・・」
「あう、本当だ・・・・・何してるんでしょうねえ」
まなも、こそこそっと俺の後ろから先輩の様子を見る
その様子を見て、怪しむ店員
「・・・・・・あ、くろねこ先輩タバコ買いましたよ・・」
「先輩って、吸うのか?・・・・・・・それとも」
「さり姉様への贈り物ですか?まさか、女の人にタバコ贈るなんて無粋なマネ・・・」
まなの言うコトは一理ある、しかし、あのくろねこ先輩だ、何をするか俺達の
頭で理解出来るわけがない・・・・なにかあるのか・・・・・怪しむ、俺とまな
その様子から、店長を呼びにいく店員
そして、自販機の前に立つ先輩、何かを悩んでいるようだ
「なんだろう・・・・・・・」
「あ!!、か、買いましたよ!!先輩、何か買いましたよ」
まなが、横で興奮している、いや、別に何か凄いコトしてるわけでもないんだけどね
沸き立つ二人と、それを見て、いよいよ困惑する店員そして店長
「な、なんだろう・・・・よ、好く見えない・・・・ちくしょう」
「あうあうあう、な、なんでしょう・・・・な、何か悪いモノでしょうか」
そんなもの自販機で売っているわけがない、おろおろする二人
そして、ついに動き出した、店員
「ちょっと・・・・・いいですか?」
「え?」×2、俺とまなは、捕獲された。一方くろねこ先輩は
かしゅっ
「・・・・・・・・・・・・うーん、おでん缶って美味いのかな・・・どきどき」
先輩、お茶目すぎ
嘘級生〜だいぶ、時間稼ぎだね〜
「ロの国に行くんだって?」
「誤解産むから辞めてくれ、その言い方(^^;・・・・・ロシアだよ」
くろねこ先輩に、水沢さんが話しかけている、この前あ〜る子という邪魔が
入ってしまった為に、ゆっくり出来なかったかたきを取りに来たようだ
「そういう、さわっちはどうするの?・・・・・」
「・・・・・・さぁ、霧島がな・・・・・・・・・」
水沢さんが茶をすする、不思議そうに首をかしげるくろねこ先輩
「なあ、なんで、霧島って呼んだり、まなって呼んだりするんだい?」
「・・・・・・・・・・・・・実の所、あの子が何者なのか、俺も知らないんだよ」
水沢さんの告白に、少なからず驚きを見せる、くろねこ先輩
「・・・・・・付き合ってたわけじゃなかったの?」
「難しいな・・・・・前に、高馬くんに言ったんだけど、酷く曖昧な関係なんだよ」
水沢さんが煎餅を頬張る、不可思議そうに首をかしげるくろねこ先輩
「まあ、多くは聞かないけど・・・・・・・・どうするつもりなのさ」
「・・・・・・・・・霧島が、どういう行動を彼にとるのか、見たくてね」
「!?・・・・・どういうコト?」
「あの子は・・・・・・・・・本当に、誰かのモノになるコトがあるのかってコトをさ」
さっぱり意味不明である
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「大学進学か・・・・・・ま、がんばれよ」
「まあ、ぼちぼちやりますよ・・・・って、先生寂しくなるでしょ、くろねこくんいなくなるし」
さり姉を捕まえて、進路のコトで一つ二つ、みなつき先生が話しをしている
もう、大方の試験は終わっているわけだから、今更何を話しても無駄なのだが
まあ、数少ない気の知れた学生との、最後の団らんという感じだろうか
「そういや、先生、まなちゃんて何者なの?」
「・・・・・・・いや、実は俺もよく知らないんだよ」
ふーんと、別に気にもとめた様子なく、お茶をすするさり姉
「いつの間にか、俺があずかってるんだよな・・・・・っていうか、拾ってきたっていうのが正解か」
「は?・・・・なに?先生、その年で幼女誘拐?やめてよねぇ・・・自首する?」
「こら(^^;」
先生が、おいおいって顔で、それを否定する
「なんていうか・・・・・突然やってきたんだよな、んでもって、今もずっと家に住まわせてる・・・」
「警察とか言わなくていいの?家出少女なんじゃないの?」
「いや・・・・・うーん、最初はそう思ったんだけど、そうさせない何かがあるんだよ」
みなつき先生が真面目な顔で、そう答える
「それって、ただ面倒なだけなんじゃないの?・・・・・・・」
「う・・・・・・・・・・・(^^;」
さっぱり意味不明である
時は流れる、二年生の出番がないまま(ぉぃ、卒業の時は近づいてきた
卒業間近ともなると、学校も三年生は休みとなり、自宅待機
暇と言えば暇な時だ・・・・・・・・・
とるるるるるるる・・・・・・・、とるるるるるるるるるるる・・・・・・、かちゃ
「あい、秋積ですが?」
「あ、さり?」
「おや、くろねこくん・・・・どしたん?」
「いや・・・・今日、最後の試験だったって?」
「あう・・・・余裕だったね、うん」
「そうか・・・・じゃ、ばっちりだな」
「ねえねえ、卒業式なんかやゆの?」
「なんかって?(^^;」
「えー?卒業だよ?なんか、面白いコトやってくれるんじゃないの?・・・たのしくないなぁ」
「おぃ(−−;、僕は、芸人じゃないってば」
「大して差はないじゃないの・・・・・・しかし、卒業か・・・・・」
「卒業だな、入学式の時覚えてるか?」
「うん、あの時、あたしが助けなかったら、今頃ねえ・・・・・ふぅヽ( ´ー`)丿」
「ま、その節はお世話になりましたよ(^^;」
「長かったようで、短かったねえ、この三年間」
「そうだなあ、今振り返ると、結局、ずっと一緒のクラスだったんだな」
「なに?突然改まって?・・・・変なの」
「変だよな、やっぱ、懐かしむのって(^^;」
「年をとったのね、くろねこくんて・・・・ああ、過去を懐かしむようになっては、お年寄りも目前よ」
「またんか、同期の桜(^^;」
「あたしは、三月産まれだから、まだ、若いのよ・・・あーやだやだ、これだから、18わヽ(
´ー`)丿」
「っと、そうだ、雑談するために電話したんじゃなかった」
「ん?なに?」
「式って、時間何時からだ?」
「え・・・・・・・っと・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「知らないの?」
「うん、適当な時間に行こうかなって思ってたし・・・・」
「そうか・・・・(^^;、まあ、いいけどな、式でなくたって卒業は卒業だし」
「こらこら、誰も式出ないって言ってないよ・・・・ったくもう」
「ま、とりあえず、んーと、明日・・だよな?」
「うん、間違いない明日、卒業・・・・・・」
「そうか、じゃぁな」
「うん、ばいばい」
かちゃ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・いよいよ、卒業式か・・・・・・高馬、用意はしてきたか?」
「なんのだ?」
「体中に花火をつけて、人間ダイナマイトとかやるんだろ?」
「やるかバカ(−−)」
当利と、俺が在校生として、出席している、隣にはあ〜る子さん、まなも連れ添っている
式は厳かに行われた、特に何か特殊なコトがあるわけでなく、みなつき先生が「時代」を
唄うわけでもなく、つまらなく終わってしまった・・・卒業と言えば、時代なのに・・・・(謎)
「あ、さり姉様♪」
「お、まなちゃん来てくれたのね♪」
抱きっ!!、お約束通り、飛びかかるまなを、先輩がしっかりと抱き留めて、やってきた
「卒業おめでとうございます」
「ん、ありがと、ま、卒業したからって、特に何か変わるもんでもないんだけどね」
先輩が笑う、とりあえず、買っておいたプレゼントを渡す
「あれ?くろねこ先輩は?」
「ん?知らないよ・・・・来てないの?」
さり先輩が平然と答える、気にもしてなかったという感じだ
「いや、さっき見たけど、向こうのほう行っちゃったよ」
あ〜る子さんが、答える。さり先輩の所に、まなとあ〜る子さんを残し
当利と、俺で、くろねこ先輩を探す
「あ、先輩!!」
「お、高馬くんに、当利くんか・・・・・在校生代表?」
「そんな大したものじゃないですけどね・・・・・卒業おめでとうございます、先輩」
俺と、当利が、先輩を囲む。うれしそうに俺達の参上を喜んでくれた
「送ってくれる後輩がいるって、幸せだね・・・・ありがとう」
しみじみと、語る先輩、うーん、いつも思うけど、先輩ってそういう台詞ばっかだよな
「先輩・・・さり先輩に会ってかないんですか?」
「さり?・・・・そうか、居るのか、どこ?」
やはり、知らなかったような対応だ・・・・本当なのかな・・・不思議で仕方ないと思う、俺
多分これについては、当利も同じ印象を受けているだろう
先輩を連れて、さっきの場所へ戻る、しかし、さり先輩がいない
「あれ?さり先輩は?」
「あ・・・・・くろねこ先輩・・・・いや、先輩、友達となんかあるって言ってどっか行っちゃったよ」
あ〜る子さんが残念そうに答える、まなが、横で泣きじゃくっている
「どうしたのまなちゃん?」
「あう、先輩・・・・・うう、卒業しても、元気でやっててください・・・・ううう」
どうやら、お別れが悲しいらしい、ぼろぼろと大粒の涙をこぼし、そっと、くろねこ先輩に
頭を抱かれる、うっくうっくと、胸で泣いている、最も、身長差があるから、胸というよりは、
お腹のあたりという感じだ
「そうか、いないなら仕方ないか・・・・・・と、僕も同胞と別れを惜しんでくるよ・・・・」
と、先輩が素っ気ない態度になった・・・これから、みんなでどっかに出かけようかと
誘う予定だったけども、その態度に控えるコトにした・・・・これから、さり先輩に会うのかもしれないし
「じゃ、ありがとう今日は・・・・・・僕にとって、生涯忘れられるコトのない、すばらしい日になったよ」
きらりと、歯が光る。まぶしい。
「先輩、ロの国へ行っても無理しないでくださいね」
あ〜る子さんが心配する
「いや、だからね、誤解されるから、ロの国ってのは・・・」
「え!?ろ、ロの国ですか?・・・・先輩、おいかけますね」
急にまなが違う人になる(謎)、苦笑しながら、先輩は手を振って消えていった
「いっちゃったな・・・・・・」
「ああ・・・・・・もう、会うコトがないのかもな・・・・・」
当利と話す俺、太陽が早々に南中から脱出し、また、寒い風がさっと吹き込んできた
泣くまなと一緒に、この日は帰った
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
屋上
「・・・・・・・・・・・・・やっぱり、いたいた」
「・・・・・・・さり?」
式も終わり、余韻に浸っていた卒業生、在校生その他大勢が帰った後、閑散として
さみしい学校の屋上、くろねこ先輩がいつものように、フェンス際に立っている
そこに、さり先輩が入ってきた
「最後の一服をね・・・・」
さり先輩が、そっと座る。フェンス越しにくろねこ先輩は、桜の木を見ている、まだつぼみもついてはいない
「・・・・・・・・・・桜?」
「ああ・・・・・・・・・・懐かしいなって思って」
くろねこ先輩が感傷に浸っている、さり先輩もそれを邪魔するコトなく、静かに座っている
そっと、タバコに火をつけた
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ロシアに行くんだって?」
「・・・・・・・・・・・うん」
さり先輩が聞く。くろねこ先輩が答える
「ロシアか・・・・・・・・・・・どんなトコなの?」
「そうだね・・・・・・・・・大きな国だよ」
さり先輩が訪ねる。くろねこ先輩が話す
ふーーっと、さり先輩がタバコの煙を吐く、遠くまで白い煙が伸びる
タバコの煙だけでなく、吐息も白くなって伸びているのだろう、まだ寒い
くろねこ先輩が振り返って、さり先輩のほうを向く
「さりは、大学・・・・・・・・か」
「そうだよ」
くろねこ先輩が呟く。さり先輩が付け足す
「もう・・・・・・・・・会うコトもないかもな」
「そうね・・・・・・ま、いいんじゃない?」
くろねこ先輩が言う。さり先輩も言う
ずっと、ただの同級生だった。入学式に劇的な出会いを遂げて、ずっと一緒のクラスでも
ただの同級生だった。男と女が二人いるからと言って、物語は始まっても、それが
恋愛となるコトは、とても希なコトだ・・・・そして、この二人は多分に漏れず、希なほうではなかった
だから、お互いにそういう感情はなかった・・・・ただの同級生を三年間通した
急に去来する、数々の思い出
懐かしむというコトはいつでも出来るというのに、こういう日に限って大きな感動と一緒に思い出す
もう、二度と会うコトはないのかもしれない・・・・でも、だからといってお互いをつなぎ止めておく
言葉は何もない・・・・・このまま、離れるのを待つばかりだ
一本目のタバコを吸い終わり、さり先輩が、さっきもらったばかりの
小さな携帯灰皿にそっと、灰を落として、新しい一本に火をつけた
じわ・・・・っという、音とともに、先が燈色に染まる
それにつられるように、くろねこ先輩も、タバコをとりだす
すっと、くわえる、その動作にさり先輩が火を薦める
「いる?」
「・・・・・・・・うん」
くろねこ先輩が頷く、そして
「・・・・・・・・・・・ん・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
くろねこ先輩は、そっとさり先輩の頭の後ろに手をまわし、自分の頭を近づける
お互いにくわえたタバコの先を、そっと重ね合わせる
ライターを持った、さり先輩の手が、力無くおろされる
かさねられた、タバコの先から、ゆっくりと火が移っていく
火は、ゆっくりと移る・・・・・・・・さり先輩の目は閉じられ、くろねこ先輩の目は優しい
じじっ・・・・という、音とともにそっとくろねこ先輩が離れる
薄く点った火がぽぉっと明るく灯り、くろねこ先輩からも白い煙が昇る
「・・・・・・・・・・・・・・・・冷たいよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・冷たいね」
風が吹き抜ける、春を待つ桜の梢が、静かに揺れた
この日、二人は卒業した
なお、二人とも高校生である